殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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41 純潔

 

 マリンワールドから歩くこと、約2時間。

 ようやく、地元である”真島(まじま)”が見えて来た。

 鬼塚の家は俺の自宅よりも遠いのに「暗くなるから」と一緒に着いて来てくれた。

 自転車はパンクしてるのに、無理しちゃって……。

 

「じゃあ、今日は本当にごめんな。水巻、その帰りがこんな形になって……」

「自転車は仕方ないよ。でも、楽しかったし、お弁当もすごく美味しかったかな」

「そ、そっか……じゃあ、また明日、学校でな」

「うん」

 

 自分もヘトヘトだろうに、よっぽど嬉しかったんだろうな。

 前世ではこんな関係になれなかったのに……俺が女だから、優しくしてくれるのか?

 あいつが恋人とか、絶対に嫌だけど。こういう友達としてやり直すなら、楽しいかもしれない。

 

 

「ただいまぁ~」

 

 2時間も歩きっぱなしで、倒れそうだけど……。全身、汗でベトベトしているから、早くお風呂に入りたい。

 玄関にスニーカーを投げ捨て、洗面所へ向かう。

 着ていた服は全て、脱衣かごに投げ入れる。もちろん、下着もだ。

 どうせ、後でお母さんが畳み直して、洗濯機で洗ってくれるから。

 

  ※

 

「はぁ~ サッパリしたぁ~」

 

 素っ裸で浴室から出て来ると、近くにバスタオルが置いてあることに気がつく。

 きっと、お母さんが俺のために置いてくれたんだろう。

 ありがたく、そのバスタオルで全身を拭いていると……何やら足音が近づいてくる。

 

「藍っ! あ、あんた……これは一体どういうことなの!?」

「へ?」

 

 タオルで顔を拭いているから、目の前が見えない。

 この声はお母さんか。

 とりあえず、バスタオルを胸から巻いて、話を聞くことに。

 

「どうしたの? 私、まだ服を着てないんだけど」

「服って、あんたね。じゃあ、”これ”は本当に……つ、使ったってことなの!?」

 

 お母さんは顔を真っ赤にして、ビニール製の小さな袋を俺に突き出した。

 これは、すごくキラキラしたコンドーム!?

 鬼塚がお菓子と間違えて、数ミリ開封してしまったんだ。

 あの後、俺がすぐにカーディガンのポケットに直したけど、摩擦(まさつ)とかで更に切り口が開いてしまっている。

 

「いいっ!?」

「なに、その反応!? あんた、汗だくで帰って来て、すぐにお風呂へ入るなんて……」

「違うよ! 私はそんなこと何もしていないよ!」

 

 女体化したからって、すぐに男とするか!?

 それになんで、相手が鬼塚とかマジで無いし……。

 

「じゃあ、なんで少し開いているの? お母さん、いつも言っているわよね? ”初めて”は結婚まで守れって!」

「え?」

 

 そんな話、初めて聞いたけど。

 前世では男だったし……。

 

「藍、あなた女の子でしょ? 女の子は結婚するまで処女であるべきよ! 純潔でありなさい」

「はぁ……」

「そりゃあ、あんたがもし男の子だったら、好きにしたら良いわ。童貞とかさっさと捨てたらいいの。でも女の子ならそれは絶対に守るべきなの」

「お母さん。それってさ、性差別じゃない?」

「関係ないっ! あんたは私の娘なんだから、親ならみんなそう思います!」

 

 藍ちゃん、なんでモテないか分かってきたわ。

 この両親に育てられたら、そりゃ受動的な人生になりますよ。

 毒親すぎて、マジでハードモードだな。

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