殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

72 / 129
72 姉ラー

 

 約束の土曜日の夕方。

 5時ごろに俺の自宅の前で、鬼塚と待ち合わせの約束をしていた。

 

 ディナーデートだから、自室にある服をいろいろとベッドの上に並べてみたが……。

 どうやって着こなせばいいのか、わからん。

 ひとりその場で唸っていると、お姉ちゃんがノックもせずに俺の部屋に入って来た。

 

「藍~ 私のポケベル、知らない?」

「知らないし、勝手に部屋へ入らないでよ……」

「お、反抗期か……って、こんなに服を並べてどうしたん?」

「いや、鬼塚のおばさんからお礼って……レストランへ鬼塚と食べに行くことになったんだ。あ、もちろんお母さんの許可は取ったよ」

「ふ~ん。ならさ、今日のコーデはお姉ちゃんに任せてみない?」

「え? お姉ちゃんが?」

「藍の初ディナーデートなんでしょ? 大成功できるファッションにしてあげる!」

 

 ~30分後~

 

「うしっ! こんなもんでいいでしょ!」

 

 そう言われて、お姉ちゃんに着せられたファッションだが……。

 

「お姉ちゃん……これって攻めすぎじゃない?」

「全然っ! ディナーデートなら、相手をいつでも落とせるファッションじゃないとね」

 

 落とすと言うか、自ら落としに行っている格好じゃないのか。

 お姉ちゃんがコーディネートしてくれたファッションだが、上から黒のタートルネックセーター、下はチェック柄のミニスカート。

 そして「貸してあげる」と言って、俺に差し出したのは厚底ブーツだ。

 これは昔流行った”アムラー”というやつなのでは?

 

 

 さすがにこれだけで外へ出るのは寒いので、コートを羽織ることにした。

 ミニスカートは初めて履くので、クッソ寒い。それに歩きづらいな。

 玄関の前で寒さに耐えながら鬼塚を待っていると、家の前を歩く通行人の視線が気になる。

 

「スケベなファッション」

「あういう子をなんだっけ? ”援助交際”できるんだろ? いくらぐらいかな……」

「嫌らしい女ね……きっと、ろくな親じゃないわよ」

 

 みんな無茶苦茶に言いやがるな。

 

 約束の5時になると、辺りは一気に暗くなってしまった。

 俺の自宅周辺の道路は外灯が少ないので、とても暗い。だから冬場はひとりで歩くのが怖い……と思っていたら、目の前に鬼塚が現れた。

 

「よう、悪い! 翔平のやつがぐずって遅れちゃったよ」

 

 そう言って俺の前に立つ褐色の少年は、とても中学生らしい格好をしていた。

 上着は中学校で使用する紫色のジャージ。下はなぜかデニムのショートパンツを履いている。

 寒くないのか?

 というか、バリバリに攻めた俺がアホみたい……クソビッチじゃん。お姉ちゃんのバカ。

 

「翔平くんがぐずったの? ひょっとして、一緒に来たかったとか?」

「まあ、そんなところ。でも今日は母ちゃんが水巻へお礼をしたいから『お兄ちゃんと二人きりにしなさいって』と止められてさ」

 

 気のせいか、以前”いじめ問題”で丸刈りにされた頭は少しずつ髪が伸びてきたようだ。

 まだツンツン頭には戻っていないけど、ちょっと可愛げがある。

 

 さすがに今夜は自転車で向かうことはないようだ。

 まだ折れた右腕が治ってないからな。

 

 二人して肩を並べ、JRの線路沿いにまっすぐ歩き始める。

 鬼塚が言うには。ここから30分ほど歩いた先にパスタ屋さんがあるらしい。

 緩い坂道に入ると、私立”両刀(りょうとう)工業大学”のキャンパスが見えて来た。

 どうしてもここを通らないと遠回りになってしまう……と鬼塚が教えてくれた。

 

 俺が歩く度に「ボカッボカッ!」と厚底ブーツの音が周囲に響いてしまう。

 すれ違う大学生たちからは「エロッ」と言われる始末。

 その度に鬼塚が相手を睨んでいた。

 

「なんかさ……今日の水巻。ずいぶんと大人っぽいんだな」

「う、うん。お姉ちゃんがコーディネートしてくれたんだけど……」

「そっか。どうりで……でも、俺はいつもの水巻の格好も嫌いじゃないぜ?」

「へ?」

 

 いつもの俺の格好って、セーラー服のことか?

 ひょっとして、鬼塚って制服フェチなのかな……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。