殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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第六章 いじめの解決法
50 繰り返される悪夢


 

 俺が藍ちゃんという美少女に転生して、数週間が経とうとしていた。

 11月になり、肌寒くなってきた頃。

 お母さんが自室に入って来て、とあるものを差し出す。

 

「藍、あんた。そろそろセーラー服の中にセーターを着ないとね」

「え? セーター? コートじゃダメなの?」

「何を言っているの……そんなの着たら、先生に叱られてまた反省文よ」

 

 コートすらダメなのか……。

 ブラックすぎるだろ、この時代の中学校。

 お母さんが言うにはタイツも履いたら、校則違反になるらしい。

 スカートだから、足もとが冷えるな。

 

  ※

 

 寒さで震えながら、優子ちゃんと一緒に坂道を歩く。

 

「この時代、寒すぎない? 地球温暖化がまだまだ足りてないのかな?」

「え? なに言っているの……藍ちゃん。地球温暖化はとても問題視されているのに、この世界を破滅させたいの?」

 

 前世の感覚のままで話すと、優子ちゃんが険しい顔で俺を睨む。

 

「あ、ごめんごめん。きっとこの坂道が寒いのかなって……」

「もう、他人事みたいに言わないでよ。藍ちゃん」

「はい……ごめんなさい」

 

 優子ちゃんにも聞いてみたが、やはり校則でコートを羽織ることは禁止されているらしい。

 あくまでも、セーラー服や学ランからはみ出ないように、セーターやベストを着ることが義務付けられているようで。

 タイツやストッキングなどは、制服の中に隠すことが出来ないので、校則違反らしい。

 対して男子は、学ランとズボンだからなぁ……男尊女卑かな。

 

 

 長い坂道を登り切ると、中学校が見えて来た。

 校門の前で先輩たちが大きな声で朝の挨拶を始める。

 

「「「おはようございます!!!」」」

 

 これ、本当にテンション下がるから、やめてもらえないかな?

 優子ちゃんから聞いた話じゃ、生徒会の先輩達らしいけど。

 朝から大きな声で頭が痛くなり、逃げるように中庭へ走る。

 

 すると、中庭から甲高い少年の悲鳴が聞こえて来た。

 驚いた俺と優子ちゃんは、顔を見つめ合う。

 

「なんだろ?」

「この声、ひょっとして……鬼塚くんじゃ?」

「えっ!? あいつがっ!?」

 

 そうか、忘れていた。

 鬼塚という少年はこの時代じゃ、いじめの加害者ではなく、被害者だった。

 しばらく彼がいじめられている姿を見ていなかったから、忘れていた。

 

「やめろって言っているだろ! 天ヶ瀬(あまがせ)!」

「はぁ? お前が悪いんだろ? ”センコー”に俺のことチクったもんな」

「俺じゃない! お前の被害妄想だろ!?」

「お前、しばらく黙っとけ……その汚い肌の色を落としてやるから」

 

 中庭に入って、すぐ右側が俺たち1年生の使う棟なのだが。

 今は誰も玄関に入ろうとしない。

 下駄箱近くには手洗い場があり、ひとりの生徒が蛇口にホースをつけて、少し離れた”的”へ向かって冷たい水を放水しているから。

 その的とは、上半身を裸にされた褐色肌の少年。鬼塚 良平だ。

 動けないように、同級生の男子生徒たちが左右の腕を掴んでいる。

 

 こんな寒い朝に、あんな冷水を直に食らったら、風邪を引くだろう。

 というか、誰も彼を助けようとしないのか?

 ただ黙って見つめているだけ。先生を呼ぼうともせず……。

 

 頭に来た俺は思わず、右手に拳を作る。

 そして、例の天ヶ瀬先輩が使っている手洗い場の蛇口を止めようとしたが……隣りにいた優子ちゃんが俺の手を掴み、首を横に振る。

 

「ダメだよ……この前みたいにうまくいくとは限らないって」

「だからって! みんな、このまま何もしないの!?」

「仕方ないよ。前も話したけど、鬼塚くんは小学校の時、かなり酷いいじめをしていたでしょ? 自業自得なんじゃない」

「……」

 

 だからって、ずっとあいつをいじめ続けたら、どうなるんだ。

 みんな、鬼塚が死んでもいいのか?

 何かいい方法は……。

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