BLUERISING 作:影後
「ぬわぁーん!あのクソテロリスト共め!!!
今度私セーフハウス見つけてみろよ!
ミレニアムも、何もかもぶっ壊してやるからぁ!
雷電が!」
騒ぎながら此方に指を指してくるリナに呆れるしかない。
「おい、お前……」
「あ、リナ先輩。来たんだ」
「ミドリが冷たいよぉー」
「…そんなキャラだったのか」
何を血迷ったのか、
ゲーム開発部の部室に入り込む
ミレニアム随一のマッドサイエンティスト。
後輩好きとは知っていたが、
何処か初恋の人に似通っている。
「ねぇ、雷電。私のセーフハウスをぶち壊す原因。
メイド部を潰すか、ミレニアムに最恐最悪を解き放つか。
どっちがよいと思う?」
「リナ先輩…此方に迷惑かけないで〜。
ただでさえ、廃部の危機なのに〜」
「大丈夫だよ!そこのサイボーグが少し脅せば君達は」
「やめろ、俺にこれ以上火種を持ち込むな。
ミレニアムでは表立って暴れてないぞ。
それにゲヘナはやっと表で歩けるようになったのに」
「え?うそ……
ミレニアムでレールガンのデータ欲しくて、
セミナーの機密文書人質にして、
テロしたじゃないの!」
「セミナーの予算奪ってるクソガキよりマシだ。
っと、メールが来た、風紀委員長と生徒会長の連名でな。
恩赦らしい、その代わり時折『依頼を受けろ』
と書かれていたが…」
「ふ~ん、あっそこの先生。ごはんとって」
「自分でやろうよね?」
「やっ、メイド部を差し向けた奴等の恥ずかしい姿。
ネットにあげて……は、リテラシー的に嫌だし、
ねー、雷電!バイオテロしようよ!」
「話聞いてたか?
俺はこれ以上ミレニアムとの関係悪化は避けたいんだ。
ったく、セミナーじゃなくてミレニアムの学生寮に
シュールストレミングでも使うか?
下手な武器より使えるぞ」
「雷電止めてよ〜、私達も住んでるのに〜」
リナの言葉に面倒くさそうに話す雷電。
今此処には、先生も、ゲーム開発部も、いきなり現れた
リナに辟易していた。
「むー…皆が扱い雑い」
「当たり前だ、俺はそこのアンドロイドの解剖も」
「ダメだよ、アリスは私の生徒だから」
「……わかったよ。
俺も、子供達の友人を壊すつもりはない」
そう言った雷電のスマホに連絡が入った。
「はい、此方陸八魔セイ。
猫探しからサンクトゥムタワーの破壊まで。
報酬次第で何でも」
「テロは止めてね」
先生の言葉に笑顔で返すと、
電話相手が面倒くさそうに声を出す。
『……アビドス生徒会長小鳥遊ホシノだよ。
クソテロリストの名誉生徒会メンバーに連絡だよ。
ユメ先輩から、《何時でも遊びに来てね!セイ君!》
だとさ』
「ホシノ、確かに俺は黒服もといクライアントと契約した。
でも、借金は減ってるし、お前に何の不満がある?」
『黒服の仲間ってとこだよ!』
「……お前、人の頭をショットガンで吹き飛ばしておいて」
『もう切る』
「まて、別に怒ってないし、お前の気持ちもわかる。
だから、俺がお前に言うぞ。今度こそユメ先輩を守れ。
お前がユメ先輩を見捨てた時、俺がお前を罰してやるよ」
『死ね』
切られた電話につい、笑いが出てしまう。
敵対はしていないが、やはりホシノとは相性が
〈最悪〉なのだろう。
昔はそれ程でも無かった気もしたが、
今年に入ってからはもうどうしようもない。
だが、何故かこう笑ってしまうのだ。
ホシノを弄るのも楽しい、
そのまま戦闘になるのも良いだろう。
自分がバーサーカーかと思いたくなるほどに、
あのホシノの怒りに満ちた顔が愛おしい。
「彼奴、ユメ先輩が目覚めてから余計に心が壊れてるな。
ククッ…まぁ、そうだよな。守れなかった。
できなかった、その象徴が目の前にいて、
助けたのは自分じゃない。彼奴にとって、憎い奴。
はぁ……救いようが無いな。どう思う先生?
精神科が必要なのは俺か?
それとも今壊れてる彼奴か…ククッ…ククク」
「雷電、そう言うのは良くないよ。
はっきり言っていいなら病院は2人とも必要だと思うよ」
「優しいな、だが優しさを履き違えるなよ。
優しさだけじゃ意味がない、
優しさよりも激しさが必要な時もある。
小鳥遊ホシノに必要なのは、激しさだな。
ユメ先輩の優しさ、
《ホシノちゃんのせいじゃないよ。
私が悪いんだから。》
そんなの言われ続けたら、ホシノは壊れる。
いや、いっそ壊してやろうかな。
なぁ先生、ヘイローとはある意味で
自身の心を表現していると思うんだ。
そこで壊れた心を持ったとしたらヘイローはどう変化すると」
「させないよ、私は生徒を守るのが仕事だからね」
「…フッ、力ない言葉だ。俺を止めることはできん。
それに安心しろ、何のためにクライアント殿と
契約したと思う?
アビドスの為だ、文句を言うのはホシノに言え。
俺は傭兵として雇われたに過ぎない。
のに、奴は俺を殺そうとしてきた。
俺も彼奴も、同じ穴の狢なんだよ」
ホシノが聞けば怒り心頭だろうが、
今はただ俺の考えを話すだけ。
相手がどう思おうが、興味ない。
「…ったく、今度は……」
場の空気が凍りついていたのだが、
雷電の口角を上げるには十分な話が出てきた。
「先生、俺はこれからパーティーに向かう。
リナ、ドクターに連絡しろ」
「あっ、なら雷電!ゲームにするから記録映像よろしく!」
「良いだろう、モモイ!
これからヴァルキューレ及び矯正局を襲撃する。
汚職警官と脱獄囚を全員皆殺しにしてくる」
「殺しは無しだよ!」
「言葉の綾だ、カイザー所属以外は殺さんよ。
まぁ、シャーレの先生からすればテロリストをどうするか…
じゃあな」
雷電はそのまま矯正局に襲撃をかけ、
警備のヴァルキューレ生徒を一人残らず気絶させた。
スタンモードにした超高周波ブレード。
峰打ちだが、電撃と打撃によって意識を
保つ事はできないだろう。
「っと、あれ?……矯正局にデータないのか?」
「陸八魔セイ!貴様、いったい何を」
「ヴァルキューレ公安局とカイザーの汚職のデータ。
欲しかったんだけど、ないんだよなぁ。
どう思う?カンナさん」
「……知らんな。そんな事はありえない」
「まぁいいさ、カイザーは潰す。
それに連なる氷山も潰す、今は生かしておいてやる。
だが…墓標は買っておけよ」
なれた手つきで色付きのガスグレネードを落とす。
目の前でガスマスクまでつけてやればカンナは即座に
救出のほうに動くだろう。
「安心しろ、神経ガスだが致死性はない。
だが…そうだな、吸い過ぎたら……わからんぞ」
「きさ…ま……」
カンナの援護に来ただろう警備の生徒も、
ソーコムピストルで額を撃つ。
目を狙ってやっても良いが、最悪失明もあり得る。
何度も思うが、ヘイローは何処まで守ってくれるのだろうか。
ヘイローがあるから死なないのではなく、
ヘイローがあるから余計に苦しむのだ。
雷電はそれをよく知っている。
陸八魔セイとして、雷帝の部下として、
数多の命に実験を施してきたのだから。
「……戻るか」
雷電としての姿はネットにも上がっていない。
知っているのはアビドスとゲヘナ、
そしてミレニアムの一部生徒に先生だけだ。
ヴァルキューレ所属のヘリを奪い、燃料を確認する。
追跡装置の類を即座に解除するとアビドスへと
飛び始める。
「……3……2……1」
矯正局から連続した小規模爆発が巻き起こる。
そこからいくつもの黒煙が上がり、
まるで火事のように見えるだろう。
これは時限装置と発煙筒を混ぜた物だが、
発煙筒だけでなく火力調整した手榴弾を混ぜているため、
矯正局自体へのダメージもある。
「……ゲヘナでは治安維持に貢献するが、
お前らみたいなカイザーの犬どもに手を貸す義理はない」
必ず仕留める、必ず潰す。
雷電の中にはそれしかない。
そして数時間かけてミレニアムまで戻る。
無論、ヘリは爆破処理し証拠は何も残らない。
「…雷電、言い訳あるかな?」
「カイザーとヴァルキューレの癒着。
その情報が矯正局の極秘データベースにあるとか。
差出人不明だが、とりあえず襲撃した。
言い訳か?カイザーの様な組織と手を組んだ時点で俺の敵だ。
それに先生、俺はアビドスとゲヘナで暴れるつもりはない。
指名手配されてないからだ。だが他は違う。
モスト・ウォンテッドだ。DEADorALIVEだ。
今さら懸賞金が上がろうがどうでも良い事だ」
「……」
「あっ、雷電。もうそんな話は良いからさ。
カメラの映像見せてよ、矯正局襲撃したやつ」
「モモイ、怖くないのか?少なくとも俺はテロリストで」
「え?だって話してみたら面白いし、格好良いし。
ほらほら、はやく!はやく!!」
雷電は呆れながらもデータを渡す。
「うお!凄いよアクション映画みたいだ!
潜入工作員みたいな奴からの銃撃戦、
そしてヘリ強盗から矯正局を爆破、
そして最後にはヘリも爆破!
ふふ…スパイ・アクション作れるよ!!」
「お姉ちゃん、使ってもミレニアムプライスに出せないよ?」
「大丈夫だよ、バレないよ。
それにバレたら本人にインタビューしたって言うし」
「それやったら発禁だよ!」
モモイとミドリの掛け合いを面白おかしく見ていたが、
先生からの視線が酷い。
「雷電、雷電は」
「俺は味方を選ぶ。
金で雇われるか、俺が自分の意思で選ぶか。
此奴ら、ゲーム開発部は守るしアンタも守る。
まぁ、敵になった時は構わず俺の心臓部を撃てよ。
殺せるかはお前達次第だが」
「うわぁ………雷電って凄い割り切り。
さすがのモスト・ウォンテッドだよ!」
「…ミドリ、お前の姉に危機感を覚えさせろ」
「無理です!」
雷電は頭に手を当てながら、やれやれと言った動きを見せる。
テロリストの自分が言えた義理ではないが、
少なくともここまでテロリストに興味を持つのは駄目だ。
「でも、リアルとゲームは違うよ!
このごろリアルの方がゲームを侵食してるけど!!」
「わかってるなら良いが……おい、先生、リナ」
「え?」「どったの」
「俺はミレニアムで基本的にテロはしてない。
今も用務員待遇で仕事中だ。頼むぞ、俺の事をバレるなよ」
そう、メイド部との戦闘となれば確実に雷電は粘着される。
ミレニアムで今の平穏を保つ為には、バレては駄目なのだ。
「うん」
「おけ!あっ、エンジニア部には気をつけてねー」
先生とリナの返事を聞き、
脱力しながらも雷電は建物の掃除に戻った。