「俺の彼女・僕の彼女は毛耳」EX   作:なにか。

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EX2

しばらく家でごろごろしていると、突如電話の音が鳴り響く。

着信履歴をみるとそこには病院からの番号が記されていた。寝かしていた体をすぐさま起こし、急いで電話に出る。

 

「もしもし…!!」

 

勢いよくっでたせいか声がでかくなってしまっていたようにも聞こえたが、そんなことは気にならない。病院から電話がかかってきたということはだ、冬奈に関すことに間違いないのだから。

 

「あ、夏花君かな?」

 

 冬奈の担当の医者が直接連絡して来てくれたようだった。

 

「そうです、で冬奈は…」

 

息をゴクリと飲んで、医者の声に耳を傾ける。

 

「安静にしてますよ、特にあれ以来病状は悪化はしていませんし、真核幽遠の症状もこれといって悪化はしていない、このまま行けば二日後には帰宅できるとおもいますよ」

 

 その言葉に胸を撫で下ろす。安心したのか、体は脱力で力が抜ける。

再び、床に体を預けそのまままた、電話口に耳を傾ける。

 

「その間、面会とかってできますか?」

「それは、ちょっと難しいですね、いくら大丈夫だからとはいえ、まだ不安要素が取り除けてはいませんので」

「…分かりました」

 

 分かってはいたが、駄目か、これまで連絡がなかったんだ。そりゃ難しいに決まっている。毛耳であれば問題なく面会だろうができたが、ケースがケースだ。

一刻も早く、冬奈には会いたかったが我慢しよう。

 

「ところで、夏花さん」

「はい?」

 

口調を先ほどとは変え、少し口が緩んだような感じで話をかけてくる。

 

「夏花さんは専門医だと聞きましたが?本当ですか」

「専門医ではないですよ、まだ、資格も取れていませんし、まだ端くれですよ」

「そうですか、とても処置が完璧だったもので」

 

処置…言われてみれば、簡易的な処置は施したな、あの場ではできる限りのことをしたつもりだが、自分的にはもう少し何か出来たんじゃないかと心残りだった。いくら、冬奈の為だとはいえ、感情的になりすぎた節がある。

 

「そんなことないですよ」

「いや、謙遜をあの状況であそこまで処置できるのは、専門医でもなかなかいないよ」

「はは…ありがとうございます」

 

 乾いた笑いの跡に、何気なくお礼を言う。そこまで言われると嬉しくはあるが、結果はあの様だ。あまり、心のそこからは、喜べない。

 

「ああ、ごめんね、話が脱線してしまったが、こなまま何もなければ、予定道理明後日、こちらの方でご自宅まで遅らせていただきます」

「分かりました」

 

逆に、こちらが迎えに言ってはいけない理由としては、二点挙げられる。

一つは、迎えにいき、帰宅中などに問題が生じた場合、対処が取れないからだ、真核幽遠の十日以内の再発症は、医者、専門の方でも手を焼くほどのものだ。

 二つ目の問題としては、診断内容等病状を車の中で聞かされる為だ、真核幽遠が発症し、シェルターの中でその事について話さないのは、精神を保とうとする事と、最悪のケースで余命宣告をされ、その場で病状が悪化しかねないからだ。本当に、最悪なのは、その場で命を絶ってしまったり、亡くなってしまうことがあるからだと、過去、資料を目にしたことがある。

 

「すみません、冬奈のことよろしくお願いします」

「はい、任せてください」

 

◇◆

 

__冬奈が帰ってくるまで残り1日__

 

 明日には帰ってくるということで、俺は、部屋の掃除をしていた、別に帰って来るからといっではない、日課だ、朝起きて、いや、起こされてか、起こされて朝食を作る、作り終えたら、簡易的な清掃をして、家を出る。今に関しては、仕事は休みだから、掃除に力を入れているだけだ。いつも本格的な清掃等は冬流してくれるが、今に関しては違うから、冬奈がいない分、やってくれていた分、しっかりしないと……。

 と掃除をかけているとき、スマホの電話が鳴る。着信相手は…。

 

「もしもし、どうしました?先輩」

 

 勤め先の上司だった。

 

「あぁ、もし、夏花?大丈夫?」

 

 どこ気の抜けるような声で、電話に出る、先輩。先輩とは、一応同僚にはなるのだが、年が上という事もあり、どこか、上司のような対応をしているし、あっちもそのような対応をしてくる。

 

「大丈夫ではないですけど、大丈夫ですよ」

「そう、明日からこれそう~?」

「明日ですか?」

 

 いや、明日か職場にはすぐ復帰したいとは思っていたけど、明日はな…。

 

「明日、冬…彼女が帰ってくるんですよ、すぐさま復帰はしたいのですが、心配で明後日からでもいいですか?」

「あーそれは、しょうがないかーじゃあ、明後日から来なよ、面白い結果も見れたし」

「面白い結果…まぁ、はい、すみませんありがとうございます」

 

 面白い結果と言うのは、多分先輩がまた、病気について成果を出す、症状の原因を打破するものが見つかったのだろう。ま、迷惑をかけているのは間違いないので、謝ってって電話を切る。

 ふぅーと息をつくまもなくまた、手の持っていたスマホから電話が鳴る。

次は…。

 

「兄さん!!大変なんだ!」

 

電話を取ると、次は弟、達哉からの電話だった。

声の大きさ、達也の様子から察するに恐らくは、彼女のことについて何かあったのだろう。

 

「どうした?」

 

 弟と言っただけで放っておけないというのも、優しさなのか同情なのか、分からないが、仕方なく助ける。

 

「彼女が、詩織が…」

「落ち着け、詳しく聞かせろ」

 

 

 どうやら、達哉の彼女は食後、薬を飲んでから、しばらく目を覚まさなくなったらしい。と言うのは良くあることだが、三時間を過ぎてしまうと、毛耳病患者でも危ないとされている。

 

「ところで、食事はなにを食べて、薬は何を飲ませた?」

「食事はいつもと変わらないよ、食パンに、目玉焼き、それに野菜ジュース、薬は錠剤のやつ」

 

 これと言って、問題のなさそうな食事ではあるが、アレルギーとかか?

それとも錠剤の薬があわなかったか?薬と言っても、三種類くらいある、錠剤、粉、カプセル。どれも同じ薬ではあるが、質が変わってくる、相性というべきか。

 

「今でも、寝たきりか?他に容態に変化とかはないか?」

「うん、特に変化はなさそう」

「アレルギーは何かあるか?」

「ないとは聞いてる」

 

 ってなると薬か、原因は仮に分かったとして、今度はその子を起こす必要があるな。

 

「そしたら、達哉、その子お風呂に入れてやれ、温度は42℃」

「え?このまま」

「ああ、そのままだ、別に問題はないだろう、彼女なんだろ?」

 

 体を起こすには、これと言った特殊な方法はない。

体を驚かせてやれば、起きる、昔のテレビみたいに叩いたら直ると一緒だ。

 

「分かった」

 

しばらく時間が経った頃だった。

 

「兄さん、詩織が目を覚ましたよ!ありがとう!」

「ああ、あと粉の薬を送っておく、多分だが錠剤タイプが駄目なら、カプセルも無理だろうから、粉の法を送っておく、何かあったら、また、連絡してこい」

「ありが…」

 

言い終わる前に切られた、俺が普通切るんじゃないのかよ。

まぁ、かくにも何とかなってよかった。

 薬が合わなくて、しばらく目輪覚まさないと言うのは、珍しいことではない。

今回も、それに類似するもので良かった。

 

「さてと、掃除もひと段落ついた頃だし、お昼にでもするか」

 

 お昼は、いつも軽食で済ませている。

勿論、休日の日は冬奈と外食に出かけることもあれば、家でご飯を食べることもある、ただ仕事がある日などは、サンドウィッチの様なもので補っている。

 と、先ほどの電話ともつかの間、またすぐに電話がかかってくる。

今日は、なんだか多いな。連絡先の表示を見ずに電話を取る。

 

「はい」

「あ、もしもし…」

「!?」

 

 声を聞いた瞬間、スマホにめをやり、かかってきた名前を確認する。

 

「…冬奈!!」

「ん、なかなか電話かかって来ないから心配しちゃって」

 

 そうだった、当たり前のことだが電話はできるのであった。

 当たり前すぎてなのか、動揺していてなのか、分からないが、あまりにも馬鹿すぎる。

 

「ご、ごめん、直接話すことしか頭になかったみたい」

「夏花はそういう所あるからね」

 

 確かに、抜けていると言われてみれば抜けているのだろうし、この会話を誰が聞いたとしても、頭にあっただろう。

 

「まぁ、そう言われちゃ…そうだな」

「心配してんだよ!夏鹿のことだからすぐ電話かけてくるかなって!」

「ご、ごめん」

「もう。私が、耐えられなくなっちゃって…」

 

 心なしか、声は徐々にトーンを落としていっていた。

 

「いや、ごめん本当に、俺があの場にいながら」

「いやいや、夏花のせいじゃないよ」

 

 本当に、嘘偽りなく申し訳なさとやるせない気持ちでいっぱいだった。

 

「………」

「………」

 

数秒、静かな時間が流れる。

 心配、罪悪感、話すことは、話したいことはたくさんあるのに、考えがまとまらず、なかんか声を発せない。

 そんな俺の事を、察したのか冬奈が口を開く。

 

「いやー、もうちょっと、水族館いたかったねー。ペンギンももうちょっと、みたかったし、パレードーも見終わってなしさー、夜一緒にご飯も食べたかったなー」

「うん…」

 

 俺はというと、まとまらない考えがごちゃごちゃしすぎて、、そっけない返事しかできなかった。本来であれば、もっと気の利いたことがいえたかもしれないが、今の俺は、どうしようもなく、哀れだったと思う。

 

「あ、そうだ!夏花!ぬいぐるみもって帰ってきてくれた?」

 

ふいに、聞かれて思い出す、倒れる前に、というよりかは入園して一番最初にいつもの事だが、ペンギンのちょっと大きいサイズのぬいぐるみをいつも買っている。後に買ったほうがいいとは言っているが、これが、聞かないもので、部屋の中には何匹かのペンギンのぬいぐるみが無作為に置かれている。

 今回も、入園した際に買って、冬奈が搬送されたときも俺が持って帰ってきていた。

 

「ああ、大丈夫、あるよ、また、部屋に置いておけばいいか?」

「んん、玄関に置いておいてよ、帰ったときにさ、なんだかあると安心する…と思うから」

「分かった、それなら玄関においておくよ」

「うん!!そうしといて!」

 

 ふと、冬奈の声が途切れる。

 

「?」

「あ、ごめん夏花、診察の時間だから切るね!」

 

 そうか、看護師さんか誰かと話していたのか。

 

「分かった」

「また、診察終わったら、電話してもいい…?」

「聞かないでくれよ、当たり前だろ…」

 

 むしろ、こっちから電話したいし、むしろ今電話切りたくないし。

冬奈の声もっと…聞いていたい。

 

「ありがと!じゃあ、切るね」

「あ…うん…」

 

 またもや、俺のそっけない声に何かを察したのか、冬奈は一拍子あけて。

 

「夏花、…好きだよ!」

 

 と切られてしまう。頬が少し、いや、顔が少しあったかい気もするが、気のせいだろう。というか、自分だけ言って勝手に電話切るなよな。

なんだか、次に電話がかかってきて話すのが少し気まずいまであるけど…。

頬をぽりぽりとかき、用意していたサンドイッチに手を伸ばし一口頬張る。

 

「ん、やっぱ、冬奈が作る不器用なやつのほうが美味しいな…」

 

◇◆

 

 『本日、の天気は晴れ時々曇り~~~』

 昨夜、つけっぱなしのテレビからは天気予報のニュースが流れていた、俺はというと、なんとも体が痛くなる格好で寝ていたのだろうか、机につっぷして寝ていた。風呂どころか、シャワーも浴びていないから髪はボサボサ、夏というのもあり、ちょっと匂うきもする。

 

「うぇ、気持ち悪…」

 

 流石に、このままでは色々まずいと思い、洗面所へ向かう。

何しろ、今日は冬奈が帰ってくるから、心配で起きていたのだがいつの間にか寝てしまっていたらしい。

 洗面台にい置かれている、時計に目をやると時刻は、午前八時過ぎを指していた、冬奈が帰る時間は、連絡はされていないが、お昼までには帰ってくるだろう、それまで、やれることはやっておくか。

 

「その、前にシャワーっと」

 

 服を脱ぎかけたとき、家のインターフォンが鳴る。

まじか、流石にせめてシャワーぐらいは浴びたかったが、そんなことよりも帰ってきたことに安心し、脱ぎかけていた服を着なおし、小走りに玄関のほうに向かう。

 昨夜、電話で話していたペンギンの人形は玄関の横の靴棚の上に置かれている、部屋に置かれている人形とは表情が、少し目が笑っている。冬奈があの日買った人形だ。心を自分なりに落ち着かせ返事をし、玄関ドアを開ける、勿論表情は笑顔で…。

 

「……え?」

「やぁ、夏花君~、おっ、可愛い人形飾ってるね~」

 

 玄関のドアを開けた先には、俺の同僚であり、上司の先輩だった。

髪は、さっき起きたみたいな感じでボサボサ、という感じなのだが白衣はしっかり着こなし、首からは『有馬』と書かれている、自分の顔付カードをぶら下げていた。

 

「なんで、先輩が…?」

「ん~、取りあえずお部屋入れてよー、外は暑い、あ、後コーヒーくらい入れてよね」

 

 勝手に来た癖になにいってるんだとそんな感情と、冬奈では無かったということに残念ではなく多少怒りを感じた。

 取りあえずは仕方が無いので、部屋の中に入ってもらった。

 

 

「おまたせしました、コーヒー入れてきましたよ」

「お、ありがと、ありがと、いただき…ぶッッ!!ってこれ、ホットじゃん!!どこに夏に温かいコーヒー入れてくるやつがいるんだよ!!」

「あ、すみません、間違えました」

「わざとだな…」

 

 当たり前だろ、いくら先輩とはいえ家まで押し寄せてくる罰だ、それによりによって今日。

 

「まぁ、いいよ。仕方ないし、ほら僕って優しいしさ」

 

 うざ。

 

「今、嫌そうな表情見せたけど、気のせいだよね?」

「当たり前じゃないですか」

「顔はそういってなさそうだけど、まぁ、いいか」

 

 俺は、冷たいコーヒーを一口、口に入れた後問いかける。

 

「で?何の用ですか?」

 

 先輩も一口コーヒーを、口に入れ、ふっうーと一息つき、口を開く。

 

「夏花君はさ、『スワンプマン』って知ってる?」

「あぁ、テセウスの船みたいなやつですよね、内容は覚えてますよ』

「まぁ、正確に言えば新追は違うけどね」

 

 『スワンプマン』と言えば、思考実験の一つだ。

確か、沼を歩いてるひとに雷が落ちて、偶然にも沼にも雷が落ちる、そうすると、沼と雷の物質が一緒で、化学反応を起こす、そうするとオリジナルの記憶と行動を全く一緒とも言える、オリジナルのコピー、『スワンプマン』が誕生する。さて、この『スワンプマン』はその人と言えるのかと言う思考実験だったような気もするが、そこまで詳しくは分からない。

 思考実験にも関わらず、昔の俺は偶然重なりすぎだろとか思って、まともに取り扱わなかった気がする。

 

「夏花君は、どう思う?」

「俺の解答でしたら、そんなにすぐには出せないですよ、結局は、どちらも本物と思うちゃうし、オリジナルが死んだと考えると、その人自身なのかと絶対は言えない」

「問題は『記憶』なんだよね、無ければ自身ともいえなくも無いけど、それにオリジナルは死んだことに、スワンプマンになったことすら気づかず生活し続ける、いきなりお前は、実は死んでいる、なんていっても実感わかないだろいしね」

 

 まぁ、確かに言いたいことはわかる。本質は自分自身は何者なんだろうと言うことなのだろうか。

 

「と言うか、なんで思考実験の話なんか急に始めたんですか? 先輩がうちに来たのもそうだし」

「そうだね、最初に結論かから言おうか?」

「はぁ……?」

 

 と、先輩は持っていたファイルから資料を数枚取り出し机に無造作に放り投げ出す、紙のタイトルには、やはりと言うべきか『真核幽遠』と書いてあり下にたくさん文字や図が書かれていた。

 目で文字を追っていくと、一つの単語が目に入る。

 

「『記憶喪失』…?」

「そ、結論から言うって言ったよね、君の彼女、おそらくだけど記憶喪失になるんだよね」

 

 

「EX2非日常」

 

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