BLUERISING 作:影後
「おいおい…随分と……大きな歓迎じゃないか?」
「黙れ、お前のせいで……友人が」
「……ちっ」
現在、ゲヘナへと来た雷電は風紀委員会に銃口を向けられている。ヘイローの無い存在に銃口を向ける意味を理解しているだろうが、それ以上に怒りが勝っているのだ。
「仕方ないな、マコトの奴に用があるし。お前ら程度、
気絶させて……いや、逃げるか。ヒナに申し訳が立たん」
「何が」
雷電は喋っているうちにスタングレネードのピンを抜いた。
あまりの眩しさで一瞬、顔を隠したことで雷電のチャンスへと変わった。更に発煙筒と催涙ガスをばら撒けば視界を奪われた生徒たちは涙と咳が止まらなくなる。
「……陸八魔先輩」
「俺に銃口を向けたらあの子達みたいに泣くことになるぞ。
チナツ君、それとも、愛銃とサヨナラが良いか?」
雷電が居るだけで不良達は姿を一切見せることがない。
「しっかし……不良いや、一部の生徒の暴走を止められてないのは流石ゲヘナだ。この空気、この感覚。どの学園よりも戦場に近い。懐かしい」
ドン
銃声が聞こえ雷電は即座に手持ちのガンケースを盾にする。
「……良い腕だ」
「服装からして、風紀委員会か。凄いな、的確に頭だ。はぁ……理不尽だよな。殺したのは俺じゃない。なのにだ、俺が恨まれる。万魔殿のバイオテロもだ、俺の肉体が奪われたせいだな。
さっさと焼却すればよかったぜ。土葬なんてせずにな」
「本当に殺人は」
「俺が殺すのは大人だ。しかも、カイザー系列のクズ。
あと言うが、機械に魂はない。機械を壊すのは殺人じゃない」
「……一言言います。陸八魔先輩は狂ってます」
「その狂った先輩の案内役だろ?チナツ君、俺は君に期待してるんだ。君はかつての俺の様に後ろで戦う人間だ。今のうちに教え込むか?容赦しない戦い方を。仲間の被害を最大限に抑え、相手方を絶望させる戦争の遣り方を」
雷電はニヤリと微笑み、チナツに握手を求めた。
だが、チナツはソレに応えることはせずただ背を向けて歩き出す。
「連れないな、だが……警戒はすべきだ」
「え?」
雷電はM16A3を構え、チナツに向けて発射する。
しかし、弾丸はチナツには当たらず髪などを貫通し奥の何かに当たった。
「こんなのがゲヘナに居るなんてな」
「…偵察用のドローン?」
「見てるんだろ、お前等は必ず殺してやる。俺に殺せない者は居ない」
それだけ告げるとドローンに向かって弾丸を乱射する。
近くにいた不良や生徒はその顔をみた瞬間、ある者は腰を抜かしある者はに逃げ惑う。
「奴だ……陸八魔セイが帰ってきやがった!」
「巫山戯んな!私達ただの不良だぞ!
彼奴みたいな殺人鬼じゃ!…」
「殺人鬼……雷電、そういえばジャックというコードが……
ジャック・ザ・リッパーか?ロンドンの殺人鬼か。面白いな」
「待ちなさい!陸八魔セイ!!」
風紀委員会の部室まで歩くが、
やはりゲヘナと言わざる得なかった。
「……なんで毎回毎回お前達が居るんだ!」
「げっ……」
「メル先輩あの人って」
「依頼したよな?俺お前等にさ……アビドスの一角。温泉あるから頼んだよってよ。なんでここいんだよ」
「いやぁ…掘り終わって温泉が8つだったか?
砂漠って良いな!」
「ブチのめすぞ」
「良いじゃん!お前テロリストだろ!風紀委員会は」
「……今日だけは止めてくれ。最悪、俺がゲヘナ滅ぼすか戦争することになる」
「……わかったよ。あと部長辞めたんだ!」
「へ?」
温泉開発部が消えていくのを雷電は驚き顔で見ていく。
「嘘だろ……彼奴が……部長を降りた?
あの、温泉キチガイ女が?」
「貴方のデータベースも更新してください」
それから風紀委員会からの襲撃が多数あったが、
その尽くを簡単に対処し格の違いを見せつけた。
今の雷電と戦えるのはゲヘナ最強ぐらいだろう。
「セイ、久し振り」
「……ヒナ。お疲れ様。俺はお前を見捨た。アコはお前の右腕だが性格に難あり。イオリは猪突猛進、はっきり言えば後継者になれない。そこでだ、このチナツ君を俺に預けてみないか?
風紀委員会を効率的に扱い、ゲヘナの治安維持にも
素晴らしい成果を出せると期待して」
「貴方の2代目を作ると?」
「どうだろうか?少なくとも、殺す事を厭わない少女にはならんさ。俺が教えるのは苦しめ方だ」
「……なんで、なんでそうなってしまったの?」
「見捨てることが出来ないと、全てを救おうと努力する。
その努力が徒労に終わり、初恋の相手は砂漠で干乾びた。
親友は俺の話を一切信じず、妹はイジメも受けていた」
「……それは」
「俺は理解したんだ。邪魔する存在は潰せば良い。
殺すだけじゃない、苦しめ、絶望する様を見れば良い」
「…貴方は」
雷電はガンケースから高周波ブレードを取り出し、
刃を撫でる。その後、鞘を左腰にセットした。
「……ヘイローを持つ者も殺害できる武器。
俺は無かった。幼い日、ソレだけで虐めを受けた。
始めて人を殴ったのは6歳だった。
俺を銃の的にしやがったクズの銃を奪い、両目を潰してやった。
知っているか?当時の風紀委員会は杜撰でな。
まともな捜査なんて行わない。いや、行えなかった」
「…その娘は?」
「来る度に俺が痛め付けて勝手に自殺した。
仲間から孤立させ、金も居場所も全て奪った」
「……酷い」
「酷い?違う、環境が俺を変えたんだ。
いや、当時の環境が俺を作ってくれた。だからこそ、
ヘイロー持ちのお前達にも簡単には負けない俺が出来上がった。妹を守り、仲間を、家族を守る男が出来上がったのさ」
「………もう、貴方の昔話は良い」
「だな、さっさとマコトのところにいくか。
あぁ……そうだった。ヒナ、前にも言ったが、アビドスに。
俺の第二の故郷に手を出したら、ゲヘナ始末する。
マコトにも伝えたよな?」
ヒナは言葉を紡ぐことはない
雷電はにやりと笑うとヒナ、チナツと共に万魔殿に向かった。
万魔殿の生徒達は雷電を観るなり銃口を向けた。
だが、ソレを雷電はまるでアニメーションの様に銃だけを斬り落とし恐怖を与える。
「……嫌な顔だな」
「マコト様?みたいなの馬鹿はしないのか」
「お前相手に馬鹿出来る程、心の余裕はない」
マコトは普段とは違い、重苦しい雰囲気で静かに雷電を睨んだ。
「……戦闘用サイボーグ雷電。それが今のお前か」
「ヴァルキューレとかに流してみろ。どうなるかは……」
「……忌々しいな。それで、お前の偽物がバイオテロか」
「私も見た、嘘じゃない」
「……信じよう。第一、お前ならこのマコト様の首を獲りに来ると思ってた。そんな話し方をしているが、周囲に被害が出る高い方を極力しないのがお前だ」
「……」
雷電が苦笑いする。
「あっ!セイお兄ちゃんだ!」
「なんで?」
「……イブキか。久し振りだな?えと……2年ぶりか?」
「お前…イブキと知り合いなのか!」
「会長の関係でな。あの人は天才を探してたんだ。
そこで俺とイブキに白羽の矢が立った。まぁ、イブキは天才だが、幼すぎたんだ。変わりに中坊だった俺が右腕さ。
楽しかったなぁ……」
「そう……マコト、それで話がある」
「マコトちゃん、君。イエローケーキって知ってるか?」
「……セイお兄ちゃん、それって」
「ウラン235やプルトニウムは?」
「やめろ……お前まさか」
「Xナンバー、会長が信頼している俺にだけ教えたゲヘナの最終兵器。水爆、原爆、そして……デイビー・クロケット」
「超小型……核弾頭」
そう呟いたのはヒナだ。
事前に核の存在は仄めかされていたが、今その口から話されるとなると冗談ではない。
「アビドスにも有るぞ?彼処は会長の同盟だったからな」
「だが……デイビー・クロケットはお前も被爆」
「しないさ、俺はサイボーグだ。俺も少しいや、かなり苛ついてる。バイオテロを生徒に仕掛けるのは駄目だ。俺が許せない。核もだ、使うべきものじゃない。お前達に……いや、キヴォトス全域に対する抑止力であるべきだ」
「……何が言いたい」
「カイザーを滅ぼす。風紀委員会はアビドスに借りもあるだろ。万魔殿はバイオテロを仕掛けられた」
「カイザーという証拠は」
「そんなの後から幾らでも出てくる。俺の仕事は」
「情報統制と……クラッキング」
「そうだ、あと諜報もだが。諜報部を何度も騙したしな」
「あ…え…!セイ…お兄ちゃん?」
「イブキ、俺はキヴォトスの未来に必要無いもの。
ゴミ掃除をしたいだけなんだ。安心してくれ、イブキの依頼は明るいからね」
まるで心の底から思っているかのように微笑む雷電。
その場にいるメンバーはただ、凶人だとしか思えなかった。