【完結】シャア・アズナブル(本物)   作:むにゃ枕

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22.ジオン帝国

 アルビオンは、ロンデニオンに無事到着した。アムロ・レイは、民間人で14歳の少年であるジュドー・アーシタをアルビオンが乗せてきたという報告を聞き顔を顰めた。

 アムロ自身も民間人としてガンダムに乗った身である。そんな弱みもありニュータイプであろうジュドーには、無碍なことは出来なかった。

 アムロがニュータイプを見捨てたと宣伝されれば、面倒なことになってしまう。アムロ・レイという存在は政治的なシンボルになりつつあった。

 

「ヤザン! ちょっといいか?」

「なんです。アムロ大尉?」

「カミーユの様子はどうだ? 鍛えられたか?」

「まさか。あの偏屈は、昨日今日では直りませんよ。まだ時間が必要です」

 

 カミーユ・ビダンは、ガンダムMKⅡのテストパイロットとして、ロンド・ベルに送られて来ていた。

 彼は、ロンド・ベルの将校であるジェリド・メサに殴り掛かり逮捕されたのだ。保釈されたが、父親であるフランクリンが、その根性を叩き直すために、テストパイロットという名目を付けロンド・ベルにぶち込んだのである。

 

 カミーユは、ホモアビスの大会で優勝するほどの実力を持っており、テストパイロットという名目をロンド・ベルは否定出来なかった。また、フランクリン個人から多額の寄付を受け、ロンド・ベルは折れた。貧乏組織の弱みを突かれたのだ。

 カミーユは、ヤザンに反抗し、何度も噛みつき、その度にしこたま殴られた。結果として、マトモな兵になりつつある。

 

「もう1人は難しいか?」

「また、新しいニュータイプです? 生憎ウチはカミーユ1人で手一杯だ」

 

 アムロはジュドーを預ける先を探していた。アムロが育てるのは時間的に不可能である。アムロは多忙だった。ロンド・ベルの教導隊にも、空きはない。

 

「ロンド・ベルは、ニュータイプのゴミ箱じゃないんだぞ」

 

 オーガスタ研究所から流れてきた強化人間や、ニュータイプも、ロンド・ベルには居る。意図して集めた訳では無い。

 

「ボッシュ、お前の隊でリタとジュドーの面倒を見てやれ。ジュドーはテストパイロットとしてねじ込む。ヘイズルの試験は2人にやらせる。俺は、フルバーニアンで十分だ」

「……大尉。あのカミーユのようなのを寄越されても、困ります。ヤザンのように出来る自信は有りません」

「それも経験だろう。お前なら出来るはずだ」

 

 アムロは、ボッシュに2人を任せた。ボッシュは、ニュータイプと聞いて、カミーユを想像していた。ジュドーとリタはマトモだった。2人は当たりの方と言われ、カミーユの株が勝手に下がった。

 

 アムロの乗機であるGP01FbNTはフルバーニアンが原型である。フルバーニアンは、コウからアムロへ譲渡されていた。

 この機体は、サイコミュを取り入れたアップデートが施され、アレックス以上の反応速度を誇る化け物となっていた。

 

「シャアの奴。面倒事を押し付けやがって……」

 

 シャアは、よくニュータイプや強化人間を拾ってきては、アムロに押し付ける習性を持っていた。ロンド・ベルは、強化人間とニュータイプの巣窟になりつつあった。

 

 

 

 グラナダという都市は、歴史的にジオン共和国の影響が強い場所だ。しかし、フォン・ブラウン紛争が起きてからは、明確に連邦政府寄りの姿勢を見せていた。

 

 ガルマ・ザビ少将率いるグラナダ外郭部隊は、ジオンからの亡命軍人が多くの割合を占める。

 

 キャスバル政権下では、ジオン共和国軍人の亡命者がそれなりにいた。亡命者の多くが、旧ガルマ派だった。

 また、シロッコが軍で台頭してからは、彼に睨まれた穏健派の軍人が多く亡命してきた。

 フォン・ブラウン紛争後は、亡命者が顕著に増加した。かなりの数の軍人が、ジオン共和国軍のやり方に疑問を持ったのである。

 

 亡命者は、ジオン国内にパイプを持っていた。ガルマ本人は命じていないというのに、亡命者は、ガルマ機関を創設していた。

 

 グラナダは、権謀術数蠢く魔都となっていた。しかし、シャア・アズナブルは依然として政治が分かっていなかった。そのため、彼は常に平常運転である。

 

「ミリーナ。抱き着かないでくれ。兵が見ている」

「わたしは、大佐の恋人です。だから、こうしても良いんですよ」

「君が、恋人を名乗って居るだけだ、私にはそんな感情はない」

「でもでも、わたしが20になったら結婚してくれるんですよね??」

「…………約束は守る」

「なら、恋人ですね」

 

 ミリーナは事実上、シャアの恋人となっていた。シャア本人は、それを頑として認めていない。しかし、約束は履行すると公言しているため、周囲は2人をカップルと見なしていた。

 

「ガンダムMKⅤの調子はどうだ?」

「良い機体です。ニナさん、大佐にボロクソに言われたのを根に持っていたっぽいですよ。速いし、私じゃフルパワーは出せない」

 

 ミリーナは、シャアが不在の時のガルマの護衛である。彼女はシャアにニュータイプとして鍛えられている。時間稼ぎ程度は出来る。シャアは彼女をそう評価していた。

 

 ガンダムMKⅤは、ニナがシャアに贈った機体だ。ニナはGP01を駄作と言われたことを根に持っていた。

 ローレン・ナカモトやナナイ・ミゲルらが開発に携わったガンダムMKⅤ。それのインコムをファンネルにし、TR6のシールド・ブースターを増設したものである。コストは高いが性能は折り紙付きだった。

 

 シャアはアレックスの近代化改修機であるトリスタン高機動型に乗っていた。機体操作のセッティングが敏感過ぎて、トリスタンはシャアにしか乗れない機体となっていた。

 貧乏な連邦軍としては、機体を遊ばせておくわけにはいかない。結局ガンダムMKⅤはミリーナの愛機となっている。

 

 シャアは、真面目なので報連相を欠かさない。アルビオンがジオン共和国軍に絡まれたことや、ジュドーという少年のこと、サイコミュや少女兵のことなどをガルマへ報告した。

 

「ジオンも、切羽詰まっているようだな。軍規を乱してまでニュータイプが必要だったようだ。やはり経済の影響が大きいのだろうな。戦争など無理だろう」

「シャア、お前の楽観はどうにかならないのか。グラナダの諜報網でも、アクシズ内部の動きは掴めなかった。貴重な情報だぞ」

 

 フォン・ブラウン紛争におけるララァ・スンのサイコミュ攻撃は、連邦軍のトラウマとなっていた。ニュータイプや強化人間の感応は攻撃と見なされ、防御方法のみが追求されてきた。

 ジュドーのようにジオンの強化人間と感応するという例は極めて稀である。

 

「しかし、戦争など何の利益もないぞ」

「ジュドーのもたらした情報は貴重だ。アクシズにエンジェル・ハイロゥなる施設が作られていること。それが、強化人間やニュータイプを糧として起動すること。シロッコが何を考えているか探る必要がある」

 

 アクシズ内部の情報を探るべく、ガルマは勝手に設立されていたガルマ機関の構成員に命じた。結果は芳しくなかった。

 ガルマが命じたことにより、ジオン共和国内の態度は硬化した。この命令は、パプテマス・シロッコを刺激していたのだ。

 アクシズの内部事情はジオン共和国軍にとっての最重要機密であった。それがプル31を通して漏れたことが、ガルマ機関の行動によって裏付けられてしまったのだ。

 

「ダルシア議員が亡命だと!? 直ぐにお会いする」

 

 ダルシア・バハロをはじめとする親連邦派の議員は、グラナダへ亡命してきていた。

 

「ダルシア議員。お久しぶりです。一体どうされたんですか!?」

「クーデターだ! シロッコは戦争を起こす! 奴は世界を滅ぼすつもりだ!」

 

 ダルシアの亡命を受け、ロンド・ベルとグラナダ外郭部隊は、グラナダへ兵力を結集した。しかし、地球連邦軍艦隊は、即時に動けなかった。

 

 ダルシア・バハロが亡命した翌日。パプテマス・シロッコらジオン共和国軍部がジオン共和国政府に対し、クーデターを実行した。軍事政権を実現させたシロッコは、キャスバル首相を軟禁。ジオン共和国の解体を宣言した。

 そして、ミネバ・ザビを皇帝としたジオン帝国の建国を宣言。地球連邦へ宣戦布告する。

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