BLUERISING 作:影後
それはたった一人の馬鹿が行う戦争。
自分が狂っていると、おかしくなったと理解できず、
正常であると思い続けた哀れたサイボーグの戦争。
「……来たか、陸八魔セイ!」
「カイザーの雑兵め」
武器はたった一つ、高周波ブレードのみ。
アップデートされ、進化した肉体は弾丸を斬り裂き、
走る速度は時速80kmをゆうに超えている。
一歩一歩走る度に雷鳴が走り、戦う様はまさに修羅を
思わせるほどに苛烈だ。
アンドロイドから流れ出たオイルを返り血のように浴び続け、
無限に回復していく。
「ゴリアテを出せ!ヤツを始末しろ!!」
前線の傭兵達は仲間が死のうが、戦闘を止めることはない。
恐怖を感じながらも、唯生き残る為に銃を撃つ。
「素晴らしい……やはり、彼は最高の兵士だ」
恐怖もなく、死を恐れることはない。
何人もの部下が破壊され、最新兵器が破壊されようとカイザー理事の笑みは消えることがない。
「…1号と2号を出せ」
「はっ!」
砂漠は黒いオイルに染まり、硝煙の臭いと噎せ返るほどの煙。
その中をまるでターミネーターの様にカイザーPMCの兵士達を斬殺し、姿を見せる。
「素晴らしい……素晴らしい!生身の肉体を捨て!
戦うことに特化した存在となった!だが、彼等はどうだ!!」
「やぁ、セイ君」
「よぉ、オリジナル」
紛い物の梔子ユメとかつての部下を惨たらしく殺したヴァンプ。
高周波ブレードを持つ手に力が籠もる。
人工筋肉が緊張し、感情がトルクオーバーしていく。
「来いよ、切り裂き魔」
「ふっ…」
梔子ユメの高周波ブレードを雷電は弾く。
そして、苦無をカウンターしユメの心臓に突き刺す。
「ちっ……」
雷電と違い、青い血が飛び散る。
「やってくれるね」
前回、梔子ユメと戦闘した時みている余裕はなかったが、
青い血ブルーブラッド。
「ブルーブラッド、ホワイトブラッドとは違い新世代の人工血液か」
「そう、自己中毒なんて起こらない。君とは違うんだよ。
旧世代のサイボーグとはね」
「此方も見なよ!オリジナル!!!!」
M16A4から放たれる弾薬とその合間を縫って迫る紛い物。
今の雷電は守る物はない、守備というデバフはなく、ただ戦うそれこそ、キリングマシーンとして全てのリソースを割くことができている状態だ。
最小の手数で弾丸を防ぎ、迫る紛い物にはソーコムの射撃を行う。相手がどの様に動くか、その全てを予測し回避する。
脳に疲労が溜まるが、それは何れ直せば良いことだ。
「くっ…」
「ユメ先!」
紛い物の斬撃を弾き、その腹に蹴りを入れ距離を離す。
そして、即座に方向をかえヴァンプに斬り掛かる。
「ちっ!」
ヴァンプは刀をマチェーテで受け止める。
斬り裂くことのできないのを考えれば、このマチェーテも
高周波ブレードの応用品という事だろう。
だが、雷電の肉体はミレニアムの最新技術とミレニアムで手配されているマッド・サイエンティスト達の合作だ。
いくら強化されているとは言え、生身の肉体に再生能力を付与した程度で腕力の差を埋める事は出来ない。
雷電は脳以外、全て機械化されたサイボーグなのだから。
「なっ……」
ソーコムを左腕にもち、ヴァンプの腹に弾が切れるまで撃ち続ける。どうせ対したダメージにはならないだろうがそれで良い。
再生能力が高いだけの人間など、殺す方法は幾らでもある。
「ヴァンプ!」
戻ってきた紛い物が雷電とヴァンプの間に入る。
目的を理解していたのだろう、ヴァンプを後ろに配置し守る様に立ち塞がる。
「ヴァンプは殺らせない」
「人造人間がよく言う」
目の前の存在が梔子ユメの記憶を持っていようが、
本物の梔子ユメだろうが、どうでもいい。
『雷電にとって』の梔子ユメは救出した。
その梔子ユメが偽物だとしても、雷電は『ソレ』を本物の
梔子ユメだと断定した。
ならば、眼前の梔子ユメは紛い物となる。
「………知ってる?セイ君。
理事はね、私達がセイ君に勝てるなんて思ってなかったの。
実際、今わかったよ。私達『人間』はセイ君みたいな『機械』
には決して勝てない」
「…貴様らが……、人間だと?」
ソレは雷電を動揺させる作戦であろう。
事実、成功した。目の前の者達は『機械』だ。
生身のパーツのある機械だ。『人間』じゃない。
だが、自分は人間だ。『元人間』だ。
奴等のように作られた存在ではない。
「終わり」
ヴァンプが一瞬の隙を突いてマチェーテを刺そうとして来たが、
雷電はソレをCQCを用いてカウンターを行う。
流れる様に高周波ブレードを受け流す。
幾ら強化装甲と言えど高周波ブレードの前ではただの紙だ。
左腕を犠牲にしたが、完全に斬れては居ない。
人工筋肉は断裂寸前だが、動くには動く。
ソレこそ、ヴァンプを仕留める程度には。
「おい……なにする気だ……お前」
腹に刺さっているマチェーテに力が籠もるのを理解したのだろう。恐怖に染まった顔で首を横に振りながら懇願していく。
「嫌だ……嫌…こんな死に方は!」
マチェーテが内臓と肉を切り裂きながら上に上がる。
股の位置からVの字にできるだけ肉体の中心をなぞりながら、
持ち上げる。
「……失敗したか」
弾丸程度なら回復できただろう。
だが、高周波ブレードに内臓をグチャグチャにされながら股から頭の天辺まで汚く斬り裂かれた。
コミックのヒーローの持つような能力じゃあない。
そんなのは存在しない。
「……ヴァンプは死なないよ」
「いや、殺す」
ヴァンプの再生能力は傷口が直ぐに埋まると言うだけだ。
そのため、
感覚神経はまともに機能していないため、痛みを感じない。
痛みがないから恐怖がない。
「不死身と思い込んでいるだけだ」
いくらキヴォトスでも不老不死等は作れない。
雷電は左腕を捨てると格納していた義手を取り付ける。
「…なんだソレは」
「よく燃えるだろうな、この砂漠には湿気なんてない」
ソレは雷電のパーツの一つ。
火炎放射器だ、ソレをみて即時に理解した。
「ヴァンプを殺らせは」
「焼け死ね」
そして、何処からともなくM16A4が現れる。
グレネードランチャーがマウントされたソレから、一発のグレネードが発射され紛い物に迫る。
「爆発程度!」
「…馬鹿が」
グレネードが高周波ブレードとぶつかった瞬間、激しい炎が紛い物を覆う。ソレはキヴォトスで誰も見たことがない。そして、世界でも残虐兵器として知られる兵器。雷電はもとより火炎放射器など使うつもりはなかった。あくまでも、呼び水と言うだけだ。
「熱い……熱い!!熱いいいいい!!!」
紛い物から距離を取り、慣れないながら右腕で再びグレネードを装填し、今度はヴァンプに向けて撃つ。
「ヴァンプ!ヴァンプ!!!お前!お前何を!!!!」
「白リン弾だ、俺は雷帝の右腕だぞ?場合によっては使うかもしれないと作っていたんだ。生徒には使えない。だが、お前たちには使えるだろ」
「あっ………ごめん…ね……しの……ん」
「ごめんね、ホシノちゃんか。くだらない」
キヴォトスの神秘なら防げるだろう。
しかし、それでも使えるのだ。ヘイローがなければ?
気絶した仲間を運んでいたりしたら?
迫撃砲から白リン弾を撃ち込まれるだけでその学園は機能停止する。民間人も生徒も関係なく傷つける兵器。
雷電は雷帝の様に超兵器は作れない。
だからこそ、既存の兵器を開発し強化し立ち向かう。
「……素晴らしい、素晴らしいぞ!陸八魔セイ!!」
「カイザーPMC理事」
「人の生死を何とも思っていない最高の兵士だ!
命令に忠実、ワンマンアーミーかつ単独潜入。単独作戦行動!
お前こそ、私が……私が望んだ完璧な兵士だ!」
「何?!」
その時、空から何かが落ちてきた。
雷電を囲むように、雷電が回避できないスピードで。
「君は私の部下に欲しい……君がいれば、私はキヴォトスの……いや、カイザーのトップに立っことも出来るのだ!」
「がぁぁぁぁぁぁぁ」
雷電を襲う雷撃、システムの至る所からErrorが表示され意識が遠のく。
「あぁ……最高だ!最高だ!!スーパーソルジャー!
ふふっ…ふははははは!雷帝の遺産?そんなものいるか!
この男さえいれば、この男さえいれば!そうだ!私とお前で…このキヴォトスの頂点に立つのだ!!」
雷電は敗北し、カイザーに捕らえられることなった。