BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_5

ミレニアムサイエンススクール。

その奥の奥、誰も知らないその場所で否、一部の生徒しか知らないその場所で脳がぷかぷかと水の中で浮いていた。

 

「まさか、ドクターが居るとは」

 

脳の前にはモニターがあり、デフォルメされた雷電が喋っている。それを見つめるのはミレニアムの生徒一人と雷電いや陸八魔セイの生命を救ったドクターAED。そして、便利屋のメンバーだ。

 

「本当にお兄ちゃんなの」

 

「見せたくなかったな。俺の肉体はガタガタでな。生命の前借りしすぎて余命が無かった。というか、カイザーの罠にかかって変なウィルス兵器投与されてな。正直、死ぬ寸前だった訳だ」

 

「そこで、この男は生きる為にミレニアムの闇にいたワシを頼った。言うが、ジジイじゃない。オジサンだ。良いな?」

 

「ドクター……その見た目でオジサンは無いだろ」

 

アルの視線の先にはシワクチャの顔をした老人がいる。

オジサンという容姿ではない。

 

「…なら。セイ、久し振り」

 

「カヨコ、久し振りと言うかこの前会ったくせに」

 

そう言いながらも雷電は手を振る。

ゲヘナ所属の頃から学友との仲は決して悪くない。

 

「しっかし、マッドサイエンティストの私をよく見つけたものだね」

 

「陸八魔部長がもし、自分に何かあればとピックアップしていたのが貴女だったんです。調月リナ、セミナー所属リオ会長の双子の妹。バイオニクスとサイバネティクスの権威。元エンジニア部所属。人間のクローニングに手を出そうとし、ミレニアムいえ、C&Cの監視対象。まさか、こんなところに研究室があるなんて」

 

「此方としては誘拐と言う体裁を取ってくれたから感謝しているさ。まさか、我が導きの師たるAED博士とも再会できた」

 

「まったく。それで、雷電。お前の肉体は」

 

「初戦闘でグレネードと軍用ミニガンの攻撃。12.7×99で何度も撃たれた。刀にも慣れてなかったしな。ボロ負けだ」

 

「……訓練させるべきだったか」

 

雷電は負けた戦闘を事細やかに話す。

それをAEDとリナはコンピューターにインプットしていく。

 

「……強化外骨格を改めなければな」

 

「あのー、セイ先輩ってどういう状況なんです?」

 

そう聞いたのはムツキだ。ある意味、きちんと聞きたい情報なのだ。

 

「言うなれば、脳だけが生きてる。この液体は特殊なものでな。酸素の供給のホワイトブラッドの変わりなっている。ホワイトブラッドとは人工血液でな。雷電に流れる赤い血の変わりだ」

 

「……修理には時間はさほどかからん。3日程だ」

 

「え?私達はその間」

 

「ご安心を、便利屋68の皆様にはミレニアムでホテルをとってあります」

 

「え?私は?」

 

「リナ、お前はワシの助手だ!手伝え!」

 

「嫌だ!私もホテルに泊まりたい!」

 

「………わかりました。オジサマも含めての予約に変えておきます。お金はご安心を、カイザーの銀行から自動引き落としにしてありますから」

 

アルは瓶底メガネの後輩に恐怖を憶えた。

端末を一瞬だけ開き、全て完了させたのだ。あまりにも異常すぎる。

 

「ねぇ、セイ。彼女、何処から連れてきたの?」

 

「連れてきたのって……勝手に付いてきたとしか」

 

雷電はルナの過去を知らない。撤退しようと来た時、

 

「貴方の姿に憧れました。私を、貴方の下僕にしてください」

 

と言いながら来たのだ。しかも、ゲヘナからアビドスへの転校手続きも偽造して。

 

「言ってませんでしたか?コレでも、ゲヘナ情報部の出身です。ハッキングなんてそこらの生徒よりも出来ますよ。まぁ、セイ先輩には勝てませんでしたが。」

 

「嘘だろ、お前情報部だったのか?」

 

「はい、陸八魔セイ先輩。私はかつて風紀委員会として活躍した貴方に救われ、風紀委員会に所属しようとしましたが、何故かゲヘナから消えていました。ですから、貴方を探す為に情報部に入ったのですが、セイ先輩はハッキング一つ痕跡をまるで残さない。しかし、そんな先輩がゲヘナ襲撃を仕掛けてきた。私は運命だと感じました!あぁ、この再会は神の思し召し。私はこのお方に仕えるため、此処にいると」

 

デフォルメされた雷電の顔が苦笑いしている。

アル、ムツキ、カヨコもえっ?という顔をしているがハルカのみウンウン!という頷きをしている。

 

「お話中悪いが、雷電はもうすぐシャットダウンする。つまり、寝る時間だ」

 

「おいおい、ドクター。それは……」

 

「黙れ、脳だけというのを忘れるな」

 

そう言うとデフォルメされた雷電が消える。

 

「…兎に角。ワシと助手の昼は雷電の修復だ。お前達はミレニアム観光でもしていろ。ただし、言うが問題を起こすなよ。雷電は……いや、陸八魔セイはモスト・ウォンテッド。お前達よりも恐ろしい立場にいる。捕まれば、最悪処刑だ」

 

「「「?!」」」

 

「キヴォトスで人殺しは無いが、サイボーグはわからん。此奴の立場は色々と悪すぎる。お前達の行動でC&Cに目をつけられるなよ。変装は忘れるな。常にだぞ」

 

 

 

 

ミレニアムで雷電の再生が行われている頃、アビドスの方はいささかな問題が発生していた。

 

「「ママ!」」

 

「ひぃん?!私はママじゃなくて」

 

「……オジサン、ドン引きなんだけど」

 

元不良達はきちんとした身嗜みで銀髪セミロング。

今ではこれがアビドス生徒=アビドスモブの正装となっているが、その生徒の一部。先生によって生徒となった不良達が、先生を〘ママ〙と言いながら追いかけているのだ。

 

「ホシノちゃん助けてぇ!」

 

「?!」

 

声は似ても似つかない。だが、その姿、その泣き方。

それは何処か酷く懐かしく、心を抉られる。

 

「はいはい、先生に迷惑かけない!オジサンも怒るよ?」

 

「はい…副会長」

 

「「…ママぁ」」

 

「大丈夫だよ、後でお話しようね!」

 

世界の闇を知らない顔、自分が憧れ守れなかった人と同じ顔。

その人に成ろうとした為に、雷電の言葉に頷けない。

正直、わかっている。借金を返すのに形振り構っていられない。

自分ではない、以前の生徒会が行った事とはいえそれを引き継いだ限りはやるしかない。

 

「……でも、雷電しか駄目だった」

 

自分ではできなかった。雷電が借金を半分にした。

雷電の言葉を、自分は棄て去った。

雷電の手を取れば、今後輩達に負の遺産を残す必要は無かった。

そう、今困窮しているのは自分の選択のせいだ。

 

「……ちっ」

 

舌打ちの一つもでる。あの人から受け継いだのに。

救えなかったのに、自分は何もできなかった。

だが、雷電は、陸八魔セイはどうだ。

ヘイローが無く、それでも誰よりも動いていた。

最初は、アヤネやセリカといった1年生達は雷電の行ってきた事に懐疑的だった。しかし、その目的がアビドスによる社会復帰という目的だといえばすぐに変わった。

実際、雷電は連れてきてから全て任せるのではなく教育者として誰かを雇ったり、自らが教えたり、更には生活環境も整えた。

なのに、自分はどうだ。小鳥遊ホシノ。

お前は何をしている?アビドスで、副会長?肩書だけだ。

対策委員会?なばかりだ。PSC産業たるマグノリアは雷電が立ち上げ、アビドスで一番の稼ぎ頭だ。

他は賞金稼ぎや警備。この警備も始めは役に立つものでは無かった。雷電が持ってきたアレがあり、今最大の効力が得られている。

 

「ねぇ、セイ君。なんで……君は」

 

そう、呟いた時。ふと、かつての会話が思い出された。

 

「お前が光なら俺は闇だ。お前はあの人を受け継いだ。俺は、あの人を受け継いだお前を支える。今のアビドスに、光は必要不可欠だ」

 

「へぇ…オジサン。セイなら色々出来ると思うけどなぁ」

 

「そうだ、だから俺がやるのはウェットワーク。表に出せない事を全て俺がやる」

 

「待って…駄目、そんなの……そんなの誰も」

 

「…俺は2度救われた。ホシノ、お前にな。1年生の時、俺はお前とあの人。いや、ユメ先輩に救われたんだ。砂嵐に巻き込まれ、装備を全て失くした俺を救ってくれた。そして、2年の時だ。俺は指名手配犯ながらお前は受け入れてくれた。お前は、少なくとも、俺、シロコ、ノノミは救ったろう」

 

雷電は自分の胸程度しかないホシノの頭を優しく撫でる。

 

「…チビって言いたいわけ?打つぞ」

 

「ふっ…素が出るな。だが、それで良い。無理に成ろうとするな。無理に変わろうとするな。お前は梔子ユメじゃない、小鳥遊ホシノだ。忘れるなよ、人は簡単に変われないんだ」

 

まるでいもの様に撫でられたのは未だに怒りが湧いてくるが、それはソレとして激励には違いなかった。

 

「…まぁ、変われないんだとか言った本人がサイボーグになったらねぇ」

 

ミレニアムで修理らしいがどうだろう。自分も心配しているぞ。

と、心に思い浮かべながらアビドスの家族が帰ってくるのを待つのだ。

 

「あっ!ホシノちゃん!ひぃん…助けてぇ」

 

「……今度は何ですか」

 

不意に昔の口調に戻ると今度は何処から現れたのかわからない野良猫に囲まれる先生だった。

 

「にゃぁ」「にゃ~」「ニャー」

 

「……なんで」

 

もしかしたら、先生はユメ先輩よりもわからない人なのかもしれない。その言葉を口に出す寸前にのみ込み、猫の群れから先生を救出するのだった。

 

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