殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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74 厚底ブーツで足を痛める

 

 ”両刀(りょうとう)工業大学”のキャンパスを抜けると、傾斜のある細い坂道を登ることに。

 鬼塚が言うには、目的地のパスタ屋さんへ向かうのにこれが一番の近道らしい。

 とはいえ……こちとら、今は90年代の”アムラー”ファッションなんだぞ。

 厚底ブーツで歩く道じゃない。

 

「あいたっ!」

 

 何度も、足をグキッと横に曲げてこけてしまう。

 こりゃあ、捻挫するかもな……。

 全くお姉ちゃんに今日のコーデを任せるんじゃなかったよ。

 

「大丈夫か、水巻? なんかよくわからないけど、そんな靴を履いてくるからだぞ……俺の肩を使えよ」

 

 そう言って、自身の小さな肩を差し出してきた。

 クソ、こいつ。まだ右腕が折れてるくせに、こういう時だけ格好つけるんだもんな。

 でもここは甘えさせてもらうか。

 

「ありがとう」

 

 鬼塚の肩に手をのせることで、どうにかこけずにすんだ。

 

  ※

 

 坂道を超えて静かな住宅街を抜けると、国道3号線が見えて来た。

 俺たちの住んでいる真島の旧3号線は片道一車線だが、こちらの新3号線は3つもある。

 歩道だってしっかり整備されている。

 なんて歩きやすいんだ。

 

 夕方だから、道路を走る車の量が多いな。

 そんなことを考えながら、3号線沿いにまっすぐ歩いていくと、急に鬼塚が立ち止まる。

 

「ここだぜ」

 

 そう言って指差すお店はかなりおしゃれなレストランだった。

 灰色の屋根が特徴的で、窓ガラスからたくさんのカップルや家族づれが見える。

 かなり人気がある店のようだ。

 鬼塚が店の扉を開くと、鈴の音が聞こえてきた。

 中から何人ものコックコートを着た男性たちが「いらっしゃいませ!」と叫び声をあげる。

 

 店の中に入ってすぐ目に入ったのは、色とりどりのケーキが並べられたショーケースだ。

 優子ちゃんが言っていた通り、美味しそうなケーキがいっぱいある!

 見ているだけで、よだれが出てきた……。

 

「いらっしゃいませ、ご予約の方ですか?」

 

 入口から右手にあるカウンターから、若い女性店員が注文表を手に持って現れた。

 

「えっと……」

 

 俺が答えようとしたら、鬼塚が代わりに対応してくれた。

 

「あの、今日の5時に予約していた鬼塚です。いつも母がお世話になっております」

「あらぁ~ 鬼塚さん家の息子さん? お母さんから話は聞いているわよ~ ひょっとして隣りの子は彼女さん?」

「ち、違います。俺の友達です……」

 

 頬を赤くして、急にトーンダウンしてしまう鬼塚。

 もっと否定しろよ。事実みたいだろ。

 

 店員に案内されたのは、窓側の大きなテーブルだ。

 4人がけで奥の席はソファーになっている。

 どちら側に座るか、鬼塚に聞こうと思ったら、彼に「水巻がソファーに座ってくれよ」と頼まれた。

 やはり女の子として扱われているのかな?

 

「よいしょっと……」

 

 ソファーに腰を下ろすと、ようやく脚を休められた。

 もう二度と厚底ブーツは履かないでおこう。

 この時代のギャルは脚を鍛えまくっていたのかな? ブーツのために。

 

 メニューを持って来た女性店員に「良かったら、コートをお預かりしましょうか?」と尋ねられたので。

 俺は言われるがまま、コートを脱いで見せると辺りにいた男性陣から視線を釘付けにしてしまう。

 中はタイトなニットセーターだから、中学生とは思えない大きな胸の形が露わになってしまったのだ。

 

 これには女性店員も苦笑いで、コートを受け取り立ち去る。

 目の前に座る鬼塚は頬を赤くして、視線を逸らしていた。

 なんというか……こういう場合はコートを着なおした方がいいのか?

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