BLUERISING 作:影後
「キヴォトスには変革が必要だ!
――そして!その変革には痛みが伴う!」
「その痛みをアビドスに押し付けんじゃねぇよ!」
ムラマサブレードと超硬質化し黒色となった腕部が激しく
火花を散らしている。
「どうした?遅くなってるぞ?」
「得物が変わった程度で」
雷電の振りの速度は変わっていない。
だが、理事はだんだんと攻めきれないでいた。
先程までのブレードは自身の拳を受け刃毀れし、
後は雷電をぶちのめすだけだと思っていたのにも関わらずだ。
ムラマサブレードと呼ばれた装備を受け取ってから、
雷電の雰囲気が変わったのだ。
「どうした?動きが遅いぞ!」
「がっ?!」
ナノマシンで強化されていた筈の拳が吹き飛ばされる。
カイザー理事は理解できない。
ほんの数分前までは勝っていた。勝っていたのだ。
それが少なくとも、互角レベルまでなっている。
「……当たり前だ。コレは俺の意思〘イベント〙だからな」
「意思〘イベント〙だと?!巫山戯るな!
意思程度で、心構え程度で変わっただと?!」
「お前を殺す、今あるのはそれだけだ!」
そこにあるのは青春なんて優しい物じゃない。
血と鉄、硝煙が入り混じる最前線。
その中で、男と男が戦っている。
「ゲホゲホッ……」「ゴブッ………」
雷電はホワイトブラッドを、カイザー理事はオイルを吐き出す。
雷電はもとより、受けたダメージが大きい。
カイザー理事はここ数分で雷電に与えたダメージと同等の
ダメージをその身体に受けている。
「何故だ……何故だ!何故、お前は」
「俺は……約束したんだよ。アビドスを……護るってな!
初恋の女に頼られた!なら、やってやるだけだ!」
ムラマサブレードに力が籠もる。
刀身が赤熱化し、カイザー理事に迫る。
「ぬぅぅぅぉぉぉぉ」
カイザー理事裏の右拳とムラマサブレードに鍔迫り合いが
巻き起こる。火花を散らしながら、カイザー理事は怒りを、
雷電は笑みを浮かべる。
「死ぬのは怖いか?」
「黙れ!」
雷電の左足の先端からナイフが飛び出る。
それは高周波ブレードをナイフ状にしたものだった。
「無様だよな、築き上げたすべてが今……
俺と、アビドスのメンバーに崩されようとしてる」
「くそ………」
「土地の利権書、既に回収してあるんだ。
どう思う?カイザー理事」
嘲笑う雷電と憎しみに燃えるカイザー理事。
「貴様はスクラップにしてやる!この俺が!!」
「やってみろよ、FATMAN」
カイザー理事の拳は既に冷静さが無くなっていた。
雷電に対する憎悪と怒り、それだけではない。
自分が築き上げてきたすべてを一瞬で喪った喪失感。
もう、感情はぐちゃぐちゃだ。
それらすべてを雷電に殺意としてぶつけている。
「………笑えるな」
対する雷電はもう何も考えていない。
アビドスの事、不良達の事。これらからの事。
一切を考えず、今目の前の戦いにだけ、生死のみを考える。
そう、迷っていなければ慈悲もない。
只管に刀を振るのが楽しく、相手を殺す想像が止まらない。
肉体のスペックも最大限に活かし、暴れる為に嗤う。
「なっ?!」
カイザー理事の左腕が宙を舞う。
もう、耐えきれなかったのだ。
超高周波ブレードたるムラマサブレード。
並の高周波ブレードよりも強靭で斬れ味も上。
此奴は、Dr.AEDが雷電の本質たるバーサーカーという
側面を見抜き、戦闘を素早く終わらせる事で被害者を少なく
するという矛盾に満ちた中で創り上げた傑作だ。
高周波ブレード技術を持つカイザーでも、
雷電の様な戦闘用サイボーグを創り出すだけでなく、
さらなるアップデートも行える技術者たるDr.AEDと
ミレニアム最低最悪のマッドサイエンティスト調月リナの、
合作なのだ。贋作で終わる者達に倒せるはずが無い。
「なっ…」
「GoodLuck」
雷電によって胸に切傷をつけられたカイザー理事。
だが、雷電は止まらない。
カイザー理事の傷口からコアを左腕で無理矢理引き出す。
オイルが返り血のように雷電に溢れ出る。
「ごっ……、がぁ………」
声にならない機械音がカイザー理事から聞こえてくる。
それを雷電はまるでメロディーの様に聞き流しながら、
コアを引き抜いた。
「ふん」
グシャリとコアを潰し、中のオイルが雷電に降り注ぐ。
それだけで、雷電のダメージは回復する。
「……」
既に骸となったカイザー理事。
だが、それだけではつまらない。
「これがいいな」
カイザー理事の頭部を無理矢理引き抜くと脊髄の様に、
骨格パーツとコード、オイルが溢れる。
適当なライフルを地面に突き立て、その上から引き抜いた
脊髄を突き刺した。
「あぁ……無様だな、実に…笑える」
後やる事は、先生達の援護だ。
「あぁ……くそ………」
だが、足が動かない。
ダメージはないがホワイトブラッドがゆっくりと流れ出ている。
カイザー理事で回復した分も既に流れた。
「……自己中毒か」
既に内部では漏れ出したホワイトブラッドが汚染している。
ゆっくりと自分の死が近付いていてくる。
「ん…先輩、死に過ぎ」
「また来たのか、いい加減に眠らせてくれ」
「駄目、未来では先輩が必要。
例えどんなにテロをしても、先輩はアビドスの先輩」
「………まったく」
シロコ、後輩にそう言われたらどうしようもない。
「これ、修復用ナノマシン。使い方は先輩が知ってるって」
「……あのマッドサイエンティストの作品だな。
まぁ良いさ、一度はお前に助けられ、二度目もそう。
なら、三度目は置きない。俺はそう簡単に死なない」
「ん……約束。
ホシノ先輩、喧嘩別れしてからまともに話してなくて、
泣いちゃったみたいだから」
「つまり、此処で死ぬとホシノが泣くと。
ふっ……笑える」
ムラマサブレードを自身が居た証明に
突き立てるとシロコを見る。
「未来に宜しく」
「ん」
シロコは再び消えた。それを見送ると雷電は声を上げる。
「クライアント、居るかい?」
「えぇ、それで?ここらどうします」
「俺は撤退だ、これ以上は観察さ」
雷電は現場にホワイトブラッドを残し、姿を消した。
土地の利権所と、カイザーグループの汚職。
ありとあらゆるデータの入ったUSBを入手した先生達。
カイザー理事と雷電の戦いは既に終わっていた。
「……アイツ」
ホシノの前にあるのは、
最低最悪なオブジェクトと化したカイザー理事。
ムラマサブレードに貫かれ、既に事切れている。
「…雷電先輩は」
辺りには大量のホワイトブラッドが撒き散らされております、
事情を知らない対策委員会メンバーからしたら
たった一つの考えが浮かぶ。
「そんな……先輩……」
セリカは泣き出していた。
雷電は死んだのだろう。
大量のホワイトブラッドがそれを示している。
「……アイツは生きてるさ」
しかし、ホシノは怒りに満ちた顔で
ムラマサブレードを引き抜く。
「奴は黒服の配下だ、絶対に生きてる」
ホシノはムラマサブレードを振るい、
残ったカイザー理事の身体をバラバラにした。
「………一応、アイツはアビドスの所属だ。
どうせ、何処かで観察してるよ。私達が泣いてるかとか、
そんなのを見てるはずだ。それこそ………カメラとかで」
そして、ホシノは見上げる。
「クソ野郎」
「恐ろしいですね、貴方の性格、動き、
カメラじゃなくてドローンであるから
バレなかったようなものです」
「違う、アレはぶっ壊そうと思ったが今は見逃してやる。
の顔だ」
「以心伝心ですか?」
「アレはアレで壊れた人形だからだ。
壊れたから、中に無理やり入れて綿にした。
俺はそのまま人形が捨てられ、格好の良いフュギュアが」
「とりあえず、アビドスはコレで終わりですかね。
ホシノさんへのアプローチは続けますが……
まぁ、駄目でしょうね」
黒服は笑いながら話す。
時襟、知らないうちに先生と話している様子。
本人曰く、通常は危険にならない。
また、先生単独なら敵じゃない。
その言葉を信じている為、護衛はいない。
「あと、当分の間はご自由に過ごして頂いて大丈夫です。
何かあれば迎えに行きますので」
「了解した」