BLUERISING   作:影後

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ゲヘナ自治区襲撃作戦ー2

それは昼の間から行われた。

その日、ゲヘナ風紀委員会はあり得ないほどの仕事量に襲われていたのである。美食研究会、温泉開発部が何を考えたのかゲヘナ全土で暴れ始めたのである。それどころか、不良、違法サークルも乗じた銃撃戦が各地で発生。

1週間で起こることが1日で起きている。そんな印象を風紀委員会委員長たる『空崎ヒナ』は感じていた。

 

「……またなの」

 

風紀委員会を生徒達を向かわせても、よくて相打ち、悪くて敗走。練度は上だが、数があまりにも違い過ぎた。

 

「…こんな嫌がらせの様に」

 

『天雨アコ』は額に血管を浮き出させるような顔をしながら数多の報告を捌いていた。ただでさえ、裏切り者たる陸八魔セイが

〘シャーレの先生〙を襲撃しただけでなく、不良達を逃すという最悪な事までしている皺寄せが来ている時に、余計な事を起こすなという怒りが既にある。

 

「報告です!あの、ゲヘナ各地で風紀委員会の腕章と軍服の様な制服をきた男子生徒が目撃されています!」

 

「……彼奴ぅぅぅぅ!!!!嫌がらせか!嫌がらせか!あの阿呆!」

 

「それで、セイは何してるの?」

 

「風紀委員会の前に現れてはスモークを焚いて消えるを繰り返しています!」

 

その報告を受けたアコは血管がはち切れそうで、危ない。

ヒナの前だから耐えているが、いなければ爆発していただろう。

その時、アコのスマホに電話が入る。

 

「誰ですか!」

 

「非通知に出るなんて感心しないな」

 

「りっ…陸八魔セイッ!」

 

アコはすぐさまスピーカーにして部屋にいるメンバーに声を聞きせた。

 

「随分と怒ってるな?前に進めた就寝前ココアは続けてるか?」

 

「えぇ、貴方から教えられたブレンドは実に!実に優秀な味ですねぇ…今の状況を起こした張本人でなければ!」

 

「おいおい、俺を裏切ったのはお前たちだぞ」

 

「何を」

 

「ヒナにおんぶに抱っこ…練度は変わってない。俺が指揮した頃よりも弱くなってる。コレはひとえにお前が俺の言葉を受け入れなかったから起きた事だ。ヒナに伝えろ、パーティーは続く」

 

アコの電話がきれたあと、委員会室へライフル弾が撃ち込まれた。弾頭は12.7×99、嫌がらせの様にアコのデスク。しかも、書類を破壊するように撃ち込まれた。

 

「……なんとしてもあの裏切り者を確保しなさい!ヒナ委員長」

 

「私は制圧に動く、アコ。後はよろしく」

 

 

 

「とまぁ、ヒナが動いたな」

 

「それ本当に大丈夫なのー?おじさん心配」

 

通信機からホシノの呆れ声が聞こえてくるが、雷電は変わらず言葉を紡いでいく。

 

「想定外が暴れてるが、大丈夫だ。あとヒナが最強なのは彼女個人が優秀だからだ。悔しいが、ある1点を除き、俺は勝てた試しがない」

 

「…ある1点?」

 

「戦闘指揮だよ、アコは煽られると熱くなりやすい。指揮官として致命的な存在だ。だから煽る、今やつは俺を狙ッてるのさ」

 

「見つけた」 

 

「悪い切るぞ」

 

雷電は通信機を切り、現れた少女にジュースを投げ渡す。

 

「…ありがと」

 

「毒でも入ってたらどうするつもりだい、ヒナ」

 

「セイは私にそんな事はしないでしょ?」

 

その信頼をなぜ裏切り者に向けるのかと疑問が尽きないが、雷電はソーコムピストルを抜くことなく雑談に入る。

 

「今回のこと、セイが起こしたの?」

 

「温泉開発部は知らん、美食研究会もだ」

 

そう、その2つに関しては雷電は何もしていない。

むしろ、イレギュラーだったせいで計画の変更を余儀なくされたのだ。

 

「そう、ねぇ…セイ。降伏して」

 

「……無理だ。俺は」

 

その時だ、一発の弾丸が雷電の右目を撃ち抜いた。

 

「え?」

 

赤い鮮血が飛び散り、ヒナの顔にべっとりとした液体がこびりつく。視線の先では雷電が力なく倒れている。

 

「風紀委員長だ!」「逃げろ!」

 

流れ弾だろう、だがヒナは

 

「許さない」

 

それだけ告げると生徒の鎮圧に向かうのだった。

 

「くっ…くくふふふ……まったく、素直可愛い奴だ。流石だな、リン」

 

「モシン・ナガンは初でした。それよりも、第二フェーズです」

 

「ヒナのポーカーフェイスは崩れた。敵を片付けるにはまず、指揮官を排除し結束を断つ。教えたんだがな」

 

雷電は壊れた目を抉り、新しいパーツを入れる。

 

「…気持ち悪い…リーダー、吐きそう」

 

「慣れろとは言わないさ、でもな俺は人間じゃない」

 

目のパーツは無い、コンテナに入らなければきちんとした目は治らない。植え付けたのはあくまでも応急的なカメラパーツ。

右と左を同調させると視界が若干荒れる。

 

「戦闘行動、可能、メインシステムオールグリーン。

戦えるな、さて暴れるぞ」

 

雷電はM16A4を装備する。グレネードランチャーも装着されており、遮蔽物を越した攻撃も可能である。

 

「良いな、今回、俺たち以外は全員敵だ。弾薬費は気にするな。だが、弾切れだけは注意しろ」

 

「「「了解」」」

 

「俺がポイントマンになる。行くぞ」

 

雷電が指揮するリン、リナ、タエルはそれぞれがカバーをしあい戦闘を行う。

 

「タエル!」

 

「ヘぶッ?!」

 

タエルを狙っていた風紀委員をリンのバレットが撃ち抜く。

いくらヘイローがあろうと12.7×99は凄まじい衝撃だ。

一発で気絶し、ヘイローは輝きを失う。

 

「リロード!」 

 

「別の武器も持て!」

 

リナが叫ぶ瞬間、雷電がカバーするようにグレネードを撃つ。

車両と一緒に生徒が吹き飛んでいくが、キヴォトスでは見慣れたものだろう。

 

「ちっ…先にいけ、合流ポイントはBだ」

 

「了解、リーダー!ご無事で!」

 

「私がポイントマンになるよ!タエル!リン!援護お願いね!」

 

「うん!リナ!」

 

不良を鎮圧するため、風紀委員の一団が現れる。

そんな生徒達を、指揮するのは自身の後輩たる存在だった。

 

「くっ!制圧に手間どっていると思えば」

 

「連邦生徒会の一件以来だな、チナツ!」

 

遮蔽物に隠れながら雷電は射撃を続ける。

喋りつつも、流れは全て此方のものと宣言している様なものである。タイムリミットまでに

 

「死んだと聞きましたがね!」

 

「俺が撃たれた程度で死ぬか?

お前も聞いたことはあるだろう!」

 

「ええ!だからこそ、面倒です!」

 

雷電が移動を始めようとすると一斉射が飛んできた。

どうやら蜂の巣にするつもりらしい、普通なら死ぬだろう。

だが、射撃が止まらないことを考えると嫌な信頼と言うものが出来上がっているようだ。

 

「普通なら死ぬぞ!」

 

「先輩は死にませんので」

 

発煙筒を投げようにも腕の一本でも出せばそこを重点的に撃たれて終わりだろう。練度が低いと思ったが、後輩は育っているらしい。ソレを感じるのニヤリと笑う。

 

「教本通りか?いや撤回しよう。お前は優秀だな、チナツ」

 

雷電は身体を一瞬さらけ出し、フラッシュバンを投げる。

 

「前衛!目を保護し」

 

「それだけで十分だ」

 

前衛は盾で目を保護するため、射撃が少なくなる。

雷電はソレを利用し、別の建物の内部に入る。

 

「……チナツちゃん、セイ先輩は」

 

「今は捨て置きます。モスト・ウォンテッドですけど、他にも」

 

チナツがそう言いながら同級生と他の不良の鎮圧に向かおうとした矢先、電話が来る。相手は、天雨アコ。嫌な予感がしつつも通話を開始する。

 

「はい、チナツで」

 

「あの裏切り者が宣告、此方に宣戦布告しました!これより、風紀委員会の威信にかけて、あの裏切り者を確保します!」

 

頭が痛くなるのを感じつつも与えられた命令には従わざる得ない。事実、どの犯罪者よりもテロリストであり危険度も最高。

ヘイローが無いこと以外、全てが高水準にある存在など捕まえるに限る。

 

「わかりました、追撃に入ります」

 

「頼みましたよ!」

 

「チームを4つにします!連絡は怠らないで!」

 

チナツの指揮で散開していく生徒達を雷電は壁に張り付きながら見ていた。右腕を壁に突き刺し、落下を防ぐ。

もし、見上げていたら第2回戦が始まっていただろう。

チナツ達は建物から出て行ったと思うだろう。

逃げたと、だが悠々と正面を歩くとは想定していない筈だ。

 

「ふっ…」

 

雷電の見た目はゲヘナの制服を外せば見慣れないサイボーグいや、アンドロイドだ。フルフェイスではないが、明らかに人間ではない。そう、彼らの中で陸八魔セイは人間なのだ。

学生服をアタッシュケースにしまい、スリングの付いたM16A4を背負う。それだけでカイザーかそこらの兵隊だと思われる。

 

「そこのアンドロイド、何をしている」

 

それは銀鏡イオリだった。風紀委員会の幹部が総出でたった一人に翻弄されているという姿を得意のポーカーフェイスで隠しながら機械音声で答えた。

 

『目的地がこの先にある。それよりも、さっさと不良共を鎮圧しろ。使えない』

 

「貴様」

 

他の風紀委員達もこの物言いには苛ついているだろうが、関係ない。

 

『此方はカイザーコーポレーションの指示で動いている』

 

「……行くぞ」

 

猪突猛進の馬鹿と言う印象は変わっていない。

昔と変わらず、簡単に利用できる存在だ。

そう考えれば、自分が消えてからは新しく入ったチナツには 何度か苦渋を飲まされたと嘲笑う。

 

「リーダー!」

 

『よくやったな、これで良い』

 

雷電は再びゲヘナの制服を着ると声を戻す。

そして、ホシノへと連絡を取った。

 

「やぁ、セイくん!コッチは完了だよー!凄いね、皆セイ君の方に向かってったよ。おじさん驚きました」

 

本当に驚いているのだろう。声から想定外と言う印象を受ける。

 

「ホシノ、撤退を。ゲヘナの奴等にお仕置きだ」

 

雷電はそう言うと自分のスマホを使い、ゲヘナ自治区中のカメラをハッキングする。

 

「やぁ、ゲヘナ風紀委員会の諸君。現在、俺の捕獲と不良の鎮圧に疲れているだろう」

 

雷電の言葉は風紀委員会を一つ一つ煽っている。

ヒナは目の前で右目を撃たれたセイが生きていることに驚きを隠せず、アコは忌々しそうに映像を見る。

チナツとイオリは映像から場所を割り出し確保に動いている。

 

「つきましてだが、プレゼントだ」

 

雷電はそう言うとガスマスクを装着する。

 

「苦しめ。だが、評価点をあげよう。

イオリはイノシシ馬鹿、アコは馬鹿、

チナツはもう少し教本の外を覚えろ。ヒナ、君は休め。

チナツ、お前は俺の後輩の割には優秀だ」

 

ボロクソに言われるメンバーと優しそうに言われる一部、

だが次の行動で全てが変わる。

雷電が何かのスイッチを押すとゲヘナの一区画から淡い黄色のガスが噴出される。

 

「…歴史の授業だ。ガス兵器は第一次世界大戦、ドイツ軍が使い始めたらしい。マスタードガスと呼ばれたそれは、不純物が混じったものに限りマスタードの様な匂いがした。そこに鼻汁、くしゃみ、咳、頭痛、胸部圧迫感、悪心、吐き気、不快感、せいぜい頑張れ」

 

雷電は簡単にゲヘナから脱出した。

 

装備等を改修し、アビドスに帰還後全生徒の前で裁判が行われていた。今回、雷電を弁護する存在はいない。みな、憎しみの芽を向けている。特に、ホシノには頭にショットガンを突き付けられている。

 

「キヴォトスで殺しは!」

 

そう、煙を使うという話はホシノにとうしていた。

しかし、毒ガスは違う。

 

「怒るな、俺はただマスタードガスの説明をしただけだ」

 

「嘘だね、アレは」

 

「アレは粉末状にしたマスタードに唐辛子と胡椒を入れた最低、最悪の調味料だ。みろ、ゲヘナの現在の様子だ」

 

ソレは酷い顔で作業を行う風紀委員会と防護服を着て働く救急医学部のメンバーだ。不良達も泣いている。いささかと言うか、あまりにも酷い映像だ。

 

「俺は生徒を殺さない。確かに、今までの裏で誰かを救う為に大人を殺す事はあった。でもな、生徒は絶対に殺さない」

 

「まって……じゃあリーダーは」

 

「そうだ、俺は人殺しだ」

 

 

 

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