ティターンズは、ジオン共和国軍とジオン共和国議会の承認のもと、旧ジオン公国軍人の引き揚げや、ジオン残党のテロリストの対処をしてきた組織である。
ジオン共和国軍が行っている旧ジオン公国軍の兵士の引き揚げの補助。それがジオン共和国法で裏付けられていたティターンズの法的根拠であった。
連邦法も、それに準じており、ティターンズはこの法に則り、ジオン残党の対処を行ってきた。
連邦政府は、ティターンズが軍閥化することを恐れており、法的根拠をわざわざ整備しようとは、考えていなかった。むしろ、法的根拠に脆弱性を作ることにより、ティターンズ暴走時には、そこを突き、抑え込むことも考えられていた。
パプテマス・シロッコ大佐率いるジオン共和国軍と、キャスバル政権は、軍部と議会が一体となりティターンズ根拠法を否定したのだ。
ガルマ派とダルシア政権の残したレガシーは、失われた。根拠法を失い、国際条約を破棄されたティターンズは、ジオン残党の対処が法的に不可能になってしまった。
しかし近い将来、法的に不可能となるとしても、法は施行されておらず実力行使は可能だ。それを考慮し、シロッコは抜け目無く、艦隊を連れてきていた。
フォン・ブラウン紛争に介入したジオン共和国軍は、強力な武装集団だった。ハイザックを量産機とし、一部のエース部隊は、マラサイを採用している。これらは、アナハイムから流出した技術でジオニック社が作ったものだった。
シロッコの乗るGP03デンドロビウム改、ララァ・スンのノイエ・ジール・カスタム。この2機はサイコミュと、アクシズ先遣艦隊から齎されたファンネル、Iフィールドを装備しており、戦場を1機だけで変えられるほどの戦術機だった。
また、デモンストレーションとして使用された、ララァ・スンのサイコミュ攻撃は、歌となり戦場を支配した。味方を奮い立たせ、敵を萎縮させる呪歌は、ティターンズの継戦意欲を削いだ。
ジオン共和国は、法的根拠と軍事力により、この紛争に介入し、ティターンズとジオン残党との紛争を停戦させることに成功する。
「ガルマ少将。同じジオン共和国軍人として、スペースノイドのために尽くしたいとは思わないか? キャスバルは酒と女にのめり込んだ道化だ。共和国軍は、私の影響下にある」
「パプテマス大佐。それだと、君にメリットが無いだろう?」
「私は、キャスバルが嫌いでね。君はザビ家の正統後継者だ。ジオン国民は権威に弱い。私と君とで世界を支配しないか?」
停戦交渉の席で、シロッコはガルマを口説いていた。シロッコの強烈なカリスマが、会議室を席巻した。
「ガルマ。私は君の刃だ。道具は主張しないものだが、友人として誇れる君でいて欲しいとは思っている」
シャアの言葉で、ガルマの決心は固まった。
「パプテマス大佐、君に子供はいるかな? 僕は先日、娘が産まれてね。軍務が忙しくて、まだ、顔も見られていない。僕は軍人だ。けれど、1人の子の父親でもある。
眼下のフォン・ブラウンでは、どれくらいの無辜の市民が犠牲になったと思う? あの中に娘がいたら、と想像することくらいなら、僕にも出来る。
ガルマ・ザビは、ジオン共和国軍人であり、ザビ家の男だ。だからこそ、ジオン残党のテロ行為は止めなければならない。同胞であるからこそ、それは許容出来ない」
「ふふ。少将は甘い。スペースノイドもアースノイドも、貴方のように出来た人間だとは、思わない方が良い。彼らは怒りも絶望も、悲嘆も忘れていない! このフォン・ブラウンからも新たな憎しみの炎が立ち昇っている!
スペースノイドは強い指導者を求めているのです。このパプテマス・シロッコこそ、世界の変革者だ。次は、戦場で会いましょう」
シロッコの勧誘をガルマは蹴った。その決断に後悔は無かった。
ジオン共和国軍は、ハマーン・カーンのブラウ・ブロ改や、シーマ艦隊、残存MSなどを収容した。ティターンズには、それを押し留められる能力は無かった。
シーマ・ガラハウの身柄について、連邦政府は返還を要求したが、ジオン共和国は拒否した。戦後のフォン・ブラウン裁判は、間違っているとし、全面的に連邦政府を非難した。
連邦政府と、ジオン共和国の関係は険悪だったが、シーマ騒動により、更に悪化した。
シーマ・ガラハウと、その麾下だった者は、アステロイドベルトの小惑星で、鉱山経営に踏み出した。そして、歴史の表舞台には、もう現れなかった。
「……コウ。全部、無くなっちゃったわ。フォン・ブラウンも、アナハイムも、父さんも母さんも、友達もみんな無くなっちゃった!!」
泣き喚くニナ。コウは彼女を優しく抱き締めるだけしか出来なかった。
フォン・ブラウンに有ったアナハイム・エレクトロニクスの本社と工場、そして系列企業は、文字通り吹き飛んだ。残された支社のうち最大規模であったグラナダ支社が、業務を引き継ぐこととなった。
しかし、損害は天文学的だった。銀行も吹き飛んでいるのだ。フォン・ブラウンの抱えていた現金資産も、物的資産も消えた。
なんとか、営業は続けているものの、工場が消えたため製造も出荷も出来ず、キャッシュ・フローは大幅に悪化した。
連邦政府とジオン共和国政府はフォン・ブラウン難民の受け入れと、大規模な資金援助を発表し、景気や治安の悪化を食い止めようとした。しかし、事件の規模が巨大で有ったため、景気も治安も悪化した。
フォン・ブラウン紛争により、ジオン共和国も影響を被った。ジオン共和国は、今まで戦争による損害を受けず、順調に経済成長を続けてきたのだ。
キャスバル政権への交代以降、連邦政府からの経済制裁を受けて陰りは見えていたが、それでも経済は順調だった。しかし、フォン・ブラウン・ショックにより、地球圏の経済は衰退した。そのため、バブル状態であったジオン共和国の経済も弾けた。
そもそも、ジオン共和国はアナハイムと共謀し、ジオン残党を使い、地球連邦に対してハラスメントを行いたいという考えを持っていた。そのため資金援助や支援をしたのだ。
フォン・ブラウンを吹き飛ばして欲しくて資金援助をしたわけではない。
ジオン残党が狂っていたことと、阻止できなかったティターンズや連邦軍の無能をあげつらうことで、自分たちの援助を正当化するしか無かった。
また、連邦軍内にいた過激派も、ジョン・コーウェン中将の派閥を潰すべく、アナハイムと共謀していた。ティターンズの足を引っ張れれば良いと思っていただけだった。フォン・ブラウンを吹き飛ばしたかったわけではない。
ジオン残党の狂気と、敵対派閥の無能を宣伝する材料は手に入れたが、その代償は大きすぎるものだった。
ジオン残党のインビジブル・ナイツ。その指揮官であるエリク・ブランケ少佐も、フォン・ブラウンを吹き飛ばしたかったわけではなかった。
マスドライバーは、コロニー落としよりも、正確に連邦軍基地を攻撃できる。これにより、スペースノイドの連邦政府に抗う意志を宣伝したかっただけだった。民間人を犠牲にするつもりは無かったのだ。
ジオニック社も、ライバルであるアナハイム社が勝手に爆散してビビっていた。ジオン共和国の景気は悪化しており、ジオニック社は、アナハイムの買収を躊躇った。アナハイムは、ジオニック社よりも規模が大きい。
お求めやすい価格になっていても、自分よりも大きい企業を買うことは、ジオニック社の株主が許さなかった。また、アナハイムのMS部門もバラ売りされていたが、ジオニック社と技術風土が違うため、それもジオニック社は買わなかった。
アナハイム社は大規模なリストラを発表するなど、なんとか負債を減らそうとした。ちなみにニナ・パープルトンもこのリストラに巻き込まれ無職となっていた。
結局、アナハイム社は地球連邦政府が救済するしか無かった。アナハイム・エレクトロニクスは、地球連邦裁判所にチャプター・イレブンを申請。連邦裁判所はこれを受理した。
アナハイム社は、半官半民の企業となり、MS設計、製造部門はアナハイム工廠として連邦軍に取り込まれた。
連邦政府は、財政や、諸々の事情を鑑みてティターンズを解散。新組織としてロンド・ベルを設立する。