迷い家の少女   作:ウルハーツ

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Ver:3.2の予告、凄かった……。毎回驚いてる気がするけど、今回は特に。
って事で驚きと嬉しさも重なって、気分良くなったので早めの公開。

羅刹は仲間に居ないから欲しいなと思うけど、ルアン・メェイの凸もしたい。悩ましい。


銀狼5&ホタル8 - 帰忘の流離人(停雲)

 ヘルタの住んでいる場所で三日間過ごして、遂に家へ帰って来た。ヘルタの家では持って行った端末で暇な時はゲームをしたり、何故か食材が湧き出て来る冷蔵庫の中の物を使って料理を作ったり。ヘルタの着替えを人形達と一緒に手伝う事もあって、彼女の使用人になった気分だった。放っておくと、本当に適当な食べ物で済ませようとする事もあったから、私が居る時だけでもって色々作った。お菓子を作り過ぎた時の、ホタルの気持ちが少しは分かった気がする。

 

 また行くつもりはある。これで最後って事にはしないつもり。だけど行ったら最後、三日間は帰って来れないから予め準備しておかないといけない。銀狼とホタルにも最初から伝えておかないと。……今回は突然帰れなくなってしまったから、心配かけてしまったと思う。

 

「ただいま。……?」

 

 銀狼とホタルは今日、家に居る筈。メッセージで帰れるであろう三日後について話した時、そう言っていた。だけどリビングに入ったら誰も居なくて、ちょっとだけ散らかってる様子。普段掃除も私がしていたけど、居ない間はやらなかったみたい。銀狼はともかく、ホタルならちゃんとしてそうだけど。

 

「部屋、かな」

 

 二人の顔は見ておきたい。そう思って、私はまず最初に銀狼の部屋へ向かった。ノックをしても返事はなくて、何回かしてから中へ入ってみる。薄暗い部屋の中を複数のディスプレイが明るくしているけど、椅子にもベッドにも銀狼の姿は無い。もしかして、用事が出来てどこかへ行ってしまったのかも。だったらメッセージくらい入れてくれても良いのに。

 

 次はホタルの部屋。同じ様にノックしても返事はなくて、また中へ入ってみる。でも銀狼と同じ様に中には誰も居なかった。ディスプレイも無い部屋は真っ暗で、明かりを付けてももぬけの殻なのが一目で分かる。ホタルも、居ない。

 

 毎日の様に会っているけど、会いたい時に会えないのはこんなにも寂しいんだって改めて感じた。一緒に過ごせない日々を重ねて引っ付くホタルの気持ちが、また少しだけ分かった気がした。ちょっと肩が落ちてしまうのを感じながら、私は自分の部屋を開ける。

 

「……」

 

「……」

 

「……何、してるの?」

 

「っ! ……った」

 

「?」

 

「やっと帰って来たっ!」

 

 私のベッドに二人は居た。銀狼は乗らずにベッドへ背中を預けてジッとゲーム端末を見ていて、ホタルはベッドの上で私の枕を抱きながら天井を光りの無い目で見つめていた。だけど私が声を掛けた瞬間、ホタルが飛び起きて目に光を宿しながらこっちを見てくる。そして物凄い勢いで私は抱き締められると、抵抗もする間も無くそのまま引きずり込まれる様にベッドへ連れ込まれる。

 

「変な事されてない? ちゃんとご飯は食べてた?」

 

「ん、大丈夫」

 

「そっかぁ。良かった……はぁ~」

 

 安心した様子でため息をついたホタル。私はベッドの上で抱き締められながら、連続で聞かれた事に返していく。すると突然、後ろで何かが動いた気がした。何かって言っても、銀狼しかいないけど。さっきまでゲームに夢中だった銀狼が、ベッドの上でホタルと横になっている私の背中にしがみ付いてきた。完全に前後で挟まれて動けなくなった。

 

「ゲーム出来なかったわけ?」

 

「回線は通じた。でも他の人と遊ぶのは出来なかった」

 

「情報漏洩を防ぐためか。自分の居場所がばれない様、徹底してる訳だ」

 

 ヘルタの家ではネット回線が通じたので、ゲームは出来た。本人がスマホでメッセージを送ったりしているのだから、それは当然の事。だけどゲームでのネットを通じた誰かとのプレイは出来なかった。オフラインのゲームで遊ぶか、メッセージでやり取りをするか。後者は遅れるメッセージも限られていたみたいだけど、私には関係が無かったみたい。まずヘルタの場所へ来れる人がどれだけ居るのか分からないけど、その誰かが場所を漏らさない様にって事だと思う。私にはそもそもあそこがどこなのか分からなかったけど。

 

「これ、またこのまま?」

 

「しばらくはこうさせて」

 

「銀狼も?」

 

「だね。……流石に心配したから」

 

「むぅ……分かった。ご飯、食べた?」

 

「食べたけど、全然美味しくなかった」

 

「あたしも銀狼も、完全に胃袋は貴女に掴まれていたみたい」

 

 今回は甘んじて受けようと思う。知らなかったとは言え、ヘルタの場所へ行って三日間急に帰って来なかったのは事実だから。それにさっきも思っていたけど、会えなかった期間があると二人には会いたくなった。しつこいと思う事もあって煩わしく感じた事すらあったこの時間も、今なら悪くないと思う。ホタルの事を銀狼へ相談するって話も、銀狼すら同じになってしまったから……この際、私からもしよう。

 

「ぎゅー」

 

「!? ぎゅー!」

 

「……」

 

「銀狼も」

 

「はぁ……ぎゅー」

 

 私から抱きしめると、ホタルの抱擁が強くなる。銀狼は変わらないので、催促したらやってくれた。ホタルに肩の後ろ辺りに手を回されて、頭は胸に包まれて。銀狼にはお腹辺りに手を回されて、足も絡まれて。全く身動きは取れないけど、二人と居られる時間が凄く暖かくて安心出来る。徐々に眠気も襲ってきて、私は二人を感じながら目を閉じた。

 

 

 目を覚ましても状況は変わって無かった。だけどそれなりに満足してくれたのか、抱擁からは解放される。と言っても銀狼もホタルも身体のどこかをピッタリくっ付けて座っているけど。三日間一緒にゲーム出来なかったから、銀狼とまず間違いなく今日はゲーム三昧だと思う。ホタルとも一緒に遊ぶとなったらこの前のゲームでも良いけど、ちょっと疲れちゃったから戦いは遠慮したい。

 

 リビングでゲームをするかしないかは即座に決まった。このまま私の部屋で、私のベッドに乗ってゲームをするのが最初から決定事項だった。銀狼はさっきから持っていた端末を。ホタルも銀狼に付き合ってここでやった時があったみたいで、持ってきていた。そして私は持って行っていたので、今も荷物の中にちゃんと入ってる。リビングへ取りに行く必要すらない。

 

「? ヘルタの人形」

 

「あぁ、それ。むしゃくしゃしたからやった」

 

「あたしは止めたんだけど……」

 

 荷物からゲームの端末を取ろうとした時、部屋に置いてあったヘルタの人形がバラバラになって転がっているのに気づいた。顔の部分には『へのへのもへじ』や『肉』、『誘拐犯』等の落書きが一杯。やってる事が子供っぽいけど、私が帰って来れなくなった原因の人形だから八つ当たりしたんだと思う。後で元に戻して落書きも消さないと、ヘルタが気付いたら怒るかもしれない。

 

 ゆっくりと出来るゲームとして、思いついたのは家を作ったりする種類のまったり出来るクラフト系だった。サーバーを用意して三人で世界を作り、アイテムが無限に出せる状態で共同して建物を作ったり、個人的に何かを作る。いつかはロビンやアスター、開拓者とかも混ぜて大人数でやっても面白いと思う。クラーラも出来ると思うし、なのかも出来そう。流石にヘルタとルアン・メェイはやらないかな。

 

「銀狼。カフカは、ゲームする?」

 

「カフカ? しないね」

 

「そうだね。誘ってもきっと断られちゃうよ」

 

 十人くらい出来そうな人が集まったら、その時は新しいサーバーでやってみよう。知らない内に遊んでいる誰かが新しい建物を建てて、それを見るのもまた面白いから。

 

 

――――――――――

 

『今度、模擬宇宙に試練を追加してあげる』

 

『試練?』

 

『模擬宇宙で条件付きのエネミーと戦ってもらう』

 

『ん、頑張る。一人の方が良い?』

 

『好きにして。開拓者辺りは報酬をチラつかせれば飛びつくよ』

 

――――――――――

 

 

 ヘルタが私に試練を用意してくれるらしい。言われた通り、開拓者を誘おう。でも報酬なんて思いつかない。開拓者が喜びそうなもの……。そういえば、開拓者はチケットを集めていたと思う。それを報酬にしたら、協力してくれるかも。銀狼が持っていたから、まずは私があれを手に入れる方法を知らないと。試練がどれくらいあるか分からないから、五枚くらいは集めたいかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、私は身体の検診をしてもらうためにルアン・メェイへ会いに行った。特に問題が見つかったりもしなくて、最後にはお菓子を食べてお終い。そう思っていたけど、帰る前に見て欲しいモノがあると言われて移動している。ルアン・メェイが通り過ぎる度に、『ヘルタ』の職員がビックリした様子を見せた後にお辞儀をしているのを見ると、目の前を歩く存在が凄い人なんだと改めて思う。男の人の場合は少し目で追ってるところから、綺麗な人としても注目されてそう。

 

「こちらです」

 

「……人?」

 

 ルアン・メェイに連れて来られて見せられたのは、ポッドの中に入っている女の人。頭には動物の耳、多分狐の耳が生えてる。他にも空のポッドが並んでいて、私が模擬宇宙で開拓者と戦っていた間はこの中に居たんだと思う。

 

「ポッドに触れてみてください」

 

「こう? っ!」

 

 

 一瞬、視界が歪んだ気がした。気が付いたら周りには誰も居なくて、ポッドの中にだけ変わらずに女の人が入っている。消えてしまったルアン・メェイへ呼び掛けてみるけど、返答はない。不安に思いながらも周囲を見回していると、どこからともなく異形が姿を見せ始める。

 

「っ!」

 

 大分慣れた武器の出し方。近づいてくる異形へ向けるけど、異形は何もしないで私の横を通り過ぎていった。その時、その異形が近づいた瞬間。何かは分からない感覚が襲ってくる。痛覚は無い、痛みの様な何か。

 

『やはり、繋がれましたか』

 

「!? ルアン・メェイ?」

 

『よく聞いてください。貴女は今、彼女の居る場所に存在しています』

 

 何もない空間から響く様に聞こえてくる、ルアン・メェイの声。その話を聞いていると、どうやら私が今居る場所は同じ場所であって違う場所。言ってしまえば裏側の宇宙ステーション『ヘルタ』。表に居る人達に私の姿は見えていない様で、この何処かでポッドに入っている女の人が彷徨っているらしい。本体がここにあるって事は、幽霊みたいに魂だけが無い状態に近いみたい。

 

『貴女の協力があれば、より早く彼女を救い出せるでしょう』

 

「分かった。探してみる」

 

 私の返答が表に居るルアン・メェイへ届いているかは分からない。目の前のポッドに入っている人が無事に起きる為に、私には出来る事がある。私が外へ出れる様になったルアン・メェイへのお礼もそうだけど、同じ様にポッドからも出られずに生きるも死ぬも出来ない女の人をそのままにしたいとは思わないから。探してみよう。

 

「っ!」

 

『言い忘れていましたが、彼女の居る裏はあくまで彼女の世界です。貴女が意志を持って進めば、外敵と見なされるでしょう』

 

「もっと早く、言って欲しかった……っ!」

 

 さっきまで素通りしていた異形たちが私へ攻撃を仕掛けて来る。この世界で壁やポッドが破壊される事は無いみたいで、私はそれを何とか避けてから薙刀で異形の足元を掬い上げた。家でただご飯を作ったりゲームをしてるだけじゃないから、ちゃんと戦う練習をしてたのが功を奏した。

 

「……」

 

 目の前に並び立つ異形。何とか攻撃を避ける事は出来たけど、これを全部相手にするのは無理だと思う。私は逃げる様にその場を走り出して、女の人の彷徨う魂を探す。まずは撒く事を考えないと、ゆっくり探す余裕は無さそう。

 

 

 壁を何度も曲がりながら、何とか追っ手を撒く事は出来た。『ヘルタ』の職員達は私が追われている間も本当に見えていないみたいで、何事も無い様に作業を続けていた。『ヘルタ』は広いから、この何処かに彷徨っていると言われても範囲が広すぎる。せめて何か目印や導が欲しい。

 

「?」

 

 落ち着いてから、気付いた。ここには異形の姿が全くない。だけど私がさっきまで立っていたポッドの前には多くの異形が徘徊していた。どうしてあの場所には居て、ここには居ないんだろう。もしかして、異形が居る場所の傍に彷徨っていたりする? だとしたら、あれを避けながら近くを探さないといけないって事になる。本格的なスニークが今度は要求されてるかもしれない。ホタルの時とは違う、見つかったら本当に危険。

 

「やるしかない」

 

 私は意を決して来た道を戻る事にした。私を追って来ていた異形の後ろ姿を見つけて、戻る速度に合わせながら後ろを通り抜ける。少なくとも只管逃げて来た通路にそれらしい人は居なかった。だから向かうなら反対側。気付かれない様に気を付けながら……っ!

 

「不味い……」

 

 スニークは得意じゃないみたい。簡単に見つかって、仲間へ知らせるかの様に声を出す異形。一斉に私の方へ向かってくる姿を前に、私はまた駆け出す。さっき遊んでるだけじゃないとは言ったけど、こんなに何度も走ったりはしてないから結構キツイ。戦うにしても誰か一緒に居てくれる人が居ないと勝てる気はしないから、今は必死で逃げるしかない。

 

 薄暗い通路まで逃げ込む。一部の異形がしつこく追い掛けてきているけど、ここは一本道みたい。先に居ない事を祈りながら走り続けていると、遥か前方に人影が見える。『ヘルタ』の職員じゃない、着物を着た人。見た目が全然違うけど、ポッドの中に居た人に似てる。

 

「貴女様は……」

 

「ごめん。話は後、手伝って」

 

「っ!」

 

 私を認識出来るなら、話は早い。戦闘に巻き込むのは申し訳ないけど、一緒に戦ってくれる人が居るなら何とかなると思う。私を追って来ている異形の数はかなり減っているけど、それでも五体くらいは居る。女の人もあれらを敵と判断してくれたみたいで、警戒しながら構える。持っているのは、扇子みたい。扇子って武器になるのかな? 気にはなるけど、とにかく今は私の力を彼女へ送る事だけを考えよう。

 

 女の人、強かった。扇子は武器として使ってなかったけど、舞う動作に盛り込まれていて、舞うと共に火の玉が飛ぶ。それが敵をどんどん燃やしてくれたお蔭で、難無く異形たちを倒す事が出来た。私は無事に安全が確保されると同時に疲れちゃって、思わず転びそうになったのを女の人が支えてくれる。

 

「大丈夫、ですか?」

 

「ん。ありがとう」

 

「ここは、何処なのですか? 貴女様は……私を、知っていらっしゃるのですか?」

 

 どこか寝ぼけた様子に近いのは、幽霊の様な状態で彷徨っていたからなのかもしれない。自分の事も分からないみたいで困惑しているのが見て分かる。思えば私も目の前に居る人の事を知らない。知って居るのは、ポッドのあった場所だけ。多分そこへ導けば良い筈。

 

「ついて来て」

 

「えっ……」

 

「貴女の問い、私は答えられない。だけど、答えに導く事は出来る」

 

 ここから戻るとなれば、また異形との戦闘は避けられない。この人をあの場所へ導くためにも、私は手を伸ばした。戸惑った様子で少し迷った後、女の人は私の手を握ってくれる。そして私達は異形の居るあの場所へ行き、そこからはルアン・メェイに任せるしかなかった。

 

 

――――――――――

 

『恩人様。お尋ねしたい事がありまして、今よろしいでしょうか?』

 

『どうしたの?』

 

『ご存知の通り、私はルアン・メェイ様に助けていただきました。ですが私はもう一人、誰かの手を取った記憶があるのです。うろ覚えで微かな記憶ですが、それは幼い少女の様でした』

『ルアン・メェイ様へ訪ねた時、それは確信に変わりました。私と経緯は違えど同じ様に新しい身体をルアン・メェイ様からいただいた方が居り、私を私へ導いてくれた方が居られたと』

『思い出したのはつい先日の事です。ですので、ピノコニーでは気付く事が出来ませんでした』

 

『うん、誰か分かった。会ってみたい?』

 

『やはりご存知でしたか……会えるのですか?』

 

『方法はあるよ。あの子も歓迎してくれる』

 

『ならば、また何か見繕わないといけませんね』

 

『ゲームが良いと思う。貴女が出来れば尚の事良い』

 

『ゲーム、ですか。……経験はありませんが、それがお礼になるのでしょうか?』

 

『他の何よりもなると思う。一緒に遊べる人をいつも欲してるから』

『案外ちょろいよ』

 

――――――――――




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