BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_8

雷電は校門を掃除しながら生徒達に囲まれていた。

 

「それで?俺がいない間にセリカが家出か、理解できなくも無いがそれでヘルメット団と戦闘になって…しかも、ブラックマーケットに銀行強盗……おいおい」

 

「帰ってきて早々硝子細工しにいった先輩に言われたくないです!」

 

そう、雷電は休日だっという事で近況報告等を受けずに硝子細工を行い、ホシノとの会話だけして他の生徒とのコミュニケーションは一切行っていないのだ。

 

「しかしアハト・アハトが直撃か。今の俺でも破壊される。良く生きてたな」

 

「骨が折れるかと思いましたけどね!」

 

「どぉどぉ……シロコは何かあるか?」

 

「ん……特にない。強いて言うなら、雷電先輩も一緒に銀行強盗しよう。先輩」

 

「ソレは近況報告とは言えないな。安心しろ、カイザーの銀行なら好きなだけ襲わせてやる」

 

「!ん!!!言質取った!」

 

「雷電先輩!シロコ先輩に何を言ってるんですか!」

 

「……アヤネ、いや……良い。お前はあるか?」

 

「私もですね、言えるなら今のアビドス生徒は総勢200名を超えています。しかし、食事等は先輩のおかげで一切の問題が起きていません」

 

「……金に物を言わせた甲斐があるな。ノノミは」

 

「ホシノ先輩と言い争いでもしました?今朝から」

 

「ノーコメントだ、ノノミ。大人の会話だ、子供が聞くべき話じゃない」

 

「ちょっと雷電先輩!それって」

 

「強いて言うなら、そうだな。借金が一億で利息は300万から絶対に増えない」

 

雷電がそう言うと皆が顔を青ざめる。

 

「リーダー、何したんですか!」

 

「ぐぉ……何故こうも生徒は力が強いんだ」

 

タエルが雷電の両肩を掴みぐわんぐわんと揺らす。

だがそれでも話さない。

 

「仕事だ、仕事。個人的な物だ、カイザーの重役に近しい立場の人間……人間か。と契約してな、場合によっては護衛してくれとか言われる」

 

「……リーダーは身売りし過ぎだよ。私達も」

 

「リン、上が動くから下が動けるんだ。それに、今回の契約は俺個人の意思でありアビドス借金は俺は関知してない。報酬の形だ」

 

「リーダー、私達はまだ貴方の隣に立てないんですか?」

 

リナの言葉に真顔になりながらも雷電は話す。

 

「隣に立つ?何を言う、高周波ブレードを使う戦闘の場合俺は基本的に単独戦闘だ。隣に立つのはライフルや銃火器を所持した時の分隊戦闘だ。その場合、チームは俺、タエル、リン、リナ、ニノだろう。今更何を言っている、というより他に組める生徒は居ないはずだが?お前達は嫌なのか?」

 

「いえ……リーダーからそう言われると」

 

「それに、ルナと同じでお前達は俺の知られたくない後ろ暗い秘密を知ってるからな。俺の私兵だ、そう簡単には逃がさんぞ」

 

「雷電先輩、私兵は無いと思いますよ?」

 

「アヤネ、色々あるんだ。ソレこそ、そう切っても切れない絡み合った絆がな」

 

放課後、雷電は変わらず自由に過ごしている。

校舎の掃除をしながら砂を集め、硝子にする。

学校の窓ガラスも全てアビドス砂漠産の砂にすれば現地調達というか、産地直送と言うか兎に角使えるだろうという考えもある。

 

「リン…そう言えば、連邦生徒会に同じ名前の奴が居たな。直接あった事は………」

 

「こんにちわ」

 

「黒服さんよ、ホシノに見られりゃ不味いぜ?」

 

「いえ、直ぐにホシノさんは連れ出す予定です。私としましては貴方にも死なれては困るのですよ。契約者としてはですが」

 

黒服は缶コーヒーを飲みながら雷電と会話する。

 

「死ぬ?俺が?」

 

「あと10分ほどでゲヘナ風紀委員会が全力でアビドスへ攻撃を開始します。目的は不明ですが」

 

その時、学園の付近から爆発音と共に煙が上がった。

 

「想定より速い?何故だ」

 

「……感謝する」

 

黒服に感謝すると静かにコンテナへ歩き出す。

中にあるのはゲヘナの制服、そして風紀委員会の肩章だ。

 

「ソーコム、M16、PSG1」

 

「雷電!いま、柴石ラーメンの位置が爆発して」

 

コンテナの外から先生の声が聞こえる。

だが、今雷電として動くわけにはいかない。

今だけは自分のもう一つの立場で戦う必要がある。

 

「…先生、俺は今両手が整備中で戦えない。治り次第援軍に行く。彼奴等を頼む」

 

「わかったよ!何とかしてみる!!」

 

「……風紀委員会全軍か。俺か……それともアルか」

 

右腰のホルスターにソーコムを入れ、左肩にPSG1、右肩にM16を背負う。視界不良になる事を理解しながらも、右目に眼帯をつけ生きていたように装う。

 

「……頼んだぞ、アビドスいや……お前達」

 

最後に愛刀の入ったガンケースを持ち、セイは砂漠の都市へと入った。

 

「今回の我々の目的は便利屋68のメンバーの確保にあります。

アビドスの方々にもは申し訳ありませんが、銃を引いてもらえませんか?」

 

「そんなの!民間人に火砲を向けて」

 

「…我々は今容赦をしている余裕はありません。炸薬も減らし、直撃もしなかった。多少の怪我はしたでしょうが、ゲヘナの救急医学部は優秀です。賠償も払いましょう。アビドスの方々に対しても、我々の行動に目を瞑っていただけるのでしたら、後ほど謝礼金をお支払い致します」

 

「ふっ…巫山戯ないで!他校の自治区に…しかも、大軍で来るだなんて」

 

「えぇ、侵略行為に等しいです」

 

セリカとアヤネがそうホログラフに映るアコに言う。

だが、アコは淡々と言葉を述べる。

 

「そのもの達を確保できれば、ある男が逮捕できます。皆さんの知っての通り、陸八魔セイ。そこにいる陸八間アルの実兄です。

奴は、一週間前ゲヘナにてバイオテロを行いました。幸い、死傷者は居ませんでしたが、未だに峠を迎えている生徒がいます」

 

「……先生、お願いします。今は手を引いて下さい。陸八魔セイを捕まえるために、便利屋が必要なんです!先生を理解しているはずです!陸八魔セイに撃たれたんですから!」

 

シャーレ奪還作戦の際、チナツとは顔を合わせていた先生。

その通りだ、先生は雷電=陸八魔セイという事を知らない。

陸八魔セイという存在を捕まえるべきという気持ちはわかる。

 

「巫山戯ないで!バイオテロ?お兄ちゃんがするわけないじゃない!あのガスだって結局ドッキリよ!少なくともね、カイザークラスの敵じゃなければお兄ちゃんは殺さないわよ!」

 

便利屋68、短い間ながら柴石ラーメンで話した限り嘘を付く人ではない。

 

「……巫山戯ないでよ。バイオテロ?陸八魔先輩が!そんな事するわけ無いじゃない!」

 

「ん……セイ先輩はしない」

 

「まって…セイ先輩ってどういう」

 

「陸八魔セイ先輩、セイ先輩……そうですか。都合が良いですね。彼奴はアビドスにいる。なら、仕方がありません。全軍、攻撃を開始。陸八魔セイを引き摺り出しなさい」

 

アコの号令と共にアビドスにて大規模な銃撃戦が始まった。

アビドス対策委員会の他にマグノリアの残存部隊とパトロールしていた機甲部隊が参戦すると先生のオペレートがあっても戦況は泥沼となる。戦車には戦車とゲヘナ風紀委員会側も機甲部隊を投入、塹壕も無い戦場で数はゲヘナ風紀委員会が上。しかし、先鋭〘ネームド〙はアビドス側が上だ。量と質による戦争が今起こっている。

 

「便利屋の君達は逃げなくて良いの?」

 

「お兄ちゃんは指名手配犯だけど、バイオテロなんてしないわよ!」

 

「うん、それにセイさん。私達のパトロンだし」

 

「アル様の敵…死んで下さい!死んで下さい!!」

 

「…セイなら多分」

 

カヨコがそういった時だ。ゲヘナ風紀委員会の側面から激しい爆発音が響く。

 

「あっ!」

 

「流石元SRT」

 

量側面に展開していたのはアルファとブラボーだ。

廃ビルという高所から対戦車猟兵として活躍している。

 

「アルちゃん!スナイパーなら出来るよね!」

 

「まっ…任せな『せい』!」

 

「『さい』だよ!」

 

急に不安になってくるが、アルはマグノリアのスナイパー部隊と共に狙撃をしている。

 

「……面倒な。ヒナ委員長に」

 

アビドス組はわからない、しかしその言葉でゲヘナ組は理解する。

 

「うそ!風紀委員長まで」

 

その時だった。付近のありとあらゆるスピーカーから声が聞こえる。

 

「戦車小隊、もう少し練度があった方が良い。仲間の顔も覚えてないとは」

 

ドローンが現れホログラフを写す。

ソレにはボロボロにされたゲヘナ風紀委員会の戦車小隊が居た。

ヘイローは消え失せ、一人一人を倒したという証明のように横並びになっている。

そこにソーコムを構えた男が銃口を向けている。

 

「……来いよヒナいや……ゲヘナ風紀委員会の諸君。早くしないと」

 

その瞬間、銃声が響いたと同時にホログラフが消えた。

 

時間は少し戻る。

戦闘用サイボーグとしての身体能力を使い、雷電はアビドスビ廃ビルの屋上に居た。軽く50mはあったビルだが、人口減少に伴い

中には何もない。

 

「……戦闘は始まっているのか」

 

視覚の倍率を上げながら、ゲヘナ側を見る。

左目で全体を見渡し、右目で一部分だけを切り取り確認する。

サイボーグとなった今だから出来る芸当だ。

 

「……数が多すぎる」

 

ゲヘナ風紀委員会はゲヘナ最大の武力組織である。

万魔殿も存在しているが、総力で言えば風紀委員会の足元にも及ばない。ソレはNATO式部隊表示と同じであり最大数たる1000人で編成されている。基本的に治安維持であり、防衛戦、制圧戦がメインだが武力自体は高い。

旧ドイツ軍装備を利用しティーガーⅠだけでなくIV号戦車。

兵員輸送車等も利用している。

 

「……砲兵隊が面倒か」

 

戦場において女神とは砲兵隊の事である。21cm砲が多数配備され、それらが雨あられと降り注ぐ。アビドス側の迫撃砲は905mm軽迫撃砲。射程も火力も劣る。

 

「……訓練課程が増えるな」

 

幸い砂漠はある。面倒な蛇が居ることを除けば最高の立地だ。

獲物だってある。

 

「……」  

 

PSG1のサイトを覗く。

手ブレは絶対に起こらない、弾道の予測と風向きのみ計算し引鉄をひく。サプレッサーもあるため、マズルフラッシュも抑えられる。ゲーム等ではサプレッサーを装着すると射程や威力が低下するが、本来ならサプレッサーを装着することでバレルが延長されるため、その分射程は伸びる。また、弾丸の威力もむしろ上がる。そして、発射音も抑えられるのでゲームの様なデメリットは本来は存在しない。

 

「……一人」

 

仲間が倒れた事で狙撃されていることに気付いたのか通信機を使おうとした砲兵の腕を撃ち抜く。雷電は未だに考えている。

ヘイローによる保護は何処まで有効なのかと。目に撃たれた場合どうなるのか、鼻の中や口の中に撃たれた場合どうなるのか。

耳など柔らかい部位はどうなるのか。

腕はヘイローに守られていても骨が折れたのか悲鳴を上げているように見える。

 

「……アレが通信兵か」

 

通信機も壊れているのか使えていない。

伝令しようとした生徒の足を撃つ。やはりダメージは特にない。

機械とも違いヘイローの防御力は恐ろしい。

 

「……」

 

気を取り直し、再び頭を狙撃する。

伝令は倒れ砂漠に埋まる。だが、それがいけなかったのか砲兵隊が騒いでいるように見えた。重迫撃砲の方向が変わる。

砲身の向きは自分だ。どうやら狙撃の大まかな位置がバレたようで、潰すために迫撃砲を撃つようだ。

 

「……は?」

 

その時だ、スコープ越しに見覚えのある制服と姿をした人物が現れる。ヘイローがない。ソレだけで理解できる。イヤーカフは無く、人間の耳があり自分にも劣らぬ身体能力で砲兵隊を制圧した。そして、ニヤリとまるで位置がわかっているかのように笑う。その顔はよく知るものだ。

 

「………何故」

 

そいつは更に戦車小隊を血祭りにあげた。

そして、まるで雷電が喋っているかのようにアコを煽る。

雷電は走った。ヘイローが消えた生徒に対して銃口を向け始めたからだ。雷電は生徒を殺さない、仲間だから。

雷電は足にエネルギーを優先して送る。ソレだけで、速度は車すら越えるものとなる。50mの落差も気にもせず、そのまま地上を走る。

 

「よせぇぇぇ」

 

片手で発射されるM16A4。

一切のブレがなく、的確に男に撃たれる弾丸。

胴体だけでなく頭まで撃ち抜き、殺した筈だった。

 

「……ハァ…」

 

だが、男は舌舐めずりをしながらヘイローの消えていない生徒の首を掴み持ち上げる。そして、首元に喰らいついた。

 

「……ぁぁ……」

 

ヴァンパイアの様に血を吸っていた。

吸い終えたのか、生徒を捨て別の生徒に向かう。

 

「やらせるか!」

 

「速かったな、陸八魔セイ」

 

「………終わりだ!」

 

M16A4を撃つが、ナイフで全て弾かれる。

同じことを雷電は刀で行うが、冗談ではない。

 

「………」

 

「消えた?」

 

気配が消え、雷電は風紀委員の手当てを行う。

 

「………陸八魔先輩」

 

「喋るな、止血はできてる!」

 

「……ほら、意識を…意識を保つんだ」

 

「……みん…なは?」

 

「大丈夫だ、あのヴァンパイアは消えた。直ぐに救急医学部に送ってやる。だから……死ぬな。頼む……俺の前で死なないでくれ」

 

雷電は流れない涙を感じながら必死に止血を行う。

基本的に弾丸で怪我を負うことは無い上、受けても青痣程度。

戦車の中の応急キットも対処できない。

 

「先輩………あり……」

 

「あっ……俺は…………今度は……俺も居たのに………」

 

「陸八魔セイ、何をしているの」

 

「………ヒナか…頼む……この子を……セナも居るんだろ!セナも!直ぐに…直ぐに呼べば彼奴なら」

 

「貴方が殺した。貴方が……血を吸っていた」

 

「違う!俺じゃない!俺は………俺は…………」

 

雷電の前にあるのは生徒の亡骸。先程まで生きていた。

かつて、大切だった人は自分が知らぬ間に死んでしまった。

だが、今この生徒は自分が、雷電が居たのに救えなかった。

 

「……陸八魔セイ。ゲヘナ風紀委員殺害およびバイオテロの容疑で逮捕する。後程、ヴァルキューレにも」

 

「危ない!」

 

雷電はヒナを救おうと突き飛ばす。

 

「抵抗は」

 

突き飛ばされたヒナは尻もちを付くが、すぐ顔を上げて言葉を失う。雷電の心臓のある位置に刃、ブレードが刺さっていたのだ。

キヴォトスでは見ることのない武器、ソレを伝い白い血が滴り落ちる。

 

「久し振りだね!セイ君!」

 

「お前!」

 

雷電は右腰のソーコムを即時に連射した。多少のダメージを受けたのか女性は身を引き、ブレードを構える。

その一瞬でヒナを立ち上がらせ、雷電は再びソーコムを撃つ。

 

「無駄だよ!」

 

しかし、放った弾丸全てがブレードによって斬り裂かれ散っていく。

 

「……あら………ユメ先輩。殺し損ねたのね」

 

「ごめんねぇ…ヴァン君。まさか、セイ君が同じだなんて」

 

雷電は脳みそ状態だった時にドクターから秘密裏に話された事が頭をよぎった。

 

「雷電、実はな。お前の身体が消えたんだ」

 

「身体が消えた?いやアンタが改造して」

 

「違う。やはり手術の影響か全てを思い出せていないか。

お前は単身、カイザーの研究所に侵入し敵に謎のウィルスを投与された。感染の疑いは無かったが、寿命に近い状態だ」

 

「………確かに、身体にガタが来てたのは覚えてる。それで?」

 

「手術後、お前の肉体は必要なくなる。それでな、梔子ユメの隣に埋葬してくれと言ったのだ」

 

「………自分のことながら随分と重いな」

 

「続けるぞ、その、埋葬した筈のお前の遺体が掘り返され消えた。アビドスはカメラもない、犯人は不明。更にだ」

 

 

 

 

 

 

「俺の身体とユメ先輩の身体を……掘り返しやがったか!」

 

「うん!そうだよ!科学って凄いよねっ、ほら私こんな元気だ」

 

「セイ……これって………」

 

「あぁ…ヒナ風紀委員長だっけ?私はアビドス生徒会長の梔子ユメだよ。隣は」

 

「始めまして……ゲヘナのバカマコトとはこの前会ったけどアンタとは会わなかったね?俺の名前はヴァンプ。よろしくね」

 

「まぁ…後ろは見てないみたいだね」

 

雷電が振り向くとそこは血の海だった。

黄土色の砂漠は赤く染まり、斬り刻まれ顔の判別もできない死体が散乱している。

 

「貴様らぁぁぁぁ」

 

「はっ!来いよ……オリジナル!!」

 

「見せてもらうね、セイ君」

 

雷電の怒りに呼応するようにガンケースが開き、高周波ブレードが弾けた。それを空中でキャッチし、雷電はヴァンプ、ユメと戦闘を始める。

 

「セイ……これは」

 

「やらせるか!」

 

ヒナの頬をナイフが走った。雷電が高周波ブレードで方向を変えたが、それでもヒナに傷ができてしまう。

 

「ヘイローってのはさ、遠距離武器なのかなぁ……硬くなってるだけだよねぇ………ナイフとか……斬れ味が凄ければ簡単に傷付くんだ……そう、殺せるのきひっ……」

 

ヒナの血のついたナイフを美味しそうに舐めるヴァンプ。

猟奇的な行動にヒナも足を下げてしまう。

 

「ヒナ……逃げろ」

 

「セイは」

 

「どうせ俺は裏切り者のテロリストだ。お前は何だ。ゲヘナの風紀委員長だろ」

 

「喋る暇あるの?」

 

「なっ…」

 

雷電は驚いた。高周波ブレードはどんな金属でも斬り裂ける。

そう、謳っていた。だが、ユメの持つブレードは何故か斬れない。

 

「……まさか」

 

「そう、高周波ブレードを持ってるのはセイ君だけだとでも?」

 

「隙あり!」

 

背中に無数の衝撃が来る。ナイフか何かが刺さっているようだが、雷電はユメで手一杯だ。

 

「こんな事もできるんだ……私のはね」

 

「く!」

 

二刀流というのは技術がなければ難しい。

雷電も二刀流よりも一刀の方が良い為に、一本で使っていた。

しかし、ユメは違う。ブレードが2つに割れ一対のセイバーが生まれる。

 

「くそ……」

 

「どうしたのさ!ねぇ!セイ君!!」

 

「あり……ユメ先輩張り切ってるね。じゃぁ、僕と遊んでよ。お姉ちゃん」

 

「……倒す」

 

ヒナはデストロイヤーを構える。それに対して、ヴァンプはソーコムとナイフを構えた。

 

「……」

 

バン!とソーコムから銃声がするが仕返しのようにデストロイヤーから放たれた弾幕がヴァンプに当たる。鮮血を散らしながら、ヒトラーの電動鋸の改造品から放たれたソレを直接受ける。

 

「……ヘイローがない……私が………殺した?」

 

近づいて死体を確認しようとした瞬間

 

「と思うじゃん?!」

 

「がぁ……!」

 

ヒナの足にナイフが突き立てられ、そのまま噛みつかれた。

 

「離せ!!離せ!!!」

 

ゼロ距離でデストロイヤーを撃つが、ヴァンプの肉体が細切れになったり弾け飛んだりはしない。

全てがその体に吸収され、まるで蛇のような舌がヒナの細い足を舐め回す。

 

「……やっぱり、君の血美味しいよ……あぁぁ…がびあ」

 

 

デストロイヤーを撃ち続け、吹き飛ばす事に成功した。だが、ヒナは立ち上がれなかった。

 

「ひっ……」

 

トリガーをひきつづける。弾切れでも、半狂乱になりながらも引鉄を引く。足が食べられ、歯型まで付いている。

 

喰われる…逃げないと……助けて……

 

「……ぎぁぁぁぁぁぁ」

 

「……俺の学友に手を出すな」

 

「セイ!」

 

「ふざけるなよ!ユメ先輩は」

 

ヴァンプの視線の先にあるのは右肩から先と左腕を斬り落とされたユメだ。忌々しそうに雷電を見ているが、一瞬にして消えていく。

 

「ちぃ……仕えないな。オリジナル、その子は必ず俺が食べて上げるから……ヒヒッ………」

 

「………くそ」

 

強化外骨格にダメージはたいしてない。しかし、心臓部を高周波ブレードで貫かれた事で大量のホワイトブラッドが消えていく。

雷電も人間と同じように人工心臓がポンプの役割をしているのだ。永遠に流れ出るホワイトブラッドは雷電の残り時間を意味している。

 

「………活動停止まであと5分か」

 

「セイ、何を」

 

「ヒナ、お前の行動は目に余る。アビドスは俺が守る」

 

雷電はヒナの首を掴み、監視しているであろうドローンに合図した。すると、風紀委員全体と連絡がつく。

 

「……陸八魔……セイ………貴方は!」

 

「撤退しろ、さもなくばヒナの首を折る。わかるな、今の俺はヒナより強い。お前達が戦闘を止め、降伏しゲヘナへ戻るのならヒナは解放しよう」

 

そのホログラフから白い液体が流れ出ている危険を理解しているのはアビドス生徒だけだ。

 

「……他の生徒は」

 

「見えるだろう、死んでいる」

 

「お前は………お前は遂に生徒まで手に」

 

「アコ、俺はアビドスを守る。そこに、俺の命はない。俺の使命であり、希望を未来へつなぐ為の行動だ。そのためならば、俺は鬼になろう。悪鬼羅刹と罵られよう。それが、守る事に繋がるなら」

 

アコは忌々しそうに言いながら雷電に降伏を宣言した。

 

「……補填はゲヘナに送る。無碍にすれば、ゲヘナを滅ぼす。マコトに伝えろ、雷帝の遺産の残りは俺が知っている。ソレをゲヘナに向かわせたくなければ、手を出すなとな」

 

「全軍……撤退です。我々だけじゃない、あの男はゲヘナの全てを人質にした。総員撤退!」

 

ドローンの映像が消える。ソレと同時にヒナは地面へと落ちる。

 

「……セイ、雷帝の遺産って」

 

「_______だ」

 

「なっ………巫山戯ないで!?そんなの……学生が作れるわけが」

 

「ミレニアム、アビドス、雷帝、俺の合作だ。既に卒業した者達の足取りは掴めん。あるのは俺だけ。良いな、アビドスに手を出せば、俺はキヴォトスの敵になることも厭わない」

 

死んでしまった風紀委員の目を優しく閉じ、雷電は砂漠へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





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