BLUERISING 作:影後
「……セイ、何を知ってる」
砂漠で機能停止寸前の雷電の顔にショットガンが向けられる。
アビドスの仲間にして、生徒会副会長を務める少女小鳥遊ホシノ。その目は濁り、怒りに震えている。
「アレは……アレは何だ」
「……ユメ先輩だろ。地獄から舞い戻ったらしい」
「答えになっていない!」
ドン!鈍い音と共に多数のパレットが雷電の顔面を襲う。
ほぼゼロ距離で行われた射撃で皮膚は吹き飛び、中の金属骨格で作られた顔が露わになる。
「おいおい、話を聞けよ」
「黙れ……黒服と何の取引をした!ユメ先輩に何をした!」
何をした?そんな事は知りない。
むしろ、ユメ先輩に関しては怒りしか湧いてこない。
死ぬ原因を作ったのは、誰でもない。
「ユメ先輩が死んだ原因を作ったお前が…よく言える」
「くっ……」
ドン…ドン…ドン
怒りに任せた弾丸が雷電に命中する。
たいしたダメージにはなることは無い。ただ、無機質の目でホシノを見るだけだ。
「自分の起こした結末を……俺に転嫁するな。俺は元からアビドスにいた訳じゃない。砂漠で迷子になって、ユメ先輩に救われてお前と出会った。友人だ、友人だから色々した。ユメ先輩も俺にとって先輩だ。でもな、俺が居た所でユメ先輩の選択と、お前が起こした結末が変わることはない」
「黙れ………なれ、さっきのはなんだ!お前はユメ先輩を斬って」
「ユメ先輩は死んだ。お前が俺に連絡してきたんだぞ、葬儀もした。埋葬も、死んだ人間は生き返らない」
「ならお前は」
「脳があるだけだ、他は機械。サイボーグだ。そうだ、俺も所詮人間じゃない。」
「なら……どうすれば良いんだよ!ユメ先輩だった!ユメ先輩と話を」
「知るかよ」
雷電の目から光が消え、腕もだらんとしてしまう。
ホワイトブラッドがもう無いのだ、人間で言う大量出血である。
「おい!まだ死ぬな!話は終わってない!」
雷電は死なない、たとえホワイトブラッドがなくなろうと脳が起用停止するまでには時間がある。そこまで長くはないが。
「…くそ」
ホシノはスマホを使い、先生としてアビドス生徒達に連絡を取る。すると即座に砂漠に対応させた無限起動のクレーンが運ばれてくる。
『アビドス工事部』戦闘等が起きて施設の破損などが起きた時の為に雷電が作った部活動だ。ヘルメット団でも戦闘が苦手な者や、クレーン等の重機を動かしたいという生徒が所属している。アビドスの校章と安全第一のヘルメットを被り、目元は見えないが色々と疲労しているように見えた。
「ホシノ副会長!これは」
「敵にやられたんだ。雷電を倒せる存在がいる」
「まさか…ゲヘナの風紀委員長?」
「ゲヘナの動きを誰よりも知り尽くしてる雷電が負けると思う?多分違う」
「……ですね。皆、クレーンで周りを」
「部長……コレを」
部長と呼ばれ他とは違い赤いラインの入ったヘルメットを被った少女が雷電を見た。顔の人工皮膚は剥がれ、内部が見えている。
「……荷台にのせて!気をつけて!」
「私は皆のところに行くよ。雷電をよろしくね」
「はい!ホシノ副会長」
忌々しい、そう吐き捨てたかった。
雷電は死んでいるかわからない、だが顔を甚振ったのは自分のショットガンなのだ。雷電、陸八魔セイの裏側を知らない。
話さないもどかしさと、梔子ユメが再び現れたこと。
今まで抑えていた不満が弾けた。
「私は……悪くない」
「えと……どう操作すれば良いんだ?」
「部長知らないの?!」
「だって!雷電さんが自分で入るようだぞ!」
「ん、かして。私がやる」
「おっ!ありがとう!私達は市街地の修理にいくから!」
アビドス工事部のヘルメットを脱ぎ捨てた少女は静かに雷電の入っているポッドを見る。
「先輩、何時もボロボロ」
ホワイトブラッドが必要量を下回った為に仮死状態にある事を確認し、補充していく。
「これで、未来が少しは変われば良いけど」
「……未来とはどう言うことだ」
「先輩」
「視力がない……ホシノめ。ショットガンを顔面にするならカメラを壊すな」
「ん!先輩が無事でよかった」
「声の質が変化しているな、シロコ。だが、サイズが違う」
「その言い方嫌い、止めて」
「黙れ、お前の先輩のせいで目が見えない。エコーロケーションで環境を理解している。さて、人間が一気に成長することはない。更に未来とはなんだ」
「ん…私は砂狼シロコ。(多分)未来から来た」
「タイムスリップ?どうやって」
「ミレニアムの実験。数ヶ月後の未来でタイムマシンが作られた。私は雷電先輩が居ない未来から来た。皆が泣いてた」
未来から来た、滑稽な話だがキヴォトスではよくある事だ。
神秘など、予想外すぎるものが存在するのだから。
「てか、ならはじめから俺をカプセルに」
「先輩は重すぎる、自分で入って」
あまりの物言いに起こりたくなるが雷電はシロコの案内のもと、カプセルに入る。
「まったく……ありがとう。シロコ、未来の俺によろしく」
「ん…これで未来は変わる」
「そっちの未来で言えることがある。俺が生きてるなら、ヴァンプも、ユメも、俺が倒す……いや、殺すさ」
「信じてる、先輩」
雷電のカプセルが閉まり、回復が始まる。
それと同時に、シロコは光に包まれながら其の場から姿を消した。
「雷電先輩!」
「リーダー!」
騒がしいと感じながら目を開ける。カプセルに新しく付けられた画面からデフォルメされた姿で現れると皆が驚いた。
「あー、皆適当な画面あるか?」
「テレビあるよ!」
すると雷電が今度はデフォルメされた姿でテレビに映る。
「おかしいだろ!なんでこれなんだよ!」
「先輩可愛いですね」
「……んで?俺を撃って顔壊したホシノちゃんは何か言い分あるか?お前のせいでカメラが両方死んだ。戦闘に支障も出るぞ」
「無い、雷電が悪い」
「ちっ……はぁ、面倒くさい。さて、先生の顔をみる限り知っちまったな。アンタがシャーレ奪還作戦のとき、俺は不良を逃がした。更にアンタを撃った。久し振りだな」
「うん、だからアビドスに来た時変だったんだ」
「あれは違う、カイザーの基地に侵入して情報抜き取ってた。少しドジしてな。ドロイドと馬鹿は鏖殺したんだが、ダメージがデカくてな。更に……アレもあった。セリカには感謝してる。場合によっては彼処で死んでた」
死という言葉を簡単に言う雷電に周りは不満な顔をするが言葉は続く。
「さて、もっと話すことがある。お前達が銀行強盗して手に入れた紙切れだが、俺は事前に知っていた。喋ろうとした矢先にあの大規模な攻撃だ。悪く思わないでくれよ。んで、俺がゲヘナでバイオテロだが……俺はしない。たとえ俺の事を大嫌いどころか憎んでるだろう相手でも、そうだな。排水管壊して下剤仕込むぐらいだ」
「悪質だよ、雷電」
「兎に角だ。そのバイオテロの犯人はヴァンプ。俺の生前の肉体を乗っ取り撃っても死なない化け物と。梔子ユメだ」
「梔子ユメ?それって」
「簡単に言えばホシノと口喧嘩して砂漠で行き倒れて死んだ。……馬鹿な先輩だ。頼っていれば、お前が…もう少し気にかけてればな」
「今、その話は良い。なんでユメ先輩が生きてる」
ホシノと雷電、通常仲間であり仲も良い2人が梔子ユメという単語を出した途端、憎しみ合うように見つめ合う。
「俺はサイボーグになるに当たり、人間としての肉体を捨てた。
その肉体は梔子ユメ、俺の初恋の人の隣に埋まっていた筈だった。でもな、盗まれた。カイザーか、俺の契約者の居る組織か。それとも別か。兎に角だ、梔子ユメはサイボーグとなり俺と同等の戦闘能力を有している。そして…ヴァンプだ。」
雷電がテレビに2人の顔を映す。
雷電のメモリーから抽出されたソレを。
「此奴は……俺の後輩を殺しやがった。俺を騙り、俺の目の前で後輩の血を啜りやがった」
「後輩?」
思い出すのはホログラフに映っていた風紀委員の死体。
あのあとどうなったのかはわからないが、ゲヘナのメンバーが仲間を捨て置くはずがない。
「俺は元はゲヘナ風紀委員だ。その時の後輩だよ、殺された。
気絶させヘイローが消えたあと。この2人をみてもお前等は戦うな。俺が殺す」
「雷電、人殺しなんて」
「俺が殺すのは人間じゃねぇ。機械に魂があるのか!奴等は所詮AIだ。人格なんて、作られた物でしか無い!ヴァンプはどうだ?俺の肉体を使い、銃で撃たれても再生する化け物だ。梔子ユメは?俺は死んでるのを知ってる。葬式にも出た。死人を殺しても殺人じゃねぇ。先生、アンタがどう思いどう感じようが俺は止まらない。俺の憎しみは永遠に消えることはない」
「……それで、逮捕される事になっても?」
「元より指名手配犯だ。それに、一度ゲヘナに行く必要がある」
「それって」
「治り次第、ゲヘナの万魔殿の主に会いに行く。
忠告と、俺の冤罪を晴らしにな。ソレに俺が居ながら守れなかった。俺のせいで死んだ。そのケジメを付ける」
その言葉に誰も反対意見を出せなかった。
未来シロコ
彼女は雷電がホシノのせいで死んだ未来から来た。
そして、一つの任務を終えミレニアムのエンジニア部に戻る。
「ん…先生ただいま」
「何を変えてきたの?」
「雷電先輩の生存。先生は憶えてる?ゲヘナに攻められた時。雷電先輩をそこで救ってきた」
先生はシロコの問いに優しく、そして悲しそうに答えた。
「……雷電は死んだよ。ーーーーの時に」
「え?」
未来はそう簡単には変わらないようだ。