殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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61 本当にやってしまう女の子

 

「うわぁ~ 冷たくて甘ぁ~い! 寒いけど美味しいや!」

 

 と濡れた唇を拳で拭う、翔平くん。

 それを隣りで見ていた俺は、生唾を飲み込む。

 11月に入ったから確かに寒いけど、喉は乾くもんな。

 

「美味しい、翔平くん? どんどん飲んでいいからね、そのカルピスはもう翔平くんにあげたんだから」

「本当? 優子お姉ちゃんって太っ腹だね! じゃあいただきま~す!」

「そうそう、もっと一気に飲んじゃおうか」

 

 と眼鏡を怪しく光らせる優子ちゃん。

 ひょっとして、翔平くんの可愛さが彼女にも伝わったのかな?

 だから、わざわざカルピスをおごってくれたのだろうか。

 

 そう言えば、俺の分はまだ渡してくれないな。

 優子ちゃんが抱える残りの二本のカルピスに手を伸ばそうとした瞬間。

 パチンと言う音がしたと思ったら、右手に強い痛みを覚える。

 

「今はまだダメだよ、藍ちゃん」

「え? なんのこと?」

「そうね……あと20分ぐらいかしら?」

 

 と腕時計を確認する。

 なんで、俺には飲ませてくれないの?

 

 ~それから、約20分後~

 

 カルピスを飲み終えた翔平くんは、すっかり優子ちゃんのことを気に入ったようで、大好きなギャンプラの話で盛り上がっていた。

 

「ねえ! 優子お姉ちゃんは”ギャンダム”見てる?」

「もちろん、見てるよ~ 今期は男の子ばかりだから、見ていて苦痛じゃないもん」

「苦痛……? じゃあ、あの5人の中で誰が好きなの?」

「そりゃあ、もちろん”三つ編み”の人でしょ。だって担当声優が”土井先生”だからねぇ~」

 

 ダメだ。全然話が噛み合ってない。

 それなのにもうかれこれ数十分間、会話を続けられているのがすごいかも。

 

 優子ちゃんとも仲良くなれた翔平くんだったが、なにか様子がおかしい。

 股間に手を当てて、その場でもじもじとしている。顔を真っ赤にして……。

 

「んん、あ……ごめん。優子お姉ちゃん、僕もう帰らないと」

「え? どうして? もうちょっとお話しようよ~」

「いや、僕も話したいけど……そのおしっこをしたくなっちゃって……」

 

 それを聞いて、俺はようやく翔平くんの異変に気がつく。

 彼は尿意を我慢しているのか!?

 まさか……これを狙ってカルピスを渡したのでは? そう思った俺は恐る恐る隣りの少女の横顔をのぞく。

 怪しく眼鏡を光らせて、口角をあげていた。

 

「ヒヒヒッ……仕方ないなぁ~ 我慢できないなら、この場でしちゃいなよ。男の子なんだから、立ちションできるでしょ」

 

 鬼だ……自分の性欲のために、クラスメイトの弟を使うとは。

 それに立ちションしている男の子を拝めるチャンス。とか思ってるんじゃないか?

 

「いや、それはダメだよ。お兄ちゃんに怒られちゃうもん」

「別に私と藍お姉ちゃんが黙っておけば、いいんだからぁ。ね、藍ちゃん?」

「え……?」

 

 優子ちゃんの豹変ぶりに、俺は言葉を失っていた。

 

「でも、やっぱりダメだよ。お兄ちゃんに怒られるから、我慢して帰るよ。ごめんね、藍お姉ちゃんに優子お姉ちゃん」

 

 そう言うと、翔平くんはもじもじしながら、歩道をゆっくりと歩き出す。

 時折、ビクッと身体を震わせて……。

 そのうしろ姿を見た優子ちゃんは、手に持っていたカルピスの一つを俺に差し出す。

 

「はい、藍ちゃんの分。ちょっとぬるくなったけど、きっと美味しいよ」

 

 なんて満面の笑みで渡してくるから、恐怖しかない。

 

「ねぇ……もしかして、前に言っていた排泄行為を我慢する幼い男の子を見たくて、翔平くんを利用したの?」

「利用しただなんて酷いなぁ~ 藍ちゃんってば」

 

 カルピスをごくごく飲みながら、喉を潤す優子ちゃん。

 

「だって翔平くん。ものすごい顔してたよ? 家につくまで持たなかったら、どうするの……」

「今そんなことを言うのやめてよ~ 藍ちゃん」

「え、なんで?」

「想像しちゃうじゃん~」

 

 この人を敵に回したくないな……。

 

「でも、優子ちゃん。さすがにやりすぎだと思うよ? 相手はまだ幼い小学生なのに……」

「別に良くない? だってお兄ちゃんがあの鬼塚くんだよ。それこそ小学生時代に何も悪くない同級生をいじめまくった悪魔の弟なんだから、因果応報でしょ」

「いや……あの子は鬼塚と無関係だよ」

 

 もう翔平くんと優子ちゃんを会わせるのはやめておこう。

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