BLUERISING   作:影後

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勇者と殺戮者2

 

「1週間珍しくゲヘナで大人しくしてたな」

 

「別に暴れてもよかったが、イブキが四六時中監視してる。

お前、俺が子供に甘いの知って利用したな」

 

「キキキッ、苦渋の決断だ。マコト様にとってもイブキは

大切な存在だからな。だが、お前を抑える為にお願いしたら、

進んで受けてくれた」

 

「……そうか」

 

腕枷、足枷と病室以外で過ごせない中でイブキとの会話。

お絵かきはココロの癒しであった。

 

「セナ、セイはいったい」

 

「PTSDです。

一度、睡眠術等もかけて本音で話して貰いました。

これは、同意書です」

 

「……あぁ、涙が止まらなくなったよ」

 

「PTSD……待て、何時からだ」

 

「幼少期、ヘイローが無いため虐められ、

その矛先も妹である陸八魔アルに向けられた際、

弱い自分を捨てるために強い自分を演じ、

心が壊れていったようですが……

優しさよりも、激しさと憎しみ、ゲヘナといえ環境が

最悪な方向に向いたようですね。

次に、そんな自分を肯定し受け入れてくれただけでなく、

重用し片腕にしてくれた雷帝、

彼女がマコト議長とヒナ委員長達に倒されただけでなく、

自分の居場所も奪われた。

その憎しみを無理矢理抑え込み、風紀委員会として活動。

その際、初恋であったアビドス生徒会長の死亡も重なり、

壊れた心を無理矢理埋める為、戦いへ傾倒。

痛みがあるから生きていると言う、

バトルジャンキーにして史上最悪のテロリストが産まれました。

個人的に言えばもっと速く捕まえられれば、

余生をマシな環境で過ごせたでしょう。

もう治りません。救えません、これが今の彼なんです。

ついでに聞きましたが、生徒を殺す事は嫌だと。

苦しいと言っていましたよ。でも、必要なら殺すと。

ヘイローが消えたあとにトドメを刺せば良いと。

ヴァルキューレの監獄に入れるべきです。

思想も、考えも、何もかもが危険すぎる。

私達は遅すぎたんです」

 

セナのそんな言葉で雷電は笑う。

いや、嗤っている。全てを見下すように。

全てが無意味だと言いたげな様に。

 

「取り敢えずだ、面白かった。

この1週間、生身の生活も悪くない。食事をとれるのも良い」

 

「何を」

 

「セナ、お前自分の相棒はちゃんと持っとけ」

 

「それは私の」

 

セナのグレネードランチャーを自分の頭に付ける。

死ぬのは怖くない、一度は死んているのだから。

 

「あっ、お兄ちゃん何してるの?」

 

「イブキ?!」

 

「駄目だよ!危ないよ!」

 

正直、マコト、セナ、ヒナの目の前で雷電は

自分をミンチして病室を真っ赤に塗装しようとしていた。

酷い爆弾だ、人がミンチになる瞬間を見せトラウマに

してやろうと本気で思っていた。

そして、3人も雷電の性格を知っているから悪夢を予想できた。

だが、純粋無垢な天使が此処にいた。

 

「お兄ちゃん、お絵かきしよ!」

 

「……そうだな」

 

流石に子供の心を壊すことはしたくない。

セナにグレネードランチャーを返し、ついでに拘束も解く。

ゴキュゴキュという到底体から出る音ではない。

腕、足が外れ再び同じ気持ちの悪い音が響く。

 

「は?」

 

「さて、イブキ。行こうか」

 

「うん!お兄ちゃん!!」

 

そう、雷電は生身であるが人ではない。

悪魔族を模しているが、生身の怪物なのだ。

 

「マコト、セナ、ヒナ、お前らも来い。

イブキとお絵かきだ」

 

3人を屋上へと連れていき、キャンパスに3人を描く。

絵の描き方も全てコンピューターとして出来るものだ。

 

「お兄ちゃん凄い!」

 

「あぁ、ありがとう。」

 

3人、特に真ん中のマコトに抱かれるイブキの絵。

銃を撃つ以外も知っている、壊れているのも知っている。

だが、雷電にはそれしか無い。

 

「その絵はくれてやる」

 

「待ちなさい、セイ」

 

「……病室に戻るだけだ」

 

そして、その日の晩。病院は〘炎〙に包まれた。

 

「……冗談だろ」

 

無差別攻撃としか言えないもの。

ヘリとロケット弾、銃声が所狭しと聞こえてくる。

病院に降下してくるロボット兵。それだけで何処の部隊か

理解できる。

 

「………くそ」

 

腕は拘束され簡単には抜け出せない。

抜け出すには鍵が必要だった。

足音がだんだんと近づいていくる、別に撃たれることも、

死ぬことも恐れては居ないが、此処にいる者達は殲滅

しなければ申し訳がたたない。

 

「生きていますか!」

 

「セナか、鍵は」

 

「これを」

 

そう言うとセナはベレッタを投げ渡してきた。

 

「今、救急医学部の生徒が戦闘中です。

しかし、敵の数は多く患者〘にも〙死傷者が」

 

にも、という事は救急医学部にも出ている。

死者か判らないが、やるしかない。

少なくとも、キヴォトスにおいて最も人殺しなのは雷電だ。

ベレッタで両手両足の鎖を撃ち抜き、解放される。

 

「予備のマガジンは」

 

「無いだろ、必要ない。装備は現地調達だ。

俺がポイントマンだ、付いてこい」

 

ベレッタにサプレッサーは付いておらず

狭い通路では銃声が響いてしまうだろう。

 

「止まれ」

 

ライトに照らされてロボット兵が浮かび上がる。

ゆっくりと角に近づき、顔を少し出す。

 

「居たか?」

 

「いや、だがここから先に逃げていく生徒を見た。

恐らくは……」

 

「判った、俺はこのまま警戒する」

 

話し終えたロボット兵の一人がゆっくりと

雷電に向かって歩いてくる。

ロボット達は基本的に通信機か直接の会話だ。

人間らしいと言えるが、雷電としても都合が良い。

 

「下がってろ」

 

セナに少し離れるように指示する。

そして、角に突き当たった瞬間、雷電は腕力に物を言わせ

ロボット兵を掴み、引き寄せる。

ロボット兵に口はない、発声装置があるだけだ。

そして、首周り。俺は通常のキヴォトス人なら出来ないが、

雷電なら首折の要領で破壊出来る。

 

「……ブラックライフル。CQC対応マズルか」

 

「……手際が良いですね」

 

「慣れてるからな……他には」

 

装備を弄る。病院服では心持たない。

ロボット兵の着けているアーマーと弾薬グレネードを回収する。

病院を襲撃するには重武装というだけじゃない。

恐らく、生存者を残すつもりはないのだろう。

雷電はセナに匍匐するように言いながら廊下を進む。

患者と思える死体にセナは顔を青くする。

 

「良かったろ、本当の死体だ」

 

「最低」

 

赤い液体とスプリンクラーから流れる汚水が合わさったそれが、

汚らしい。

 

「遅いな、奥の部屋を見るだけだろうに」

 

先程の奴の仲間だろう、

地面の死体に紛れ背後の位置になると直ぐ様立ち上がる。

 

「なん」

 

水音で振り向いたドロイドにブラックライフルを突き立てる。

首周りの装甲を破壊し、そのまま持ち前の力で首を引き千切る。

 

「……M870か、使えるだろ?持っとけ」

 

「…ありがとうございます」

 

「グレネードと、アーマーもだ。風紀委員会の援軍が遅いな。

いや、これは面倒だぞ」

 

「何故?」

 

「ヒナなら最低3分だ、どんな手品か知らないが、

すぐに現れる。のにこない、こんな大規模テロが起きててな。

つまり、周囲を抑えられているか。マコトが何かしてるか、

はたまた、ヒナ案件のテロリストが多くいるかだ。

どちらにしても、俺の仕事は敵の殲滅か」

 

「私の仲間や患者は」

 

「生きてたら助けてやれるかもな、でも……

基本は敵を殺す事を優先するぞ。

しかし、ここの警備はどうなってる。

これ程の部隊だ、気付かない訳が無い。ましてや……

いや、くっそ……」

 

『デミトリー3、応答せよ。デミトリー3』

 

「……通信障害は起こってないのか?」

 

「そうみたいですね。貴方、応援は呼べないのですか?」

 

「……判った、スマホを貸して欲しい」

 

「壊さないでください」

 

セナのスマホを使う。

別に無線封鎖されていないのなら此方でも電話出来るはずだ。

 

『はい、此方マグノリア。本社」』

 

「雷電だ、報酬は1億。現在、所属不明部隊により

ゲヘナの◯◯病院が襲撃を受けている。動かせる奴等を

すぐに動かせ、これは命令だ」

 

『命令って、貴方誰ですか』

 

「新入りか、お前たちの設立者の名前は覚えておけ。

コードは雷電、本名は陸八魔セイだ。わかったなら、

さっさと動け。ヘリを忘れるな、わかったならやれ」

 

スマホ越しに悲鳴が聞こえたが、即座に切る。

雷電はそのままセナにスマホを返し、AR15を構える。

 

「……行くぞ」

 

「……マグノリアの設立者、その事は伝えないでおきます」

 

「俺には1円も入ってない、俺の資金はカイザーからの略奪と、

奴等のブラックマネーをロンダリングしたものだ」

 

「……もう良いです」

 

 

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