BLUERISING   作:影後

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勇者と殺戮者4

「……ゲヘナでは随分と暴れましたね」

 

「カイザー相手にな」

 

サイボーグの持つ手にはボロボロの義体がある。

ゲヘナで先生達から逃亡した雷電は、

直ぐ様ルナの駆るステルスヘリに回収された。

そして現在はミレニアムサイエンススクールの職員として

偽装身分で生活していた。

 

「C&Cはどうだ?」

 

「あー……ネルのとこ?別に。この私を誰だと心得る?

ミレニアム最恐最悪のマッドサイエンティスト。

調月リナである、姉やヒマリちゃん程全知じゃないけど?

むしろ、全知なんて称号は無価値さ。

無知への探求、それこそがあるべき姿。

君のせいで、私が特にやりたいバイオニクスの

研究ができて嬉しいよ。

メカトロニクスはドクターが居るし、

くくっ…カイザー式クローンのデータ、

持ってきてくれて助かったよ。

あれのおかげで君の義体も完成したのだからね。

君は男だし、精子を作り出す機能もある。

個人的に私が作り出した義体の遺伝子から産まれた

子どもにどんな影響があるのか気になるし」

 

「その場合、私が立候補します。

セイ様の子を身籠れるとあれば、私の体こそ最適です」

 

「ウ~ン、個人的に自分の身体で実験したいけど

観察も視野に入れておくか」

 

「……生々しい話を俺の前でするな。

人工授精でもするのか?」

 

「何言ってるの?なわけないじゃん。

そりゃあ―――と―――をし――して」

 

「……冗談じゃないようだな。

俺は関係を持つつもりはないぞ」

 

「それは困るね、実験にならない」

 

「……俺はまだ関係を持つつもりはないぞ」

 

「まだね、まぁ良いさ。じゃあ雷電、仕事だよ」

 

「仕事?何の」

 

「私の数少ない友人と言える後輩の

居場所が喪われようとしていてね。

色々と大変そうだから君、助けて来てよ」

 

「シャーレに投げろ」

 

そう、この手の問題はシャーレ案件だろう。

少なくとも、兵器であり殺戮者に与えるものではない。

 

「いやぁ…その子たちブッ飛んでるからさ。

下手したら、セミナーやC&Cに喧嘩売りかねないんだ。

だからさ…頼むよ…君の義体、もっと優秀にするから。

お願いね、私の可愛い、可愛い後輩達をさ」

 

 

そして数日後、

 

「うそっ、雷電?!」

 

「え?用務員さんの事、先生知ってるの?」

 

才羽モモイがゲーム開発部の部室を掃除している用務員に

叫び声を上げる。

表向き、雷電の通り名は浸透していない為バレないが、

現状最悪としか言いようがない。   

 

「用務員さん、雷電って…その格好いいですよ!」

 

「ミドリ、雷電はコードだ。本名は平凡だ」

 

ここはゲーム開発部、どうやらシャーレに救援要請を

送っていたようで先生まで訪れたのだ。

 

「もう…ゲヘナから急に居なくなったと思ったら、

ミレニアムで何してるの?」

 

「仕事だ、コイツラのオモリだな。

マッドサイエンティストいわく、

何しでかすか分かったもんじゃない。

危険な事に巻き込まれるなら、もっと危険人物おいて、

C&Cとセミナーの目を釘付けにしてやれとな」

 

「えー!?用務員さん、危険人物なの?!」

 

「うそ…お菓子くれる良い人なのに」

 

ガタッ

 

「ユズ、は……完全に隠れたな。

お前達だから言うが、俺の本名は陸八魔セイだ」

 

「モスト・ウォンテッドじゃん!凄いよ!

ゲームの題材にしようよ!

キヴォトス全土で暴れまわるやつ!

ねぇ!セイさ……雷電さんも良いよね!」

 

「うそ……お姉ちゃん?!」

 

「俺が言うのもなんだが……お前、

警戒心なさ過ぎないか。普通、ユズぐらいは……

いや、ユズはそもそも人見知りか」

 

雷電は呆れたように肩をすくませる。

 

「まぁ、雷電さんで通すとして先生。

G-Bible取りに行く話、援軍って」 

 

「うん……私の知ってる最強戦力連れて行こう!

と思ってたら、何故か目の前に居ます。

驚きました、先生ドン引きです」 

 

「なんだそれ、てかG-Bibleとはなんだ」

 

「昔のキヴォトスにいた伝説のゲームクリエイターが

作ったとされる神ゲーマニュアルだよ!

それがあれば、私達ゲーム開発部は」

 

「わかった、俺は陽動か?

なんだ、C&Cか?それとも、警備員か?

ミレニアムでテロすればいいのか?

C&Cには喧嘩を売る手はずだからな、丁度いい」

 

「違うからね?!護衛だよ!護衛!」

 

 

そして現在、

 

「もっとだ………もっと俺に斬らせろぉ!!!」

 

雷電は更にアップデートされたサイボーグとして、

アンドロイド達を斬り伏せていた。

弾丸は基本的に弾かれ、接近戦を仕掛けたドロイドは

高周波ブレードで一瞬にしてバラバラになる。

バラバラにならずとも、

コアを引き抜かれ雷電の回復に使われる。

そう、射撃や諜報もできるが雷電にとっての一番は、

やはりこの高周波ブレード、刀での戦いだ。

オイルをまるで返り血のように浴び、

笑いながらアンドロイドを倒していく。

容赦なんて言葉はない。

斬り溢しも無い。

 

「無双アクションみたいだ!」

 

「……これが真っ赤な血だった時があるんだから」

 

「うわぁ……」

 

モモイは雷電を見て只管に笑い、叫んでいる。

先生はこの状況と激しく似通った現場をみたことがあるため、

素直に喜べずつい愚痴が溢れ、

ソレを聞いたミドリは顔を青くして引く。

 

「いっけぇ!雷電!!

そんなブリキはお釈迦にしちゃぇぇぇ!!」

 

『任せろ!』

 

乗りに乗って音声システムに異常が出ていることも考えず、

モモイに言われるが儘にドロイドを切り裂き、

オイルを浴びる。

一体何体のドロイドが無に帰っただろうか。

ほぼ全身がオイルに塗れ、それでも笑みをこぼす雷電。

高周波ブレードを鞘に納めると一言。

 

『全滅させたぞ』

 

「フフ……流石だよ雷電!その力があれば、

このキヴォトスを征服する事も出来るはずだ!」

 

『お前は何を言っているんだ』 

 

「あの、お姉ちゃんは乗りに乗って

魔王ムーブしてるだけなので、その許してください」 

 

『別に許すことなど何もないのだが……』

 

ミドリは先生に隠れながら、オイルに塗れた雷電と話す。

 

「待って、変な音が……」

 

その時だ、戦闘の余波で崩れたであろうビルが降ってくる。

 

『ハァ!』

 

だが、そこには最強のサイボーグがいた。

高周波ブレードの斬撃が扉、ビルは粉々になっていく。

そこにあるのはアニメの世界、しかし現実だ。

数十メートルはあるビルが斬り裂かれ、

その破片の中を雷電は駆け抜け先生とゲーム開発部に

迫る破片を蹴り飛ばす。

 

「……凄い……凄いよ雷電!!」

 

「先生、雷電さんって……」

 

「あーー…うん、多分キヴォトス最強だと思うよ?」

 

ホシノやヒナという生徒も居るが、

こんなのを見てしまったら雷電が最強と思えてしまう。

 

『………』

 

着地し、高周波ブレードを鞘に納める。

SAMURAI、としか言えない。

非現実的な存在のサイボーグ。

 

『進むぞ』

 

「うん、此方だよ!」

 

モモイは端末にあるG-Bibleの座標へと案内していく。

なんと言っても道中の安全は保証されている。

時折、ドロイドを見つけても既にスクラップ。

そして、何故か工業地帯に入っていく。

ドロイドの数も増えていくが、変わらず雷電に斬り裂かれ、

撃たれても高周波ブレードで弾かれ、

モモイ達に逆に撃たれる。

 

「ねぇ…雷電!雷電でゲーム作って良い?!

アクションゲーム!」

 

『別に良いが、そうすると……いや、そうだな。

格好良く頼むぞ』

 

「うん!」

 

モモイは15歳と言うが、見た目はもっと幼く

雷電からすれば何処か妹の昔の姿を思わせる。

だからこそ、撫で優しく対応している。

無論、ゲーム開発部一同にも同じくだ。

工場の内部に目的の部屋があった。

何もなく、薄暗く汚い部屋。

 

「えーー、行き止まり?!」

 

『……ならば、押し通るのみ!』

 

雷電が高周波ブレードを構え抜刀しようとした瞬間、

機械音声が鳴り響く。

 

<接近を確認>

 

無機質な機械音声のアナウンスが部屋全体から鳴る。

 

 「えっ、な、なに? 」

 

「部屋全体に、音が響いてる……? 」

 

モモイとミドリが警戒するが、雷電が落ち着かせる。

 

<対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません>

 

「え、え!? なんで私のこと知ってるの? 」

 

<対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません>

 

「私のことも……一体どういう……?」

 

〈対象の身元を確認します。UNKNOWN、UNKNOWN〉

 

『……黙れ』

 

雷電はそのまま高周波ブレードで壁を斬り裂いた。

廃虚に来てからというもの、雷電の斬りたいという

欲求を満たせている環境にあるせいか、

何処か思考が単調になっているように先生は感じた。

 

「え?女の子?」

 

「これが……G-Bible?」

 

それは裸の少女であった。

 

『……生命体ではないな。

俺よりも遥かに優れた科学力で作られたサイボーグ。

組織細胞はほぼ人間と同一、何故ここまで……

解体してみるか?』

 

雷電は科学者であった一面が色濃く出てしまい、

裸の少女を舐め回すように観察する。

時折、皮膚に触れては雷電の皮膚と比べてみる。

 

「あの、雷電。見栄え悪いから」

 

『そうだな、判った事がある。

このサイボーグの型番はAL-1s。

少なくとも、現在のキヴォトス。基、ミレニアムでは

絶対に開発不可能なマシーンだ』

 

それは雷電よりも優れたマシーン。

興味が唆られない訳が無い。

 

「ねぇ、雷電さん。流石に裸は可哀想だから

その……」

 

『そうだったな、すまない。考えが及ばなかった』

 

そう言うと雷電は下がるが、下がるのみだ。

 

「えと、機械らしいけど女の子だよ?!」

 

『…機械は機械だ。人間じゃ……

いや、なんでもない』

 

機械に何をと思ったが、先生だけでなく少女達から

非難の視線を向けられ、それ以上は不和が広がると

判断し即座に後を向く。

モモイが触った瞬間、それは動き出した。

 

「——状態の変化、および接触許可対象を感知。

休眠状態を解除します——」

 

ミドリが驚きの声を上げる。

 

「め、目を覚ました……?」

 

「状況把握、難航。

会話を試みます……説明をお願いできますか?」

 

「せ、説明が欲しいのはこっちの方!

あなたは何者? ここは一体なんなの!?」 

 

ミドリが騒ぐが冷静な雷電がAL-1sの前に立つ。

 

「我々は此処へG-Bibleと呼ばれる物を捜索しに来た」

 

「不明、本機にその情報はインプットされておりません」

 

『そうか、ならば』

 

雷電が何をするのか理解した先生は即座に止めに入った。

 

「待って!雷電何を」

 

『気絶させようと、一度持ち帰り調査を』

 

「斬るつもりじゃなくてよかったけどさ!

それって誘拐だよ!少女誘拐!」

 

「人聞きの悪い事を言うな、俺は犯罪者………

犯罪者だが、そのような事はしない」

 

犯罪者じゃないとは言えない。

キヴォトスで七囚人等と言った者達よりも遥かに危険人物と

されているだけでなく、見つかり次第その自治区の最大戦力が

正面切って戦いに来るのだ。

 

「もう……変質者擬きの雷電はおいておくとして。

こんにちわ。えと……さっき言っていた

『接触許可対象』って、どういう意味か教えてくれる?」

 

「……回答不可、本機の深層意識における第一反応が発生したものと推定されます」

 

「えぇ……」

 

『メモリーのロストか、やはり脳が生きていなければな。

機械化するのは肉体だけで良い。完全なるマシーンは

こんな出来損ないになるのか』

 

「ねぇ、雷電。もしかして妬いてる?」

 

『五月蝿い』

 

その時だ、雷電の方に通信が入る。

 

『雷電だ、誰だ』

 

〘C&Cに目をつけられた!ちょっと助けて!!〙

 

『お前何してんだ、マッドサイエンティストが……』

 

リナが下手をやらかしたようで救難がくる。

 

『先生、ミレニアムが少しばかり…その騒がしくなる』

 

「えっと……その、怪我人は」

 

『極力ださん』

 

雷電はそれだけを告げると、

ミレニアムの市街地へと走った。

サイボーグの肉体を隠す為の衣装と高周波ブレードではなく、

M16A3、PSG1、ソーコムピストル。

 

『リナ!何処だ!!』

 

「此方!助けて!!!」

 

『調月リナ、お前を捕まえ』

 

リナの隠れ家は既に配置されていた。

ミレニアムの誇るメイド部隊が攻撃しているようで、

秘密通路から入ったがよりにもよってリナを連れ出そうとした

ところでC&Cが入ってきた。

 

「なっ……陸八魔セイッ!」

 

発声装置のエラーを修復し、人間の声を出す。

 

「お前、確かネルとかいう小娘」

 

それは雷電が一度正面から叩き潰した少女。

 

「失せろ、お前と遊んでやる暇はない」

 

「テメェに無くてもアタシにはあるんだよ!」

 

「リナ、行け」

 

「はいっ!」

 

雷電はソーコムピストルを武器を構えようとした

ネルの腕に撃つ。

胴体と違い、指等に直接作用する腕。

それはキヴォトス人の弱点だ。

痺れ、引き金が引けなければ弾は撃てないのだ。

 

「くっそ……」

 

「殺すつもりはない、この女は貰って」

 

「行かせるかよ!」

 

ネルは銃を撃つのではなく、

接近戦を仕掛けてきた。

雷電のコンピューターは即座に蹴りを流し、

壁の方へと投げる。

 

「ニヤリ」

 

「何…」

 

赤羅様に笑ったネルに追撃の射撃を行おうとしたが、

ネルの背中の壁が爆ぜた。

いや、爆ぜたのではない。

雷電の目は見ていた。吹き飛ぶ寸前、

壁は砂のように細かな状態になっていた。

 

「嘘だろ?!この部屋、1m以上の鉄筋コンクリートだぞ!

セイ!さっさと逃げよう!これは不味い!」

 

「逃さねぇよ」「は~い」

 

「くっ……」

 

雷電とリナを離す様に射撃が行われる。

初戦闘の時とは違う、今回のC&Cは雷電の予想を

遥かに超える。

 

「破壊しか脳のないお前が……随分と知恵を使うな!」

 

「テメェだけは地獄に叩き落とすと誓ってんだよ」

 

「……モテる男は辛い」

 

「ふ~ん、それなら捕まって欲しいなーとか」

 

「あぁ、辛いな」

 

雷電はリミッターを切る。

ここからは人間、陸八魔セイではなく、

戦闘用サイボーグ、雷電だ。

 

「なっ…」

 

「私がぶっ潰す!」

 

褐色肌の少女、カリンがボーイズ対戦車ライフルを撃つ。

少なくとも雷電の認識外の筈の弾丸は、あろうことか、

雷電の親指と人差し指に摘まれる。

 

「おいおい、どんな手品だよ」

 

「手品じゃない、お前達には絶望を送ろう」

 

「上等だ!」

 

ネルが2丁持ちしたMPXを発射する。

だが、雷電はその弾道を理解しているかのように、

弾幕の中を掻い潜る。

 

「ごぶ……」

 

人間の蹴りではない。

まるで鉄筋で殴り飛ばされた様な衝撃が、

ネルの腹部を襲った。

 

「……」

 

そして、空中で吹き飛ばされている状態で

雷電はM16A3を構え直す。

無意識で引金を引こうとした指を抑え、

リナの身体を抱き締める。

 

「脱出する」

 

「研究資料とか、姉に持っていってほしくないし……

ハァ。自爆かぁ」

 

リナな雷電に抱えられた状態で何かのスイッチを押した。

辺り一面に炎が広がり、アラートが鳴り響く。

 

「資料室、サーバー室、機材の火災。

自爆まで30秒。雷電、頼むね」

 

「任せろ」

 

雷電の通ってきた秘密通路、

そこにも爆弾は仕掛けてあるだろう。

だが、雷電は人間ではない。

キヴォトス最強のサイボーグだ。

 

「……あぁ、私のセーフハウス」

 

脱出した先で業炎と爆発を続ける建物。

消防隊も出動しているが、消えるのは時間がかかる。

 

「後輩の部室に行くか?」

 

「それもいい、シャーレの先生も居るしね。

まぁ、駄目ならドクターの所に転がり込むさ」

 

「……さっさと逃げるぞ。

まったく……ミレニアムで、また面白い事になるな」

 

燃え盛る建物に向け、手で銃の形を作る。

 

「バン」

 

再び起こる爆発に笑いながら、

雷電達はセーフハウスを後にした。

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