殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

70 / 129
70 女の子あるある

 

 鬼塚のおばさんと話し合ったというか、一方的にお礼を言われただけなのだが……。

 どうもかなり疲れていたらしい。そこへ息子たちのいじめやトラック事故などが耳に入り、心を病みそうになった時。

 俺と言うおっさんが藍ちゃんに憑依したため、結果的に愛する子供たちを助けたことになる。

 だから、俺が女神に見えるそうだ。

 まあ、確かにあの”クソ女神”がいなければ、こんな奇跡は生まれなかっただろうが。

 

 涙をポロポロとこぼしながら、俺とお母さんに何度も頭を下げるおばさん。

 自宅を出るまで何十回「ありがとう」と言われたことか……。

 まあ褒められるってのも悪い気分じゃないな。

 

  ※

 

 翌日の朝、いつものように優子ちゃんと学校まで肩を並べて歩いていると。

 彼女が不服そうに頬を膨らませて口を開く。

 

「最近さぁ、藍ちゃん。冷たくない?」

「え? 私が? そんなことをしているつもりはないよ……」

「だってさ! なんか鬼塚くんの弟も助けるし、鬼塚くんのいじめも解決したって聞くし。昔の藍ちゃんからしたら、考えられない行動だよ!」

「う……」

 

 確かに優子ちゃんの言う通りだ。

 元々、この水巻 藍という少女は文学好きで大人しく、頭も良い。そして悪く言えば猫背の陰キャな女の子。

 そんな女の子が元いじめっ子の少年と弟を助けるとは思えない。

 接点もないし……。

 

「前はもっと私と遊んでたじゃん? 最近は鬼塚くんとばっかり……」

「そうだったけ? ちなみにどんな遊びしてたの?」

「ほら、いつも近所のスーパー。”バキバキ屋”のフードコートで、お互い買った本を読んで時間を潰してたじゃん」

「え? それって遊びなの? ちなみにどれぐらい読書していたっけ?」

「ん~ 6時間ぐらいかな。大体アイスコーヒー1杯でそれぐらいは粘ってたもん」

 

 営業妨害だろ……。

 そんな遊びは絶対にしたくない。

 

「そ、それ以外で遊ぶことないの? もっとこう女の子らしい遊びとか」

「女の子らしい……? そうだなぁ、あ! 良いこと思いついた! もう少ししたら冬休みだから、私の家に遊びにおいでよ!」

「優子ちゃんのお家で遊ぶの? まあそれならいいかな」

「じゃあ約束だよ? 藍ちゃん」

 

 そう言って、右手の小指を差し出す優子ちゃん。

 俺も小指を差し出して、優子ちゃんの指と結んで約束を交わす。

 

「うん、約束。女の子同士でパジャマパーティーとかいいかもね」

「楽しみ~ あ、お姉ちゃんもいるから、きっと色んな話が聞けると思うよ」

 

 忘れていた。あの画力が半端ない腐女子のお姉さんもいたんだった……。

 お家遊びはやめておいた方が良かったかな。

 

 ~数時間後~

 

 中休みに入り、トイレへ行こうとしたら、優子ちゃんに声をかけられた。

 

「藍ちゃん、トイレなら私も付き合うよ」

「あ、うん……」

 

 女同士ってなんでこう”連れション”をしたがるのかね?

 俺からしたら、ただの排泄行為だ。それに女子は男と違ってみんな個室でするのに、意味あるのか。

 

 廊下を歩きながら、優子ちゃんが花柄のハンカチを取り出して、俺に見せつける。

 

「じゃーん、これ。いいでしょう?」

「うん、かわいいね」

 

 褒めたと思ったのに、優子ちゃんは頬を膨らませて怒っている。

 

「ちょっと、藍ちゃん! なんで気づかないの?」

「は? 普通にかわいいハンカチだと思うよ」

「違うよっ! おそろいでしょ? 藍ちゃんと!」

 

 言われるまで気がつかなかった。確かに俺の自宅のタンスに入っているハンカチと同じ柄だ。

 わざわざ同じものを買ったのか。

 

「あ、本当だ……でも、それ何の意味があるの?」

「ひどいっ! 藍ちゃんと私だけのハンカチだからお揃いにしたんだよ? 嬉しくないの?」

「え……ごめん。よくわからない」

「やっぱり、最近の藍ちゃんは冷たいと思う!」

 

 中身がおっさんだからな……前とは違うでしょうよ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。