殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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144 チアガール

 

 体育祭の練習が始まって、担任のミルク先生が俺の仮病を本物だと思い込んでしまった。

 

「水巻さんはぜんそくがあるから、走れないみたい。応援係になってもらいましょう」

 と勝手に決められた。

 

 仕方ないので藍ちゃんだけリレーをする時、コーナーの所に一人立たされる。

 俺は黄色組なので黄色のポンポンを両手に持たされ、こちらに向かって走ってくる生徒に手を振るのだ。

 だが、ミルク先生の誤算がここで生じてしまう。

 元気よくその場で跳ね上がってポンポンを振り回すと、コーナーを走る男子生徒たちが、藍ちゃんという暴れる胸を見て驚き、転んでしまうのだ。

 まあ女子生徒に限っては、何も問題は起きないのだが……。

 

 しかし、鬼塚のやつ。

 この前は一体なんだったんだ? いきなりスクーターに乗って翔平くんを連れて行ったけど。

 ん? というか、この時代でもスクーターは俺たち14才。中学二年生は乗れないはずじゃ……。

 と考えていたら、次のリレーが始まる。

 よく見るとその中には鬼塚も入っていた。相変わらず、運動神経は良いようでぶっちぎりの一位だ。

 

 最近あいつ、俺のことを無視するからな。ここはちょっと藍ちゃんの巨乳を使って転ばしてやるか。

 いつも以上にジャンプしまくって、藍ちゃんの胸を揺らす。

 しかし、鬼塚はその姿に目もくれず、そのままゴールしてしまう。

 他の選手は転げたのに……。

 

 なんだよっ! ちょっとぐらい、こっちを見てもいいだろう。

 

 ~帰り道~

 

 優子ちゃんが、この前の美術部の体験を話してくれた。

 

「マジでクソなのっ! イラストやマンガのことなんて、何も考えてない奴らばかり!」

「まあ……美術部だからね。マンガ研究会じゃないもん」

「でもさ、最近体育祭じゃん。練習がダルいよね」

「うん、終わったらクタクタだよ」

「ただ一つだけ、体育祭に良いところがあるよねぇ~」

「え? 例えば?」

「そりゃもちろん、ブルマだよ!」

 

 鼻息を荒くしてそう言う優子ちゃんを見て、俺は少し距離を取る。

 

「ブルマの何が良いの?」

「はみ出る白いパンツ、そしてそれを覆う紺色のブルマ。絶対に無くしてはいけない、日本の文化だと思う!」

「へ、へぇ……」

 

 まああと数年すれば、その文化は無くなるけど。

 

「でもね、女子も良いけど。一番似合うのは、小学生ぐらいの男子だと思うの!」

「は?」

「身長の低い男子が少しだけ、成長した股間がふっくらしていると……背徳感が半端ないのよ!」

 

 何やら想像しているようで、その場で身体をくねくねと動かしている。

 視線は空の上、口からはよだれを垂らして。

 なんか見ないうちに優子ちゃんも成長したな。かなり歪んで。

 

 自宅について、優子ちゃんと別れて家に入ろうとしたら、隣りの家にスクーターが止まる。

 小さな男が、郵便ポストに新聞を入れている。

 俺と目が合うと、その男は「あ、水巻!?」と驚く。

 どうやら、藍ちゃんの知り合いのようだ。

 

 男が気まずそうにその場から離れそうになった時、思い出した。

 ヘルメットにゴーグルで隠しているから、分からなかったけど。この前翔平くんを連れて帰った鬼塚だ。

 俺は隣りの家に近づき、スクーターを押して歩く彼に声をかける。

 

「鬼塚なんでしょ? ねぇ、なんで最近こんなことをしているの?」

 

 そう問いかけると、彼は正体を隠すのを諦めたようでヘルメットを取る。

 

「このことは、誰にも言わないで欲しい……俺には金が必要なんだ」

「お、お金? なんのために?」

「別に嫌味を言うわけじゃないけど、水巻は金持ちだからわからねぇよ」

 

 唇を尖がらせる鬼塚を見て、イラッとした。

 

「分からないけど、理由ぐらい教えてくれてもいいじゃん! まだこの前のカナルシティのこと怒ってるの?」

「はぁ? なんのことだよ。俺はいま金が必要なだけさ。水巻には関係ないよ」

「関係ないってなによ! 私と鬼塚の間でしょ? それに最近サボってる部活は?」

 と問い詰めたが、鬼塚は黙ってアスファルトを見つめているだけだった。

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