殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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21 憎き王子様

 

 藍ちゃんに言われた通り、体操服とブルマを着たまま、制服を着てみる。

 これ、かさばるし動きにくいな。

 今は秋だから良いけど、真夏だと辛そう……。

 

 先生にお礼を言ってから、保健室を出て教室へと向かう。

 廊下を歩いていると、白いエプロンを着た生徒たちが、銀色の大きな容器を持って歩く姿が見えた。

 あ、そうか。4時間目が終わったからもう給食の時間だ。

 匂いを嗅いだら、お腹が減って来た。

 早く教室に戻ろっと!

 

  ※

 

 渡り廊下を抜けて、俺たちの教室。1年7組へたどり着く。

 各教室から美味そうな香りが漂っている。

 この匂い、カレーだっ! 早く食べたくてたまらん!

 そう思って、教室に入ろうとした瞬間だった。

 教室の中から男子の声が聞こえてくる。

 

「なぁなぁ! お前ら見たか? 体育の授業で水巻の走る姿!」

「見た見た。最高だったよな! あいつ、普段は猫背でさ。暗いやつだから気がつかなかったけど、めっちゃ巨乳だよな!」

「マジかよ? 俺も見たかった~ そんなに揺れてたのかよ?」

 

 なんかめっちゃ盛り上がっていると思ったら、俺のことか……。

 確かに”この胸”。中学1年生にしてはデカすぎる。

 大きすぎて、今も下がよく見えない。

 

 そりゃ、多感な時期の子たちからしたら、俺は格好のエサ。

 もしかして、”今晩のおかず”にされるのかな?

 想像しただけで、寒気がしてきた。

 これが女の子になった気持ちって、やつなのか……。

 

「こんなんだったぜ! バインバインってな」

 

 なにをやっているのかと気になったので、教室の扉からコッソリ顔を出してみる。

 すると、ひとりの男子生徒がアルミ製の容器を二つ持って、胸に当てていた。

 うっ……あんな風に見られていたのか。

 

「マジかよ、ロケットおっぱいじゃん!」

 

 クラスの男子たちは、俺の胸で大笑いしていた。

 対照的に女子は黙り込み、冷ややかな視線を向けている。

 優子ちゃんも頬を膨らませて、怒っているように見えた。

 

 なんかこのまま、教室に入ると。確実に笑いのネタにされるな……。

 どうしよう? 別に俺は良いけど、友人である優子ちゃんに嫌な思いをさせたくない。

 でも、腹も減ってるから早くカレーを食べたいし。

 

 俺が教室の扉の後ろで、考え込んでいると。

 ひとりの男子が甲高い声で叫んだ。

 

「お前ら、いい加減にしろよ! 水巻は体調が悪いんだぞっ!」

 

 この声、ひょっとして鬼塚か?

 再度、教室の中を覗いてみると。

 背の低い褐色肌の少年が、顔を真っ赤にして怒鳴っていた。

 

「水巻はぜんそくで、無理して走ったから息が出来なかったんだ! それを見て笑うとか、最低だろ!」

「!?」

 

 な、なんで鬼塚が俺をかばうんだ!?

 意味が分からん……。

 

「なんだよ、鬼塚。冷めること言うなよ。お前だって水巻の胸、見たんだろ?」

「見てない! 水巻が苦しそうにしていたから、心配しただけだ!」

「おい、こいつ。ダサいよな? 普段、先輩からボコボコにされてるくせに、こんな時だけカッコつけるとか」

「うるせぇ! お前らの方がよっぽどダセぇ! 弱い女で遊ぼうとして、男らしくねぇよ!」

 

 はぁ!? 鬼塚のやつ。今の俺が女だから、弱いと決めつけてやがる。

 クソ……なめやがって、いつか俺が鬼塚をボコボコにしてやりてぇ。

 でも、なんでだろ? こう胸がスカっとする爽快感があるような……。

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