BLUERISING   作:影後

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ゲヘナ自治区襲撃作戦ー1

「セリカ、俺の左腕知らないか?」

 

「雷電先輩、出会ったらまず挨拶だと思います」

 

「おはよう、セリカ。所で、オレの左腕を知らないか?」

 

セリカは頭痛をする頭を押さえながら目の前のサイボーグの先輩を見ていた。自分がアビドスに入学するよりも前に転校してきた本名、陸八魔セイ。ホシノと同じぐらいアビドスにはなくてはならない存在であり、優秀な人だ。というのが出会って最初の印象だった。しかし、天然とは言えないが何処か抜けている。

 

「それで、何があったんですか?」

 

「俺を襲撃した部隊の情報を得ようと襲撃地点まで戻ったんだが、待ち伏せされていてな。今回はバレットで撃ち抜かれた。何とか殲滅はしたんだが……まったく、サイボーグを心配しすぎだ」

 

「先輩が心配させすぎなのでは?」

 

「……だが、俺が前に出れば被害が減る。それで良いだろ」

 

そう、雷電は自己犠牲が過ぎるというか生徒を守るための独断専行が目立つのだ。事前に作戦等がある場合はきちんとそれに従うが、唐突な襲撃等の場合一人で突貫し武器のみを斬り裂くだけでなく、不良達を仲間に引き入れる。

 

「いつか死んじゃいますよ」

 

「俺は、死を恐れてはないさ。ありがとう、他をあたる」

 

セリカは固まってしまった。淡々と死を恐れないと言ってのけた。納得した、納得したがそれでは駄目なのだ。

 

「……うわぁ、おじさんもソレは知らなかったな」

 

「リーダーはきっと護りたいんです。だから、身体も捨てて」

 

「認めないわよ!リーダーは人間!あんなサイボーグ!リーダーじゃない!」

 

「ニノ先輩」

 

「リーダーが人間だから…私達の大切な」

 

「ニノちゃん達が護りたい様に、セイ君もニノちゃん達を護りたかったんだよ。とにかくさ、話そう。雷電と」

 

ホシノ達がそんな会話をしていた頃、雷電は元不良達に勉強と射撃を教えていた。ゲヘナでは学業に対しては優秀な部類だった。

他人に教えたことは少ないが、それでも必要な事だ。

 

「あの、雷電先輩。左腕どうしたんですか?」

 

「……見つからないんだ。だから取りあえず水鉄砲だ」

 

「え……」

 

「と言っても、速度を上げれば水圧カッターの変わりにもなるし、ミネラル等は含まれていないが水は手に入る。それに圧縮した水をバズーカの様に放てる」

 

「ソレは水鉄砲じゃないです」

 

「ちなみに空気中の水分を使うものだから砂漠だと無用の長物だ」

 

「「……えぇ」」

 

「えと……他には何か」

 

「ダウジングマシン。火炎放射器。グレネードランチャー。レーザーキャノン。色々と換装できるが基本的に刀を持って戦うからな、普通の左腕が欲しい。だから頼むぞ、見つけたらオレに連絡ください」

 

そう言いながら立ち去る姿は普段と変わらない雷電だった。

 

水鉄砲を左腕に付けたまま、放課後実質的な生徒会であるアビドス廃校対策委員会に話を通す。生徒会を名乗れば良いのだが、いまだ連邦生徒会から音沙汰がないだけでなく、基本的に元不良が多い。現状、アビドス高等学校は正規入学者が少数、非正規が大多数を占めているのだ。

 

「…起業ですか?」

 

「昨日、俺は襲撃してきた奴等を調べる為に一部を連れて砂漠に向かったろ?残骸の一つも無かったが、2度目の待ち伏せだ。おそらくはカイザーの部隊だ。お前たちもわかってる通り、カイザーとアビドスはいわば戦争状態にある」

 

「それは」

 

対策委員会のメンバーは苦虫を噛みつぶしたような顔をする。

しかし、ホシノだけは雷電をじっと見つめる。

 

「何をするの?」

 

「PSC」

 

「PrivateSecurityCompany、民間警備会社ってことかな?」 

 

「そうだ、カイザーの猿真似になるだろう」

 

「そう言うこと……雷電先輩。凄い」

 

「シロコちゃん?」

 

「ノノミ先輩、雷電先輩はカイザーを敵にする気です」

 

「………」

 

ノノミは絶句し言葉が出ない。

 

「アビドスの生徒達は現在、不良として退学済みだ。ソレを俺が身元引受する」

 

「でも、武器や弾薬…それにお金は」

 

「俺が何とかする。お前達は変わらない生活をすれば良い。ただ、幾らかは手伝って欲しい」

 

雷電は頭を下げた。一人ではできない、仲間がいないと成り立たない。ソレを理解しているからだ。

 

「わかった、でも悪い事は」

 

「……安心しろ。悪いことじゃない。

ゲヘナにある廃棄された武器庫に行くんだ」

 

雷電はそういうとゲヘナ自治区の地図を開いた。

中には3カ所程バッテンマークが付いている。

そしてその建物を示すかのような写真が広げられる。

 

「コレが廃棄された武器庫ですか?」

 

セリカが疑うように雷電を見る。

 

「ゲヘナはマンモス校だ。無論、生徒数も多くなる。とくに、治安維持を行う風紀委員会はその武器庫を襲われることも多くてな。何分、苦労したようだ」

 

「ようだ?他人事ですね」

 

「…言葉を間違えたな。苦労したんだ。俺がな」

 

雷電はなぜそんな言い回しをしたのか自分でもわからなかった。

自分は当事者のはずなのだ、だからこそ知っている。

 

「安心しろ、今のゲヘナ風紀委員会の基礎を作ったのは

俺とヒナだ。無論、警備の穴も十分に理解している」

 

「それって改善しなかったの?」

 

「改善案を出そうにもヒナは居ない。あの痴女は話すら聞こうとしなかった。巫山戯るなよ、俺がどれだけ……」

 

グチグチとかつての恨み辛みを呪詛として吐く雷電に何処か悲壮感を覚えてしまう。対策委員会のホシノ、シロコ、ノノミ。

雷電が生徒を連れてくるまで本当に大変だったからだ。

 

「……えぇと、それでここに武器弾薬があるんだよね?」

 

「そのとおりだ、装甲車、戦車、ありとあらゆる武器弾薬がある。無論、ヒナも知らない」

 

「……結局盗みじゃ」

 

「気にするな、どうせ中身はゲヘナの廃棄品だ」

 

「雷電先輩、その中身が無い可能性は?」

 

シロコの質問に雷電はニヤリと笑った。

一体化した口が動くのは不気味だったが、それ以上に楽しそうな雷電を久しぶりに見たというメンバーの驚きが勝つ。

 

「無問題だ、この3カ所は地下倉庫だからな。それに、テロリストも寄り付かない立地だ。信頼してくれ」

 

「……開けるのには?」

 

「これを使う」

 

雷電はそう言いながらボイスレコーダーを取り出した。

〘Semper Fi〙

 

「所謂開け、ゴマだ。中に入れば唱えろ」

 

「どうなるんですか?」

 

「それはお楽しみだ」

 

雷電は静かにホシノを見る。

コレはホシノが許可しない限り行えない。

しかも、内容はキヴォトス屈指のマンモス校の自治区に無断侵入し物資の回収。失敗する可能性の方が高い。

 

「成功率を上げるには?」

 

「俺が出る、それだけで風紀委員会は動くさ」

 

「……わかったよ、ただし通信機はオンにしててね。作戦の全体指揮はおじさんが執る。生徒に連絡して。今夜は忙しくなるよ」

 

ホシノから告げられた作戦は僅か3時間の雷撃作戦だ。

1チーム5人で構成されるA.B.C.彼女達が侵入し確保する。

1チーム2人の輸送班たるD.E.F、確保が完了次第、武器庫に侵入し積載作業に入る。

1チーム3人のバックアップチーム、G.H.I.不測の事態に対応する事が求められる。

そして、雷電と3人の直営からなる特戦隊。

ゲヘナ風紀委員会を刺激し、撤退を援護する役目を持っている。 もっとも危険な役目であり、ゲヘナに捕縛される事もありえる。

 

「リーダーと行くのは私達です」

 

名乗りを上げたのは、『門崎リン』『久遠リナ』『山谷タエル』。

『安西ニノ』以外のゲヘナから共に来たメンバーだ。

 

「リーダー、私達も風紀委員会とは戦えます。どうか、お側に」

 

そういうのはタエルだ。SMLEの先に銃剣代わりにスタンロッドが装着された物を、女騎士の様に携えている。

 

「ニノは今でも、リーダーはリーダーじゃないって。リーダーはどんな姿でもリーダーなのに」

 

「リーダー、それで私達の作戦は?」

 

リンとリナの言葉に雷電は何処か温かい物を感じる。

サイボーグの肉体を受け入れてくれる人というのはいないのだ。

 

「俺達は一足先にゲヘナ入りする。ヘイローの必要ない戦い方を教えてやるよ」

 

雷電はそう言いながらニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

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