BLUERISING   作:影後

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アビドス廃校対策委員会_2

「リーダー……」

 

まるで捨てられない仔犬のようにリンは兎耳を垂らし、未だに目覚めない雷電を見ていた。普段なら翌日には修理がある程度は完了し、戦闘行動以外ならできたはずなのだ。

だが、今回のはソレもできない程に酷いのか変わらずコンテナの中で修理されている。

 

「リン、未だにソレをリーダーだと」

 

「ニノちゃんには関係ないよ。リーダーはリーダー、私の、私達の希望。リナちゃんも、タエルちゃんもわかってるのに」

 

「……わかってねぇよ。皆わかってない。リーダーは!血が通った人間なんだ!こんな…こんな…機械野郎なんかじゃない!」

 

バンという大きな音と共に雷電が入っていたカプセルが砕け、大量の整備用の水溶液が流れ出る。水溶液自体に人体に影響はない、しかし中にいた雷電は違う。

 

「ごぶっ…ごふっ……おおっ……ああ」

 

修復中にも関わらず叩き出され、ホワイトブラッドの循環システムはカプセル任せであった為、急速な自己中毒に陥ってしまう。

 

「リーダー!」

 

「違う……私は」 

 

意識があるのか雷電は自分に繋がれていたパイプを全て引きちぎり、口から大量のホワイトブラッドを吐き出す。

強化外骨格を今はなく、ソレを装着する場所は窪みとなっている。

 

「リーダー!リーダー!」

 

「雷電先輩?!ニノ先輩、何したんですか!」

 

「違う…違う、私じゃない!」

 

登校していたセリカが雷電に近づいた。震えながら、大量のホワイトブラッドを流す姿はあまりにもひど過ぎる。

 

「誰か…誰か人は」

 

「無理だよ……リーダーの身体は私達じゃわからない。ソレこそ、ミレニアムとか」

 

『あっ……コンテナ……最奥』

 

「コンテナの最奥……セリカちゃん!手伝って!!」

 

「ぐっ……おも……」

 

雷電の内部骨格はチタン合金だ。並の人間の重量ではない。

 

「手伝ってよ!ニノ先輩のリーダーなんでしょ!殺したいの!」

 

「……違う!リーダーじゃ!リーダーじゃない!」

 

ニノは怯えながら校舎の中に消えていく。

二人では持ち上げられない、このままでは雷電は死を待つばかりだ。だが、誰にも生きる強い意志がある。雷電は肘までしか無い腕を使いながらゆっくりとはっていく。

 

「雷電先輩、頑張ってください!」

 

「後は私たちがもちますから!」

 

前が動けば何とかなる。重いが、仲間の生命がかかっているんだ。セリカとリンはまさに火事場の馬鹿力で雷電をコンテナの奥まで連れて行く。そこには応急的なホワイトブラッドの循環システムが存在した。ご丁寧に説明板も存在し、雷電は何とか自己中毒に陥る前にホワイトブラッドの交換を終わらせる事が出来た。

 

『助かった、ありがとう。リン、セリカ』

 

「リーダー……良かった……良かったよぉ……」

 

「あの、雷電先輩。その予備の腕です」

 

セリカは前にも雷電の腕を取り替えたことがある。

左腕を無くし、水鉄砲を使っていた際。セリカが落ちていたのを発見し、取り替えたのだ。

 

『……不味いな、カプセルが破壊されたんじゃ俺は死を待つだけか』

 

「リーダー…それって」

 

『ホワイトブラッドの循環はできるが、純化ができない。ホワイトブラッドの精製システムは生きているが、俺の肉体を整備するカプセルが死んでいる。強化外骨格の無い俺では、また…足手まといになるだけか』

 

強化外骨格がなければ防弾能力は無い。

内部骨格はチタン合金だが、雷電の肉体を動かしているのは人工筋肉だ。人間の筋肉のように伸縮している。ソレが直接弾丸に撃たれてしまう。最低限の防弾性能はあるが、何発も受ければどうなるかは想像に難くない。それに人工筋肉等の修理とメンテナンスもカプセルで行われるはずなのだ。

今、雷電は戦力の大半を失った。生身の人間より少し防弾性能があるだけのサイボーグだ。

 

『……ニノを怒るな。わかってるな?』

 

「なんで!リーダーは殺されかけたんだよ!あの裏切り」

 

『リン』

 

機械音声よりも低い声、裏切り者。その言葉は雷電にとって激しく重く、苦しい言葉である。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい…リーダー、だから」

 

『大丈夫だ。ほら、もうすぐ時間だ。行くと良い。セリカ、悪いが、リンを頼む』

 

「雷電先輩は」

 

『直してみる。ブラックマーケットも使わざる得ないか』

 

雷電がコンテナを開け、カプセルの修理を行っているとマウンテンバイクに乗ったシロコが入ってきた。雷電のコンテナの付近は駐輪場も兼ねているため、自転車通学する生徒は常にここを使う。

 

「雷電先輩、おはよう」

 

『シロコか………え?』

 

「雷電先輩、声おかしいよ。大丈夫?」

 

『大丈夫というか、ソレは………』

 

「拾った」

 

「拾われました」

 

むふぅ!と良い事をしたと胸を張る後輩とつい最近、銃口を向けた相手が共にいる。しかも拾ったと拾われた。犬や猫ではないのだ。雷電もフリーズしてしまい、言葉が出ない。

 

「あの、私は連邦生徒会の〘シャーレの先生〙なんだ。シロコにも聞いたけど、ここがアビドス高等学校で良いんだよね?」

 

『………色々聞きたいが、そのなぜシロコに拾われた?』

 

「実は、その……アビドスの駅までは来れたんだけどそのまま簡単に行けると思って」

 

最低限の水とかも持ってこなかったの

 

テヘッと20代程度の女性は何処か大切だった誰かを思わせる。

しかし、雷電にそのような記憶はないしむしろ、頭に浮かんだそれが理解できない。

 

『まず医務室だ。俺は生活部部長の雷電。サイボーグだ』

 

「サイボーグが学生なの?」

 

『学生というより、警備員や教師という方面だな。よろしくたのむ、先生』

 

「うん、雷電。それで」

 

『まずは保健室だ。砂漠を遭難しかけたんだろう?シロコ、そのまま担いでくれ』

 

「ん」

 

「ちょっ…まっ!」

 

『駄目だ、少しは休め。水分と…食事だな。俺が用意する』

 

雷電はそのままミネラルウォーター、塩分タブレット、そしてコッペパン、コンソメスープ、サラダの簡単な朝食を用意した。

 

「えと、ありがとう」

 

『バイタルは安定しているしな。まったく、砂漠を舐め過ぎだぞ。シロコが通り掛からなければ死んでいたんだ』

 

「…ん……ごめんなさい」

 

『ところで、味はどうだ』

 

「うん!凄い美味しいよ!!」

 

雷電はそう言われつい、頬を動かしてしまう。

サイボーグとなり、食事を摂取することはできなくなった。

味もわからない。だからこそ、その笑顔はうれしい物だ。

 

『食べ終えたら、1時間ほど寝ると良い』

 

「あの……ありがとう」

 

『気にするな。生活部はアビドスで生活する人々の健康維持も務めるのが仕事だ』

 

そうゆっくりと会話を続けようとする雷電だったが、校内放送からサイレンが鳴り響く。これはホシノが決めたことだ。

アビドス生徒は大勢する、すぐさま知らせるには言葉よりもサイレンの方が良いと。

 

「え?!なにこれ」

 

『…襲撃だ。先生、貴女は』

 

「私も」

 

『馬鹿言うな、良いな。休んでいるんだ』

 

雷電はそう言いながら保健室を出る。そのまま走り、校庭へと向かった。

 

『アヤネ、状況は』

 

「ホシノ先輩達が今応戦していますが、カタカタヘルメット団は今までよりも多く。更にはT-34まで」

 

『……わかった』

 

雷電へそのままアビドス機構部へとむかう。

 

『機甲部は出ないのか!』

 

「4両出だせます!他は整備で」

 

『ティーガーは!』

 

「ニノ部長が何処にも」

 

『ニノはどうでも良い…この際だ。俺が戦車長をやる。良いな!』

 

「はい!」

 

雷電はハッチから戦車内部に入り込む。

そして、仲間たちの元へと向かう。

ソレはまさに戦争だった。今までのカタカタヘルメット団の規模ではない。むしろ、カタカタヘルメット団はアビドス高等学校に攻め入るなどできない筈だった。常に警備部隊が警戒しあう日常、だが今回は違う。潤沢な装備に身を包み、数も1個中隊程度は居るだろう。

 

『アビドス戦車部隊、目標は敵戦車!てぇ!』

 

「来てくれたんですね、指名手配犯先輩!」

 

「雷電。来たんだ!」

 

『ホシノか、今は下がって後続と交流しろ!弾薬もないだろ!あと、指名手配犯先輩はよせ!雷電だ!』

 

「まて!」「逃がすかよ!」

 

ヘルメット団が攻めてくるが、ティーガーのMG34の餌食となり気絶する。雷電も指揮をしながら上部機銃を撃ち続ける。

 

「3時の方向!敵、装甲車!」

 

『2番!3番車は3時の敵を!1番、4番は歩兵の援護!正面はティーガーで迎え討つ!』

 

雷電と機甲部隊が殿として歩兵部隊の一時撤退を援護している中、後続部隊としてアビドスにいた生徒達は荒れていた。

 

「うそ…雷電先輩が戦車に?!」

 

「リーダー!」

 

リンはバレットを背負い、一人で突撃しようとしたがそれをタエルが止めた。

 

「何を心配してるんだ。リーダーが出たと言うことは修理が完了したんだろ?問題は」

 

「ニノの馬鹿のせいでリーダーには強化外骨格とか付いてないの!今のリーダーは身体能力が異常なだけの人間と同じなの!」

 

「本当なの!リン!」

 

「話してる余裕なんて無いのよ!誰でも良い!ハンヴィーにあれ載せて!」

 

アレと言われて即座に理解した生徒がハンヴィーに1m以上あるガンケースを積み込む。それを確認するとリナは運転席に入った。

 

「運転は私がする!タエルは助手席!リンは機銃!」

 

リナは即座にハンヴィーを出す。アビドスの機甲部隊は先鋭だ。

 

「マグノリアは!」

 

「今、トリニティだよ!」

 

「使えない!」

 

騒ぐ生徒達の前に1人の女性が現れる。

 

「あの、私にも手伝わせて!」

 

「アンタ誰よ!」

 

セリカが叫ぶがシロコが止める。

 

「シャーレの先生、砂漠で遭難してたのを助けた。雷電先輩が保健室で看病してた筈」

 

「シャーレの先生?もうなんでも良い!ハンヴィーの後部座席に乗れ!ヘイローが無いんだ!隠れていろよ!」

 

「あのリン先輩!」

 

「ホシノ先輩が今後退してるらしい!シロコとセリカはリーダーキチとかが来るはずだ!仲間を率いていけ!アヤネ!前線は」

 

「アビドスの車両が1台大破……ティーガーです!」

 

「そのまま前線のオペレート!」

 

「リーダー、待ってて下さい!」

 

「先生、飛ばすぞ!」

 

ハンヴィーは一瞬のうちにフルスロットルとなり、アビドスの市街地を抜けていく。リナは砂漠での運転にもなれている。

並の運転手ではない。

 

「随分と頑張るな、アビドスのサイボーグ」

 

ティーガーに載せてあるM40を撃ちながら、雷電はただ戦っていた。敵の戦車はT-34が4両。ティーガーをタコ殴りにし、潰すには十分だ。

 

「5分待ってやる、降参しろ。死にたくはないだろ」

 

『弾薬は』

 

「雷電先輩、もう……他の車両は」

 

「撤退し始めてる、これだったら殿なんてしなければ」

 

「先輩と共に居るのを選んだのは私達でしょ!」

 

『頼もしい仲間だ』

 

弾薬も既にない、だが守るべきアビドスの生徒がまだいる。

ならば、雷電に残された物は一つしかない。

 

同乗していた生徒達は元不良であるが、それでも仲間の為ならこのサイボーグは装備が無かろうと立ち向かう。

 

『…待てよ』

 

基本的に雷電のダメージは上半身に集中しており、足にはまだ強化外骨格は残っている。更に、ティーガーは履帯と砲塔が破壊されたのみで、弾薬庫が誘爆したわけではない。

 

『……人間大砲か。お前達、作戦がある』

 

雷電は話す。要約すれば、ティーガーの側面装甲に雷電が無理矢理穴を開ける。そして、砲弾をだし足で蹴って戦車に当てる。

はっきり言えば無謀であるが、手っ取り早かった。

 

『ぐっ……あぁ……』

 

戦闘用ではない生活用の腕部パーツだ。感覚システムは切ってあるとはいえ、無理矢理貫通させた部分からはホワイトブラッドが流れ、想像以上に負荷がかかる。

 

「取れた……2つ!」

 

『とりあえず、行くぞ』

 

雷電は両手を上げながらティーガーの上に立つ。

 

「降参か?アビドスのサイボーグも形無しだな」

 

『あぁ、弾薬もない。でもな、諦めはしない』

 

「雷電先輩!!」

 

砲弾が雷電の位置まで投げられた。

視界がスローモーションになり、即座にどうすればよいかの演算が始める。上下に回転する砲弾が敵の方を向いた時、雷電は右足で蹴りを入れた。いわば、リボルバーだ。

雷電の右足が撃鉄になり、砲弾が発射される。

火薬が右足を燃やし装甲を焦がすが、強化外骨格である以上問題はない。

 

「なっ?!」

 

弾薬庫に当たったのか、誘爆し、砲塔が吹き飛び歩兵を巻き込み消えていく。

 

「次!」

 

『せぁぁぁ!!』

 

二発目も命中はしたがギャインと激しい金属音を鳴らし、弾かれる。

 

「撃て!!撃ち殺せ!!」

 

『まだだ!』

 

得意の身体能力で一瞬にして空中に跳び移り、太陽から蹴りを入れる。武器なら奪えば良い。

 

『はぁぁぁぁ!』

 

「ひっ…やめ」

 

雷電はハッジをこじ開けると中にいたカタカタヘルメット団を投げ捨てる。狭い中で銃を撃とうにも跳弾することを警戒したのか、他のヘルメット団も格闘を仕掛けてくる。

 

「雷電先輩!」

 

「吹き飛べ!」

 

どうやら仲間事、雷電を葬り去るつもりのようで雷電のいたT-34は一瞬で火の海となる。もともと装甲自体が弱いのもある。

身体を燃やしながら雷電は砂漠を転がった。

人工筋肉が燃えたのか、嫌な匂いが立ち込める。それでも戦おうとする雷電だが、並べられる仲間を目にする。

 

「動くなよ。サイボーグ、お前のせいで戦車を2台も失った!」

 

『人質か……弱いな』

 

「だが、ソレも今日までだ」

 

『なに…がぁぁぁぁぁぁ』

 

ソレはワイヤーネットだった。しかも電源があるのか雷電ですら耐えられない電流が流れ、動くことができなくなる。

 

「先輩!」

 

「終わりだ、サイボーグ野郎」

 

地に伏せる雷電の顔にT-34の砲身が向けられる。

命中すれば余裕で上半身は吹き飛ぶだろう。

 

『……くそ………』

 

「リナはそのまま突っ込んで!タエルは射撃!リンは弾薬庫を撃ち抜ける?!」

 

「アビドス最高のスナイパーを舐めるな!」

 

「なん」

 

雷電に砲身を向けていた戦車が急に吹き飛んだ。

機甲部隊の増援かとも思ったが、現れたのはハンヴィー1台。

だが、十分だった。人質になっていた生徒達を即座に救出し、降りてくる。辺りにはスモークが展開され雷電達を囲うように射線が遮られる。

 

『何が…』

 

痺れながらも顔を上げればシャーレの先生を名乗った女性がガンケースを抱えて走ってくる。

 

「待ってて…今これを」

 

雷電を覆っていたワイヤーネットが外され、身動きができるようになる。

 

『寝ていろと言ったではないか!』

 

「生徒が危ないの!私は、先生だから…」

 

雷電はその決意の瞳に何も言わず、ガンケースを受け取る。

中には高周波ブレード、強化外骨格は既にない。

だが、これ1本あれば、雷電は戦車とも戦える。

 

「みんな、まだ…私を信頼出来ないのも理解できる!でも、お願い。皆を……皆を助けさせて!」

 

戦場のど真ん中というのにそう叫ぶ先生。

雷電は微笑みながら、言葉を繋ぐ。

 

『どうした、先生なんだろう?ここでは、誰よりも立場は上だ』

 

「え、」

 

『俺達を勝たせる事が可能なんだな』

 

「……わからない。でも、やるだけやってみる」

 

そう言う先生にやはり、自分の知っている誰かを投影したのか頭を優しく撫でる。

 

『雷電、雷電だ』

 

「リン」「リナ」「タエル」

 

シッテムの箱に4人の情報か載せられる。

雷電は既にレッドゾーンだが、目で戦わせろと言ってくる。

 

「いくよ、皆!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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