BLUERISING 作:影後
雷電の情報から武器弾薬だけでなく戦車や装甲機動車等を確保したアビドス高等学校。しかし、作戦というか手段を選ばぬ雷電を一度遠ざける決定を行った。
マスタードガス、擬きではあったがソレを厭わない作戦を行ったこと。そして、既に何人もの人を殺していたというのが、全ての生徒から懐疑的な目で見られる結果になったのだ。
「ブラックマーケットか」
「おい、お前。ここは」
「……俺の顔を知らないのか?モスト・ウォンテッドだと思うがな」
絡んできた不良を壁に押し付け、口の中にソーコムピストルの銃口を押し当てる。いくらヘイローがあろうとこんな状況で撃てばどうなるかは分からない。
ソレを理解したらしい不良は失禁し、雷電の前で涙を流す。
「おい、」
銃口を外すが腰が抜けたのかそのまま地面にへたり込み、床を濡らしていく。恐怖で気絶もしたのだろう。自分のせいでもあるため、そのまま横抱きにしながら適当なホテルに入った。
「ここは……ひっ…」
「おいおい、失禁した上に気絶したお前をここまで連れてきたのは俺だぞ?」
「ごめんなさい……ごめんなさい」
あまりの怯えようにどうしたものかと考える。
「下着と替えの服だ。そこに用意してある」
「あ……!!!!」
そこで自分の状態を思い出したのか、赤面し怒り顔で雷電を見る。そのくせ、身体は震えておりまるでチワワだ。
「丁度いい、一つ聞きたいことがある」
「ひっ……なんでも…………はなします」
雷電はその答えに喜び、話を聞く。
幾万の端金と恐怖に怯える小娘を部屋に捨て置き、静かにブラックマーケットに降りた。無論、目的地は一つだ。
「……ゲヘナから失踪したと聞いては居たが、まさか……ブラックマーケットに隠れているとは」
あまりにも想定外すぎた。自分の知っている彼女は後ろにくっつき、お兄ちゃんと呼んでいたのたから。
「……」
入り口の扉をゆっくりと叩く。こん、こん、こん。
すると銃口を背中から突き付けられた。
「誰ですか?」
「依頼人だよ」
そう言うと静かに事務所に通された。
「ようこそ、便利屋6えい………」
「………なんというか、成長したな」
「なっ……なっ……なんで!お兄ちゃんが!!」
テーブルで赤面したアルが雷電いや、セイと向かい合う。
他にも便利屋のメンバーも居るようで温かい視線が向けられている。
「まず、御近付きの印に」
そう言いながらアタッシュケースを開く。
中身は現金、莫大なキャッシュだった。
「偽物とか」
「新聞紙で偽造とか」
便利屋のメンバーから嫌な言葉を受けるが、雷電は変わらない。
「妹に嘘はつかんさ。それに、これは君達に対してのものでもある。妹を支えてくれているらしいね、兄として、感謝したいんだ」
「いえ…そうではなく。このお金は」
「安心してくれ、昔敵対組織から盗んだ物だ。ロンダリングも済んでいる」
「いや…セイ先輩、そういうことじゃないと思う」
「いや、アウトローだし私は格好良いと」
「……知ってるんだな。俺の敵対者」
雷電は人間に擬態している顎を外し、ゲヘナの制服を外す。
便利屋達は言葉を失いながらも目は、背けなかった。
「カイザーの敵になる為、アビドスに民間警備会社を設立する。便利屋68、実力は理解しているつもりだ。どうか教導支援を」
「……それは」
「他にも、お前たちにとってゲヘナが邪魔なら俺が始末する。
先のゲヘナ襲撃は……その顔を見れば」
「お兄ちゃん、なんで……ガスとか……その」
「本気だった。ゲヘナで、本当に殺すつもりだった。ヘイローでも毒は無理だ。でも……学友は殺せなかった。おかしいよな、ずっと殺して来たのに。俺は………」
「…お兄ちゃん、そのずっとって」
「ゲヘナにもカイザーの下部組織はあった。ヒナも知らないさ、ここで妹たるお前だから話すんだ。俺は人殺しだ。キヴォトスでもっとも逃避されるべき存在だ。お前たちの前で良き兄を演じながら、裏では殺戮者だ」
「…お兄ちゃん」
「俺は近いうちにカイザーと激突するだろう。どうか、俺の敵にならないでくれ。俺に……俺に妹を撃たせるな」
それは陸八魔セイの優しい顔ではない。
雷電の戦闘サイボーグとして目的のためならば手段を選ばない、恐ろしい瞳。唾も飲み込めず、呼吸もできない。
今、自分たちが狩られる側であると理解している。
「……じゃあね」
雷電は便利屋の事務所から出るとカイザーに宣戦布告する為の行動を行う。
「ひっ……殺さない……で」
「残念だったな。運がなかった」
高周波ブレードでアンドロイドの頭を斬り落とす。
この闇銀では今、数多の死体が散乱していた。
チャフグレネードが撒かれた一瞬のうちに中にいた者たちは死んでいく。アンドロイドだけでない生身の者も鮮血を散らしながら死んでいく。辺り一面がまさに血の海となり、おぞましい量の肉片が飛び散っている。
「ふっ……」
そのまま金庫を無理矢理斬り裂くと中には大量の現金や金塊がある。だいたい、一億ほど奪い現金達に火を放った。
「DEADOnly、笑えるな」
「……ホシノ先輩、リーダーは」
「今日は出てもらってる、理解してるよね?」
「でも、リーダーはいつもアビドスの……私達の為に」
「でも、やって良いことと悪いことがある。おじさんは、昔のセイ君を知ってるから言えるよ。今のセイ君は、修羅、羅刹とか」
「……帰ってきたセイ君は、セイ君じゃない」
「巫山戯ないで!ホシノさん、貴女でもリーダーを!」
「……そうだね、でも変わったよ。セイ君は今まで裏方みたいな役割だった。でも、今はまるで世界の敵になろうとしてるみたい。セイ君は雷電になって、変わったんだよ」
「……そう言う言い方は」
ホシノは真剣な目で雷電の、陸八魔セイの信奉者達を見つめる。
現在は3名、リン、ヒナ、タエルだ。
「それに、私達の事もあるんだろ?」
「……雷電が連れてきたヘルメット団の」
「別に、ヘルメット団ってい うわけじゃないけどね。私たちは傭兵だし」
火炎放射器による火傷の治療の為、アビドスに未だに入っている生徒達。本来ならゲヘナやら何処かの病院に行くべきだろうが、彼女達の立場では許されない。
「SRTのアルファチームとブラボーチーム。動物ではなく、航空管制式のコードを貰った部隊。おじさんも知らなかったよ。ヴァルキューレに編入されたんじゃなかったの?」
「……別に、ヴァルキューレに居場所がない生徒もいるさ」
アルファ1は何も言わない。変わりにブラボー1が話す。
「別に、私達はエリートじゃない。ただ、訓練して特殊部隊として運用されていただけだ。ソレが嫌になる生徒も居るってこと」
多くは語らない、SRTが解体されたことは周知の事実であり一部生徒がテロリスト紛いに堕ちていることも知っているからだ。
「私達はSRTが居場所だった。そこは、お前達アビドスとは違う。お前達はまだ居場所があるだけマシだ。だから言えるぞ、あの男……雷電はお前たちの味方の筈だ。たとえ、奴自身がどれだけ血塗られていても、過去、現在、そして未来。お前達が裏切らない限り、味方で居るだろう」
「あの、アルファ1は何か知っているのですか?リーダーの事を」
何処か含みのある言い方にタエルが問いかけた。
「SRT解体前からゲヘナ風紀委員会所属の男子生徒の噂は尋常では無かった。ヘイローが無くとも私達と渡り合う知性。手段を選ばぬ容赦の無さ。知っているか?かつて、SRTとゲヘナの模擬戦があったのを。当時、陸八魔セイはオペレーターの一人だった」
アルファ1はそう言いながら雷電の過去を語り始めた。
ー我々SRTは少なくともキヴォトス最強の部隊の名の通り、個人では敵わない相手が居ようとチームで動くことを軸とし数多の任務を攻略していた。だが、奴は恐ろしい男だ。
仲間を使い捨てにすることも厭わず、ただ作戦成功率を上げる。
中隊対小隊、だが私達の先鋭も仲間にいた。勝てない戦いじゃ無い筈だった。奴は、仲間を利用した。
正直、ゲヘナの風紀委員会の練度は高いとは言えない。よく、ゲヘナ自治区の治安維持が出来たという言えるほどだ。だが、奴だけは違った。戦闘中の仲間から我々の情報をリアルタイムで受け取り、迫撃砲による砲撃だ。ゲヘナの勝利を確実なものとするために、仲間を捨てたんだ。無論、ゲヘナの勝利だ。
「ゲヘナの練度の低さは理解した。俺は、それを露呈させたかった。ゲヘナは同士討ち覚悟で戦はなくては意味がない。先輩方も理解したろ?」
「巫山戯ないで!もっと他に良い方法が」
「俺が生徒会から言われた指示は是が非でもゲヘナを勝たせろ。という事だ。まぁ、練度のが露呈する形となったが、ゲヘナの勝ちだ」
その戦いでSRTの評価は変わらなかった。
むしろ、卑怯な手で負けたという方が大きい。
その代わり、陸八魔セイは血も涙もない男として一躍有名人。
正直、ソレからの事は知らん。一つ言えるのは空崎ヒナの頭角が現れてからは、陸八魔セイは最高のバディだったという事だ。
恋愛感情以上に親密、ヒナが光ならセイは闇から風紀委員会を支えた。ソレが1年前、何かが理由で砕けたのだろうな。
「リーダーは見捨てません。私達はリーダーに」
「恐らく、もともと見捨てる事ができない男だったんだろうな。あの戦闘も、ゲヘナ風紀委員会の練度の低さを見せる為、わざとした可能性がある。事実、現在のゲヘナ風紀委員会の練度は目を見張る物だ。そこには陸八魔セイの確かな功績があっただろう」
そう、だからこそアルファ1は理解できなかった。
それ程までに空崎ヒナを信頼し、信頼されな陸八魔セイが風紀委員会と敵対した理由。そして、今雷電と名乗るサイボーグが。
「兎に角だ。仲間の治療もある。元不良達の練度向上には努めさせてもらおう」
「えぇ、アルファ、ブラボーチーム共に」
「うん、ありがとう」
アビドスに客将として、アルファ、ブラボーチームが当分の間駐留することになる。そして、新たな火種が燃える砂漠に投げ込まれるのだ。