夕ご飯を食べ終わって、林間学校の一日目は終わる。
とその前に、キャンプ場にある露天風呂へ、班ごと順番に入るそうだ。
俺たちの班も呼ばれたので、優子ちゃんと入浴グッズを持って女風呂に向かう。
「あぁ~ 疲れたぁ~ これで一日目なんだよ?」
と優子ちゃんがぼやくので、俺は苦笑いする。
「そうだけど、ジンギスカンもカレーも美味しかったじゃん」
「え~!? ラム肉は臭かったし、カレーは作るのに手間がかかって、食べるころにはそんな余裕なかったよ……」
俺の場合、ほとんど鬼塚がやってくれたからな。
優子ちゃんと俺の間には、かなり温度差があるようだ。
更衣室に入っても、いつもの優子ちゃんなら藍ちゃんの裸体に食いついてくるのに、ため息ばかり。
「はぁ……早く福岡に帰りたい」
さすがの俺も今日は優子ちゃんに同情してしまうな。
※
露天風呂と言っても、狭い風呂だ。女の子五人が入れば、もう床が見えない。
10代女子の生足が拝めて嬉しい……と前世ならば、思えたのだが。
正直、毎日藍ちゃんの裸体を見ている俺からしたら、特に何も感じない。
目の前に見える九重山を眺めながら、身体の疲れを天然温泉で癒す。
「ふぃ~ 極楽だなぁ」
「藍ちゃん、明日はそうも言ってられないよ?」
「え? どうして?」
「明日は今見ている九重山を登って、ここまで戻ってくるんだよ。徒歩で」
「えぇ!? あの大きな山に登るの?」
「やっぱり予定表を見てなかったんでしょ……明日は朝から地獄だよ」
「……」
この真島中学校は、俺たち生徒に何を求めているんだ?
屈強な肉体を持つレンジャーにでも、育てあげたいのだろうか。
そういうのは、卒業生の”もりもりにんに君”に頼む。
~夜になって~
お風呂が終わったら、あとはテントの中で寝るだけ。
各自、寝袋を持って来ているので、その中にジャージ姿で入って目をつぶる。
するとキャンプ場のスピーカーから男子教師の野太い声が聞こえて来た。
『あー あー、先ほど抜き打ちで検査をしていたら、ある生徒がお菓子を持って来ていた』
その話を聞いて、俺はギクッとして寝袋から起き上がる。
ヤバい! 俺も夜中にお腹が空いたら良くないから、”いろいろ”と用意してきたんだ。
『先生たちが各テントに行く前に、心当たりがある生徒は広場に持ってくること!』
テントの中は軽いパニック状態に陥った。
先ほどまで静かで眠りにつこうとしていたのに……。
「どうしよう? 私、のど飴好きだから持って来ちゃった」
それを聞いて、俺がすかさず突っ込む。
「え? のど飴なら良くない? かぜ薬みたいなものだから……」
「そうなのかな?」
「大丈夫でしょ」
しかし、俺たちのテントに現れたのは、スナック感覚で体罰を行うコル●ス先生だった。
先生の顔を見た女子生徒は恐怖のあまり、のど飴を差し出した。
「ほう、自ら出して来たのは偉いぞ。じゃあ、歯を食いしばれ」
偉いぞと褒めてくれたのに、結局、頬を引っ叩かれていた……。
コル●ス先生は「一度見つかったのなら、まだ出てくる可能性がある」と全員のバッグを出すように指示してきた。
まずい! 俺のボストンバッグの中には様々なお菓子、夜食、その他ひみつ道具が入っているんだ。
見つかって鼓膜を破られるのも、絶対に嫌だ!
ここは嘘をついて、逃れることにしよう。
「あの、先生。ちょっといいですか?」
「ん? どうした水巻?」
「さっきトイレに行った時なんですけど……私、見ちゃったんです」
「何を見たんだ?」
「クラスは知らないですけど、茂みに隠れて男女が抱きついて、キスしてました」
「なんだとぉ!? それは我が校の生徒たちか?」
「はい。クッソ、ダサい紫色のジャージでしたから。あと、女子生徒の方は女子バスケ部の子だったと思います」
俺の作り話を真に受けて、肩を震わせるコル●ス先生。
「女子バスケ部のメンバーが男子生徒とイチャついていただと!? ”
「すっごく熱々なカップルでしたよ」
「よし、水巻! その生徒たちはどの辺にいた?」
「あ、たぶんですけど、トイレの近く……いや、ひょっとしたら川の近くかもです」
「そうか、よく教えてくれた! 水巻」
「ふぅ……」
こうして、俺たちの抜き打ち検査は逃れることができた。
コル●ス先生は一晩中、カップルを探していたらしい。