BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_15

「そう言えば、貴方は何故この様な事を?」

 

「何だ急に」

 

捕まるのにも飽きた雷電は黒服の力を借り脱出。

現在は監視カメラ映像をハッキングし、

時間だけ変化させ過去の映像がループするように工作していた。

 

「いえ、このキヴォトスでヘイローの無い貴方。

言うなれば」

 

「無価値な存在だ」

 

「ほぉ、」

 

「驚異的な身体能力もなく、

奴等の遊びで死にかけた事も何度もある。

妹にも話したことはないが、俺は元々虐められていた。

まぁ、ソイツらを殺したのが始まりだ」

 

「生徒を……どうやってですか?」

 

「人質だ。子供は理解しないんだ、ヘイローが消えたことを。

当時のヴァルキューレも優秀でな、子供のお遊びで死んだと

判別したんだ。

まさか、同い年の子供が真犯人だとは思わない。

俺を怪しんだ奴も居たが、品行方正。

ましてや、ヘイローが無い子供が銃の前に出ればどうなる?

そういう判定で無罪だ。

ソイツらの家族は人殺しを生む出したクズ。

そして、撃たれ死んだ娘は悲劇の被害者。判るだろ?」

 

「心象操作もしたんですか……恐ろしい子供ですよ」

 

「っと………バレたか。クライアントは」

 

振り向けば黒服の姿はなく、

目の前には電磁ネットを持った大量の雑兵。

 

「対して、俺の武装は何一つない」

 

「降伏しろ、その身をカイザーの」

 

「誰がするかよ」

 

リーダーらしきドロイドの頭を捻りきり、電磁ネットを奪う。

雷電に効くのだから、通常のドロイドにも効果覿面だ。

 

「ひっ…」

 

「撃て!撃ち殺せ!!」

 

〘アップデート完了〙

 

「……ドクターめ。何を俺に仕込んだ」

 

雷電の視界にBATTLEMODEの記述が見える。

笑った、笑うしか無かった。

つまり、今まで殺していた状態はこの身体の戦闘状態ではない。

この身体のスペックを利用した雷電の自力。

 

「……これか」

 

雷電が一歩踏み出す、それだけで地面が砕け雷光が走る。

それだけではない、雷電には止まっているように見える。

これは雷電の肉体に繋がれている脳がフル稼働している為。

そして、そのフル稼働にも耐えられるように前回、

処置もされたのだ。

 

「………」

 

アンドロイドからアサルトライフルを奪い取ると、

最小弾数で仕留めていく。

キリングマシーン、キヴォトスで唯一殺す事に躊躇いのない、

完璧な怪物が産まれた。

 

「なんで……なんで当たらない!」

 

「フン!」

 

ランチャーを撃とうとするドロイドに破壊した残骸を投げる。

手元が狂い、トリガーを引いたのだろう。

あらぬ方向に弾頭が飛んでいく。

雷電を通り過ぎた弾頭が壁に当たり爆発する。

 

「ひっ……」

 

「スーパーソルジャーだ!やつらをだ」

 

だが、それを笑いながら破壊者はドロイド達を駆逐する。

 

「此奴は……エレベーターか」

 

かなりの深さがあるのだろう。

上は深淵となっている為、まともに見えない。

 

「上にあるようですね」

 

「なら、簡単だ」

 

雷電は黒服のようにその場から消えて現れるという、

超常的な力は有していない。

エレベーターシャフトにつかまりながら上に向かう。

 

「動き出したか……なら、」

 

幅を確認する。自分が横になれる大きさはある。

壁に足をつけると、雷電は壁に対して垂直に立ち上がる。

 

「ピック機能か、ありがたい」

 

最初は一歩一歩ゆっくりだったものが、だんだんと加速する。

雷光を纏うことはしないが、人間の走る速度はある。

 

「ふっ…」

 

「なんだ…うわぁぁ」

 

降りてきたエレベーターを無理矢理止める。

そして、床をまるで紙のように裂いていく。

 

「撃て、撃つんだ!!俺達が落ち…うわぁぁぁぁ」

 

右腕で喋っていたドロイドを裂け目から引きずり落とす。

そして、エレベーターの内部へ入ると弾丸のおもてなしだ。

 

「……効かないな」

 

だが、雷電の装甲を傷付けるには力が足りない。

M134か、12.7×99でもないと、今の雷電を止められない。

 

「おい……なにするつもりだ!」

 

雷電はそのままエレベーターの屋根に上がる。

そして、再び壁に足裏のピックを突き刺し、

開いた穴からエレベーターの中へ笑顔を向けた。

 

「よせ……頼む……やめてくれ!」

 

エレベーターの命綱つないでいた緊急ブレーキを破壊する。

上部と下部、2つあってこそなのだから、

やろうとした事を想像してドロイド達は絶望する。

 

「うっ……うぉぉぉぉぉ」

 

ビチンッ!

 

金属繊維で作られていた筈のロープが破壊される。

一本、また一本と千切られ最終的にエレベーターが落下した。

エレベーターの重さに引っぱられ、

ピックが外れるが直ぐ様下を離し上に巻かれるロープを掴む。

掴みすぎると滑車に巻き込まれ、死んでしまうが雷電はそんな

ミスをすることは無い。

 

「出口か……」

 

「お待ちしていましたよ」

 

「俺、アンタに運んで貰えば良かったか?」

 

「それでは貴方がつまらないでしょう?

研究者ではなく、貴方の真の本質は………」

 

「あぁ……俺の本質は戦争屋さ。

銃を撃ち、人を撃ち、街を壊すのが楽しい。

でも、平和を教示できない訳じゃない。

平和な世界なら、その世界にあった生き方も模索する。

キヴォトスじゃ、その平和が存在しなかっただけさ」

 

只管に笑いが込み上げてくる。

善性を捨てては居ないが、中にあるのは悪性だ。

性善説なんて存在しない、あるのは性悪説のみ。

誰しも、生まれながらに悪なのだから。

 

「…さぁ、蹂躙を始めよう」

 

リミッターが解除されたサイボーグ。

それはキヴォトスにおいて、最も洗礼された兵器であり、

兵士であった。

ロケット弾が飛んでこれば撃ち落とし、

ミサイルを放たれればその誘導性能を利用し、

相手の陸戦兵器を破壊する。

同じ顔で無機質な目をした生徒もいる。

それに対して、高周波ブレードを振るう。

ヘイローもあるが、簡単に斬り伏せられる。

出血もある、が飛び出た内臓物は臓器のみ。

 

「スーパソルジャー……まさか、完成していたか」

 

雷電は容赦なく殺す。

人造の生命体、命令に忠実なだけの存在。

恐怖もなく、仲間が死のうがただ突っ込んでくるのだ。

これらも所詮、破壊対象だ。

 

雷電はまさにワンマンアーミー。たった一人の軍隊。

そこに容赦という言葉はない。

生徒を殺さないという誓いもない。

あるのは、修羅として力と力のぶつかり合い。

 

「随分やってくれたな」

 

「……サラリーマンの姿か?それが」

 

そこに立つのはカイザー理事。

しかし上半身を脱ぎ捨て、

雷電と同じ強化装甲に身を包んでいる。

 

「お前は俺と同じだ!コイツラを殺している時、

お前は笑っていた!楽しいんだろ!殺戮が!

楽しいんだろ!生と死を感じる戦場が!

お前に必要なのは新しい戦場だ!俺がそれをくれてやる!」

 

「笑えないな、お前を倒す」

 

「なら、お前をブチのめして俺の部下にしてやろう」

 

こうして、アビドスにおける最終決戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにこれ…」

 

「これが……雷電先輩の本気」

 

数時間後、アビドス軍がカイザーPMC基地へと辿り着いた。

だが、そこにはカイザーPMC兵士の亡骸が散乱し、

アンドロイドだけでなく、同じ元生徒らしい死体もある。

刀による致命傷を受け中には内臓が飛び出している物もある。

生徒は殺さないという誓いはどうしたのか、

今見ているそれはただの虐殺だ。

 

「っ…おぇ…………」

 

先生はあまりの惨劇に吐いていた。

アビドス軍も同じ気持ちだ。

尊敬する人の裏を知ったのだから。

 

「流石、セイ様です!あぁ…この容赦の無さ。

帰ってこられましたね!フフっ……」

 

「お前…お前はこの状況を!」

 

「何を言っているのですか?ホシノ副会長。

彼等はアビドスを食物にして来た私たちの敵ですよ。

忘れてませんか!私達は陸八間セイに救われた!

導かれた!そして、アビドスで新しい日常を手にした!

でも、その裏で陸八間セイは私たち以上に傷付き、

私達の裏で非道にすら手を染め、サイボーグとしても、

私達アビドスの為に戦っている!言いますがね!

セイ様の行動目的は……アビドス、そして……

あの女です。セイ様を誑かしたあの女との約束!

アビドスを守る為に戦っているんですよ!」

 

「でも……それなら私が止める。私が雷」

 

「がハァつ?!!!」

 

その時、コンクリートを抉りながらスライドして来る雷電。

そして、かなりの跳躍を見せたカイザー理事。

 

「俺は真の自由を目指す!」

 

「先駆者達が築き上げ、今も尚民衆が維持する社会規範。

統率されビジネス化を脱することのない戦争システム。

それらを完全に破壊して、

法も秩序も無く個人の力のみに頼った弱肉強食の、

混沌としながらシンプルな世界に引き戻す」

 

「ぐっ…がはっ……」

 

ホワイトブラッドを吐きながら、雷電はもがく。

 

「今や戦争も暴力も全てビジネスだ!

俺がこのくだらねえ社会システムを、

組織化された暴力を解体してやる!」

お前たちも学園や企業ではなく己の理想のため戦う日が来る」

 

「そして見ろ!俺の身体を!」

 

カイザー理事が自らの外装を無理矢理外す。

その下には、人間と同じ皮膚、そして顔があった。

 

「俺は人間だ!カイザーの糞どもに捕まり、

こんな身体になっちまった!

こんな物を思いついた重役は戦闘用サイボーグに

改造して戦場に放り込んでやる

戦う重役というのも面白いだろう?」

 

「ハッ…全然……面白く無いな」

 

その言葉にカイザー理事は目を見開いた。

雷電を投げるとそのまま、肉体へと拳が入る。

 

「俺はスポーツマンだ!そこらのサラリーマン

とは鍛え方が違う!」

 

左フック、右フック、ストレート。

そして、最期に

 

「上カイザー理事 を

  舐  め  ん  じ ゃ  ね  え ! !」

 

アッパーが入り、雷電は吹き飛ぶ。

 

「これが政治だ!!!」

 

「この俺がぬるま湯に浸かった

キヴォトスの目を覚まさせてやる!

気に入らない奴はぶん殴る!

それが俺の目指すキヴォトスだ!!

セコく儲けてるヤワなインテリだの、

セレブだの草食系(メトロセクシャル)だの、

訳の分からん奴らをぶん殴ってやる!」

 

目の前で雷電がボコボコにされていく。

言っている言葉も、雷電の為、戦いを楽しむ、

そんな人達の為でしたがない。他の人間を考えていない。

 

「どうだ俺の政策は?どうだ、俺の言葉は」

 

 

殴られていた筈の雷電が、今まで見せたことのないほどの

優しい笑顔でカイザー理事を見つめる。

 

「アンタ……本当にただのサラリーマンかよ」

 

「私もつまらない戦争をなくしたいんだ」

 

「よくわかったよ………」

 

満面の笑みを浮かべながら雷電を助け起こし、

雷電の体の埃を払落し、握手と共に熱く抱擁したが───

 

「お前が本物のクズだってことが!!」

 

そう忌々しげに呟いた雷電に背負い投げよろしく投げ飛ばされ

る。

 

「なっ?!」

 

激しい速度で壁に叩きつけられる事はない。

カイザー理事は着地すると、股の間から雷電を見る。

 

「俺は……確かにお前の言う通りの男だ。

戦場の中で生を実感する。人を撃つ、

生命の危機の中でこそ、生きている。

でもな、俺も…会長も……やってる事はゲヘナ、

アビドスの生徒の為だ!俺はまだ、全てを見失っちゃ居ない。

全てを戦場に置き忘れた訳じゃない!

そして、俺の罪を他の奴等に背負わせない!

アビドスの為だ、でもな…殺すのを選んだのは俺だ!

お前等に罪はない、お前等にとって俺は所詮殺人鬼だ。

とっとと帰れ、殺人鬼なんか見捨てて。奴は、俺が倒す」

 

ボロボロの装甲、注視してみれば超高周波ブレードも

刃毀れを起こし、見るも無残だ。

 

「あのドクターとか言った奴、なんで私に

……馬鹿野郎!受け取れ!!!」

 

それは雷電に向けて投げられた。

ホシノの、怒りの投擲だ。

筒型装甲に保護されたそれは空中で分解し、

中から真紅に染まった刀身を持つ高周波ブレードが現れる。

 

「コレは……」

 

「此処に着く前、ドクターとか言う奴から貰ったんだ。

ムラマサだってさ!殺人鬼にはお似合いだよ!」

 

「……確かにな。手に馴染む」

 

「雷電ッ!!!」

 

「……土地の利権書は此処の基地の最上階だ。

奪え、それがキヴォトスだ」

 

雷電はムラマサブレードを構え、

再びカイザー理事と事を構えた。

 

 

 

 

 

 

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