【完結】シャア・アズナブル(本物)   作:むにゃ枕

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Chapter2 TITAN
08.ティターンズ(実質ロンド・ベル)


 ジオン共和国軍が行っている旧ジオン公国軍の兵士の引き揚げの補助。それがティターンズの主任務である。しかし、連邦軍部隊だけでは、引き揚げ部隊とジオン残党の区別をすることは困難だった。

 なので、ティターンズは、設立当初から、ジオン共和国軍部隊を組み込んでいた。この部隊の役割は、ジオン残党がテロリストなのか、帰還兵なのかを判別すること。テロリストに対する説得、交渉などであった。

 また、同じジオンの同胞を組み込むことで、スペースノイドの結束を揺るがす云々、アースノイドの犠牲を減らす云々といった噂も有った。

 

 そんなジオン共和国軍ティターンズ派遣部隊に、ガルマ・ザビ少将という大物が左遷されてきた。ティターンズ首脳部は、困惑した。ガルマ・ザビは、大物すぎて扱いに困るのだ。

 

「ガルマ少将、ティターンズは実働部隊だ。そこに少将のような高位の軍人を入れるようなことは難しい」

「ブライト少佐、そこを何とかならないか? 僕は凡人だがお客様扱いは困る」

「少将が高位の軍人であるということが問題なんだ。少将の部隊は実動向きだ。この戦力を遊ばせるのは惜しい。しかし、ガルマ・ザビを前線に出し、死なせたとなったら非難は避けられない」

「失脚し左遷されたんだ。もう僕には大仰な価値はない。ザビ家のガルマではなく、単なる一戦術単位として使い潰してくれ。それに僕の運は良い。シャアが居るからね」

 

 ティターンズは、主に地球でジオン残党や帰還兵の対処をしている。そのため、大気圏内での航行が可能なペガサス級が好まれ運用されてきた。

 しかし、ガルマの持ち込んだティベやムサイにはミノフスキークラフトが存在せず、地球での運用が不可能だった。そのことをガルマがブライトに相談したら、すんなり艦が貸与されることとなった。

 

「我々の部隊には、ペガサス級サラブレッドが貸与されるようだ。連邦としては、妙に話が早い」

「僕たちを前線に送り、そこであわよくば死んで欲しいと願っているのは、連邦もジオンも同じなんだろう。もしかしたらアナハイムも絡んでいるかもしれない。シーマの乗っていたあの機体、全く見覚えがない。あれはアナハイムのものじゃないか?」

「そうか? 突撃機動軍ならあんな機体を作りそうだが……」

「そう言われると、そう思えてくるな。被害妄想かもしれない」

 

 ガルマの推測は実際、当たっていた。

 

 アナハイムは、連邦政府に歩み寄りの姿勢を見せるダルシアやガルマが邪魔だった。ほどほどの戦乱が無ければMSは売れない。戦乱が起こらなければ、莫大な生産ライン構築費用と設計費は回収できないのだ。戦乱の火種を起こすため、オサリバン常務らは、シーマ艦隊やジオンのテロリストを匿っていた。

 

 連邦軍の過激派にとっても、ガルマ・ザビは邪魔だった。連邦に縋りつくザビ家の生き残りは神経を苛立たせた。感情的に許せない存在だったのだ。

 

 キャスバル派にとってもガルマは邪魔だった。政治的な宿敵であり、キャスバルが、個人的に仇と認識していた。風の会を通じて暗殺しようとしていたのだが、何故かガルマは死ななかった。

 

 アナハイム、連邦過激派、ジオン共和国の3者は、ガルマ・ザビを排除したいという点で利害が一致した。

 アナハイムは死蔵していたジオン残党を放出した。共和国はジオン系テロリストやジオン残党に働き掛けた。連邦過激派はそれらに対して見て見ぬふりをした。

 

 ティターンズは、実戦経験が豊かな部隊ではある。しかしエリート部隊では無かった。むしろ真面目な叩き上げの士官が多かった。

 

 ティターンズの役割は多岐に渡る。連邦軍一般部隊が、通報という名のジオン残党の押し付けを行ってきた場合を例としよう。

 まず、ジオン共和国の公国軍人リストから該当部隊を照合する。次に、ジオン共和国軍派遣部隊と共に降伏勧告を行う。ここで、同意すれば、罪状などを確認しつつ引き揚げが成立する。歯向かえば戦闘だ。

 

 連邦軍一般部隊は、厄介なことは大体ティターンズに押し付けてきた。ティターンズはジオン残党を扱うプロフェッショナル集団となっていた。

 次から次へと、虫のように湧くジオン残党の対処は多忙を極めた。過激化する暇などない。考えるより先に目の前のタスクをこなさなければならない。

 

 所有する数隻のペガサス級は、地球のみならず宇宙をも駆け回っていた。駐在武官から現場へ戻ったブライト・ノア少佐。彼と元ホワイトベースクルーが乗り込むグレイファントムは、多忙な艦だ。

 アムロ・レイ少尉の搭乗するガンダムNT1は無類の強さを誇っていた。グレイファントム隊は、敵を軽微な損害で撃破するので便利使いされていた。

 

「ガルマ・ザビ少将。貴殿を迎えられることを光栄に思う」

「ヨハン・エイブラハム・レビル大将閣下。感謝します」

 

 レビルは、和平後に連邦へ戻ったものの冷遇された。彼が先の戦争でやったことは、連邦軍艦隊を壊滅させたことと、捕虜になったことだけだ。レビルは無能と見なされた。彼の派閥は弱体化していた。

 ワイアット派とも異なる右派であり、ジオン強硬派であるレビルとその派閥はジャブローにとって邪魔だった。そのためジャブローは、嫌がらせとして老体のレビルを多忙極まるティターンズの総帥とした。

 ホワイトベース隊をティターンズへ迎えたのは、レビルの些細な抵抗だった。

 

 UC0085、某日。ルナツーのベイでシャアは軽く試乗し、ルナツー宙域を流してきたガンダムGP01から降りた。

 

「ガンダムGP01か。良い機体だった。だが、もっと速度は出ないのか? 反応速度も遅い」

「なんなのあなた? 私のガンダムに文句でも有るわけ?」

「ジオン共和国軍のシャア・アズナブルだ。大佐をしている。君はアナハイムの技術者か?」

「そうよ。私はニナ・パープルトン。で、私のガンダムが遅いとでも言うの?」

「ああ。その通りだ。シーマの乗っていたガーベラの方が速かった。搭乗者が弱かったが……このガンダムは駄作だな」

「大佐さん。設計者の私に喧嘩を売っているのかしら??」

 

 ルナツーに入港していたアルビオンの搭載機ガンダムGP01。新型機だ。無理を言って強引に試乗したシャアは、身も蓋もない感想を漏らした。

 

 ジオンと連邦との和平で、ジオニック社は権益を守られている。ガルマは想定していなかったが、ジオンのMS技術は流出せず保持されていた。

 ジオニック社の技術を得られなかったためアナハイム社の技術水準は、低いままだった。そのため、GP計画は遅延した。アナハイムの技術が、求められる水準に追いつかなかったのだ。

 

 ガンダムGP04は、設計者のクレナ・ハクセルがジオンと取引をし、技術を得たため、2年前になんとか完成に漕ぎ着けた機体だった。クレナはその後、ジオンとの繋がりをオサリバンに問題視され設計を降ろされた。

 オサリバンは、シーマと繋がっていたため、クレナを抱き込みGP04をガーベラ・テトラとして完成させていた。オサリバンらは、紛争を見込んでおり、キャスバルのジオン共和国と取引を行い、利益を得るつもりだった。

 

「このMSは出来損ないだ。想定内の速度しか出ない。ワンオフの特機としては中途半端だ。新型機というから期待したが予想の範囲内だな」

「死にたいのかしら??」

「アムロのアレックスの方が乗りやすい。GP01は、5年前の機体に負けるような反応速度だ」

「ふふふ。こんなにバカにされたのは初めてよ。私のガンダムに無理矢理乗り込んで、ボロクソに言うなんて!!」

 

 シャアは目の前のニナが、怒っていることにようやく気が付いた。シャアはMSのことになると周りが見えなくなるタイプだった。

 

「ニナ、その人大佐だぞ。殴るなよ!」

「モーラ! あの人、私のガンダムをバカにしたのよ!!」

「でも、駄目だからな!」

「ちょっと、離しなさいよ! ねぇ!」

 

 モーラに抱えられニナは消えていった。シャアはアルビオンのシナプス艦長に礼を言い、母艦であるサラブレッドへ戻った。 

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