BLUERISING 作:影後
「…捕まったか」
「いや、君はよくやったよ。陸八魔セイ、電磁ネットは我々機械の身体を持つ者にとって致命的な弱点となる」
「……カイザーPMC理事、アンタだよな。定期的にカイザー本社に対し、潜入依頼をしていた依頼人は」
機械の身体で微笑み、理事は一言『そうだ』と告げる。
「私の計画は一言で言えば革命だよ」
カイザーは立ち去る。
「……まったく」
雷電は殺される可能性が無いことを理解した。
カイザーPMC理事、アレは自分と同じタイプの存在だ。
目的の為ならどんな犠牲も厭わない精神。
だからこそPMC兵士を使い捨てるように自分にぶつけてきた。
兵士として、彼の考えている存在の理想が雷電なのだろう。
命に変えても任務を成功させ、潜入工作、奇襲、正面戦闘、遭遇戦。どんなイレギュラーにも対応してみせ、一騎当千の実力。
しかも、身体は機械だ。
ヴァンプは雷電となる前の陸八魔セイのクローンへ再生能力を付与した。だが、それでも雷電は倒せなかった。
むしろ、雷電はヴァンプを殺す手段を持ってきた。
紛い物は陸八魔セイの頃に雷帝とは違った感情を抱いた女性。
そのクローンか、サイボーグか。
だが、最初は怒りに任せたとは言え片腕を斬り落とし、
あろうことか無感情で殺害すらしてみせた。
任務達成の為、どんなにも冷酷になる事ができる
『キリングマシーン』としての才能。
カイザーPMC理事にとって、ソレは理想の
『スーパーソルジャー』なのだ。
「おやおや、随分とだらしのない」
「クライアントか。生憎だが、まだ出る気は無いぞ?
もっとカイザーの情報が欲しい」
「ほぉ…この状況でですか?」
「アレは……マコトと同じだ。道化を演じているように魅せている。理事が望んでいるのは戦場だよ。PMCと言う存在が最も必要とされる時代はどんなものか分かるだろ?」
「えぇ、戦時中。内戦やら……そういうことですか」
「カイザーにとってシャーレは邪魔だが、消したいほどじゃない。だが、理事は違う。奴が望むのは戦争だ。戦争による需要、奴はきっと戦争そのものを牛耳りたいんだ」
「最果てにあるのは………はぁ……
私も研究の為なら厭わない男ですがね、
キヴォトスがなくなるなんてのはナンセンスですよ。
はぁ……」
「俺もだ、俺はただ作ってるのが楽しかったから武器を作り上げ、生徒を使ってたんだぞ」
「殺したの間違いでは?」
「生きてたぞ、その後は行方不明だ。ソレに……
ブラックマーケットで他人を食い物にしてる奴だしな」
「貴方、風紀委員会辞める時の意志は何処へ?」
「過去の事だ。俺は風紀委員会と万魔殿から命の価値を学んだ。二度と生徒を殺しはしない。二度と……多分な」
「おや?悔やんていると?」
「そう見えるか?クライアント」
「ふふっ…いやはや……見えませんねぇ」
雷電はにこやかに笑うと口を動かす。
「殺人は…犯罪らしいからな」
「貴方が言いますかねぇ」
雷電がカイザーPMCの大半を殲滅し、捕まってから数分。
ホシノは倒れている2つの死体を見つけていた。
「…此方は………」
白リン弾で燃やされたヴァンプの死体にショットガンを撃つ。
血と肉が飛び散るが、再生もなく動く気配は一切ない。
「…ほ……しの……ちゃん」
「…ユメ…先輩」
「やっぱり……ホシノちゃん…だ」
紛い物はホシノの姿を見ると声のトーンを上げる。
「ホ………ノ……」
「ごめんなさい……ごめんなさい………」
「良いんだよ、ホシノちゃん。私、生きてたの。
偽者だけど、ホシノちゃん、セイ君と見た星を忘れてないよ」
「なら……なんで……彼奴に……陸八魔セイに勝てる筈なんて」
「ヴァンプ君……もう、死んじゃったけど、ヴァンプ君には
誰もいなかったの。妹さんも、お友達も……だから」
「それでも!勝てるわけが!」
「……ホシノちゃん、本物はきっとセイ君が助けたよね」
ソレは紛い物だが、心は本物と同じ。
「……最期にホシノちゃんに会えて嬉しいんだ。
前は喧嘩しちゃったし……ごめんなさい……ごめんね。
セイ君を………お願い」
ユメは微笑みながらホシノに手を伸ばしたまま、機能停止する。
「……そうか………あいつも……セイも」
ホシノは動かないユメの手を動かし、目蓋を閉じさせる。
「ユメ先輩、例え貴方が偽物でも……貴女はユメ先輩です」
ホシノはショットガンとIRONHOLSを構え歩き出す。
「……ホシノ先輩」
「シロコちゃん……じゃないよね?」
「私は未来から来た。セイ先輩を救うために。
私の未来ではセイ先輩は風紀委員会との戦闘で亡くなった。
私は、その運命を少しだけ変えた」
「…それじゃあ、なんで来たのかな?」
「…セイ先輩はホシノ先輩の前で死ぬ。
ホシノ先輩はたった一人でカイザーの基地に攻め入って、
セイ先輩はホシノ先輩の戦闘音を聞いて脱出して、
敵は壊滅する。でも、理事に殺される」
「……シロコちゃん、おじさんの実力は」
「ホシノ先輩でもどうにもならない。
だからお願い、この時代の私達にも頼んで。
ホシノ先輩、私達はアビドスの家族。
家族は助け合う物だから」
未来から来たシロコはソレを告げると光と共に消えた。
ソレは幻覚ではない、確かに立っていた後が砂にある。
「……雷電、コレで貸し借りなし。
必ず返してもらうよ、私達の仲間を」
「それじゃあ、雷電救出作戦の説明をするよ」
「はい、ホシノ先輩!」
対策委員会、生活部、マグノリア。
アビドスの全部の代表と先生が会議室にいる。
「…先日、雷電がカイザー部隊を殲滅後。捕らえられた」
「援護は無かった、ホシノ先輩の命令でしたから」
「わかってるよ。
おじさんは自分の個人的な不満で雷電を戦わせた。
後でならどんな不満でもぶつけに来て良いよ。
でも、今は違う」
「…問題は戦力。私達は正面切ってカイザーと戦う戦力は無い」
「……一応、言いますがカイザーの基地程度なら滅ぼせる武装ぐらいありますからね?」
「待って……おじさんそれ知らないんだけど」
「そりゃあ、セイ先輩の指示で私が今全体の10%を管理しているだけですし」
「えと……ルナ?その、武装って」
「はい、先生。雷電先輩がゲヘナ所属の中学生だった際、
雷帝と呼ばれる女性と開発したキヴォトスに存在する
最低最悪の兵器ですが、実際使い方を間違えなければ
無問題。此方、ミレニアムにもない『120mmリニアタンク』、
潜入工作、対人、対ヘイローにも使用可能な超高濃度の酸を噴射する『アシッドガン』。生徒が浴びれば皮膚は爛れ、苦しみながら死ぬ一品らしいです」
「一応聞くけど、なんでそんな説明が」
「雷電先輩曰く『会長と共に実験した』とのこと。
雷帝が君臨していた時代、ブラックマーケットやゲヘナの
最底辺あたりで失踪者が居ましたし……
まぁ!真実は闇の方ということです!
実際、行方不明者なんて年に何回も出てきます。
そりゃそうです。退学などで学歴が消されますし、」
「……どんな奴でさえ、私達は…アビドスは雷電に借りがある。先生、戦力の当てって」
「とりあえず、ブラックマーケット行こうか」
「……お兄ちゃんが……カイザーに?
スーパーソルジャー計画?最強の兵士?!?」
ブラックマーケットの便利屋68の拠点。
そこで陸八魔アルは白目を剥いていた。
「人殺しに躊躇いはなく、サボタージュ、ウェットワーク、
何をしても一流の成功を収める……まぁ、セイならね」
カヨコは先生から手渡された資料を読んで理解した。
「あわわ……お兄様、私よりも爆弾が得意です」
「…セイお兄ちゃん、アルちゃんよりもその……ね?」
「アウトローというか、むしろテロリストだし。
一応、報酬はでるの?」
「多くは出せないけど……」
「ご安心を。セイ様の救出につきまして、前金で1億出します。
ついでにカイザーグループ殲滅を」
「駄目だよ」
「まぁ良いです。先生が駄目と言おうと、カイザーの殲滅作戦はセイ様が行いますので」
「…駄目だよ。殺人なんて」
「…フフ…おかしな人ですね。先生は面白い方です。
セイ様が個人的に気に入る理由もわかります。
お馬鹿さん、機械に魂なんてありませんよ?
機械は機械、インプットされた事を行うのみ。
カイザーの者たちも始まり、
つまり0から1にした者達に作られた存在です。
思考や行動にAIにインプットされたもの。
人間に限りなく似せていますが機械です。
さて………問題です。機械を壊すことを何と言いますか?」
「それは……」
「破壊です。先生、お忘れなく。
セイ様は先生の味方ですよ?敵対なんてしたら……
キヴォトスが終わります」