体育祭、当日。
俺は上下ジャージ姿で、優子ちゃんと登校する。
全身、紫色でクッソ、ダサいデザインだ。何かイベントがある時は、これで参加しないといけない。
かと言って、発育の良い藍ちゃんが、体操服にブルマ姿で歩くのも浮いて見える。
「はぁ……やっぱり納得できないな。あんな形になるなんて」
と深いため息をつく優子ちゃんを見て、体育祭のことだと思った。
「今日のジャージ登校のこと?」
「違うよ、”るろうな謙信”のアニメ版の声優だよ! 絶対にドラマCD版の声優さんの方が似合ってた! テレビ版の方じゃ、興奮できないもん!」
「ああ……そっちね」
優子ちゃんは相変わらず、創作と現実の世界がごっちゃになっているようだ。
俺はと言えば、あれ以来、鬼塚とは口をきいていない。
あいつ自身も何か隠したいようで、俺と学校で目が合っても、逸らしてすぐに逃げる。
そんな鬼塚を見ると、俺もなんだかムカついてしまい、素直になれずにいた。
気がついたら、体育祭当日。
ぜんそく持ちの俺は、応援係として競技にはほとんど参加しなくて良いが、校長や地元の政治家たちと、同じパイプテントの中で座るのが気まずい。
「あぁ~ 君は確かこの前、福岡市長とテレビに映っていたねぇ……」
「え? 市長……」
なんか、知らないジジイに話しかけられた。
校長先生から「有名な政治家の人だよ」と言われ、俺は「はぁ……」と興味が湧かない。
「地元の男子小学生を助けたんだって? 女の子なのにすごいねぇ……君には、強い勇気を感じるよ」
そう言って、藍ちゃんの頭を撫で続けるジジイ。
これはセクハラとして、カウントしていいのかな?
~数時間後~
俺が入っている黄色組だが、現在最下位の位置にいる。
練習中、三年生の団長が毎日「絶対に勝とう! 俺たちは今年が最後なんだっ!」と泣いていた。
たかが体育祭ぐらいで、よくあそこまで本気になれるよな……内申書に響くのかな?
仕方ないのでリレーの時に、俺が黄色のポンポンを持って、その場で盛大にジャンプしてやる。
すると赤組と青組の男子だけ何人か転んでしまう。
しかし、この手は男子のみ効果があるだけで、女子の場合無視されて終わりだ。
藍ちゃんの身体を使った工作によって、少しは黄色組の点数が増えたが、依然として最下位のまま。
昼休憩になり、俺はお父さんとお母さんを探しにグラウンドを探すが一向に見つからない。
グラウンドには夜間練習のため、電柱が何本か突き刺さっているのだが、そこに一匹のモンスターが立っていた。
厚底ブーツにルーズソックス、ミニスカートとヘソだしのチビTシャツを着た金髪のギャル。
そこに真島中学校の卒業生らしき、若い青年たちが群がっていた。
「お姉さん、PHS持ってる? 番号を交換しようよ」
「俺は携帯電話を持ってるぜ! なあ良いじゃん」
しかし、そのモンスターは誰も相手にせず、自身の手にある携帯電話を触り続ける。
「帰りな。がきんちょ共。お姉さんは忙しいの……って、藍じゃん! こっちだよ~!」
お姉ちゃんに振られた卒業生たちが、俺を睨みつける。
「クソっ、妹さえ邪魔しなければ、いけたかもしれないのに……」
「お姉さんの方が全然エロいな。妹は可愛くないよ」
はぁっ!? あいつら、目が腐ってんじゃねーの?
俺の方が……藍ちゃんの方がナイスバディだし! 顔も百点満点だっての!
こんな”ばく●んいわ”のどこが良いのだろうか?
お姉ちゃんの顔をじーっと見つめていると、お姉ちゃんに怒られた。
「ちょっと、なんで私をそんなに睨んでんのよ? お母さんが風邪を引いたから、弁当が無いのは私のせいじゃないでしょ?」
「はぁあ!? お弁当が無いの?」
「うるさいな。お母さんからお小遣いを預かって来たから、コンビニとかで買えばいいじゃん」