殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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150 ボーイスカウト

 

 ジンギスカンをたらふく食べた後、夕方になるまで「しばらくテント内で休んでいい」と言われた。

 優子ちゃんが「夜はみんなで温泉に入ろうね」と言ってきたので、俺は首をかしげる。

 

「温泉? そんなものここにあるの?」

「うん、あるよ! 九重山は温泉も有名だよ」

「へぇ~ そうなんだ。山しかない過疎地域かと思ってた……」

「だから、藍ちゃん。一緒に温泉で仲良く入ろうね!」

「……」

 

 このテント内で今、一緒に過ごしている女子たちを忘れてないか?

 俺と優子ちゃんだけで、温泉に入るわけじゃないだろう。

 

  ※

 

 夕方になり、近くに流れている川まで集まれと招集をかけられた。

 川にたどり着くと、炊事場にたくさんの野菜と肉が並べられている。

 各班に分かれて、今晩の料理になるカレーライスを作れと言われた。

 

 グループの中でも、白ご飯を炊く係と野菜や肉をカットする係、そしてルーを作る係に分かれて行動する。

「水巻さんはミスが多いので、簡単な白ご飯を炊く係が良いわね」

 とミルク先生に勝手に決められた。

 

 仕方ないので火おこしを始めるが、渡された道具がまさかの”弓切り式火おこし”。

 なんで、こんな原子的な料理体験をさせられるんだよ!

 ムカつきながらも、キコキコと音を立てて火を起こそうと頑張る。

 

 その間に食材をカットし終えた係が俺に文句を言ってきた。

 

「おせーんだよ! 早くしろよ、俺たちのクラスが一番遅いじゃねーか!」

 

 こんの野郎……じゃあ、お前がやってみろや!

 歯を食いしばって、文句を言ってくる奴らを睨んでいると、こちらに向かってくる少年がひとり。

 褐色肌のツンツン頭。鬼塚だった。

 紫のクッソ、ダサいジャージがよく似合う。

 

「水巻、貸してみろよ。やり方が違うんだよ」

「いや、でも……鬼塚は食材をカットする係でしょ?」

「俺のやる分は終わったから、手伝うよ。そっちの方が早く終わるだろ」

「う、うん」

 

 ちょっとだけ、こいつのことを頼りになる男として見てしまった。

 道具を鬼塚に渡すと、すぐに火がついた。

 

「うわっ、すごい!」

「水巻はこういうの初めてだろ? 俺は小学生のころ、ボーイスカウトに入ってたからさ」

「へぇ……鬼塚って、けっこうすごいんだね」

 

 そう言って、彼の大きなブラウンの瞳を見つめる。

 すると、鬼塚は頬を赤くして視線を落とす。

 

「も、もうこれで、自分でできるだろ? あとはひとりでやれよな」

「うん、ありがとう。鬼塚」

「別にいいって……」

 

 なんか調子の狂う奴だな。

 

 炊事場に移動して、かまどに火を点ける。

 白米の入った飯ごうをゆでるため、俺は竹筒を口にくわえて、勢いよく息を吹き出す。

 すると、かまどから灰色の煙がこちらに押し寄せて来た。

 目にしみるし、息苦しい。ぜんそく持ちの藍ちゃんの肉体じゃ、この作業はきついかも……。

 

「ゲホッ……ゴホッ……」

 

 いかん、発作が起き始めたかもしれない。

 そう思った瞬間に、誰かが俺の背中に触れて来た。

 

「水巻、お前はぜんそくがあるから、こんなのできねぇよ」

 

 振り返ると、両手に軍手をつけた鬼塚が立っていた。

 

「それ、貸しな。俺が代わるよ」

 

 そう言って、俺の持っていた竹筒をぶんどる。

 頬を赤くしながら、藍ちゃんの唇がついた竹筒を加えて、息を吹き出す。

 火力が一気に上がった。

 

「えほっえほっ……ほら、お前はここにいるなよ。また発作がでるぞ?」

「う、うん……」

 

 鬼塚が代わってくれたおかげで、うちの白ご飯はどの班よりも早く出来上がった。

 カレーのルーもできたから、木製のテーブルで夕ご飯を食べることになった。

 回復した俺は川の流れる音を聴きながら、何度もおかわりをする。

 

「先生、またおかわりしていいですか?」

「水巻さん。あなた、もう5杯目よ……」

「いやぁ~ 自分で作ったカレーは美味しいなと思って」

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