148 照れたらダメ
期末テストという地獄の期間が終わって、7月に入りようやく夏休みかと思ったころ。
セーラー服はさすがに暑いので、水色のジャンバースカートに、半袖のカッターシャツの姿へと変わった。
これはこれで、さわやかな色だから可愛いかな。
衣替えだけで一学期は終わらず、まだ最後のイベントが残っていた。
それは一泊二日の林間学校。
バスに乗って、大分県の
こんな暑い時期に山へ登るのか……ダルいな。でも、その分勉強はしないでいいから楽か。
前日の夜、俺はボストンバッグへ大量のお菓子とカップ麺、カップ焼きそば、それと菓子パンを入れておいた。
夜中に何もない山の中で、空腹になったら死んじまうからな。
~翌日~
制服では林間学校に行けないので、またダサい全身紫のジャージ姿で登校する。
ボストンバッグが重すぎて、思うように歩けない。
そのせいで、予定した時刻よりだいぶ遅刻してしまった。
校門をくぐると、体育館の中から何やら声が聞こえて来た。
「お前ら、今回の林間学校を遊びとか思うなよ! ちょっとでも、”てれっとしてみろ”! 全員、丸坊主やからな!」
あ、あの威勢のいい男性教師。以前、男子バスケ部でいじめ問題の際、自身も丸坊主にしていた先生だ。
それにしても、「てれっと」ってなんだ?
照れている覚えは一切ないが……。
体育館の入口から覗いていると、担任のミルク先生に見つかる。
「あ、水巻さん! 早くこっちへ来なさい!」
「はい」
先生もやはりジャージ姿で出勤か。相変わらずのデカ乳だ。
「あれ、水巻さん? あなた、赤白帽子はどうしたの?」
「へ? 帽子?」
俺とミルク先生がやり取りしていると、先ほどの男性教師が竹刀をバシバシ音を立てて威嚇する。
「この赤白帽子を必ず頭に被るように! 九重山には本校以外の生徒も来ている。我が校は赤色で統一すること! ちなみに忘れたバカはおらんな!?」
その発言を聞いて、俺とミルク先生は肩を震わせる。
「ほら、赤白帽子がいるって、この前、帰りのホームルームで話したでしょ?」
「え? 聞いてないですけど……」
「もう……とにかく、あの先生に借りてきなさい」
「あ、あの先生から借りるんですか?」
「仕方ないでしょ。忘れたんだから」
ボストンバッグを床に置いて、ひとりで一番前に立つ男性教師の元へ向かう。
俺ひとりしか、忘れてないようだ。
二年生を代表するかのように、先生へ向かって「帽子を忘れました」と呟く。
すると、その男性教師は顔を真っ赤にさせ、竹刀をその場で振り回すと、怒鳴り始めた。
「だから言ったやろうがっ! そうやってお前らてれ~っとしとるから、そんな忘れ物をするんやろ! お前は女だろ。そんなにてれてれしよったら、妊娠してしまうぞ!」
「え……?」
照れるだけで、男に妊娠させられるのか?
この先生の言っている意味がよく分からない。
どちらにしろ、赤白帽子を被らないと困るから、歴代の生徒たちが忘れていった誇り被った汚い赤白帽子を借りることにした。
きったねぇな……。
「おらっ! 他にこんなてれっとした女子や男子はいないのかっ!? じゃあ全員バスにさっさと乗れ!」
この帽子を被りたくないなぁ……そう思いながら、ミルク先生の元に戻る。
「あの先生、厳しいからちゃんと約束は守らないとダメよ? それこそ、てれっとしたらね」
「……失礼ですけど、先生。日本語で話してもらえます?」
「何を言ってるの? 私は英語の教師だけど、今はずっと日本語よ」