BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_7

「くそ……あのゴミども何度も何度も…陸八魔セイとして今度は奴等にテロ仕掛けるか?ドロイドだから毒は無理だが……そうだな。ウィルスで同士討ちさせるか?……使えるな、奴等は機械だ。価値のない命」

 

「……おっ…お兄ちゃんが……怖い」

 

ハンヴィーの中でアルは涙目で震えていた。通信機越しに聞こえてくるソレは普段の優しい兄とは違い、復讐と怒りと憎しみに塗れ、まるで世界を焼き尽くさんとしているようだ。

 

「セイ、社長が怯えてる」

 

「でもな、カヨコ。カイザーって醜くないか?生かす価値はあるか?俺だけじゃない、前回もだ。奴等は俺を一人を狙わない。誰かが巻き込まれる。……俺は生徒同士なら別に撃たれても良い。いつもの事だ。だがな、カイザー関連なら許せない」

 

ドロイドキラーを整備しながら雷電は言う。

ムツキは幼馴染かつ、兄的存在のせいで壊れた車内の空気をどうにかしようと話題を変えた。

 

「そっ…そういえば、さっきスナイパーライフルを持ってて」

 

「そっ…そうよ!お兄ちゃん、いつもハンドガンかライフルで」

 

「カイザーのスナイパーが持ってた。所持者は……バラバラだがな。此奴でコブラのロケット砲を撃って破壊した。ドロイドが持ってきた武器をでドロイドを殺す。ドロイドキラーだ」

 

「はわわわわ」

 

(ムツキ室長!余計にひどく?!)

 

(アルちゃんごめん!)

 

(アル様すみません)

「そういえば、御兄様。幼い頃のアル様は」

 

「わー!ちょっと!ソレは」

 

「……泣き虫で、いつも虐められていた。その度にムツキに助けられ、俺が虐めた奴等をしばいた。でも……決して弱虫じゃ無い。アルは昔から勇気があった。怖くても、それを教え込んで困難に立ち向かう。虐められていたのも、元々虐められた子を助けたのが原因だ。見て見ぬ振りをする中、アルは助けた。無論矛先はアルに向く。でもな、アルは俺には話さなかった。ムツキから知らされ、俺はいじめっ子を再起不能にした。ヘイローを砕いて、絶望を与え…いや与えようとした。でもな、アルは自分を虐めていた生徒の前に立って俺を止めたんだ」

 

「懐かしいね……お兄ちゃん!駄目!私の為に怒らないで!私の問題は私のもの!これも、私のモノ!」

 

「そう言って手当てしていたんだ。アルは、敵だろうと見捨てなかった。救う為に俺にも立ち向かう。アルは、人にない優しさを、勇気を、そして皆を惹きつけるカリスマがある」

 

「え……あ…………」

 

顔を赤らめながらも、撫でられるアル。

 

「私も知ってます、だってアル先輩はセイ先輩の妹ですもの。弱者を救い、自分の選択で戦えるアウトローでありヒーロー」

 

「はい、アル様は私にとってヒーローです」

 

「ちょ……こっ!こんなのアウトローじゃ」

 

「良いんじゃない?アルちゃんのカリスマだよ!」

 

「うん、そうだよ」

 

便利屋68は陸八魔アルが紡いだ絆なのだ。

雷電が、陸八魔セイが持たない絆の力。

 

「…皆さん!お話は終了です。アビドスが見えてきましたよ」

 

かつては砂漠に埋もれた校舎も今では清掃が行き届き、最低限の砂がある程度。帰還の連絡もしていないにも関わらず、隊列を組んだ生徒達。機甲部隊。ハンヴィーとトラックが公道に入ると、空砲が祝福するように続いていく。

 

「……凄ッ」 

 

「アル様を狙ってるなら」

 

「ゲヘナじゃ絶対に見れないね」

 

「お兄ちゃんの為よきっと!」

 

「……ホシノ副会長ですか?面倒な事を」

 

ハンヴィーと雷電のトラックが定位置に停車する。

運転席からゆっくりと降り立つと、拍手と歓声が沸き上がる。

 

「「雷電先輩!おかえりなさい!!!」」

 

「……ただいま。ホシノ、俺は帰るなんて伝えてないぞ?」

 

「うへぇ…昨日アレだけ戦闘したのに見られてないと思ってたの?おじさん呆れちゃうよ」

 

そう言われれば仕方ない。確かに大規模な戦闘を砂漠でしていた。遠距離から監視されていたとしてもおかしくはない。

 

「兎に角、謝りたいって生徒が居るんだけど」

 

「………」

 

「ニノ、俺はお前達を憎まないし、怒らない」

 

雷電は固くなった身体でニノを抱き寄せる。

 

「……リー…ダー……私………私リーダーを」

 

「俺はもう、心臓の鼓動が無い。お前の言った通り機械だ。残ってるのは脳だけ。他は全て人工臓器。だが、構わない。俺は…お前達を見捨てない。アビドスもそうだ、その為に俺は人間を辞めた。俺は死を恐れない、お前に、そして、アビドスに、家族に誓おう。俺の命は俺のものでは無い!俺に命はない!だが、俺は戦おう。お前達の未来に幸ある為!」

 

 

 

という事をしたのが2日前、今雷電は何故か硝子細工を作成していた。というのも、自分が死んだ時を考えると遺品が高周波ブレードやトラックとなるのがなんとなく虚しい為だ。

アビドス高等学校から東に100m程した場所。

そこが雷電の工房だ。

 

「やぁ雷電入るよぉ……うへぇ…動いてないのに暑い」

 

「先生か……少し待ってくれ」

 

「……硝子細工、沢山あるね。……おかしくない?2日間でこれだけの量?」

 

「外のは知らん。キヴォトスの不思議パワーだと思え。兎に角、元々アビドス砂漠の砂は特殊なものらしく不純物が限りなく低い為か、硝子細工が有名だったらしい。盗んだとしか言えないが……なんというか1日程度で覚えられるこの体は都合が良い」

 

そう、雷電は知識がある。

調べるだけでどれをどの様にすればよいかが分かるのだ。

硝子細工にしても、本来なら何年もかけて習熟する技術を即座に使える。

 

「……終わった。後は冷やすだけだ」

 

先生を作業場ではない、休憩スペースに通す。

 

「……クジラだ」

 

「シロナガスクジラだ、好きな生徒が一人いてな。他にも魚類、爬虫類、両生類、哺乳類、甲殻類、昆虫はまだ作っていない。

ガラスの水族館だ。どうだ、良いだろう?」

 

「ねぇ、雷電。アビドスの借金が急に一億円まで減ったの。

それどころか、利子も300万以上の請求を金輪際しないっていう誓約者もカイザーローンから来た。…何をしたの?」

 

「何もしていないさ、返済を頑張ったんだ。皆がな」

 

「ううん、ホシノが言ってたよ。雷電が何かしたんだ、でなくちゃこんな事にはならないって」

 

「知らんな、知っていても貴女に話す必要があるのか?俺は生徒ではない。立場は一般人、シャーレに所属もしていなければアビドスの1講師、用務員、保健教諭、戦略兵器、硝子細工師、不動産屋にすぎない」

 

「……シャーレの先生である私が言うのもおかしいけど、肩書多いよね」

 

「……なんというか、そうだな。まぁ、よし先生手伝え。硝子細工を運び出すぞ」

 

「え?何処に」

 

「アビドスだ、空いている教室をガラスの水族館にする」

 

雷電は作製した硝子細工の魚たちを学校に運び入れた。

 

「うわぁ…うわぁ!雷電!雷電!これって」

 

「お前がクジラが好きだったと思ったからだ。リアル調ほザトウ、シロナガスそしてこれはお前の持ってるぬいぐるみのクジラくんゴフッ?!」

 

「なんで!知って!るの!」

 

「おま……強化外骨格だぞ!それを生身で?!」

 

「なんで知ってるか聞いてるの!」

 

「お前の先輩からだよ!写真と一緒にベッドで寝てるお前のゴフッ」

 

「死ねッ!」

 

「IRONHORUSだと?オーパーツには装甲が……おかしいだろ。ナノマシンで硬化までしているのに」

 

「ホシノちゃん!落ち着いて!ユメ先輩は黙ってて下さい!今はこの学者キチを成敗」

 

その時、先生がユメって?と答えた。

不意に背中を向いて立っているのはユメ先輩ではなく先生。

 

「あはは……先生ごめんねぇ…おじさん混乱しちゃって」

 

「……死人は蘇らないぞ。ホシノ」

 

「………黙って」

 

「まぁ良い、この部屋は硝子の水族館にする。文句はないな?」

 

「良いよ、雷電が自由に使って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲヘナ救急医学部が担当している病院にて、万魔殿の会長たる羽沼マコトは目を覚ました。

最初の一言は忌々しそうな顔をしながら

 

「ヒナを呼べ」

 

であったのだ。

 

 

 

 

「それで、マコトが私を呼び出すってどういう」

 

「実に…実に不愉快だが、お前の元同僚に宣戦布告された。しかも、奴は……陸八魔セイは雷帝の遺産を狙っている!まだ見ぬ雷帝の遺産だ。それがアビドスにある、奴はそう言った!」

 

「まさか……セイは二度と雷帝と関わることには」

 

「………イブキまで苦しめたんだぞ!イブキも!私ならわかる!はっきり言えば奴に対しても嫌がらせはしてきたからな!だがイブキいや……ゲヘナ全域に奴はバイオテロだ!原因不明の発熱、ソレは奴が水源にウィルスをばら撒いかからだ!」

 

「待って……ソレじゃ」

 

「いや……ワクチン剤も流した筈だ。現に!我々以外にもういない。ヒナ、奴を捕らえろ。アビドスに迎え。羽沼マコトとしてじゃない、万魔殿の主、ゲヘナ生徒会長としての言葉だ。幸い、万魔殿のメンバーも回復してきている!良いな、生かして捕らえろ!両手両足が無くても構わない!雷帝の遺産は……残してはいけない!雷帝の右腕も!存在してはいけないんだ!」

 

マコトの言葉にヒナは頷くしかない。

いつもの馬鹿ではない、今のマコトは万魔殿の主として話している。

 

「わかってる、セイをお引き出す餌ならアビドスにいる」

 

ヒナは静かにそう言うと風紀委員会の部室に戻る。

 

「アコ、風紀委員会を、全員集めて」

 

「え?ヒナ委員長?!」

 

「……アビドスを落す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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