殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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65 割り込む女

 

 模型屋でレース大会に初参加した俺は、優勝こそ逃したものの。

 準優勝の表彰状を両手に抱え、自宅へ帰ることにした。

 

「はぁ~ めっちゃ嬉しい~! 翔平くんと鬼塚に感謝しないとなぁ……」

 

 とベッドの上で横になると、早起きしたせいか眠たくなってきた。

 気がつくと、俺はまた夢の中にいた。

 

  ※

 

『本日、福岡市内にて交通事故が起きました』

『居眠り運転をしていたトラック運転手が、交差点を渡る小学生を誤って轢いてしまい……』

 

 なんだ? この映像は俺が過去に見たニュース番組か?

 ということは……この事故。本当に前世で起きたものだ。

 翔平くんが死んだ日。今の世界とも関係があるかもしれない。もっと情報が欲しい!

 

 しかし俺の思惑とは裏腹に映像は、すぐに次の映像へと変わってしまう。

 学ラン姿の鬼塚が翔平くんの写真を持って、泣いている。

 きっとテレビの取材に応えているのだろう。

 

『はい……全部、俺が悪いんです。翔平のことをちゃんと見守っていれば』

『お兄ちゃん、お前を救えなかった分。これからは人のために生きようと思う』

 

 こんなことを過去に言っていたのか、あいつ。

 しかしその映像は、また別の情報も残していた。

 セーラー服姿の鞍手(くらて) あゆみが涙を流しながら、鬼塚の肩に優しく触れている。

 

『良平くんは悪くない。私がずっと一緒だから大丈夫だよ……』

『悪い、あゆみ……』

 

 はぁっ!? こいつら、この時から付き合っていたのか!

 ふざけんなよ! 俺のあゆみちゃんへの恋心を返せよ、クソが……。

 何十年間も引きこもっていて、あゆみちゃんだけが俺の支えだったんだぞ。

 

  ※

 

「鬼塚、死ねぇ!」

 

 と怒鳴りながら、目が覚めてしまった……。

 薄々、感づいてはいたけど、鬼塚とあゆみちゃんは元々仲の良いカップルだったんだ。

 だけどこの並行世界では、俺という美少女が急に割り込んできたから、鞍手 あゆみは俺に嫉妬しているのか。

 クソみたいな転生だ。

 

 しかし、そんなことより……翔平くんの方が心配だ。

 彼は俺をいじめたことなんて無いし、むしろこの世界では仲良くしてくれた大事な友達のひとり。

 そんな翔平くんが、こちらの世界でも交通事故で死ぬなんて認めたなくない。

 絶対に助けたい。だが、一体いつ、どこで起きるかまでは覚えていない……どうしたら良いんだ?

 

 

 変な夢を見て、夜中に目が覚めた俺はその後しばらく興奮していたため。まったく眠れずに朝を迎えてしまった。

 あくびをしながら、優子ちゃんと中学校へ向かうことに。

 学校に着いても眠気が覚めず、気がつけばまた夢の中へ戻っていた。

 

  ※

 

 どこだ、ここは……?

 俺ん家の近くかな。いつも中学校へ向かう時に渡る交差点じゃないか。

 ていうか、この交差点って俺が前世で最後に鬼塚の子供をトラックから助けた場所じゃん。

 

 しばらくすると、その交差点にランドセルを背負ったおかっぱ頭の少年が現れる。

 翔平くんだ!

 ということは、これが前世の25年前の出来事なのか?

 俺が予想した通り、翔平くんは信号のボタンを押して歩道で立っていたのに、次の瞬間暴走したトラックが幼い少年を襲う……というグロテスクな映像を見せつけられた。

 

 そして映像はまた移り変わり、テレビのニュース番組になる。

 

『学校帰りの幼い少年が、居眠り運転をしていたトラック運転手に轢かれるという悲惨な事故が起きました。現場はこちら真島の交差点で、昨日11月26日。夕方4時ごろです……』

 

  ※

 

 「翔平くんっ!」

 

 目が覚めた俺は、イスから立ち上がり、机を両手で叩きつける。

 そうだ! 翔平くんがトラック事故に合うのは、ちょうど前世でいう1995年11月26日の夕方4時だ!

 ようやく思い出した……と思いながら、教室のカレンダーに目をやると。

 

「って! 今日じゃん!」

 

 と俺が大声で叫ぶから、担任のねーちゃん先生が驚く。

 

「ちょっと、水巻。いきなりなんなの?」

「あ、えっと……めっちゃお腹が痛いので、帰らせてください!」

 

 そう言うと、急いで教室から出て行く。

 もちろん、先生が「水巻、あんた。カバンを忘れているよ!」と言われたが、そんなことは無視だ。

 さっき教室の時計を確かめたが、現在の時間は午後3時45分。

 もう時間が残されていない。

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