殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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2 せめて最後くらいは……

 

 世間は今、”三が日”ってやつで、地元の歩道を歩いても俺以外、誰も歩いていない。

 たまにトラックが道路を走っているぐらいだ。

 きっと、遠くから帰省してきた子供たちと両親のみんなで、今ごろおせち料理でも食べているのだろう。

 

 あ、そう言えば、うちにもそんなリア充が一人いたな。

 少し年の離れた兄さんという存在が……。

 中学でドロップアウトした俺とは違い、ちゃんと大学まで卒業して一流企業に勤めている。

 元々、社交的な性格だったから、女は”とっかえひっかえ”状態だったし。

 気がつけば、できちゃった婚。今じゃ3人の子供を持つ、太ったハゲのおっさん。

 

 明日、実家である俺の家に来るって、父さんが言ってたな……。

 嫌だな……会いたくねぇ。

 姪や甥も最近、俺のことを段々と理解してきたようで、近寄らなくなってきた。

 

 

 歩くこと数分、そろそろ目的地のコンビニが見えてきた。

 コンビニで買うものは決まっている。

 マンガ雑誌とスナック菓子。それにジュースを何本か。

 これぐらいしか、楽しみがないんだよな。

 酒も飲めないし憂さ晴らしには、ドカ食いが一番。

 

 そんなことを考えながら、交差点の前に立つ。

 信号機のボタンを押してしばらく待つが、なかなか青に変わらない。

 ここに設置されてから随分と経つけど、本当に変わるまでがクソ長い。

 

「パパ~っ! 早く渡ろうよ!」

 

 反対側の歩道から、甲高い子供の声が聞こえてきた。

 

「こら、”良太(りょうた)”! 待て! まだ赤信号だろ!?」

 

 その子供を追いかけるように、父親らしき男の声が聞こえて来る。

 見かけない親子だな……。

 

「大丈夫だって! まだ三が日だもん! 車なんて走ってないよ!」

 

 そう言うと、赤信号だと言うのに交差点へと足を踏み入れる少年。

 育て方が悪いんだな。

 俺が父親ならビンタしてやるけど。

 

「お、おい! 良太! 前を見ろ! と、トラックが……」

 

 顔面真っ青になって、父親が道路を指差すので。

 俺も左側の道路に視線を向けると……巨大なトラックがこちらに向かって走っていた。

 運転手は、交差点に侵入した少年の存在に、気がついてない。

 このままでは、目の前の少年がバラバラになってしまう。

 

 想像しただけでも、グロテスクだ。

 気がつくと俺は交差点の中に突っ走り、少年を担ぎ上げた。

 このまま歩道に向かって走る……予定だったが、この少年。背は低いが思った以上に重たい。

 いや、そもそも俺は子供を抱えたことが無いから比較出来ないか。

 

 どうする?

 もう目の前には、トラックの姿が見えてきた。

 死にたくないけど、この子だけでも助けないと!

 

 覚悟を決めた俺は幼い少年を助けるため、思い切り力を込めて歩道へ投げてみた。

 少年は宙を舞い、歩道沿いの花壇へ背中から落ちて倒れた。

 痛みから泣き出していたが、命に別状はない。

 駆けつけた父親が「大丈夫か?」と少年を抱える。

 

 良かった……と安心していたが、「ブーッ!」というクラクションで、俺は現実に戻る。

 このまま、トラックに衝突したら俺はどうなるんだ?

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