【完結】シャア・アズナブル(本物)   作:むにゃ枕

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16.感応

 少し前の話である。ジオン残党の先行部隊は、フォン・ブラウンの制宙権を確保していた。連邦軍フォン・ブラウン守備隊は壊滅した。他の月面都市に駐留する部隊は、残党の規模を見て、攻撃を躊躇った。

 マスドライバー防衛部隊も、フォン・ブラウン守備隊と同じ運命を辿っていた。

 

「ジオン残党軍本隊をキャッチしました! 進路フォン・ブラウンです!」

 

 アルビオンのオペレーターが、残党の本隊を捉える。ティターンズ第十独立部隊は、各部隊に情報を伝達した。

 

「フォン・ブラウン上空のジオン残党部隊と合流しました。中心にGP02発見!」

「突破する。バニング大尉、ウラキ少尉、任せたぞ!」

 

 バニング小隊が、アルビオンから発艦した。

 

「ウラキ、敵の防御を破る! お前のガンダムの方が速い! 行けッッ!」

「はい! 大尉!」

 

 バニングのジム・カスタムとキースのジム・キャノンⅡ、不死身の第四小隊がGP01を突破させるべく、暴れる。他のティターンズMS隊もその動きに追随した。

 

「間に合え! 間に合えぇぇ!!」

 

 GP02との距離が1000を切った時だった、眼下のフォン・ブラウンが爆発した。

 

「……核攻撃か。……間に合わなかった」

「ウラキ! 動きを止めるな! 死ぬぞ!」

 

 戦場が停滞していた。しかし、バニングの激励でコウは、自分のすべきことを思い出した。

 GP02を撃破しなければならない。まだ敵は気化弾頭を抱えている可能性が有る。2発目は絶対に阻止しなければならない。

 

「よくも! フォン・ブラウンを!」

「……ガンダムッ!?」

 

 GP02は自身の齎した破壊に陶酔していたのか、無防備だった。油断していたGP02のバズーカを初弾で狙う。そして、次弾で、推進系を狙った。

 

「チッ、やられたか……」

 

 敵は咄嗟に機動したが、その動きは精彩を欠いていた。動揺している? そんな可能性がコウの脳裏によぎった。しかし、それを即座に潰す。

 

「なんで!! なんで! フォン・ブラウンを核で焼いた!?」

「……俺の方が知りたい!」

「お前がやったんだろう!」

 

 敵は、ぼかした答えしか言わなかった。それがコウの逆鱗に触れた。

 

「ここまでか……」

 

 あっさりとGP02を撃破したが、ここからが本番だった。

 

「ウラキ少尉、退避してください! 敵MAと敵MS隊が同士討ちをしています! アムロ少尉とシャア大佐が敵MAと戦闘を開始しています! 2人が抑えているうちに撤退してください!」

「僕だってガンダムに乗っている!! 逃げるわけには行かない!」

 

 白いガンダムと赤いジム・カスタムが、敵のMAと乱戦を繰り広げていた。コウは、その戦闘を実際に見るまでは、援護に入るつもりだった。

 

「レベルが違う……なんだあの挙動は……」

「ウラキ少尉下がれ! 足手まといだ!」

「……分かり、ました」

 

 コウは強く唇を噛んだ。

 

「アムロ、背中は任せる」

「任せておけ。俺のプライドに掛けて抑える」

 

 ブラウ・ブロ改はIフィールドを積んでおり、ビーム兵器は無効だった。更にビットが増設されており、絶え間なくオールレンジ攻撃を仕掛けてくる。

 

「ハマーンと言うのか……同情はするが、味方はやらせん!」

「アムロ?? 誰と話しているんだ??」

「この鈍感野郎!」

 

 シャアとアムロは、幾つかのビットを落とした。味方艦隊やMSも支援砲撃を行っている。このまま押し切れることは明白だった。

 

「男どもめ! 私を犯し! 穢した! 獣! なんで、なんで死なない! 死ねよぉぉ!!」

 

 強烈なオーラだった。アムロのアレックスの動きが鈍る。だが、シャアのジム・カスタムは、平常運転だった。

 

「終わりだ。なかなか良い動きだった」

 

 ビームサーベルを、コクピットに突き付けようとした時、機体のセンサが反応した。攻撃をやめ咄嗟に距離を取る。

 

「むっ? 新手か?」

 

 ビットよりも洗練され、小型化された無人機がシャアの周辺を飛んでいた。

 

「流石だな。赤い彗星。私のファンネルに気が付くとは?」

「誰だ?」

「私は、ジオン共和国軍パプテマス・シロッコ大佐だ。この場はジオン共和国が預かる。この場は、引きたまえ」

「ジオン共和国はテロリストを庇うと? ティターンズには、ジオン残党に対処する権利がある」

「くくく。ティターンズの権利は停止された。ジオン共和国の国会で、今頃、法が可決されているだろう。ジオン共和国は、ティターンズを否認した」

 

 シャアは政治が苦手だった。ティターンズは、もともとダルシア政権が認めた組織だ。ジオン共和国は、ティターンズを合法的な存在として認めていた。なので、目の前の巨大MAは敵である。法改正というのは、欺瞞だろう。

 

「詭弁だな。テロリストを庇うなら貴様も敵だ!」

 

 シャアがサーベルを構え、ファンネルを斬り裂く。

 

「シャア・アズナブル?? 本当に戦争になるぞ!? おい、本当に良いのか??? 地球連邦とジオン共和国の全面戦争だぞ!!」

「テロリストの言い訳は聞かない」

 

 シャアの行手をアムロが、遮った。

 

「待て、シャア! コイツの言うことは恐らく正しい! ジオン共和国は、自国民をティターンズが保護することを認めていたが、その法律が否定されたんだ」

「……そうか。ならそうなんだろうな」

 

 シャアはようやく牙を収めた。

 

 パプテマス・シロッコの搭乗するGP03デンドロビウム改。そしてララァ・スンの搭乗するノイエ・ジール・カスタム。サイコミュを搭載した2機には、アクシズから齎された技術であるファンネルも搭載されている。

 また、新型機であるハイザックを装備しており、ジオン共和国軍の練度は高い。ティターンズが、攻撃を躊躇うには十分過ぎる抑止力だった。

 

 GP03は、アナハイムからジオン共和国に譲渡されていた。オサリバン常務は、インビジブル・ナイツが全滅することや、核弾頭を奪取できないことも想定していた。その場合のサブプランが、ジオン共和国軍への兵器の納入だった。ローリスク・ローリターンであり、堅実な手段だったが、オサリバンはギャンブルを好んでいた。

 

「さっきからなんなんだこの歌は!!」

 

 ジャズを貫通し、脳内にララァ・スンの歌声が響く。イオ・フレミングは、義足野郎を思い出した。

 

「ダリルの野郎の方が、まだマシな趣味をしてやがった!」

 

 ティターンズは、停戦に応じるしかなかった。サイコミュにより増強されたララァ・スンの能力は、戦場を支配していた。

 

「アムロ? どうした?」

「歌だ。女の歌が聞こえる」

「ああ。感応のヤツか」

 

 近くにいたアルビオンに着艦したシャアは、孤独だった。自分だけララァ・スンの歌声を聞いていないのである。

 

「どれ。聞いてみるか……」

 

 絞っていた能力を広げ、ララァ・スンの歌声を通して刻に接続する。刻の中でシャアは、歌うララァ・スンと、彼女の歌声を称賛するパプテマス・シロッコを見つけた。

 駆け寄って手を振ると、ララァとシロッコは、ギョッとした表情を浮かべていた。

 

「むっ。終わってしまった」

 

 音楽や芸術センスが終わっているシャアは、ララァ・スンの呪歌を音楽としてそれなりに評価していた。

 

「なかなか良い歌声じゃないか」

「本気で言っているのか???」

「プロのアーティストには劣るが、ストリートミュージシャンとしては十分なレベルだ」

 

 アムロは、シャアを化け物を見るように見てしまった。シャアの心は、若干傷ついた。

 

「ニュータイプというのは、厄介だな」

「そうだな……」

 

 アムロとシャアが、話しているのを見てコウがすっ飛んできた。

 

「シャア大佐が、悪霊を追い払ったのか見えました! これってなんなんですか!?」

「ニュータイプの感応現象だ。敵の女、ララァ・スンというのはド級の化け物だ。シャアは……よく分からん」

 

 アムロのざっくりした説明に、コウは目を輝かせる。

 

「流石シャア大佐とアムロ少尉です!」

 

 フォン・ブラウン紛争は、ジオン共和国軍の介入という結果で終わった。フォン・ブラウン市の消滅は、世界に大きな波紋を投げ掛けた。時代が動こうとしている。

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