殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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63 お兄ちゃん失格

 

 来週の日曜日に”ミニモーターカー”の大会が開催される。

 そのため不本意だが、俺のマシンを鬼塚へ託すことにした。

 と言っても、さすがにカスタムパーツ代は俺が払ったけど……。

 

「じゃあ、藍お姉ちゃん! 今度の日曜日。朝6時に、模型屋に集合だよ~!」

 

 そう言って、手を振る翔平くん。

 素直で良い子だな。

 

「あ、うん……またね」

 

 一応、俺も手を振ってみたが、鬼塚の奴が余計なことをほざくのでテンションが下がった。

 

「水巻って私服になると、なんか雰囲気が変わるよな」

 

 どんな意味で言ってんだよ……人を上から下までジロジロと見やがって。

 

 ~帰宅後~

 

 各教科の教師たちから、宿題をたくさん出されているのに今日も手をつけず、晩ご飯をいっぱい食べたら眠たくなってしまった。

 可愛らしいキャラクターもののパジャマに着替えると、ベッドにダイブする。

 

「はぁ~ また明日から学校かぁ~ 早く冬休みにならねぇかな……」

 

 とぼやきながら、眠りに入る。

 

  ※

 

『ざまぁみろ、鬼塚! 俺を無茶苦茶にした罰だ!』

『フンッ! 子どもみたいにピーピー泣きやがって、かっこ悪いな』

 

 なんだ? これは過去の……前世での記憶か?

 俺がこんなことを言ったのか? 全然覚えていない。

 断片的な記憶だが、確かに俺が過去に言った言葉のようだ。

 

 ロン毛に無精ひげ。スエット姿の青年がテレビを指差して、不気味に微笑んでいる。

 これは引きこもり始めて間もない、俺か……?

 一体なにがそんなにおかしいんだろう。

 

 そこから映像が移り変わり、テレビの中の青年が学ラン姿で登場。

 マイクの前に立つと、泣きながら話し始める。

 

『あ、あの……ひっぐ! 弟は、翔平は本当に良い子でした。まだ9歳です……それがこんな形でいなくなるなんて……』

 

 翔平くんのことを話しているのか?

 でも一体なにがあったと言うんだ。何台ものテレビカメラを向けられても、彼は物怖じせず話し続ける。

 まるで、事件に巻き込まれたニュース番組を観ているようだ……というより、これ。前世で見た本物のニュースじゃないか!

 

『俺はお兄ちゃん失格です。もし代われることができるなら、お、俺が……トラックに轢かれたかったです……』

 

  ※

 

「鬼塚っ!?」

 

 夢だと言うのに、妙にリアルな夢だったな……というか、過去に本当に起きた事件を俺が忘れていたんだ。

 俺がこの世界に転生しても、翔平くんという弟のことを知らなかったのは、そういうことだったのか?

 前世の世界じゃ、翔平くんと遊ぶことは無かったけど、出会うこともなかった。

 

 鬼塚にいじめられて、怖くなった俺は毎日、自室にこもりきりで。

 何もできず、年だけ取っていったが……。

 引きこもり始めて数年後に初めて、鬼塚への憎しみをぶつける事件が起きた。

 それは鬼塚の弟が交通事故にあって、死んでしまったというニュースを見たから。

 

 段々と思い出してきたぞ……。

 確かあの事件が起きたのは、俺が小学校を卒業して半年ぐらい経ったころじゃないか?

 って……それって、今ごろじゃないのか?

 本当に前世と限りなく近い平行世界ならば、この世界の翔平くんもトラックに轢かれる……ヤバい!

 彼を、翔平くんを助けないと!

 

 でも肝心の事故が起きた日を思い出せない。

 そんなことを兄の鬼塚に伝えても、信じてもらえないよな……。

 俺はなんでこんな大事なことを今まで忘れていたのだろうか。

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