殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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33 お姉ちゃんからのアドバイス

 

 急遽、鬼塚から誘われた水族館、”マリンワールド”への招待状。

 優子ちゃんは「そんなもので許せとか、どうかしてる!」と怒っていたけど……。

 なぜか俺の心の中では、満たされていく自分がいた。

 どうしてだろう?

 

 この世界でも俺みたいな男の子を鬼塚が過去にいじめていたから、自分のことじゃないのに、話を聞いただけで前世での俺を思い出した。

 20年以上前の出来事が昨日のことのように、すぐ思い出せてしまう。

 それぐらい、俺の中では大きな出来事だった……。

 

 だからこそ、この世界であいつが俺に気をつかってくれると、なんだか気が安らぐんだ。

 もちろん、今俺が接している鬼塚 良平という少年は、前世の人間とは別物だと分かってる。

 でも、嬉しく思ってしまうんだ。またあいつと友達としてやり直せることが……。

 いじめさえ無ければ、本当は仲良くなれそうな気がする。

 

 ~それから、数日後~

 

 約束の日曜日になり、俺は朝早くから起きて洗面台で顔をキレイに洗い上げる。

 朝食もひとりで済ませて自分の部屋に戻ると、すぐさまクローゼットを開いて何を着るか、考え込む。

 

「う~ん。こういう時って、なにを着るべきなんだ?」

 

 とりあえず、真っ白なワンピースを一つ取り出してみた。

 レースの刺繡が入っており、正にデートぽい格好だな……って、アホか俺は?

 違う、違う。ただの友達だろ、鬼塚は。

 まあ上にカーディガンでも羽織ってりゃ、目立たないだろ。

 

 

 先ほどの服を着て、ドレッサーの前で全身をチェックする。

 

「うっ……目立ってるな、藍ちゃんの身体は」

 

 紺色のカーディガンを羽織っても、彼女の肉体である部分が目立ってしまう。

 それは、ぶ厚い胸部装甲だ。

 とりあえず、今日は学校じゃないから髪は括らず、肩に下ろしていこう。

 そう考えながら、ドレッサーの上に置いてあったブラシで長い髪をとかしていると……。

 

「藍っ、私のポケベル知らない?」

 

 隣りの部屋にいたお姉ちゃんがノックもせず、入って来た。

 

「お、お姉ちゃん……ポケベルとか知らないよ……」

「あんた、今日デートでもすんの?」

 

 あらぬ疑いをかけられて声が裏返ってしまう。

 

「は、はぁ!? で、デートなんかするわけないじゃん!」

「いや、どう考えても男ウケする格好でしょ」

「……」

 

 黙り込む俺を見かねて、お姉ちゃんは深いため息をつく。

 

「はぁ……別にお父さんとか、お母さんにチクろうなんて思ってないよ。ただ、これだけは言っておくよ?」

「え?」

「絶対に避妊だけはしなよ」

 

 そう言うと財布を取り出し、中から見慣れぬ物体を差し出してきた。

 銀色のキラキラと眩しい、小さなビニール製のなんだろ?

 

「お姉ちゃん、なにこれ?」

「見たことない? コンドーム」

「!?」

 

 見たことあるわけないだろ! 俺は前世でも未経験なんだから、買ったこともないわ!

 

「まあ、藍も中一だしね。これはお姉ちゃんからのお祝いってことで」

 

 いるかっ!

 絶対に使うわけにはいかないんだよ!

 断固として拒否しようとするが……。

 

「お、お姉ちゃん。本当に私はそんなんじゃないから、要らないって!」

「年長者であるお姉ちゃんの言うことを聞きなさい! そんな気持ちじゃない時こそ、したくなるもんなの! 自分の身は自分で守りなさい!」

 

 飛んだどビッチじゃん、お姉ちゃん。

 中一でもう処女を喪失してたのかよ……。

 頑なに断ろうとしたが、お姉ちゃんが無理やりカーディガンのポケットに入れ込んでしまった。

 

「んじゃ、もしまた欲しくなったら、次からは自分で買いなさいよね~」

 

 バタンと扉が閉まると、俺はドレッサーに向かって叫んだ。

 

「絶対に使うかっ!」

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