殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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49 予知能力

 

 あの”もりもりにんに君”から、直筆のサインを貰えたぞ!

 しかも、このサインは素人時代の中川 譲二だ。

 ということは、25年間きれいに保管しておけば、かなりのプレミア価格がつくかも……。

 考えただけで笑いが止まらない。

 

 

 今日は数学の先生に居残り指導されたから、帰り道がいつもより暗く感じる。

 普段なら、お友達の優子ちゃんが隣りにいてくれるから怖くないのに……。

 これほど静かな坂道を女の子が、ひとりで歩くのは危険かもしれない。

 藍ちゃんという少女は顔も可愛いし、胸だってロケット並みだし。

 なんてひとりで考えていたら、曲がり角で誰かとぶつかりそうになってしまった。

 

「うわっ! ば、ば●だんいわだっ!?」

「は? なに言ってんの、藍」

 

 モンスターかと思ったら、お姉ちゃんだった。

 

 話を聞けば、俺のことを探していたらしい。

 帰りが遅いからと、お母さんから頼まれたそうな。

 優子ちゃんの代わりに、お姉ちゃんと一緒に帰ることになった。

 

 俺は歩きながら、遅くなった理由をお姉ちゃんに説明する。

 

「ふ~ん。珍しいね、ガリ勉のあんたが居残りとか」

「ま、まあ……最近は色々と忙しくてさ」

「色々とって、あの小さな男の子のことでしょ?」

「は、はぁっ!? 違うって! なんで、私が鬼塚なんかと……」

「分かりやすいねぇ~ 藍は」

 

 そう言いながら、お姉ちゃんはポケベルを眺めて歩く。

 全然、俺の話を真面目に聞こうとしていない。

 腹が立ったので、カバンから一冊のノートを取り出す。

 先ほど、にんに君からサインを書いてもらったものだ。

 

「お姉ちゃん! これを見てよっ! 私、さっき芸能人にサインを貰ったんだから。男の人だけど、鬼塚じゃないよ」

「はぁ? 芸能人?」

 

 ようやくポケベルから目を離してくれた。

 しかし、その目つきはかなり疑っているようだ。

 

「鬼塚じゃなくて、この人に時間を割いてたから、遅くなったのもあるんだよっ!」

「なにこれ? 中川 譲二? 全然知らないんだけど……」

 

 はっ!?

 そうか、芸名じゃなくて本名だから、お姉ちゃんに伝わらないんだ。

 だからといって、ここで「後のもりもりにんに君だよ」と俺が教えたら、この世界の未来がおかしくなる危険性がある。

 でも、お姉ちゃんには教えたい。自慢したいんだ。

 もどかしさから、その場で頭を抱えていると、お姉ちゃんが口を開く。

 

「あ、この人知ってる」

「ウソっ!? お姉ちゃんも知ってるの?」

「うん、間違いない。中川くんでしょ? 中学の時、同じクラスだったから知ってるよ」

「……」

 

 俺はその場でずっこけてしまいそうになった。

 ただの同級生か……まあ二人とも高校2年生だから、可能性はあるよな。

 

「ていうかさ、あんたさ。なんで中川くんのサインを貰ったりしたの? 確かにバスケは上手いって聞いたけど」

「そ、それはいつか……いつか必ず、有名になると思ったからだよ」

「ふ~ん。じゃあ、いつ有名になんのよ?」

「わからないけど……あと数年後ぐらいには」

「藍、あんたさ。あんまりお姉ちゃんもこんなことを言いたくないけど、ちょっと病院で頭の中を検査してみたら?」

 

 俺のは予知能力じゃなくて、マジなのに……。

 精神鑑定を促されるとは、辛すぎる。

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