BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_12

黒服、年齢、人種が不明のキヴォトスの外から来たと自称する異形の存在。それが雷電の契約者である。

 

「んで?俺個人としてはなんでこんな依頼を持ってきたのか。

実に興味が有るんだけども……」

 

「えぇ……陸八魔セイさん。コチラとしてもイレギュラー過ぎましてね」

 

カイザーコーポレーション傘下カイザーPMCアビドス基地。

その最深部、そこは黒服ですら知らない何かが存在している。

 

「今回の依頼ですが、先生と小鳥遊ホシノさんには関わっておりませんね?」

 

「バレてたぞ?お前、ホシノを通じて先生と会ったな。

まったく、俺に矢が向くのはよしてくれよ。まて、動くな」

 

雑談をしながらも潜入している2人の動きは滑らかだ。

黒服は持っているタブレットから監視カメラを偽造し、

なにもないように見せている。

 

「ん…んん!!!!」

 

背中からアンドロイドのコアを抜き、自分にかける。

ナノマシンにより回復が加速し、装甲がより強固になる。

 

「EATER、捕食者のようですね」

 

「ふっ……良いさ。ちょうどよくゴミ箱もあるしな」

 

破壊したアンドロイドをゴミ箱に捨て、先に進む。

潜入任務は慣れているが、護衛人員が居るためばかすか進むことはできない。最深部に到着するとロックされた扉が現れる。

 

「この程度のセキュリティなら私が突破できますので」

 

黒服に任せ、高周波ブレードを構えながら警戒する。

すると、2分ほどて[ピー]と言う機械音と共に扉が開いた。

中には培養槽と思える何か、そして数多の生徒や市民が眠っていた。

 

「…人は神になれるか。私も神秘の探求を行う存在ですがね。

最低限の倫理観を捨てた覚えはありませんよ」

 

「何とまぁ………見てみろ。黒服、コイツらは」

 

「……生殖器がない?」

 

雷電は近くの端末を開く。

パスワード等はかけられておらず、情報が自在に出てくる。

 

「スーパーソルジャー計画。

痛みも感じず、恐怖も感じず、食事、睡眠も必要のない。

完全無欠の存在……なんと」

 

「おやおや…コチラは貴方のほうが気になるかと」

 

黒服も何かを見つけたのか雷電を呼ぶ。

そこには陸八魔セイの肉体があった。

解剖され、臓器が出ているが今更ソレを気持ちがる人間は

此処には居ない。

 

「確認しましたが、どうやらアレはあくまでも貴方のクローンのようですね。そこにスーパーソルジャー計画を植え付け、あの様な兵器が生まれたと」

 

「……さて、んじゃあの梔子ユメは?」

 

「………ククッ、コレは私も貴方も一本取られましたね」

 

黒服が静かに画面をタップする。

すると陸八魔セイの肉体の解剖サンプルが移動し、その奥から

ヘイローの消えていない裸体の梔子ユメが現れた。

触れてみると限りなく冷たく、冷凍保存されているようだ。

 

「糞だな」

 

「小鳥遊ホシノとは違い、戦闘能力に疑問が残る。

しかし、その神秘は目を見張る物がある。

ですか……『OSIRIS』?」

 

「オシリス、だとしたらセトは誰だ?」

 

「何かわかったのですか?」

 

「エジプト神話で、オシリスはホルスの父親だ。

だが、砂嵐の神セトに殺される」

 

「……暁のホルス。ホシノさんの神秘を含め、私はそう呼んでいますが……まさか、私以外のゲマトリアが?」

 

「あぁ、だが問題は何故オシリスかだ。それに、セトの存在もある。ふっ……初恋の人は生きていて、俺は機械か。まぁいい。」

 

雷電は静かに高周波ブレードを構える。

 

「えと……雷電さん?何を」

 

「斬る」

 

「馬鹿ですか!この状態で斬ったら…まったく、私が開きますのでお待ちを」

 

一瞬焦った顔になる黒服だが端末を操作し真顔になる。

 

「……雷電さん、どうぞ。バッサリとお願いします」

 

ユメの入っていたケースは開けることはできない。

出すには上か下から出さなければいけないと言う、

水槽に入れられた魚のようなものだ。

今回は凍結された魚だが。

 

「…ふっ…」

 

流れるようにガラスを斬る。

夥しい冷気が溢れ、研究室の温度が一気に下がる。

 

「背負うのは私が行います。さて、帰りましょう」

 

「データは回収した。それに……」

 

「コンピューターウィルスですか。恐ろしい人ですよ」

 

「じゃあ出るか、契約者殿」

 

翌朝、アビドスで雷電はホシノを中心にした廃校対策委員会の

メンバーから銃口を向けられていた。

 

「おやおや、ホシノさんに、先生、何用ですか?」

 

「おじさんとしては信頼してた相方が裏切り行為したからこうして捕まえなくちゃいけないのが苦しいよ。ついでに黒服、お前もだ」

 

「おいおい、バカ言うなよ。俺は黒服の護衛なのよ?

武器向けられたら俺も相手しなくちゃならなくなる」

 

雷電とホシノの言葉の返答に場が凍り付く。

 

「セイ先輩……裏切ったんですか!」

 

「違うぞセリカ。俺が黒服殿と契約してな。

ほら、一億円なんてすぐ返せるだろ」

 

「雷電、身売りしたの!」

 

先生が叫ぶが雷電は違うとしか言えない。

 

「呼ばれた時に動く傭兵?今回もそれだったし。兎に角だ。

銃を下ろせ、黒服は敵じゃない」

 

「黙れ!お前も」

 

「ユメ先輩が生きてた」

 

「なっ!?」

 

黒服は背負っていた少女を地面に寝かせた。

裸体の上にスーツで隠す様にするのは紳士的だが、

それ以上にホシノの銃口がより二人に向いていく。

 

「偽物だ!」

 

「お前が埋葬したのがな!」

 

雷電は一度ホシノを落ち着かせるように後輩に頼み、

生徒会室に向かう。アヤネから端末を借りると、雷電が見たデータが画面に映し出される。

解剖された陸八魔セイ、冷凍保存されていた梔子ユメ。

更にカイザーにより行われていたスーパーソルジャー計画と

その副産物たるヴァンプとサイボーグユメ。 

ホシノ達の情緒を破壊するには十分だった。

 

「……本物の……ユメ先輩」

 

「一つ言えるのは、お前がユメ先輩を追い出さなきゃこうは

ならなかったんだ。俺に一言連絡すれば……」

 

まだ完全に冷凍睡眠から目覚めていないユメの頬を撫でようとしたホシノの腕を雷電が掴み憎しみの籠もった目で見る。

 

「………此方の……私達の事を知らないお前は!」

 

「巫山戯るな!俺はな、失踪の2日前に電話した。

相談されたよ!ホシノちゃんと喧嘩が激しくなっていってる。

私がダメだから、ホシノちゃんに……ってな。

泣いてたよ、お前に責任を負わせてしまう自分が馬鹿みたいたってな」

 

「そんなの」

 

「わかるわけないか!一番近くにいたのはお前なんだぞ!」

 

雷電がホシノの胸倉を掴む。

しかし、ソレをノノミとシロコが押さえ込んだ。

 

「はぁ……はぁ……兎に角だ。ユメ先輩はアビドスで面倒をみるぞ」

 

「そんな設備は」

 

「設備は必要無い。じきに目は覚ます。んでだ、黒服殿よ。

俺の仕事は終わりでいいか?」

 

「えぇ、今回の件。私も知らない存在が関与しているようでした。ゲマトリアではなく、私個人としては皆さんに協力関係を結びたいとは感じますが?」

 

赤羅様に不機嫌になるとある二人に雷電は逃げ笑いしながらも話す。

 

「一応言うがね、黒服の言う人体実験もあくまでも生命倫理には最低限基づいている。俺と同じで敵対者に容赦しないが、観察対象は何処となく庇護欲すら感じるタイプ。つまり、かつての俺だ。今回の件、黒服としても面倒くさいらしくてね。信用できるよ?」

 

「……わかった。で?雷電、君はどうするつもり」

 

「カイザーPMCを全滅させる。1人残らず、血祭りに上げる」

 

人を何とも思っていない様に雷電は淡々とそう告げた。

聞いていた生徒、先生、黒服さえも恐れる。

まさに恐怖、死が歩いているようにすら思えてしまう。

 

「駄目だよ、キヴォトスで殺人は」

 

「機械は人間じゃない。人間と同じ言葉を話すが、所詮AIだ」

 

雷電の考えは変わらない。

それは冷たく、冷酷で、残忍な言葉だった。

 

「……それに、そろそろわかってるだろ。アビドスを襲っているのはカイザーPMCだ。借金返済の目処も付いた。打って出ても良いはずだ」

 

雷電の言葉に皆が視線を逸らす。

その時だ。通信係りの生徒が対策委員会の部室に乗り込んでくる。

 

「リーダー!副会長!大変です!Cブロックを紹介中のマグノリア第3小隊が戦闘に突入!相手はアビドス生徒会長を名乗り、カイザーPMCと共に攻撃を」

 

「動かせる人員をすべて使え!カイザーを生きて返すな!

俺達の……俺達の未来を奪わせるな!」

 

「了解です!」

 

あまりにも出来すぎた襲撃に雷電は静かに言う。

 

「……俺じゃない」

 

「なら、証明しなよ。陸八魔セイ」

 

ホシノは仲間ではなく、敵を見る目でじっと睨む。

 

「先生、彼奴らの指揮を頼む。俺は敵陣に突っ込む」

 

「そんな!死んじゃいます!雷電先輩も!ホシノ先輩もどうして!」

 

「ノノミちゃん、コレはケジメなの。雷電、死んでも守れ。

私にも知らせず、黒服との提携、それにお前の秘密主義。

信じさせようと言うなら、生きて帰ってこいよ」

 

「ふっ…黙れ小娘。」

 

雷電はただ戦う。それだけだからだ。

 

 

 

 

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