BLUERISING 作:影後
ヘイローなし 17歳 筋肉質 雷電フェイス
メインウェポン Mk.23 Mod.0 減音期 LAM 装着
通称ソーコムピストル
サブウェポン グレネードXM84 発煙手榴弾
「セイ、止めて。私は貴方と戦う理由がない」
「理由がないだと?笑わせるな、俺にはある。お前に、刃を向ける理由がな」
ゲヘナ学園の校門前、そこでゲヘナ最強と言われる女生徒と珍しい男子生徒が刃を交えようとしていた。
ゲヘナ最強、空崎ヒナと学友たる陸八魔セイ。
男と女という違いだけではない、セイにはキヴォトスに居る全ての人間が所持しているヘイローがない。
「私は学友傷つけたくない」
「……お前はそうだな。優しい奴だ。でもな」
「セイ兄さん!」
「お前のその選択が、俺を殺すんだ」
ヘイローがあるから理解できない。
何故、銃口が此方に向けてあるかと。
何故、引鉄に指をかけているのかと。
ヘイローがないにも関わらず、何をしているのだと。
「駄目ッ!」
ヒナに弾丸が飛んてくる。ソレだけで彼女の下にいる風紀委員達がセイに向けて弾丸を撃つ。ヘイローがない、そのはずなのに恐怖すらなく弾丸の雨の中を進んでいく。
「セイ兄さん!!」
叫ぶ妹を拒絶し、スモークグレネードをその場に落とす。
煙が晴れる頃にはそこには誰もいない。それどころか、スモークの缶以外、人がいた形跡すら無かった。
(格好いい)
だが、陸八魔セイの残した爪痕は大きいものだった。
風紀委員にして学友の裏切りは波紋を呼ぶ。瞬く間に除籍、退学処分となる。親しい者たちは何故としか言えない。
何故、裏切り者になる必要がある。
何故、その権力を捨てる必要がある。
何故、今までの生活を捨てられた。
いくら、自由と混沌でも自ら何故除籍に。
理由は本人にしか理解できない。結局、人の心は他人には理解できない。
「本人に、リーダーに、アタシ達を導いてくれるのか?」
「俺は見捨てない、だが厳しい生活になる。わかっているな」
「うん、大丈夫」
セイの前には4人の不良生徒がいた。
ヘルメット団になろうとするところをセイが引き留めたのであり、彼自身最初は不良に興味など無かった。
しかし、彼女達も除籍され居場所が無くなったために生きる為に略奪等をしている。セイはそんな者達の受け皿を作りたかった。
6人乗りのトラックと荷台には積載量満杯までの武器弾薬。
「それで、何処に向かってるんだ」
「アビドスだ。そのために荷物もある」
事前に交渉はしてあるため、アビドスも問題なく受け入れる手筈であった。距離はあるが安全地帯等を理解している為、特に問題なくアビドスへは到着できた。
「もう、大半が砂漠に埋もれている」
「アタシの家、前は見れたけど」
そういうのは兎耳が生えた少女である門崎リン。
元はアビドスで生活していたが、ゲヘナに入学した経緯を待つ少女だ。152cmで小柄ながらバレットM82を利用する。
「……やぁ、久し振りだね」
「……ユメ先輩がいた時代に会ったきりだろ」
ショットガンを向けながらニヤニヤとした笑顔を向ける少女。
「それで、彼女達が転校生?」
「リーダー、転校生って!」
「身分が必要になる。お前達はコレからアビドスの生徒だ」
セイはそう言いながらトラックを降りる。
「まったく、9億の借金を4億にしてくれたのはありがたいけどさ。その条件が『君が連れて来る新入生を受け入れること』って言うのは何なのかな?」
「彼女達には導き手が必要だ。アビドスには人手が必要だ。導き手は俺がなる。お前達は…受け入れてやってくれ」
「悪さをしないなら良いけど」
「リーダーと約束したんだ。リーダーが、いる限り私達は」
「何かすれば、責任は全て俺が取る」
「…まぁいいよ。ようこそ、アビドス高等学校へ」
セイ達の受け入れはやはり懐疑的な目で見られた。
しかし、セイ自身が用意した借金返済分と多種多様な弾薬で受け入れだけは容認された。元々、不良達も何かしら理由がある。
捌け口さえあれば問題はないのだ。
「…ねぇ、リーダーはなんでゲヘナの制服のままなの?」
そう言うのは1年生の少女、久遠リナだ。
紫色のショートボブでセイが無駄なことだと言い止めさせたいグロック9の2丁持ちをしている。
「さっき、アビドスに来た手配書だ。俺は指名手配らしいな」
ソレは連邦生徒会からアビドスまで来たモスト・ウォンテッドの書類だ。今、セイはゲヘナだけでなくキヴォトス全域から指名手配犯呼ばわりだ。
「……リーダー」
「まぁ、安心しろ。俺は消えない」
ソレからもセイは傭兵やスパイ活動をしながらアビドスへ新入生を連れてきていた。元々不良だった者達だが、どうやってか改心とはいかないまでも、都市襲撃等はしない程度にはなっている。
現在はそれらの仕事が一段落し、アビドスの屋上で缶珈琲を飲んでいる。
「……」
「あっ」
「お前は…十六夜ノノミ」
「あの!指名手配犯リーダー先輩!よろしくお願い致します!!」
「……おいおい」
「ぷっ……名前、覚えられてないじゃん」
「貴方、やっぱり強い」
ソレはアビドスの3人組だった。
小鳥遊ホシノと砂狼シロコと十六夜ノノミ。
アビドスの実質的な生徒会メンバーであり、新入生の受け入れを容認してくれただけでなく友達として接してくれている優しい女生徒達だ。
「ねぇ、この頃みんなとどうして距離取ってるのかな?おじさん気になるなぁ…なんて」
「……身体にガタが来ている」
「ソレは」
「元々ヘイローがない人間が無理をすればどうなるか。簡単だ、撃たれ、傷つき、肉体は朽ちていく。俺の肉体は限界を迎えている」
ソレは今までのセイとは思えないほどに弱々しい言葉。
だが、その目だけは変わらない。
「…消えるんだね」
「治療だ。どうなるかはわからない」
「わかった、なら新入生は集めないとね」
翌日、ホシノが副生徒会長として朝礼を行った。
「やぁ、みんなが集まってくれて嬉しいよ。でもね、おじさんは悲しいニュースを伝えなくちゃならないんだ。皆の友人、彼が病気の治療でアビドスを去る」
彼、ホシノというかアビドスにとって男は1人しかいない。
その彼、セイが病気という話は誰も知らなかった。
セイと共に来た最初の4人もだ。
「彼は、もう私達の間で名前を呼ぶ事もできない。私達に連絡もできない。立場は知っての通り、モスト・ウォンテッド。最重要指名手配犯だ。でも、彼から受け取った手紙がある。読むよ。
待たせることになる。お前達に、リーダーと呼ばれた事は俺の誇りだ。お前達にも黙っていた事をホシノに話したのは、お前達はきっとを俺を守ろうとするからだ。俺を守る価値は無い。俺は、お前達に言えない事を幾つもしてきた。お前達の生活の為と、悪逆非道を行ってきた。そんな男を守る価値は無い。だが、それでもお前達は、アビドスの生徒は俺の家族だ。アビドスは俺達の家だ。皆、ホシノの言うことを聞くんだ。家を守れ、仲間を、家族を守れ。そして、許せるならもう一度、俺を受け入れてほしい。
……」
ホシノも言葉が出ない。
元不良達は泣くモノや、怒る者と多種多様にいる。
それも、セイの努力。セイが不良だった自分達の心の支えだったと理解しているから来る慟哭だ。
「彼…なんて呼ばないよ。陸八魔セイ、セイ君の居場所は何処か。ソレはここ、アビドスさ。セイ君は転校生なんだからね」
ホシノは一度言葉を止めた。
「戻ってきたら、祝ってあげよう!退院、おめでとうって」
だが、1ヶ月、4ヶ月、そして1年が経ってもセイは戻らない。
それどころか、音信不通であり誰からの連絡も届かなかった。
だが、アビドスに連邦生徒会から一つの小包が届いた。
中には包帯に巻かれているミイラの写真とボイスレコーダーが入っている。
ミイラの顔半分は出ており、見覚えのある顔が見えている。
「ごめんね、おじさんからの連絡だよ」
ホシノは放送室に向かうとボイスレコーダーを流す。
「長い手術期間が終わった。やっとそっちへ戻れそうだ。
ゲヘナどころか連邦生徒会の最重要指名手配犯であるにも関わらず連邦生徒会のお膝元D.U.に居ると言うのにバレていない。近いうちに戻る」
「聞こえたと思うけど、セイからのメッセージだよ。近いうちに戻るって。判ると思うけど他言無用だよー」