我、呪いの王なり(なんちって)   作:リーグロード

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感想ありがとう!もっと両面宿儺の小説増えて!!!


訓練&ネッシー遭遇

 

 ようやく、本当に長かった暗闇の空間から解放されて、久方ぶりの食事に俺は内心で感涙に咽び泣いていた。

 

「ふむ、これが現代の菓子か……。庶民でも手に入る代物でこれのレベルとは、時代は随分と進んだものだな」

 

 ポリポリとポテチを咀嚼しながら、宿儺らしい言い回しで企業努力を褒め称える。

 

「う~ん、なんか俺の掌に口が出てきて、そこからポテチ食うの変な感じなんだけど」

 

「文句を言うな小僧、味覚を共有は出来るが、食は自らの口で頬張ってこその醍醐味だろうに……」

 

 そう、今は新条の掌に俺の口を出現させてポテチを食べている。第三者の目線から見れば中々に奇怪な光景が出来ているだろう。

 

「んで、えっと、両面宿儺さんだっけか?」

 

「小僧、今一瞬我の名を忘れかけていたな?」

 

「だってよ、両面宿儺なんて変な名前覚えにくかったもん。てかさ、両面宿儺を縮めてすっくんって呼び名はどうよ!?」

 

「ほぉ、貴様よほど死にたいらしいな?」

 

「残~念~!体は俺のだからすっくんに俺は殺せませ~ん!!」

 

 どうやら俺が体を自由に出来ないから何も出来ないと勘違いしているのだろう。

 よし、いいだろう。体がなくとも人1人の人生を殺すことなど訳はないということを教えてやるとするか。

 

「仏の顔も三度までという言葉もある。我の顔を殴ったこと、そして先の侮辱の言葉を許してやる。だが、3度目になると──」

 

「なるとどうなんだよ?」

 

「そうさな、授業中に貴様のクラスメイト全員の殺し方を順に語っていこうか?それも殺した後の人間の解体方法も含めてな──」

 

「申し訳ございませんでした両面宿儺様!この度の非礼は伏して謝罪しますのでどうかご勘弁を!!!」

 

 社会的に抹殺されると分かったのだろう。即座に土下座して謝罪を垂れる小僧の姿に、愉快愉快と嗤いながら次はないと言い含める。

 

「ってかさ、両面宿儺──」

 

「呼びにくいのであれば宿儺だけでかまわん」

 

「ウッス!宿儺はさ、かなり昔に封印されてたってのに、なんで色々知ってんの?」

 

 あっ!そういえば、レベルだとか授業だとか平安時代には無い言葉を使っていたのを怪しまれてたか。

 さて、なんと言い訳するか。下手に現代の事を知りすぎていると、設定とかで俺が偽物っぽくなるからな。

 

「貴様に憑りついた際に、無意識の領域の知識を取得したからだ」

 

「無意識の領域の知識?」

 

「簡単に説明すれば、色を見て赤、青、緑と考えずとも瞬間的に思い出せるレベルの常識の範囲内の知識だな。故に、ある程度の現代の常識はお前の知識から取得済みだ」

 

「うげっ!?それって、俺のプライバシーの侵害じゃん!?」

 

「安心しろ、無意識の領域と言っただろう。人の名前や顔、お前の過去などはまた別の領域ゆえ、我もそこの知識は取得できておらん」

 

「そうか。ふぅ~、一安心……じゃねぇ!?これから常に一緒だし、俺にプライベートの時間がねえじゃん!!」

 

「何を言っている貴様?これから呪術の特訓になるのだぞ、この我が直々に呪術を教えるなど、かの時代では億の価値に匹敵する」

 

「そうなの!?ああ、そういや呪いの王とか言ってたしな。なら、今から俺って、そんな凄え奴から教わるんだ!!」

 

 自分が如何に優遇された立場か分かると、掌を返して喜び騒ぐ。

 まあ、気持ちは分からないでもない。平穏で退屈とも言える日々に降って湧いた非日常と主人公みたいな展開に直面してはしゃがない思春期男子はいない。

 

 にしても、上手いこといい言い訳が浮かんで助かった。なんだよ、無意識の領域って?そんなの知らねえよバ~カ~!!

 

「よし、やる気は十分なようだな」

 

「あたぼうよ!そんで、まずは何からすればいいんだ?」

 

「まず初めにする事は貴様が呪力を練る事だな。呪術の基本は呪力だ。如何に優れた車であろうとガソリンが無ければ動かないのと一緒だ」

 

「なるほど……!だったら、うおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

 俺の説明に納得したようにポンと手を叩いて理解する。

 そうして、新条は言われた通りに呪力を練ろうと大声で力みながら全身に力を込める。

 

「こ、これって呪力練れてる?」

 

「全くだな、このド下手めぇ……」

 

 それっぽい雰囲気を出しているが、これっぽっちも呪力は練れてないし篭めれてもいなかった。

 

「なっ!?だってしょうがねえじゃん!呪力なんて言われても俺知んないし!!!」

 

「戯けが、知らぬ筈が無かろう。貴様はあの廃墟で何を見た?」

 

「廃墟で?え〜っと、宿儺の指とあの呪霊っていう化け物ぐらいしか……」

 

「呪霊は呪力の塊だ。本来は肉体を持たず、呪力を持たぬ者には見えもしない存在だ。それが見えたという事は、貴様はあの場の空気に毒された結果として無意識のうちに呪力に触れたのだ」

 

「おお!まじか!?っでも、そんなの全然覚えてねえんだけど?」

 

「だから無意識だと言っただろう。それと、先の力みはまるで意味は無いぞ。呪力とは怒り、憎しみ、殺意といった負の感情が源だ。力むだけで呪力を練ろうなぞ片腹痛いわ」

 

「なら最初から言ってくれよ!無駄に力んじまったじゃねえか!!」

 

 滑稽なくらいに振り回される新条の様は笑えるが、いつまでも遊んでばかりも縛りに抵触する可能性もあるだろう。

 

「まずは手本を見せてやろう」

 

 俺が体の支配権を握ろうとする際に篭める呪力をより可視化出来るように強くしてから左手に篭める。

 

「おお!なんか左手にモヤッとしたのが出てきた!?」

 

「これが呪力だ。まずは我が左手に呪力を纏わせておいてやるから、小僧は右手に同じように呪力を篭めてみせろ」

 

「ウッス!」

 

 結局、それから新条が呪力を篭めることが出来たのは深夜の2時が過ぎた頃だった。

 まだこちらの存在がバレたかどうか分からない為、初日に無理をさせるのも非効率という訳でその日はそのまま寝かせた。

 

「ふぁ〜、ねみぃ〜……」

 

「情け無い小僧だ。たかが丑三つ時まで起きていただけだというのに」

 

「うるせえな。後、人前で絶対に喋ったり、口出したりすんじゃねえぞ!」

 

 無論、そんな事は言われるまでもなく分かっている。

 だが、それはそれとして、久方ぶりの学校に他校とはいえ懐かしさが湧いてくる。

 

 にしても、この新条という男はクラスでは中々に人気者のようだ。

 男女問わずに挨拶をされるし、女子の何人かは挨拶だけで浮足立ったようにはしゃいでいる。

 

 確かに、外面だけで見ても新条は優れた容姿をしている。内面に関しても虎杖に近しい感性の持ち主の為、早々こいつを嫌う人間もいないだろう。

 やはりこいつ世代違いの主人公なんじゃなかろうか?

 

 それにしても、長いこと何も出来ない暗闇の空間に封印され続けていたお陰で、学生時代は退屈だった授業も中々に楽しいものだった。

 これも宿儺になった影響か、授業の内容がスラスラと頭に入って理解することが出来る。だから余計に授業が楽しく感じられる。

 

 そんな俺とは違って、昨日の寝不足が原因か、普段からそうなのか、新条は居眠りを漕いでいる。

 学生らしいといえばらしいのだが、1人だけ気持ち良さそうに眠り込む姿は腹が立つものがある。

 この瞬間に肉体を支配出来るか試してみたが、どうやら寝ていても肉体の主導権は新条のようだ。

 

 それから寝ている新条を放っておいて、授業に耳を傾けていると、突然世界から孤立させられる。

 

「おい、小僧。起きろ小僧!!」

 

「うおわっ!?寝てません!起きてます!!」

 

 居眠り中に起こされて驚いたように飛び起きる。

 これが日常の風景なら素直に笑えるのだが、今は状況がヤバい。

 

「間抜けめ!今のは我が起こしたのだ!!」

 

「はぁ!?宿儺が!!人前で喋るなって来る前に言ったろ!!」

 

「馬鹿め、周りをよく見てみろ」

 

 俺の言葉に従って教室を見渡して、ようやく他に人がいない事と足元の床が水浸しになっている事に気がつく。

 自分が呪いの王である両面宿儺の指を飲んだことによる危機感が足りていないのか。

 まあ、ただの学生がいきなりシリアスバトル漫画の世界に放り込まれたらこうなるか。

 

「もしかして移動教室?それにこの水浸しの床、ドッキリって訳じゃ無いよな?」

 

「戯けが、これは結界の一種だ。何者かが我らを閉じ込める為に張られたものだ」

 

「もしかして、宿儺を封印したっていう子孫か?」

 

「断定は出来んな。妙な事にこの結界からは呪力が感じ取れん。我が封印されている間に未知の技術が出来上がったのか、呪力を隠す術式を持つ者が派遣されたのか。どちらにしても厄介な事には変わりないだろう」

 

 こんな結界も術式も原作には無かった筈だ。足元の床の水も合わせて考えられるとすれば、俺のようにこの世界に転生したオリ主か、そもそもこの世界が原作と時間軸が違う為、原作未登場の呪術師の可能性もあり得る。

 

 なんにせよ、まともな戦闘経験など新条はおろか俺も持ってないのだ。人外の化け物を殴り飛ばすのと、人を殴り飛ばすのでは覚悟が違うからな。

 いざって時に躊躇して負けるのは秘匿死刑ルートに移行しまうから勘弁して欲しい。

 

「とりあえずどうする?」

 

「そうだな。ひとまずは敵の姿の確認だな。流石に単独ではなかろうし、下手に囲まれぬように教室から移動する方がよかろう」

 

「了解!」

 

 威勢のいい返事で教室を出る新条。即断即決なところとか本当に虎杖っぽいな、遠い親戚のパターンもあり得るか?

 

「そんで、何処へ向かえばいいんだ?」

 

「少し待て……」

 

 出来るかどうかは分からんが、呪力を使って念能力の円を再現してみるとしよう。

 どうせこちらの存在はバレてるのだから、こちらから探知しても問題無いだろう。

 

 呪力を練り上げていき、それを纏う延長線上で広げていく。

 初めての挑戦だが、存外に上手く出来ているのではなかろうか?

 まずはこの周辺の探知だが……、これが円の効果か!目に見えずとも把握出来る。

 

 ん、これは……!?

 

「よし、大体把握した」

 

「おっ、マジで!!流石は宿儺だな」

 

「当然だ!しかし、今現在のところ、この結界内にいるのは我らを除いて7人と得体の知れん珍獣が1匹だ」

 

「珍獣?なんだよそれ?」

 

「もうじきこちらにやって来る。そこの角を右だ」

 

 知覚した存在の接近を前に、声に出さずとも内心で緊張を感じる。

 それは新条も同じようであり、角の向こうからピチャピチャと水音が鳴る度にゴクリと唾を飲み込んでいる。

 こちらが身構えていると、やがてそれは姿を現した。

 

「うおー!恐竜!?怪獣!?あっもしかしてあのシルエットからしてネッシーかも!!?」

 

「騒ぐな馬鹿め!それよりも右に避けろ!!!」

 

「へっ!?」

 

 俺の警告通りに、右に飛んだ瞬間にあの恐竜のような珍獣から光線かと見まごう水圧レーザーが放たれ、新条は目が飛び出るくらい驚いていた。

 

「うへっ、あれもうゴ○ラじゃん!!破壊光線だろ!!?」

 

「まともに受ければ小僧程度では即死は免れんな。ちょうどいい、あれを練習台に使うとしよう。ほれ小僧、サンドバッグ代わりに使ってやれ」

 

「あっれぇ~、今宿儺さんからとんでもない事を言われた気がしたんですがぁ!!?」

 

「なんだ小僧、どうやら貴様の脳みそは頭ではなく耳に詰まっているらしいな。あのくらいの相手ならばどうとでもなる。ちょうどいい実戦相手になるから、とっとと死ぬ気で戦ってこい」

 

 実際、今の攻撃があの怪獣の最大の攻撃のようだが、予備動作が分かりやすく、発射まで充分に避ける隙がある。

 だから、俺が顕現すれば秒で勝負がつくと予想出来る。最初は知識にない未知に警戒していたが、この程度ならば精々が一級か準一級くらいの呪術師レベルの力を持つ者ならば余裕だろう。

 それに、呪力なしでもそこそこ動ける新条ならば、昨日の呪力操作の修行でより動けるようになっただろうし、余程の事がなければアレは修行相手としては申し分ない。

 

「あ~も~!分かったよ!!だけど、危なくなったらちゃんと助けてくれよな!?」

 

「戦う前から弱気だな。まあいい、殺されそうなったら助けてやるから、今回で黒閃を1発ぐらい体験しておけ」

 

「黒閃?」

 

 怪獣から放たれる水圧レーザーの光線を避けながら接近する新条は、俺の口にした黒閃という単語に反応する。

 

「黒閃とは、簡単に説明すれば、ゲームでいうクリティカルヒットのようなものだ。ただし、その発動条件と効果はゲームなどとは違い絶大だ。まず発動条件が打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した場合のみしか発動せん」

 

「なにそれ!?俺、昨日呪力をようやっと篭めることが出来た初心者だぜ!そんな激ムズな技使えるわけねえじゃん!!」

 

「ふん、我とて黒閃は狙っては出せん。貴様如き小僧が容易く使えるとほざくな」

 

「なにそれ矛盾!?俺に黒閃を決めろって言ったの誰でしたっけね?」

 

 騒ぎながらも怪獣の攻撃を避けつつ接近することに成功する。

 そして呪力の篭められた拳で怪獣の脇腹辺りに鋭い右ストレートをぶちかます!

 

「呪力を!拳に!!篭めるぅぅ!!!」

 

「────!!!」

 

 殴られた怪獣は声にならない悲鳴か咆哮か判断つかない叫びを上げるが、殴った箇所に目立った傷はなく、敵意が増しただけだった。

 

「これ効いてる?」

 

「ダメだな。図体がデカイ分耐久力も高いのだろう。小僧程度の呪力の篭められた拳では決定打にはならん」

 

 攻撃力も防御力もどちらも相手の方が遥かに上回っている。勝てているのは小回りの効くスピードと知恵ぐらいだろう。

 だからこそ、相手の攻撃を喰らわずに一方的に殴ることが出来ているのだが、このままいけばスタミナと呪力切れによってのゲームオーバーだろう。

 

 だから新条が勝つためには黒閃を決めての瞬間火力とバフによるブーストを掛けなければ勝機はないだろう。

 

「あ〜!くっそ!!これでもう何発目だよ!?全然倒れる気配も黒閃ってのが出る気配もないんだけども!!?」

 

「はぁ~、これだから下手クソなガキは見ていてイライラする」

 

「うっせぇな!じゃあ、お前が代わりに出て戦えばいいだろうが!!」

 

「我は貴様を鍛えあげるという縛りを結んだ。こんな絶好の相手を横取りしてしまえば縛りに抵触する可能性がある。だから無理だ」

 

「つっかえねえな!!!」

 

「ケヒッ!ぶっ殺すぞ小僧が!!ならばここでアドバイスをくれてやる」

 

「アドバイス?いや、だったら最初からくれたらよくね?」

 

「黙れ小僧。呪術師の戦いは単純なパワーやテクニックの他にも、相手の手札や戦闘方法を読み取り、いかに自分のペースを相手に押し付けて封殺するかが重要となる。最初から手取り足取り教えていては、性能だけ一流の三流呪術師になるゆえ、敢えて経験を培わせる為に黙っていたのだ」

 

「あっ!そういう理由。お前、ちゃんと考えてるんだな」

 

「授業中にグースカ寝ている馬鹿と違ってな……」

 

「そういうの一言余計って言うんだぞ。知ってたか?」

 

 最後の一言さえなければ素直に感心していたのにと漏らす新条の声を無視して、俺は黒閃のコツともいえる呪力の出力の仕方。つまりは原作での東堂の説明を完コピで伝える。

 とはいえ、これだけの説明で黒閃が撃てるのならば、呪術師は皆が黒閃を撃てている。

 アレは主人公補正ありによる舞台の演出のようなもの。友を殺された虎杖の呪術師としての成長の一幕なのだ。

 だから、昨日呪力を習得し、両面宿儺の依り代となっただけの新条には黒閃を決めれるだけのポテンシャルも才能も下地すらなかった。

 

 結果、案の定ともいうべきか。ジャイアントキリングは果たされず、スタミナと呪力が底をつきかけていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ちっくしょ~……。結局、倒せずじまいか……」

 

「なんとも情けない奴だ……」

 

「だ~か~ら~、俺は呪力なんて初心者で!いきなり実戦させられてポンと出来る訳ねえだろ!?」

 

 脅威である怪獣を前に、そんな吞気にも思える会話をしながらも、巧みに怪獣の攻撃は避ける。

 しかし、ここまで被弾はゼロなのは素直に凄いだろう。一撃でも喰らえば即死だから必死に避けるのは当たり前だが、やはり新条の身体能力は虎杖と同レベルやもしれん。

 

「んで、そろそろ宿儺が代わりに戦ってくれんの?」

 

「ああ、そうだな。入れ替わる以上、無駄に体力と呪力を削られるのもなんだからな……」

 

「うわ~、嫌味な言い方。修行の為ってのは理解してるけど、お前性格悪いよな」

 

「……お前は呪いの王をなんだと思っている?正直、お前の我に対する評価を純粋に知りたくなったぞ」

 

「どう思ってるって言われてもな……。あんましピンときてないのはそうだけど。こうして修行とかつけてくれるし、口の悪い師匠みたいな感じって思ってるよ」

 

「………………」

 

 これは、どう判断すればいいのか。俺は両面宿儺として演じ切れていないのか、もしくは新条が底抜けのお人好しなのか?

 いや、原作でも虎杖って最後の最後に宿儺に慈悲を掛けようとしたし、案外宿儺を閉じ込めておける器というのはこういう性格をしているからなのか?

 

「どうしたよ、宿儺?あっ、もしかして照れてるとか!」

 

「小僧のアホらしさに自分の認識がまだ足りていなかったと自覚しただけだ」

 

「だから厳しいって!!どんだけ俺の事が嫌いなの!?」

 

「嫌いではないぞ。ただただ呆れているだけだ」

 

「このツンデレ!」

 

 つくづく虎杖らしい小僧だと思いながら、新条と体の支配権を交換し、俺が表に出る。

 目を閉じて心の中で入れ替わる事を意識すると、肉体の感覚が現れる。

 

「ふむ、どうやら無事に入れ替わることが出来たようだな」

 

 怪獣の光線で割れて飛び散った窓の破片に映る自身の姿を見ると、原作通りの刺青が浮かび上がっていた。

 これを見ると、本当に自分が両面宿儺になったのだと感じられて内心では少しウキウキとした感情が湧き上がる。

 にしても──、

 

「ん?どうした、先程までのように襲い掛かってこんのか?」

 

「────」

 

 唸り声も上げずに、先程までバカスカと光線を撃ちまくっていた怪獣が妙に大人しい。

 まあ、理由は大体察せるがな。あの怪獣は理性よりも本能で動くタイプなのだろう。だから、俺が表に出たことによって発せられる呪力の質に生物として警戒しているのだろう。

 

「まあいい、襲ってこぬというのなら、こちらから──」

 

 襲ってやろうと口にしようとした瞬間、足元の廊下が突如として水へと変化した。

 

「ガボッ!」

 

 これは──、毒ではない。ただの水か?あの怪獣の能力?いや、他にこの学校に来た別の存在の能力と考えてもいいのか?

 そもそも、何故コイツだけ俺を襲いに来た?あの怪獣の攻撃が強力だから共闘すればフレンドファイヤーが起こると考えたからか?にしても、腑に落ちぬことが多いな。

 

「ぶはっ!」

 

 水面に浮上すると、あの怪獣はさっさとこの場から離脱して逃げて行った。

 何処へ行くのかと円で探ってみると、他の場所にいる7人の元へ移動しているようだ。

 っというか、円で探って見た感じ、仲間割れを起こしていないか?

 いや、仲間割れにしても少々激し過ぎるような?もしや、俺は勘違いをしていた?この結界は俺を捕らえる為のものではなく、あっちの7人が戦う為のもので、俺はそれに巻き込まれただけ。

 

「なんにしても、確かめねば話にならんな」

 

 逃げた怪獣のあとを追って潜水し、謎の連中の元へと移動する。

 

 

 

 

 ♦

 

 

 

 

 授業中にいきなり謎の空間に閉じ込められた綾瀬桃は憤慨していた。

 

(オカルンの奴!なんであのバカ女にくっつかれてデレデレしちゃってんのよ!!)

 

 実際にはセルポ星人とシャコ星人を相手するのに協力して戦ってるだけなのだが、嫉妬の目で見る桃からはイチャついているようにしか見えなかった。

 とはいえ、今はそんなことでキレていい状況でもないので、仕方なく共闘は継続するが、これが終わったら問い詰めてやると心中で決意した。

 

「このまま一気に決めるぜ、モモちゃんにアイラちゃん」

 

「ええ、()()()との愛のコンビネーションで瞬殺してやりますわよ!」

 

「あ♡」

 

 アイラの高倉の呼び声に動揺した桃は超能力の制御を誤り、セルポ星人の3人いればすごいゾーンで纏めて吹っ飛ばされる。

 当然、戦闘中にそんなヘマをやらかしたのだから怒られるのは当たり前で、アイラは猛烈にキレる。

 

「ちょっと、綾瀬モモ!!しっかり押さえときなさい!!」

 

「うっせぇ!!お前のせいじゃボケ!!」

 

 完全な逆ギレだが、今はそれに突っ込んでいる暇はないとばかしにアイラは再びオカルンの隣に立ち共闘の姿勢を取る。

 これに対して面白くない感情を抱く桃だが、それ以上に宇宙人の方が2人の──いや、桃の存在を疎ましく思っていた。

 

「ぐぬぬぬ、やはり共闘されると厄介で~す!」

 

「こんな事にならぬように女のヒトを足止めするようにアレに依頼したというのに!!」

 

「一体どこで何してるんですか!?」

 

 何か騒いでいるが、そんなことは関係ないとシャコ星人を一方的にボコすオカルンとアイラ。

 

「この、ちょこまかと!大人しく当たってくださ~い!」

 

「そっち行きましたよ!!」

 

「了解だぜえ」

 

「ブッ!!?」

 

 大ぶりなパンチで襲い掛かるシャコ星人だが、アイラの機動力に翻弄され当てられず、終いにオカルンの加速からの蹴りを腹に受けて大きく吹き飛ばされる。

 

「な!?ギグワーカーがやられたで~す!!」

 

「ちゃんと働かなければ給料カットですよ!!」

 

「ダメです!!今のでKOされたみたいです!?」

 

 シャコ星人がやられたことに焦るセルポ星人達を前に、オカルンとアイラは勝ち誇った顔で立ち並ぶ。

 

「どうやら、ここまでのようですわね」

 

「そんじゃ、とっととコイツらぶちのめして終わりにするぜえ」

 

 攻撃役のシャコ星人をノックアウトし、桃の超能力に対抗する為に動けない3人のセルポ星人にトドメを刺そうと動こうとしたその瞬間だった。

 

 ザパン!!!

 

「「「「っっっ!!!?」」」」

 

 突如として床が水に変貌した。否、床だけでなく壁や天井までもが水になっていた。

 いきなりの事態に困惑していると、その間にセルポ星人の1人が吹き飛ばされて気を失って水中に沈んでいくシャコ星人に泳いで近寄り、股間から謎の機械を生やして頭にブッ刺していた。

 すると、シャコ星人は頭部を変化させて水中からもの凄い勢いで浮上してきた。

 

「にじゅ〜よじかんたたかーえまっすーか」

 

「うわ!?なにあれ、変身して復活しやがった!!」

 

「そんな!?高倉様がおブッ飛ばしにしやがりましたのに!!」

 

「もしかして、変身して更に強くなったとか!?ヤバいですよ、綾瀬さん!!」

 

 倒した筈の敵が蘇ったことに驚愕する3人だが、それ以上にヤバい存在が天井にチラついて見えた。

 

「何あれ?魚影……って訳じゃ無さそうだけど」

 

「いえ、あの影はまさか……」

 

 オカルンがその存在の正体を口にしようとしたのと同時に、その魚影ならぬ怪影が天井から降ってきた。

 

「ネッシーだぁぁぁ!!!」

 

 文字通り降って湧いたUMAの存在に興奮するオカルン。

 勿論、こんな状況で個人の趣味に付き合う暇はないので、ポカンと頭を叩いて正気に戻す桃だった。

 

「あのシャコ野郎も復活したし、あの変な恐竜もどうせアイツらの仲間だろうし、ここはさっさと逃げるよ!!!」

 

「ちょっと、リーダーは私なんだから!勝手に決めないでよね!!」

 

「へいへい!ならリーダー様はアイツらと戦ってくださ〜い!」

 

「はぁ?アンタの魔力でアイツらの変な力押さえつけてないとマトモに戦えないじゃない!?」

 

「だったら大人しく私の言う事聞いとけや!!!」

 

「ちょっと2人共!今は喧嘩してる場合じゃ──ー」

 

 泳いで逃げながら喧嘩するという、なんとも器用な真似をする2人の後を追いながら泳ぐオカルンがそれに気がついたのはネッシーの存在に後ろ髪を引かれていたからだろう。

 

「っっっ!!!2人共危なぁぁぁい!!!」

 

 オカルンの叫び声を聞いた即座に後ろを向いた事でそれに気がついた。

 自分達の背後に迫る死の光線に……。

 

「「どぅわぁ!!?」」

 

 廊下の水を真っ二つに割る威力の光線をオカルンの呼び掛けでなんとか危機一髪で回避出来た2人は、互いに抱き合いながら今のヤバい攻撃に戦々恐々としていた。

 

「ちょっと、綾瀬モモ!!アレもアンタの魔力でどうにかしなさいよ!!!」

 

「無茶言うんじゃねえ!!そう言うお前の髪でどうにかしてみせろや!!!」

 

 仲が良いのか悪いのかよく分からない喧嘩を続ける2人の頭上に再び別の影が舞い降りる。

 

「ふむ、これはまた……。珍妙な事態になっているな」

 

 天井の水を突き破り乱入してきた宿儺に誰もが視線を向けて警戒する。

 そんな連中の視線なぞ意にも介さずに宿儺は周りの状況把握に意識を集中させる。

 

「けひっ!なるほど、そういうことか!!!ならば鏖殺とでもいこうかぁぁぁ!!!」

 

 呪いの王、両面宿儺ここに参戦!!!

 

 

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