春風暑さが、体を支配し。視界が揺らぐ、時が経つというのは、早いもので、昨日まで
の匂いを感じていたと思ったら、時はすでに夏の香りをただ寄せていた。
体中は、汗で濡れ、服に肌が重なると”ぐしょり”と気持ち悪い感触を覚えさせる。
「まったく、もう夏だよ」
苦笑しながら、口から言葉が漏れる。
冬が待ちどうしいと感じはするが、その時には、今が待ちどうしくなっているものなのだろうか。
「ねぇ、暑いならさ、海?行かない?」
弱々しい声で優しい声で今にも無くなりそうな声で俺に提案してくる、…その子は。
「だめに決まってるだろ、冬奈…」
黒咲 冬奈、まぁ、世間的にいいう俺の彼女だ。
出会いは、うん、まぁ、聞かないでくれ、そうそう言い出会いではないからだ。
して、なぜ俺が彼女の提案を拒否しているか、一般リア中…今は死語かな、一般カップルと直そうか、一般カップルの場合であれば、そんな誘い断るはずもなく、海へとデートへと出かけるだろう。
ただ、俺たちの場合は条件が少し違う、冬奈は『毛耳動物人間障害病』という、病気を抱えている、症状のひとつとしては、動物の体の一部が人間の体に現れるというものだ、冬奈は『狐』の細胞が具現化し、耳が症状として出ている。
この病気だけなら特に俺も何も言わない、薬を飲めば多少の病気の症状等は抑えられるし、そこまで深刻な問題は起きない。そう、この病気だけなら
運の悪いことに冬奈は、病気に加えて『真核幽遠動炎腫』難しいような単語が並べられている、この病気は人間に置き換えると、癌みたいなところだ、毛耳動物人間障害だけなのであれば、特にはここまで過保護にはならないし一緒にどこでも行ってあげたいと思ってる。
「………」
「ごめんね、冬奈、行きたい気持ちはさ、勿論俺もあるけど」
頭に生えている、白い狐耳を下に見るからに、落ち込んだ様子をみせる、頭を俯かせたまま、言葉を発するでもなく、口を動かす。
俺も、何を口に出していいかわからなく、しばらく無言でいる。1分、いや30秒も経たない頃に、冬奈が目からでかい涙を零しながら口を開く。
「分かってるよぉ…無理言ってるのはね…でもね…最後くらいさ夏花と…お出かけしたいなって…」
「最後…なんて言うなよ、ね?俺が絶対病気治すから」
そう、俺は冬奈の為に、冬奈の為だけに、この病気を治すと専門の就職先『毛耳専門医療課』に仕事を手に就けた。絶対に見つける直す方法を。
泣きじゃくる、冬奈の頭にぽんと手おき優しくなでる。しばらくの間そうしていると、少し落ち着いたのか、ふっと一息をき、
「ごめんね、自分で言うのもあれだけど、精神状態をまともに保てなくて、でも大丈夫、そうだよね夏花が直してくれるもんね!ごめんね……」
「海は病気が治ってから行こう、そのときは存分にはしゃいでさ!」
「そうだね!そのときが楽しみ!!」
その、笑顔は無茶をさせているような笑顔にもみえた。
◇◆
またもや、気持ちの悪い暑さの風が肌をなで重たい瞼が開く。
冬奈の体にきを使って一応はクーラーを聞かせてはいるのだが、起きた時には決まって電源は落とされている、いらない配慮だっただろうか。
窓の前には、窓を開け、遠くを眺める冬奈の姿がある。
「ごめんね、起こした?」
俺よりも早くおき、そんな俺に笑顔を向けてくる。この、笑顔がとても好きだ。
まっすぐで、純粋で、だから時に正直すぎて少し怖いところがある。
「あぁ、大丈夫だよ、今朝ごはん作るよ」
「ありがとう」
昨日炊いていたご飯を茶碗によそい、早々と味噌汁等などのおかずを用意する、毛耳動物人間細胞症病兼真核幽遠動炎腫は特にはご飯等の制限はないが、与えすぎてしまうと、体が耐え切れづ拒否反応で戻してしまうことがある、だから強いて気をつけるのであれば、量という点だ。
「はい、できたよ冬奈」
「わぁ、おいしそう、やっぱり夏花はご飯作るの上手だね」
「そんなことない、昨日のあまりものとご飯炊いただけだ」
たまには凝ったものを作りたいとは思うけど時間がないのだ、そこは許してほしい。
「でも、やっぱり、もう少し食べたいな、夏花のご飯おいしいし」
「そういってもらえるのは嬉しいけど、分かってるだろう?」
「う、うんごめんね、困らせること言っちゃって」
前にも同じこと言われて、その時も勿論断りはしたけど、勝手に食べちゃって体調悪くしたことがあったからな、まぁ、流石にその時は怒ったけど。
ご飯を食べる中、突如電話が鳴り出す。誰だ、こんな朝早くに?先輩か?
時刻は、午前7時、一応今日は仕事は有給をとり、一ヶ月に3回とない一日冬奈と過ごす日だというのに、着信画面を見ると、『愛真達哉』 げっ…
顔に出ていたのか、冬奈が俺の顔を見るや否や。
「弟さん…?でてあげなよ、いつもそんな顔して可愛そうだよ」
「そ、そうだな」
半笑いで「じゃぁ、ちょっと電話出てくるな」といい玄関の外に出る、多分俺の顔は引きつってたと思う。
鳴りやまらないスマホの着信にでる。
「はい」
誰が聞いても、気だるそうな声で対応する、言っていなかったが、俺は多分冬奈以外の人間に対しては冷たいと思ってる。別に優しくする必要はないと感じているからだ。職場の人間に対しては、一応礼儀はそれなりにはしていると思うが。
「あぁ、兄さん聞きたいことがあるんだけどさ…」
「手短に」
因みにこいつ達哉は実の俺の弟だ、何かあれば兄さん、兄さんっていつも俺を頼ってくる、正直めんどくさい、ただ、兄という理由で相談は乗ってやってる、まぁ、冬奈に言われて電話に出たとき限定だけど。
「あのさ、兄さんって毛耳動物人間細胞症の専門家なんだろう?教えてくれ、どうやったら直る!?」
「あー、待て待て、話が見えてこない、何だいきなり」
「実はさ…俺彼女ができたんだけどさ」
なるほどね、話の行き先が少しは分かった気がするな。
「んで、その彼女が毛耳病ってことね、んで多分その子どうにかしたくて、俺に聞いてきたんか」
「察しがよくて助かる、それで、どうすればいい!」
「慌てるな、そもそもそれさえ分かっていれば、俺もそこまで困ってないんだよ」
俺にも確かに達也の気持ち焦り、心配は分かる、分かるからこそ、
「とりあえず、薬は飲ませておけ、後は病院に通院しているのであれば、まぁ、してなければ死んでるか、医者の言うことを聞いていろ間違えはないはずだ、それでも何かあったら電話してこい」
「うん…分かった、ありがと」
達哉の声はどこか不安げな声をしていた、珍しいな家族だから、兄弟だから分かることだが、ここまで人を気にするなんて、昔の達哉はそこまで他人を気にするものじゃなかった。そんなことも相まってつい優しくしてしまう。
「大丈夫だ、何かあったら、俺が何とかする、お前は彼女と一緒に居てやれ」
「うん、ありがとう、また電話する」
そうして、電話が切られる。
「ったく…何かある前提じゃ困るっての」
スマホをポケットにしまい、玄関に戻ろうとすると。
「優しいじゃん」
とニヤニヤと不適な笑みを見せる、冬奈…見てたなー。
まったく、という顔をして。
「このー」という感じで前に手をわしゃわしゃして冬奈を玄関から家の中に戻しながら悪ふざけをするかのように追い回す。
「ごめんっ、ごめんって」
と先とは違う笑みであやまってくる、ふぅー、この辺りにしておいてやるか、正直騒ぎすぎて、冬奈の体に触ってもよくないしな、くすぐっていた手を解く。
「薬は飲んだか?」
「あ、まだ飲んでなかった」
「気おつけろよ、命にかかわってくるからな」
「うん、気をつける」
冬奈の薬は計3錠、一日にして約9錠は飲まなくちゃいけない、普通の毛耳病なのであれば一日3錠で足りるかも知れないが、冬奈の場合は真核幽遠のくすりもあるので、量が多くなってしまう、そんなに飲んで大丈夫なのかと、心配する人は多いだろう、ただそれ以上に病気は恐ろしく一日でも飲むのを怠ってしまうと、命の危機に曝されてしまうのだ。
「うぇー、やっぱり不味い…」
「こればかりはな、もっとおいしい味に改良できればいいんだけどな」
「しょうがないよね、薬、だから」
薬の味を改良として一回、いや、三回くらいミスしてサンプルを無駄にしたことを思い出す、いくら冬奈のためとは言えど、流石にやりすぎたのは反省している。
「さて、冬奈今日はどこにでかける?」
仕事の都合上休みは、一ヶ月に取れても3日から4日、今日は有給を使えたが、一日冬奈と居る時間は明らかに少ない、一応家には毎日帰ってはいるが、それでも一緒に居られる時間は限られている、少しでも彼女とは1分1秒長く過ごしたい、それが、生きがいであり、今できることだ。ただこれは、自分のエゴなのかもしれないが。
「じゃぁ、水族館がいいな、また、ペンギンがみたい」
「よし、決まれば、準備しようか」
海は駄目で水族館は良いのかといわれれば、難しいところはある。
水族館は都内、家からだと30分もかからない所にある。
対して、海、県外ともなると話は別になる、問題となる点病院にある、仮に、容態が急変して、今すぐ病院にいかなくてはならない時県外だと、色々手続きを踏まなくてはならない、それが緊急を要していたとしてもだ。
一応前もって緊急を要したときの申請は受け付けている、だが。それは毛耳病だけに関しての話だ。真核幽遠病など、ここ東京以外で見れる人が居ないのだ、さらに言えば真核幽遠を診れる人も少ないのだ、国内には三人、大阪、北海道そして。東京ここの県に割り振られている。俺も一応は勉強はしているが、まだ免許をもてていない、そういう面で言えば完璧な専門家とは言わないのだ。
「夏花準備できたよ」
「分かった」
だから、今のところは免許を取得して少しでも冬奈を安心させたたいし、免許を取れたらそれこそ、海にでも連れて行ける。免許を持っている専門医師は、急な緊急事態でも、その施設を申請なく使用することが許可されている。
「じゃ、行ってきます」
◇◆
ざわざわと人ごみができている中、冬奈の手を繋ぎ、ペースに合わせて、掻き分けて歩く、平日だと言うのにも関わらず相変わらず人が多い、俺自身人が多いところは勿論苦手だが、冬奈が喜んでくれるならこれくらい大したことではない。
「やっぱり、凄い人の数だね…」
やっぱりというのは、前にも来た事あり、その時にどうやら冬奈はペンギンが気に入ったらしく、休みの日は一ヶ月に一回は多分きていると来ていると思う。
こうしてみると、毛耳病患者は、冬奈だけではなく、他の毛耳病の人は街で見かける。
「……なんでこうなっちゃったんだろうな」
「ん?」
「あ、いや…」
思っていたことが声に出てしまったというやつだ、前まではこんなこと当たり前だがなかったのに、異変とは災害とは残酷なことで待ってもくれなければ、突然くるものだということを再認識させられる。
受付を済ませ、館内の中に入っていく。
チケット二人で2000円もしないのは、冬奈の値段が少し安くなっているからだ。人間にとして入らず、毛耳病は別で違う価格で取り扱われている。
それは、少しでも病気の方に楽しんでいただきたいう当館の配慮だろう。
「さ!行こ、ペンギンコーナー!」
「うん、そうだな」
そそくさと、ペンギンの居るフロアへと足を運ぶ、あくまでも目的はペンギンらしい他にも可愛い動物は、数匹といるのにも。
「わぁ!可愛い」
足を下ろしペンギンを見ている。冬奈の周りには1匹2引きと集まってくる、餌を持っているとでも勘違いしているのだろうか、それとも来すぎて冬奈のことを認知しているのだろうか。どちらにせよ、俺にも向けられたのこのない笑顔に少し妬ける。
「可愛いな」
「あっ、やっと、夏花もこの子達の可愛さに気がついた?」
「んー?」
と腕を組み片目を明け冬奈のほうに目をやる。ん、そんなことないぞ誰も、ペンギンがこの動物が可愛い何ていってないからな。
「なに、その反応ー」
じっと視てくる冬奈、これは、ばれるな。
「私がじゃないでしょうね?」
「冬奈がだよ」
もう、と言わんばかりに頬を膨らませ、またもやペンギンのほうに目を当てる。
ふと、俺は要らんことを考えてしまう、いつまでこの時間が、いつまで冬奈と要られるのか、ドラマや映画で多分この手のシーンは五万とあるのだろうけど、俺は確かに、冬奈に出会ってそう思う瞬間は多くあっただろ。理解はできる、居なくなってほしくない、そう思うと目の周りが暑くなってくる、次第に涙がこみ上げて来る。駄目だ、よくない、考えるな、病気を治していつまでも一緒にいたい、それに今は少なくとも楽しい時間じゃないか、それなのに俺がこんなんで冬奈に心配はかけたくない。涙をぬぐい、冬奈に言葉をかける。
「楽しいな」
「う、うん」
俺の言葉に戸惑った後。
「今度はイルカ、イルカ観に行こう」
「お、行こう、行こう。イルカは居るかな」
「さっむ」
◇
時間は過ぎ、あらかた水族館を見終わり、時間で言うと大体1時間30分位だろう
いつもよりかは、滞在したなと感じている。この後の流れは、お昼を食べて、お土産を買って買える。ってな一連の流れだ。
「ん…うっぐッ……」
急に冬奈がいきなり座り込み、口を押さえる。!?どうしたんだ…口からは咳をするや、血に似た赤黒いものは吐きそうになっており、口を押さえる手からそれが、流れ出す。
「冬奈!!?大丈夫か」
すぐさま、冬奈の背中をさすり、とりあえず近くにあるベンチへと移動させる、周りの人たちもそれに気づくとざわざわと騒ぎ出す、騒ぐなら、まず救急車か何か呼べよ!心の中ではそう思いつつも、俺にそんな余裕はなく、冬奈に声をかける。
「冬奈、待ってろ、とりあえず救急車を呼ぶ!」
専門家を名乗っている割にはあまりにも、無力すぎた、こうならない為にも俺は勉強をしていたのに、こうならない為にもやれることはやったつもりなのに、それは、ただ、やったつもりだけだった、いざ、現状を目の前にすると自分はなんて非力なんだと痛感する。
冬奈の手を握り、冬奈に声をかける、意識を少しでも保てるように。
「大丈夫だからな、今救急車は呼んだ、大丈夫だから」
言葉が、安心させる言葉が見つからなかった。
「うん…大丈夫だ…よ…夏花が近くにいてくれるから」
こんな時に、冬奈は俺に対して笑顔を見せる、涙なんて流さないで、自分が一番辛いはずなのに、きついはずなのに、それなのに俺は泣きじゃくっていた、安心させるはずの俺が、本当に情けないな……。
しばらくすると、サイレンの音が聞こえてくる、すぐさま、タンカをもって、冬奈を乗せる、付き添いとして本来であれば俺は同行するのだが、ケースがケースで毛耳病まではこういう場合付き添いとしてついてけるが真核幽遠の場合、それが難しい。
「冬奈…頑張れ…頑張れ!」
「うん、大丈夫だよ…」
最後まで笑顔を見せる。もしかしたらこれが最後になるかもしれないのに。
繋いでた手は無慈悲にも離れていき、俺は、そこに棒立ちしながら館内の駐車場を離れていく救急車を見つめる事しかできなった。
「可哀想にね、もしかしたら、あれが最期かもしれないのに」
「そうだね、でも仕方ない様、だって真核幽遠だったんでしょう」
辺りから、いろんな言葉が飛び交っていた、うるさい、うるさい、うるさい、この偽善者どもが、頼むから消えてくれ。
真核幽遠がなぜ付き添えないのか、それは真核幽遠患者が亡くなると、次の毛耳患者に真核が移る、もし、近くに毛耳患者がいないは場合はは、一般人に移る、一般人の場合は死に至る可能性がある。
後日、3日間は隔離され、専用のシェルターが用意される、患者は何事もなければ、その後、7日間観察室に入れられ、その後問題がなければ開放される。
10日が過ぎた頃、保護者もしくは、関係者が呼び出され、診察の結果、容態が伝えられる。その後、一緒に問題がなければ帰宅となるのだが、問題が生じると、最悪の場合一生シェルター生活になってしまう、面会はできるが、俺はそんなの…。
「嫌だ……」
◇
あれから、数日約4日が経ったくらいだった。
俺は今、図書館にいる。仕事に関しては、上司、先輩が気を使ってくれたのか「しばらく、休め」と言われた、俺はあんなことが合ったばかりなのに、自分の非力差をしったからこそ休むことなんてできないという胸を伝えはしたが「焦ってもなんの意味もないだろう、今は精神状態も不安定だろうから、休め」と言われた。
だが、そんなこともできづ、図書館に来て資料に目を当てることにした。
したんだが、たまたま後ろを通ったときに真核幽遠という字が目に入りつい声に出てしまった。
「真核幽遠……」
「あ…え…?」
戸惑った様子で彼は、俺のほうを向いてくる。
「あぁ、悪い勉強の邪魔をするつもりはなかったんだが、ついな」
背丈はさほど大きくないだろう、黒い髪が物語るよういかにも優等生という感じだ、平日の夕方というのにも関わらずこんなところで勉強をしているのだから。
「あぁ、いえ、」
達哉と同学年くらいだろうか、達哉も多少は見習ってほしいものだが、今の俺にそんなことを言う資格はないのだろう。
俺が立ち去ろうとすると、彼は、勇気を振り絞って声を出したのか。
「あ、あの!!もしかして、毛耳動物人間細胞病に詳しい方でしょうか!!」
と、声を張り上げる、次第に周りがざわざわとしはじめる、悪意があってやったわけじゃないんだろうけど。
「ここ、図書館」
と言うと、「あ…」といわんばかりに声を押さえつける。
俺が詳しいというからなんだ、ただ詳しいだけだ。それ以外はなんでもない。
「別に、詳しいって程じゃないよ、少し知ってるだけ」
「そうなんですね、もし良かったら、ちょっと教えてもらってもいいですか、今学校の課題で毛耳病についてやってて…」
「それだけじゃ、なさそうだけどね」
「え!?」
はっと驚く少年はなんで見たいな顔してる、けどね大体この分野に興味がある人って言うのは、大事な人がそれか位しか理由がないんだよ、いくら学校の課題と言えど、学校で教えてくれる範囲内で事足りるし、そこまで深く授業をするとも考えられないからね。
「彼女とか、かな」
少し照れている様子を見せる、達哉と一緒か…。
「いいよ、何が分からないの」
少年の隣に座り、疑問点を教えてもらうことにする、もし、冬奈が一緒だったらニヤニヤ笑ってるのかな。俺も優しくなったものだ。多分この子を少しでも自分と重ねてみてしまったのだろう。
「あ、ありがとうございます、僕、霧宮 羽織って言います」
「そう、よろしくね、羽織君、俺は、夏花」
「な、夏花さんですね、お願いします」
喋るた度に礼儀ただしと感じてしまう、この子には俺見たくはなってほしくないな。
「で?何が分からないの?」
「あ、そうでした、すみません」
「別に謝ることじゃないさ」
羽織は指先で真核幽遠の文字を指す、まぁ、毛耳病に関しては授業であらかた教わるもんな、に比べて、真核幽遠はまだ未知数、分かっているのは、真核幽遠患者死後はウィルスの様に移り毛耳病の症状の悪化、簡潔に言うのならば感染。一般人の場合は感染して死に至っても他へと感染はしないがその、ご遺体は見れたもんじゃないとか。
「因みに彼女は、毛耳だけか?」
「そうですね、真核幽遠の主な症状は出てないでですね」
主な真核幽遠の症状は二つ、いきなり血反吐や嘔吐物を何日にも渡って繰り返すか、もしくは、毛耳特有の耳や尻尾などに異常が見られるかだ、方やいきなり体温が下がったり、機能を正常に使えない等などだ。
「そうか、それはよかった」
なぜか人事なのに、ほっとため息をつく多分これも重ねている部分があるからだと思う。
「夏花さんの彼女さんも毛耳病なんですか」
「ん、そうだよ」
と答えはするが、真核幽遠については言わなかった。
最近の話と言うのもあるし、まだ自分の中で府に落ちないところがあるのだろう。
「やっぱり、大変ですよね」
「そうだな」
あまりに人事見たく言うが、そうとしか捕らえられないのだ。
俺たちは、第三者の意見、大変だとかつらそうなどというそういう感想しか言えない、本当の彼女たちはもっとつらいはずなのに、わかってあげられない。
◇
「いや、助かりました」
「ああ。いいよ」
しばらく、時間が経ち羽織君もう、帰る時間になったらしい。
図書館の外に出て見れば、天気の様子が変わっていたらしく、ポツポツと雨が降ってきた。天気予報では晴れだったのにな…。
「あー、傘持ってくるの忘れちゃったなー…」
「夏花さん、もしよければ、これ使ってください」
折りたたみの傘を渡される。
「え?それだと羽織君濡れちゃうでしょ?」
「大丈夫ですよ、しばらくすれば、彼女が迎えに来てくれるので」
笑顔で再び傘を差し出してくれる。
いい子だな、とは裏腹に俺は何もできんなと思ってしまう。
「じゃ、ありがたく、使わせてもらうよ」
「はい!ぜひ!傘はまた図書館で合ったときにでも大丈夫なんで」
「そう?ありがとね」
羽織君と別れを告げ、しばらく歩っていると次第に雨がつよくなってくる。
借りた傘を開き、帰路につく。
雨の景色を見ながら歩いていると、自分の気持ちでも表しているのかと思うが、もっと苦しいのは冬奈の方だろとむしろ気が苦しくなる。
「冬奈…」
心配か気持ちが混乱しているのか頭の中がごちゃごちゃでおかしくなりそうにでもなる、そういう意味では、羽織君と話せたあの時間には、多少気持ちの整理がつけたと思う。
雨の勢いは強くなり、そのうち風も勢いをましてふいてきた。
木々が揺れ始め、雷もなって来る始末だ。まったく、夏だとはいえ、台風なんて勘弁してくれ、冬奈と…海、行けないじゃないか。
EX1「彼女」