殺したいほど憎いのに、好きになりそう   作:味噌村 幸太郎

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第十一章 ウインターデート
97 アナログ撮影時代


 

 優子ちゃんとお姉ちゃんに手を振って、別れを告げる。

 あれほど俺にベッタリだった優子ちゃんだが、意外と別れを惜しむことなく笑顔で機嫌が良かった。

 お姉ちゃんが言うには「さっき撮った藍ちゃんとのツーショット写真が上手く撮れているか、気になるらしいんよ。今からスーパーの”バキバキ屋”へカメラを出しに行くんえ」だそうだ。

 

 じゃあ上手く撮れてなかったら、俺はまた優子ちゃんの家に行って撮り直ししないとダメなのか?

 とりあえず、自宅に向かって旧三号線の歩道を歩くことにした。

 まだ朝の10時だし、もうちょっと外で遊んでみたいな。

 そう思った俺は自宅から、少し遠回りになる中学校側へ向かう。

 

 以前、鬼塚の弟。翔平くんと”ミニモーターカー”の大会で俺は準優勝した。

 あれから、しばらく模型屋には顔を出していない。

 久しぶりにあの店で新作の”ギャンプラ”をチェックするのも面白いかもな。

 この世界では売れないプラモデルでも、あとでプレミア価格になる可能性もあるし……。

 

  ※

 

 中学校近くの交差点で、信号が変わるのを待っていると。

 近くから甲高い少年の声が聞こえて来た。

 

「お兄ちゃん! あと、もう一回でいいからやらせてよ!」

「翔平……そう言って3回目だぞ? お前、ゲーセンだけでお小遣い無くなっても知らないぞ」

 

 ん? この聞きなれた少年たちの声は。

 ふと、その声の持ち主に視線をやると……。

 

「あ、藍お姉ちゃん!」

「翔平くん?」

 

 目が合ってしまった。

 

「水巻? お前、なんでこんなところに……」

 

 そこには、懐かしい少年の姿があった。

 ツンツン頭に褐色肌の鬼塚 良平が立っていたから。

 折れた右腕も治ったようで、ギブスを外した手でこちらに手を振っている。

 

 信号が変わるのを待っていたのに、俺は近くにある家電量販店へ向かうことにした。

 その駐車場で鬼塚兄弟が何やら話している。

 鬼塚の右腕も気になったので、声をかけることに。

 

「二人とも、こんなところで何をしているの?」

 

 そう問いかけると、おかっぱ頭の弟。翔平くんが先に答えてくれた。

 

「聞いてよ! 藍お姉ちゃん、最近新しいゲームセンターがここにオープンしてさ! ”ファイティングパイパーズ”があるんだよ!」

 

 うわっ……懐かしいゲームタイトルが出て来た。

 

「翔平、だからってお前。今月のお小遣いを全部使うことはないだろ?」

 

 と兄の鬼塚が苦言を漏らす。

 まあ、お兄ちゃんとしては使いすぎを止めたいのだろう。

 しかし久しぶりに見た彼の姿だが、みすぼらしいな……。

 以前に俺とイタリアンレストランを一緒に食べた時と同じく、中学校から支給されている紫のジャージに下はデニムのショートパンツ。

 寒くないのか? いや、我慢しているのかもな。弟の翔平くんはダッフルコートを着ているし。

 

「そうだ! 藍お姉ちゃんも一緒に新しいゲームセンターで遊んでいこうよ!」

「え? 私も?」

「うん、前に家でゲームやったし、ゲームセンターでも遊べるんでしょ?」

「そ、それは……」

 

 ~10分後~

 

 翔平くんに誘われて、そのままオープンしたばかりのゲームセンターに入ってみた。

 彼のハマっている3D格闘ゲームを一緒にプレイしたけど、ボロ負け……。

 もう500円ぐらい使っているけど、一回も勝てない。

 

「藍お姉ちゃん、弱いよぉ~」

「おかしいな……コントローラーのせいじゃないかな?」

「そんなことないよ! 単純に藍お姉ちゃんの練習が足りないんだって!」

 

 なんか今日の翔平くんは妙に興奮しているな。

 

「まだやろう」という彼を見て、俺は追加の硬貨を出すため財布に触れようしたら、背後にいた鬼塚が声を荒げる。

 

「翔平! お姉ちゃんにお金を出させすぎだ! あとはお前が一人で遊んでいろ!」

「うっ……わかったよ」

 

 振り返って、俺が鬼塚に「いいの?」と尋ねてみたが、どこか様子がおかしい。

 何やら頬を赤らめて身体をもじもじとさせている。

 

「あ、あのさ……水巻さえ良かったらさ。”あれ”を一緒にやらないか!?」

「へ?」

「最近、稼働し始めたばかりのあのゲームなんだけど……」

 

 そう言って、恥ずかしそうに彼が指を差す方向を辿ってみると。

 その先にあったのは、縦長のピンク色の機体。元祖”プリント俱楽部”だ。

 

 俺、前世ではプリクラを一度も撮ったことないんだよな……初めてをこいつと撮るのかよ?

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