迷い家の少女   作:ウルハーツ

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銀狼のゲームに関する腕が素だとそこまで高くないと判明した様で……。
既に完成している話ではかなりの腕前なのを前提にしてしまっている事をご了承ください。
そうか、ゲームの腕はハッカーの能力を活かしたチート前提だったか……。


クラーラ:2 - 銀狼:6

 クラーラと過ごす約束をして、ヤリーロ-VIへやって来た。機械集落にある建物の扉を使って道を作ってもらい、到着すると同時にクラーラとスヴァローグが迎えてくれる。何をして過ごすかは、その場で決めようって事になっていたから今は何も考えてない。

 

「クラーラと一緒に、部品を集めて欲しいの」

 

「部品?」

 

 相談を始めた時、真っ先に言われたのは部品集め。機械集落には当然、機械が沢山いる。それはクラーラの家族でもあり、時々壊れてしまう事があるらしい。だからその時にすぐ直す為、部品を集めているみたい。その在庫が少し心許なくなってきている様で、それを集めに行きたいとの事。何処で手に入るのかは分からないけど、少し危険が伴うと聞かされたら協力したくなる。

 

 私とクラーラ、スヴァローグの三人で機械集落を離れる。部品を手に入れる宛はあるみたいだから、私はついて行くだけ。そうして辿り着いたのは、雪景色から一転して建物の広がる街並み。だけど徘徊している異形も居るから、人の気配は殆どない。危険になって、捨てられてしまった街みたい。

 

「ここに、部品がある?」

 

「周辺をスキャン中。三ヵ所に反応を検知した」

「壊れてしまった機械達がここには沢山居るから。もう動かないその子達からもらうんだ」

 

 確かに周囲を見てみると、完全に動かなくなった機械が建物へ寄り掛かる姿勢で転がっている。それは一つじゃなくて、何ヵ所にも存在していて、あれらはもう動かない。それは機械であろうと死んでしまったのと同じ意味で、そんな機会から部品を漁るのが今回の目的になる。

 

 スヴァローグにスキャンしてもらいながら、目的の部品や他にも使えそうな部品があれば回収していく。機械の部品は当然金属製で、小さいモノでもそれなりに重量がある。私達で運ぶのには限界があるから、スヴァローグに持ってもらわないと。

 

「敵性個体の接近を確認した。迎撃準備」

「襲ってくるよ、気を付けて!」

 

「っ!」

 

 異形が徘徊する街でそんな事をしていれば、見つからない訳がない。私達に気付いて攻撃を仕掛けて来る異形を相手に、スヴァローグが持っていた機械の部品を床へ落して戦闘準備を始める。私も薙刀を持っていつでも戦える様に構えた。

 

 戦った後の感想。スヴァローグ、凄く強かった。身体からミサイルを飛ばしたり、どこかから呼び出した巨大な手が敵を叩き潰したり。スヴァローグとクラーラは目に見えない何かで本当に繋がっているみたい。私の光をスヴァローグに送っても最初は意味が無かったのに、クラーラへ送ったらなぜかスヴァローグが強くなったから間違いないと思う。

 

「これ、使える?」

 

「大丈夫そう! ありがとう!」

 

 敵が現れたら迎撃して、部品集めを続ける。スヴァローグが最初にスキャンして見つけた三ヵ所は見つけられたので、後は移動しながら出来なかった範囲を探してみる。階段を上って少し大きな建物の傍までやって来た時、クラーラは目を輝かせた。ブランコとか滑り台とか、遊具がそこにあったから。綺麗な装飾に落書きもある。ここは普通の民家とは違う、元々何か大きな場所だったんだと思う。

 

「少し遊んでいこうよ! スヴァローグ、良い?」

「周囲に危険な個体は居ない様だ」

 

「ん。なら、休憩も兼ねて」

 

 スヴァローグは部品を纏めた袋を下してクラーラから付かず離れずの距離で待機し始める。何かあった時、動ける様に。ブランコは背もたれのある椅子型で、二人は座れる様になっている。言わずとも分かるくらいに目を輝かせて私を見るクラーラへ頷いてから、一緒に座る事にした。

 

 クラーラはお姉さんぶろうとする事もあるけど、やっぱり子供なんだって思う時もある。おままごとが好きだったり、こうした遊具に目を輝かせたり。そういう私は、いくつくらいなんだろう? ある程度の常識だけを残して、前の記憶が無い私には何年生きていたのかも当然分からない。この身体は幼いけれど、中身である私は子供? それとも、大人?

 

「どうしたの?」

 

「私、何歳だろう?」

 

「え? えっと……10歳くらい、かな」

「開拓者から特殊な生まれと聞いている。だが肉体年齢は人間の成長速度から計算した場合、9~11年程度だろう」

 

 クラーラの目からして、私は年下に見える。だからお姉ちゃんと呼ぶ事もあるけど、実際のところは結局分からない。記憶が無いのは経験が無いのと一緒で、身体も最初から今の姿で生まれているから……極端な事を言ってしまえば、私は一歳にも満たない。

 

 ふと思った事だったけど、深く考えてもこの場で答えが出る事はきっと無い。強く足を動かしてブランコを大きく揺らしながら、やがて前へ進む勢いのまま飛び降りた。そしてその足で滑り台の階段を上る。少しだけ視線が高くなれば、ここが高台って事もあって街がある程度一望出来た。

 

「綺麗な景色だね」

 

「ん。でも、悲しい。……空っぽの街」

 

 嘗て、ここには人が住んでいたんだって分かる。だからこそ見える景色は明るいのに、徘徊するのが異形だけな事に寂しさを感じる。模擬宇宙で戦った異形とは違う、本物の危険な存在。きっと何度も倒しているのに、必ずまた現れてしまうあれのせいでこの街は捨てる他に選択肢が無かった。この遊具で遊んでいた子供達も、住んで居た筈なのに。

 

「こいつらのせい」

 

「! スヴァローグ!」

「迎撃準備」

 

 階段を上がって来るのが見えた。滑り降りて、武器を構えると同時に向こうも攻撃を仕掛けて来る。クラーラが少し遅れてスヴァローグへ声を掛ければ、きっと私よりも先に気付いていたスヴァローグが前へ出た。ここは私の住んでいた街じゃ無ければ、思い出も何もない場所。それでも、ここが空虚な場所になってしまった原因である目の前の存在は許せない。

 

「っ!」

 

 迫って来る異形に薙刀を振るう。一回じゃ倒せないのは百も承知。それはヘルタのお蔭で分かっているから、だったら最初から何度か攻撃を入れれば良い。先制は取った。最初の一撃で怯んだ隙を見逃しちゃ駄目。相手が動かなくなるまで、続けて攻撃を入れる!

 

「増援反応あり」

 

「行ける?」

 

「頑張ろう、スヴァローグ」

「戦闘続行」

 

 上がって来た敵は倒し切ったけど、まだこれから来る異形の存在をスヴァローグが教えてくれた。大丈夫、倒せる。私とスヴァローグが並び、スヴァローグの後ろにクラーラが立った状態で敵の増援を待つ。やがて現れたのは赤いハルバードを持った異形。だけど姿を見せたのに動かないそれは、やがてゆっくりと倒れ始めた。

 

「えっ?」

 

「敵性反応が消失。だが同時に生体反応を検知」

「誰かが倒したの?」

 

「貴女達、ここで何してるの?」

 

 消えた異形。そしてそこから現れたのは、鎌を携えた女の人。開拓者と一緒にこの世界を回った時、見かけた事がある。すぐに居なくなってしまったけど。

 

「ゼーレお姉さん!」

 

 クラーラは知っているみたい。私は見かけただけで話した事も無いから、全く分からない。周囲に敵の反応が無い事はスヴァローグが教えてくれたので、私は武器をしまって取り敢えず黙ってる事にした。女の人も私を一度見てから、クラーラに話し掛け始める。説明は彼女がしてくれる筈。

 

「それで、貴女は? 前に開拓者と居たわよね?」

 

「クラーラの妹です!」

 

「妹?」

 

「みたいなもの。家族で、友達」

 

「あぁ、そういう事ね。気を付けなさい、ここは安全じゃないんだから」

 

 クラーラが機械や仲の良い人達を家族と称している事は、知っていたらしい。それだけで何となく理解してくれた様子で、そのまま何処かへ行こうとしているのを止めようとする間もなかった。紫色の蝶が舞ったと思えば、一瞬にしてその姿は消えてしまったから。

 

「あの人は?」

 

「ゼーレお姉さんだよ。地炎って組織のメンバーなの」

「地炎とは、下層部に住む人間が作り出した自警団だ」

 

 嘗て、この(ヤリーロ-VI)は上層部と下層部で争っていたらしい。開拓者から、臨場感タップリにここで起きた出来事は教えてもらった事がある。今はその問題が解決して少しずつ寄り添い始めていると聞いたけど、出来た溝は深くて簡単にはいかないみたい。

 

 戦っている姿を見た訳じゃ無いけど、強いのはよく分かる。あの人や同じくらいの実力を持つ人達が、異形を倒したりして戦えない人達を守り続けているんだと思う。……カッコいい。

 

「帰還する事を推奨する」

「そうだね。部品も沢山集まったから、そろそろお家に帰ろう?」

 

「ん。分かった」

 

 颯爽と現れて敵を倒し、お礼を告げられるよりも前に姿を消すのはゲームじゃ強者と決まってる。もう居ないゼーレと話す事は出来ないけど、いつかまた会えた時は話してみたい。内容なんか何も思いつかないけど、多分これは強い人への憧れみたいなものだと思う。

 

 

 

 

 

 今日はどこにも行かない予定。家から一歩も出ないでゲームをする。しかも今日は銀狼が一日家に居られるみたいで、その代わりじゃないけどホタルは帰って来れないらしい。偶には羽目を外したって、良いと思う。

 

「お菓子は?」

「一杯ある。スナック菓子も、15袋くらい。チョコレートも、焼き菓子も沢山」

 

「飲み物は?」

「ジュース一杯。種類も一杯」

 

「服は?」

「働いたら負けTシャツ、一生遊んで暮らしたいTシャツ」

「私は先の方を着るから」

 

「ゲームは?」

「狩りゲー、FPS、パーティー、何でもやれる」

 

 ご飯を作るつもりは無い。お菓子を作るつもりも無い。お茶を入れたりコーヒーを入れたりする気だってない。今日は銀狼の部屋でずっとゲームをするつもり。お菓子を食べたい時に食べて、ジュースを飲みたい時に飲んで、座って転がって重なり合って遊び続ける予定だから。

 

 普段なら出来ないし、やらない。それはホタルが怒るからって理由もあるけど、特に大きいのは二人が外へ出て帰って来るのにご飯の用意くらいはしておきたいと思っているから。だけど銀狼は今日どこにも行かず、ホタルは帰って来ないから状況が全然違う。お菓子を食べたりしていればお腹は満たされるし、動く訳じゃ無いからお腹は減るにしてもすぐにじゃない。だから、今日は宴の気分。

 

「何やる?」

 

「取り敢えず、デュオでやろう」

 

 最初に選んだのはFPSの銃撃戦。前にホタルも交えてやったゲームだけど、今回は二人で。全チームが二人になる設定なら、知らない人(野良)と遊ぶ必要もないから楽に出来る。

 

 誰かと一緒なら、コップを用意したりする。だけど銀狼とこうして遊ぶ時はペットボトルのまま。1.5リットルのペットボトルを飲み物の種類×3本は用意したから、足りなくなる事はない筈。残ったらまた違う時に飲めばいいだけなので、十分過ぎる以上に用意した。お金は模擬宇宙へ入った時とかに不思議と少しだけもらえたりするから、それで。戦う必要はあるけど、それでも倒してお金がもらえるのは稼ぎやすい。稼げる量は一日に限界があるみたいだけど、そもそも私の体力からそこまでは稼げない。

 

「あ」

 

「飲む?」

 

「ん。ちょうだい」

 

 最初に飲もうと思っていたジュースを取ろうとしたら、銀狼が全く同じタイミングで持って行った。手が空を掴もうとしてしまってちょっと声が出てしまったら、銀狼がそのままラッパ飲みしていたジュースを渡してくれた。受け取って飲めば、ジュースの甘い味。好きなゲームを友達と遊びながら、こうしてお菓子やゲームを好きな様に飲み食い出来るのって、凄い幸せな事だと思う。

 

 敵と出会って戦闘が始まれば、ジャンプしたりする仕草でつい身体が動いてしまう事がある。その度に銀狼と肩がぶつかったりして、お互いに同じ方向へ身体が曲がったりすると、それを見たホタルが笑う事も多い。完全に無意識だから、自分では止められそうにないけど。

 

「アルフォ頂戴」

 

「はい、あーん。あむっ。甘い」

 

「チョコだからね。あ、右から来るよ」

 

 戦闘が一度終わって落ち着いたら銀狼にチョコとビスケットのお菓子を催促されたので、袋から出して銀狼の口へ入れてから私自身も一枚食べる。チョコだけなら甘すぎるかもしれないけど、ビスケットの生地があるお蔭で程よく感じて美味しい。

 

「よし、チャンピオン。楽過ぎだね」

 

「銀狼、強いから」

 

「それはお互い様。つまらないし、縛ってみる?」

 

「初動武器?」

 

「いいね。後はバックも白までとかにしよう」

 

 銀狼がベッドの上へ移動したので、私もついて行った。手持ちの画面はお互いで見える様にして、うつ伏せで並ぶ様な姿勢に。楽だけど、飲み物を飲むのが少し面倒なのが欠点。大きいボトルだと、低い姿勢では飲み難いからしょうがない。

 

「ポテチあけるよ。何が良い?」

 

「うすしお」

 

「了解。はい、開けた」

 

「アルコールティッシュ、置いておく」

 

 油が付いてしまうスナック菓子を食べてからそのまま端末を触るのは罪だと思う。そうならないためにも、ちゃんと濡れたティッシュや布巾で手を拭くように。

 

 縛りを入れてのプレイは流石に難しかった。最初に見つけた武器以降は変えちゃいけないにしたら、苦手な武器を拾った時が苦しい。銀狼は全ての武器をちゃんと扱えるみたいでそんなに苦労して無かったけど、私はそれなりに好き嫌いがあるから。何でも使えるって、凄い。

 

「はぁ……この時間のプレイヤーは余り手応えがない。別ゲーにしよう」

 

「狩り?」

 

「なら、防具無しでやろう」

 

 銀狼は難易度を上げて遊ぶのが好き。難しいゲームが好きだから、普通の人が遊ぶ程度の難易度だと満足出来ないみたい。私もそれに付き合っていたら、今ではそれなりにゲームの腕前が上がったと思う。そう言えば、前の私はどれくらいの腕だったんだろう?

 

「前の私と、今の私。どっちがゲーム、上手い?」

 

「さぁ? 考えた事ないし、考える気も無い」

 

「?」

 

「こうして一緒に遊べてるんだから。それ以上の必要、ある?」

 

「銀狼……ぁ、わぁ~」

 

 銀狼が凭れ掛かってきた。うつ伏せだった身体がそのまま仰向けになると同時に銀狼の顔が目の前に。不敵な笑みって感じの表情を浮かべている銀狼は、そのまま私に圧し掛かった姿勢でゲームを始めた。余り言いたくないけど、重くて苦しい。多分銀狼は他の人に比べて小柄な上に細いから、軽い方だとは思う。だけど私自身が小さいせいで、それでも重く感じてしまう。

 

「ほら、服脱いで」

 

「下着になる?」

 

 FPSゲームから一転、狩りゲーを始めた私達は防具無しでモンスターへ挑む事にした。一度攻撃を受ければ最悪終わり。生き残っても最大まで回復しないと、次撃を耐えられない。多分これでも楽にクリア出来てしまったら、回復までも銀狼は縛りそうな気がする。

 

「ポテチ~」

「はい」

 

「アルフォ~」

「あーん」

 

「ポッキー」

「何本?」

「10本くらい」

 

「ジュース」

「自分で飲んで」

 

「あ、レアドロ来た」

「ずるい。後、そろそろ降りて」

 

 

 外の景色は無いから、どれくらい時間が経ったのか分からない。とても長い時間ゲームしていた気がする。銀狼は全く眠くなさそうに操作しているけど、私は気付いたら眠ってしまっていたらしい。ベッドの上で座るに近い姿勢になって銀狼の肩に頭を預けていたみたいで、目が覚めたら目の前にゲーム画面があった。

 

「あ、起きた?」

 

「ん。ふ、ぁ~……今、どれくらい?」

 

「宴を初めて24時間経った」

 

「一日、終わっちゃった」

 

「3時間くらい寝てたから。勿体無い」

 

「眠くないの?」

 

「全然余裕」

 

 周囲を見渡せば、食べ散らかしたお菓子の袋や空のペットボトルが散乱している。起きている時は催促されて銀狼の口へ言われたお菓子を運んでいたけど、私が寝てからは自分でやっていた筈。でも肩へ頭を預けていた姿勢で目が覚めたって事は、余り自由には動けなかったと思う。その結果がこれなのかもしれない。ホタルが見たら怒りそう……あれ? もう、一日経ったって言った?

 

「二人とも、ただい……ま」

 

「あっ」

 

「やばっ」

 

 ホタルが帰って来た。この惨状を見て固まったホタルを前に、銀狼の顔には焦りが見え始める。私も不味いと分かっているけど、寝起きなのもあってまだ身体が動かない。目が見えないくらいに少し俯いて、ゆっくりと近づいてくるホタルが怖い。思わず私と銀狼が抱き合う中、私は一瞬炎を見た気がした。

 

 目が覚めたら、私は自分の部屋にあるベッドで横になっていた。ホタルが帰って来た後の記憶は無くて、後で確認したら銀狼も無いみたい。だけどなぜだろう、少し火を見るのが怖い気がする。




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