BLUERISING   作:影後

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勇者と殺戮者3

「……援軍は」

 

「さぁな、アビドスにいるオペレーター。

マグノリアはゲヘナ風紀委員と万魔殿に何人かが駐留してる。

俺の教えを受けた戦闘員だ、引く手数多らしくてな。

どちらにろ、ヘリがある。戦闘ヘリだ。最低でも小隊。

分隊で終わる事はない。ゲヘナだからな」

 

ブラックライフルに奪ったフラッシュ・ライトを装着し、

照明の死んだ通路を進む。常夜灯も消え去り、

残っているのは赤暗く光る非常灯のみ。

時折聞こえていた銃声も鳴りやり、一層不気味さを醸し出す。

 

「この部屋に入るぞ」

 

「わかりました」

 

ピチャピチャと水音を立てながら、部屋の中に入る。

 

「ひっ……」「……来ないで」

 

「誰?!」

 

「貴女は」

 

「知り合いか?」

 

部屋の中にいたのはピースメーカーを構えた救急医学部員と

まだ幼い子供達だった。

 

「……セナ部長と………陸八魔セイ?!」

 

「最低最悪みたいな顔をするな。

それよりもだ、お前の仲間は?」

 

「…知らない。

変な部隊に襲われて何人かが応戦してたけど、

ヘイローが消えても撃たれ続けて……私は怖くなって」

 

「良いさ、お前は兵士じゃない。医者だ。

医者は患者を救うことを優先しろ、しかしピースメーカーか

渋い銃だ。質屋に売っ払うかしろ。

リボルバーで戦争を生き残れるのはフィクションだけだ」

 

「……セイ、私は」

 

「残ってろ、忘れたか?ここから奥は制圧してある。

幸い、通信機は回収してあるだろ」

 

雷電はここに来るまでに殺したドロイド兵から奪った通信機を

セナに渡していた。何かあれば通信で連絡する為だ。

 

「周波数は141.85だ。間違えるなよ」

 

「わかりました、何かあればCALLします。

こちらの周波数は140.68です。

死体……いえ、患者を見つけたら連絡を。

私は、一人でも多く救いますので」

 

雷電はセナと別れると一人、闇の世界を進む。

撃破されたアンドロイドだけでなく、生徒の死体も増えてきた。

生徒が死ぬ事は既に雷電が証明しているのだ。

キヴォトスという神秘の世界で、

神秘など関係なく人類の叡智の結晶で雷電は何人もの

ブラック・マーケット・ガード(BMG)や、

カイザーPMC所属の生徒クローンを殺した。

そう、殺したのだ。

生徒クローンは皆、ヘイローという神秘があった。

だが、この殺戮者はそんな神秘をものともせず返り血を浴び、

肉を裂き、腸を踏みにじった。

敵対者、いやカイザー所属と言うだけで人としての尊厳。

価値、意識、全てを破壊し、皆等しく骸にする。

それが、今の雷電なのだ。

 

「……たす……けて」

 

それは掃除道具を入れて置くだろう倉庫の様な

場所から聞こえた。

雷電はブラックライフルを構えながら扉を瞬時に開け、

中にマガジンを投げ入れた。

カタンという落ちた音しかしない中で、ゆっくりと扉を開け、

死角を警戒しながら入る。

中には痣と血に染まった救急医学部員がいた。

 

「意識はある、カイザーじゃないな。……おい、おい」

 

雷電は生徒に声をかけながら、通信機で140.68に通信する。

 

「どうし」

 

「手短に言う、両足が撃ち抜かれてるが動脈は無事。

嬲られた後もある、おそらく骨折もしている。

そこから通路を北に直進して階段付近の用具入れ。

運び出せる装備はそっちにあるか?」

 

「担架があります、でも子供達が……」

 

「止血は試みる、そっちに連れて行く」

 

雷電は通信を切ると、

持ち前の腕力て生徒のスカートを破った。

 

「あなた……なに……」

 

「止血する、まだ安全なところに連れて行く」

 

「そう………たすかっ………」

 

苦しかったのだろう。辛かったのだろう。

安堵の涙を流すと意識を失った。

呼吸はまだしている、生きている。

だが、安堵はできない。敵性勢力の制圧は終了しておらず、

今は停滞状態というだけだろう。

敵はおそらく、体勢を立ておなしている。

そして、一気に制圧。いや、殲滅に移るだろう。

 

「死体、死体言ってる女だ。救えるかは、自分次第だぞ」

 

雷電はセナの前に件の生徒を寝かせ、そう呟く。

 

「……もう、死体なら嫌と言うほど見ています」

 

氷室セナの心は既に変わらない。

戦場にいて、死んでいく生徒。ヘイローが消えて、

殺される生徒。それを一人でも無くすために今此処にいる。

 

「私の覚悟は、殺してでも救うこと。仲間を、患者を。

そのためなら、悪鬼羅刹、修羅にでもなりましょう」

 

「……止めておけ、白衣の悪魔は白衣の悪魔でいろ。

俺のようになると、地獄も天国も無くなるぞ」

 

雷電がそう言い終わると、再び激しい戦闘音が響く。

それどころか、爆発も何回も起き病院自体が揺れている。

直ぐ様廊下から外を見る。風紀委員とマグノリアの共同戦線と

所属不明部隊が激しい戦闘を繰り広げている。

 

「……彼奴等、来たのか」

 

それは見覚えのある生徒。アビドスメンバーだった。

 

「先生」

 

「…あの人も俺のせいで血や死体は見慣れたか」

 

部隊指揮において、才能があるのだろう。

外にいた部隊が悉く撃破されていく。

 

「何処へ?」

 

「中の掃除だ」

 

ブラックライフルの点検をし、戦場に向かう。

セナは雷電が歩いていく方向を見続けると、

マズルフラッシュと爆発音が鳴り響く。

 

「陽動のつもりですか」

 

雷電はセナにさっさと逃げろと言っているのだ。

周波数を敵部隊の物に合わせてみれば、いくつもの怒号、

そして悲鳴が流れてくる。

 

『こちらブラボー!被害甚大、救援を』

 

『ネガティブ!此方は風紀委員とアビドぐぁ!』

 

「……外の制圧は粗方終わってますね。なら」

 

セナは非常用懐中電灯を病室から出し、

風紀委員に向けて照らす。

おそらく気づいてくれたのだろう、ライトが光返された。

 

「……セイ君、頼みます」

 

敵の残存戦力が判らない以上、下手に動けない。

救助が来るか、チャンスが来るか。

セナは患者を守りながら、そう考えた。

そして、雷電はと言うと

 

「グレネード!」

 

「馬鹿め」

 

グレネードを投擲しようとしたドロイドの腕を撃つ。

流石にグレネード自体に命中はしないが、

その場に落下したグレネードが未来を物語る。

 

「く……」

 

悲鳴を上げる間もなく、爆裂し吹き飛ぶ。

攻撃手榴弾だったのだろう、爆風は来たが破片は特にない。

 

「居たぞ!攻撃しろ!!」

 

「……何人いやがる」

 

既にマガジンを2回も交換している。

略奪したマガジンの総数は5本、

アーマーに装着できた最大数だ。

 

「……ふぅ」

 

銃弾の雨とマズルフラッシュが輝き続ける中で、

雷電は不思議と安心感を得ていた。

学生や不良ではなく、真に命のやり取りをしている。

稀に平穏な日常も欲しくなるが、やはり魂の本質は

〘War Dog〙、戦場が居場所なのだ。

兵器開発も好きでたまらなかったが、

こうしている方が色々と心が落ち着く。

だが、少しばかり不満があるが。

ライフルだけでなく、銃だけでなく、やはり刀がないと

落ち着かない。

雷電にとって刀は、高周波ブレードは今では相棒だ。

数多の敵を切り裂き、数多の生徒の模造品を血の池に沈め、

時には高周波ブレード同士で戦いもした。

 

「帰ったら取り敢えずサイボーグの方の身体を」

 

「帰ったら何?」

 

頭にゴツンと何かが当たる。

聞き覚えのある声というだけでなく、

節々から怒り心頭と言った心が感じ取れる。

銃声も聞こえなかった、つまり体術か何かで

カイザーのドロイド兵が倒されたという事だ。

 

「まぁ待て、話し合おう。お前も人殺しに堕ちるのか?」

 

「……黙れ」

 

「ホシノ、友人としてだ。今すぐ離れろ。

さもないと不味いことになる」

 

「何がだ?言ってみろよ」

 

普段のホシノよりも強い口調だが、雷電は笑う。

 

「ホシノ先輩、何して」

 

「へ?セリカちゃん?!」

 

「後輩の前で撃つのかよ」

 

「…お前やっぱり嫌いだ」

 

「え?陸八魔先輩?!」

 

「取り敢えずお疲れ様でした。怪我人が多くいてね、

保護して脱出しようか?セリカ」

 

「え…あっ、はい!」

 

数十分後、雷電はマグノリア、風紀委員会、万魔殿を指揮し

残党の殲滅と怪我人および生存者の救出と、

死亡者の照合を行っていた。

 

「ヒナが来ていない以上、俺の指揮下に入れ。

俺の元立場を理解しているうえ、知っているならできるはずだ。

拒否しても構わんが、今最重要事項を考えろ」

 

「セイ先輩、イカれてますよ」

 

「チナツに…なんで万魔殿はイブキなんだ?」

 

「?」

 

「眠たいよな、よしよし……」

 

万魔殿の代表のイブキを寝かしつけ、

ヘッドホンをつけて音が入らないようにする。

 

「まったく、いや……俺のせいか?」

 

「…陸八魔副委員長私達は何を」

 

「マグノリアは分隊を組み、各階のクリアリングだ。

殺して構わん、捕まえれば情報が入る程度。

どうせ末端も末端だ、大したものはないだろう。

風紀委員会は生徒救出及び遺体の運び出しだ。

万魔殿、お前達はゲヘナ在学生で入院中の生徒のデータ

を持ってこい、死体はある。全員が全員身分証むを

所持している訳じゃない」

 

雷電の言葉に息を呑む、だがこれが現実だ。

 

「救急医学部のメンバーは見つけ次第連れてこい。

奴等がいれば救える命もあるだろう。

ほら動け、死体をみたいとほざく救急医学部の部長に

プレゼントしてやれ」

 

雷電の指示を受けた生徒達は、

青い顔でそれぞれ動く。

そして、そんな雷電の前にアビドスメンバーと

セナ、シャーレの先生が姿を見せた。

 

「最低な皮肉ありがとうございます」

 

「……雷電」

 

「俺は悪くない、カイザーだ。戦争まで仕掛けるとは。

まぁ、奴等から大した情報は得られないだろう。

奴等はそう言う組織だ」

 

「ねぇ、雷電はどうして」

 

シャーレの先生からの問いに、雷電は微笑みながら返す。

それは整った顔つきから出た純粋な笑み。

何も知らない少女や女性が見れば頬を赤らめるだろうが、

その精神を知っている者達からすれば、

その笑みは只管に歪んで見えた。

 

「どうしてこうなったか?

イジメられ、妹を護ろうと強くなったからだが?

ヘイローもなく、撃たれれば死ぬ。

だが、子供にそれが理解できると思うか。

答えは…できるはずが無い、子供は純粋だ。

純粋で残虐だだから平気でできる。

俺は左腕をショットガンで撃たれた。

危うく義手生活だ。まぁ、今ではサイボーグだが。

兎に角、俺は復讐した。

俺は成長が早くてな、5歳の時には自己の確立と、

己の立場を理解できていた。イブキと同じだよ。

だが、イブキには周りに良い人が居た。

俺には居なかった、その違いだ。俺は5歳で人殺し。

いじめてきた奴を生き埋めにし、証拠も消し去った。

そこからは完全に…というか先生。セナや周りの奴から

聞いてないのか?催眠術もされて調書を取られた。

アンタにも回っていると思っていたが……

あぁ、救えると思うな〜?救えない命や人間は

居るんだ」

 

何事もないように微笑みながら話す姿に、

シャーレの先生は言葉を失う。

 

「言ったでしょう、先生。

陸八魔セイは壊れている。もう、誰にも救えないんです」

 

 

 

 

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