この素晴らしい世界に宇宙文明を!   作:shiwori

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ep2

私達は今ギルドと呼ばれる場所の入口にいる。

情報収集で、異国からの旅人という体で住人と会話する中で、ある人から旅費を稼ぐならギルドからクエストを受けるのが良いと聞いたからだ。

私も和真も、突然この世界に来たのだから当然この世界の通貨なんて持ってない。このままだと、私は兎も角和真は盗みを働くくらいしないと生きていけないので、私達には渡りに舟だった。

因みに、和真はこの話を聞いたときハイテンションでガッツポーズをしていた。

 

「ここがギルドかぁ。なんか、いかにもゲームで出てきそうな見た目してるね。この街自体そんな感じだけど。」

 

「本当そうだよな。で、ゲームだと大体この後ここで冒険者になるわけだ。」

 

「王道だね。・・・取り敢えず、入ってみよっか。」

 

そういって、私と和真は建物の中に入っていく。

中に入ってまず最初に目につくのは、歴戦の強者(つわもの)の風格を感じる男の石像と、何の生物か分からない白骨模型だ。

建物内は街の雰囲気から推測できる技術レベルに比べると思ったより綺麗で、テーブルや床には僅かな汚れしか確認出来ない。

冒険者と思われる人々も多くいて、彼らは各々テーブルで食事をしたりと寛いでいるように見えた。

そうして一通りギルド内を見回したあと、私達は併設されている酒場のウェイトレスさんの案内でギルドの受付に向かったのだけれど、列に並ぶときに和真が待ったをかけた。

 

「待て、霊津身。ここはあの金髪のお姉さんが受付をやっている所に並ぼう。」

 

和真が指差したのは、空いている他3つの窓口ではなく、明らかに列が出来ているカウンターだった。

 

「なんで?他の窓口は並ばずに受付してくれると思うんだけど。」

 

すると和真は「わかってないなぁ、お前」みたいな表情で持論を述べた。

 

「いいか霊津身。こういうのは受付の人と仲良くなっておくのが基本だ。そして、美人な受付のお姉さんとは色々とフラグが立つ。今後、あっと驚く隠し展開とかが待ってる訳だ。例えば、お姉さんが元は凄腕の冒険者だったとかな。」

 

確かに、この世界が創作物にありがちな展開を踏んでいるならあり得る話だ。

それに合ったときからそうだけれど、和真の周りの因果流はかなり激しく揺らいでいる。上手く制御できれば、元の世界でならレベル5に分類される改変者になれるくらいに、だ。

そんな和真の提案とあらば、拒否する理由もない。少なくとも彼女が凄腕の冒険者であった訳では無いことはアナライザーからの分析結果で分かるけれど、それ以外の展開が訪れないとは言い切れないのだから。

そんな理由(わけ)で私達は、わざわざ列に並び受付の時を待つのだった。

 

他の受付職員にチラチラと見られながら待つこと3分。ようやく私達の番がやってきた。

 

「はい、今日はどうされましたか?」

 

受付の女性職員は事務的に要件を問う。

 

「すみません。俺達この国を旅している者なんですが、旅費を稼ぐために冒険者になりたいと思いまして、ここでその手続って出来ますかね?」

 

和真は、少し格好を付けながら要件を伝えた。

 

「そうですか。では、登録手数料が掛かりますが宜しいですか?」

 

ピタッと、和真はその言葉を聞いて反応を停止してしまった。多分、こういったことになる可能性を考えてなかったのだろう。

もっとも、考えていたとしても対応策は限られているけれど。

私は停止している和真に代わり、なんとか登録だけは出来ないかと、情に訴えてみる。

 

「手数料、ですか。実は私達、この街に来るまでで旅費の殆どを使ってしまったので手元には今日の宿泊費しか無いんです。登録後の仕事の報酬から手数料の200%を徴収していいので、登録だけはさせてもらえませんか?」

 

勿論、情に訴えるだけで首を縦に振るとは考えていないので、少しだけ旨味も持たせておく。手数料の2倍なんてたかが知れているけれど、無いよりはマシだ。

しかし・・・、

 

「申し訳ありません。当ギルドではそのような対応は行っておりませんので、冒険者登録の際は、登録手数料を用意してからお越しください。」

 

担当職員さんは、とても申し訳無さそうに私達に頭を下げた。

この断られ方だと、どんな方法でも対応してくれそうに無いので、私は横でまだ機能停止中の和真を引き連れて、カウンターを後にした。

 

 

 

受付を去った後、私達は併設されている酒場のテーブルの一つに腰を下ろし、今後のことを考えていた。

 

「どうするよ、霊津身。冒険者になるには金が必要で、金を得るには冒険者にならなきゃならない。完全に詰みだぞ?」

 

和真はテーブルに突伏し、諦めモードだ。一応、冒険者にならなくても、何処かのお店で働けば賃金は得られるだろうけど、冒険者になれば確実にクエストが受けられるのに比べれば、被雇用可能性という面で不安が残る。今は兎に角早く生活費を確保しなければいけないのだ。

こうなったら私も腹を括らなければならない。

 

「よし!こうなったら、手段は選んでいられないね。ちょっとその辺の冒険者からお金借りてくるから少し待ってて。」

 

「え?あ、おい!」

 

和真が止めようと席を立つが、無視して先ほどから目星をつけていた男の元へ向かう。

向かう先は、昼間から酒を飲み、節操なく周りの女性冒険者にちょっかいを掛けている金髪の男性冒険者の元。

 

「もし、そこのお兄さん。」

 

絡んでいた女性冒険者からあしらわれて、一旦席に着いたタイミングで声を掛ける。

 

「あ?この俺になんか用か?」

 

男性冒険者は最初、不機嫌そうに反応したものの、私が女であると分かると少し気を良くした。

 

「実は、今冒険者登録の手数料が払えなくて困っているんです。出来れば私と仲間の分の手数料を貸していただきたいのですが、難しいでしょうか...。返す際は、借りた金額の2倍返します。」

 

男は僅かに悩む素振りを見せた後、私の体を舐めるように見ると、首を振って断った。

 

「悪いが他あたってくれ。俺もあまり手持ちが無くてな、どうしてもって言うならそれなりの誠意を見せてくれないとな?」

 

やっぱりそう来たか。

勿論、私もその覚悟はして来た。けれど、これは交渉だ。如何に自分達に利がある結果を出せるかが問われている。

何かを借りるのには信用がいる。では、信用がない状態でモノを借りるにはどうすれば良いか?信用を作ればいい。相手にとっても価値があって、自分にも価値があるものを担保にすれば場合にもよるけど借りることは出来る。

ここでのそれは私自身だ。そして、私の勝利条件は手数料を借りられて、かつ私に実害が無いこと。

相手は昼間から酒を飲むほど酒に魅入られている。私の世界での実験結果が通用するなら満足遅延耐性もそれなりに低いはずだ。

即ち、あまり長い期間待たせることは出来ない。けれど、期間が短すぎれば今度は私達がクエストを達成出来ずに債務を履行出来ない可能性も出てきてしまう。

私は、アナライザーで直近1週間の天気を予測し、可能な限り不安要素を取り除いた上で、男に私が容認出来る最大の提案をした。

 

「・・・わかりました。なら、せめて3日は待ってください。3日以内に返せなかったら、そのときは私のことを自由にして構いません。」

 

すると、今まで私達のやり取りを黙って見ていただけの冒険者達の間でどよめきが生まれた。

近くにいた女性冒険者の中には、私のことを心配する人もいたけど、干渉はしてこない。

 

男は、口角を上げると酒を置いて立ち上がり、快く私の提案に合意した。

 

「あはははは!お前気に入ったよ。名前は?俺の名はダスト。職業は戦士だ。」

 

いきなり笑いだし名前を聞いてくる、男あらためダスト。さっきまでとは雰囲気が180度変わっているように見えるのは気の所為だろうか。

周りの冒険者達もかなり困惑しているように見える。

とはいえ名前を聞かれて応えないわけにもいかないので、私は簡潔に自己紹介をする。

 

「私は霊津身根比売神(ちつみねひめのかみ)って言います。この街には旅行で来ました。長かったら霊津身って呼んでも構いません。」

 

「霊津身って言うんだな。それにしてもちょっと冷めてないか?もっと熱く行こうぜ!あと、これ言われてた2000エリスな。」

 

ダストは、財布から硬貨を取り出すと私に渡した。思いの他素直に聞き入れてくれてホッとしている。

けれど、この後の言葉は先ほどまでの彼からは想像もつかないものだった。

 

「それ、返さなくていいから。」

 

「「えええええ~?!」」

 

私含め、傍観していた冒険者全員が困惑した。

 

 

 

「それ、返さなくていいから。」

 

私は、彼が放ったその一言を何度も反芻していた。

なぜ、彼はいきなりそんなことを言ったのだろう。明らかにさっきまでの彼とは性格が違う。さっきまでの彼ならこんなことは言わないはずだ。

可能性があるとすれば、私が硬貨を受け取ったからそれに乗じてもっと大きな要求をしてくる可能性だけれど、あの酔った状態でそんな判断できるのだろうか?

私は1ミリ秒程度思考し、このままでは埒が明かないと判断したため、直接本人に聞くことにした。

 

「あの、ダストさん?なぜ返さなくてもいいのでしょうか。私の提案だと期限は3日と定められていたはずですが。」

 

周りの冒険者達も首を縦に振っている。

 

「さん付けはしなくていいって。ダストって呼んでくれ。俺だって漢だぞ?女のお前にあそこまで言わせて、はいそうですかって貸したら、このダスト様の名が廃るだろ。」

 

なるほど。漢のプライドって感じかな。

なんて思っていると、またしても冒険者達が騒ぎ始めた。

 

「あっははは!おい、ダスト。お前がそれを言うのかよ!」

 

「お前の名前はとっくに廃れてるっつーの!」

 

「あー、腹痛い」

 

けれど、これにダストは腹を立てて大声で叫んだ。

 

「うるせぇ!俺だって偶にはいいとこ見せてぇんだよ!頼られなかった外野は黙ってろ!」

 

ただ、これは火に油を注ぐような行為だったようで、先程ダストを煽ってた冒険者がキレて乱闘が始まってしまった。

 

しばらくは止めに入ろうか迷っていたけれど、よくよく考えれば戦略目標は達成しているのだからこれ以上関わるべきではないと思い、私は和真の元に帰っていった。

 

 

 

和真の元に帰った私は、彼と一緒に再び受付カウンターに向かい、冒険者登録をすることにした。

受付の女性職員は、現在も続いている乱闘騒ぎの元凶でもある私に何か言いたそうな表情をしていたけど、口には出さず私達の対応をしてくれた。

 

「はい、確かに1000エリス確認しました。では、冒険者登録の手続きをさせていただきますね。」

 

担当職員さんは手数料の金額に問題が無いことを確認すると、冒険者についての説明を始める。

 

「お二人とも、冒険者になりたいと仰るのですからある程度理解しているとは思いますが、改めて簡単な説明を。まず、冒険者とは街の外に生息するモンスター、まあ人に害を与えるモノですね、の討伐を請け負う人のことです。とはいえ、基本は何でも屋みたいなものです。・・・冒険者とは、これらの仕事を生業にしている人たちの総称。そして、冒険者には、各職業と呼ばれるものがございます。」

 

そこで女性職員さんは一旦説明を区切り、手元からカードを取り出すと、それを私達に渡した。

 

「こちらに、レベルと言う項目がありますよね?ご存知の通り、この世のありとあらゆるモノは、魂を体の内に秘めています。どのような存在も、生き物を食べたり、もしくは殺したり。他の何かの生命活動にトドメを指すことで、その存在の魂の記憶の一部を吸収できます。通称、経験値、と呼ばれるものですね。それらは普通、目で見ることは出来ません。しかし・・・」

 

そのあとの説明は、殆どゲームみたいなものだった。経験値を集めてレベルアップし、スキルを覚える。そしてそのステータスが表示されるカード。

和真はこの説明を聞いて目を輝かせていた。和真からしてみれば初めてフルダイブ型のゲームを遊ぶようなものなのだから、その興奮も理解できる。

ただ、私には気になる点もあった。それは、私がこの世界の外から来ていると言う事。私の魂がこの世界の魂と同じ性質とは限らないから、たとえモンスターを討伐しても経験値は得られないんじゃないかと心配している。まあ、少なくとも和真は心配いらないから良かったけど。彼の脳を弄ってて分かったけど、和真は異世界というより、同じ世界の別の宇宙に転移したって方が正しいから。

そのあと、私達は提示された書類に情報を記入して、登録作業を進めていく。

 

「はい、結構です。それでは、お二人共このカードに触れてください。それであなたがたのステータスが分かりますので、その数値に応じてなりたい職業を選んでくださいね。」

 

そうして、私達は職員さんの指示に従って、カードに触れていく。

和真の興奮は最高潮に達していて、自分のステータスを早く知りたくて仕方がないようだ。

けれど、次に受付の人が放った言葉は、そんな彼を地獄に叩き落とすようなものだった。

 

「・・・はい、ありがとうございます。えっと。サトウカズマさん、ですね。ええと・・・。筋力、生命力、魔力に起用度、敏捷性・・・、どれも普通ですね。知力がそこそこ高い以外は・・・、あれ?幸運が非常に高いですね。まあ、冒険者に幸運ってあんまり必要ない数値なんですが・・・。でも、どうしましょう、これだと選択出来る職業は基本職である《冒険者》しかないですよ?これだけの幸運があるなら、冒険者稼業は辞めて、商売人とかになることをオススメしますが。宜しいのですか?」

 

あれだけ期待していたのに、実際は冒険者どころか商人を推奨されるという、強烈な一撃を食らった和真は一発でノックアウトし、意気消沈しながら基本職の冒険者を選択した。

 

そんな和真を慰めながら、私は自分のステータスを教えてもらう。

 

「チツミさんは・・・、かなり身体能力が低いですね。知力はカンストしてますが、魔力が無いのでウィザードなどの魔力を必要とする職業には付けませんね。これなら、学者の道を選ばれる方がよろしい気もしますが・・・、お二人共本当に冒険者でよろしいのですか?」

 

どうやら、私も基本職である冒険者しか選択出来ないみたいだ。

ステータスが思ったより振るわなかったのは、私の体がこの世界の人々のような構造をしていなかったからだろう。例えるなら、望遠鏡で星じゃなくて細胞を見ようとしているようなものだ。

まぁ、ステータスなんて指標の一つでしかないから、実際の仕事にはそこまで影響はないはず。

 

私は、まだショックから立ち直れていない和真に代わって、改めて冒険者になる旨を伝える。

 

「はい、本業は別にあって、あくまで旅費を稼ぐ目的で冒険者をしようと考えているので大丈夫です。」

 

「そういえばそうでしたね。失礼しました。それではお二人の冒険者登録はこれで終了でございます。ご不明な点など御座いましたら、お近くのスタッフまでお越しください。」

 

こうして、私達は念願の冒険者登録を終わらせ、カウンターを後に・・・、するわけにはいかなかった。

私達は今一文無しなのだ。ここで何も得られなければそのまま餓死する可能性すらある。

私は早急にこの世界の通貨を獲得するため、受付の女性職員に今からでも受けられて、今日中に終わるクエストがないか聞いてみた。

 

「即日可能なクエストですか。あるにはありますが、お二人のステータスだと難しい、いえ、かなり無謀な挑戦となりますが、それでも受けるのですか?レベル制限なども無いため、当ギルドとしては注意喚起のみにとどまりますが・・・。」

 

まだあまりこの世界について知らない状態で危険なクエストを受けるべきではないけれど、背に腹は代えられない。

 

「クエストの内容はどんな感じですか?討伐ですか?それとも採集ですか?」

 

私はクエストを受ける前提で内容を確認する。

 

「討伐ですね。一撃熊と呼ばれる、この街の近くにある森に生息するモンスターを討伐する依頼です。」

 

取り敢えず、職員さんから可能な限りその一撃熊に関する情報を集めて対策を考える。

聞く限り、少なくとも生物ではあるので殺すことは出来るはずだ。

 

「わかりました。ではその依頼を受けたいと思います。対象に関する情報が更にあれば教えていただけると助かります。」

 

それを聞くと女性職員さんは、かなり慌てた様子で警告してきた。

 

「ほ、本当に挑戦するんですか?!何度も言いますが、お二人のステータスでは確実に殺されてしまいますよ?!」

 

その慌てようは相当で、周りのスタッフさん達も止めようとして来た。

けれど、私はその静止をあえて無視して、クエストを受ける意思が強いことを伝える。

 

「大丈夫です。勝算がない訳ではないですから。それに、今こうして横で自分の未来に絶望している仲間の為にも、身体能力が全てじゃないことを伝えないといけませんからね。」

 

そう。和真はあれからずっと、目が死んでいるままだった。

このままだと、せっかく異世界に来たのに面白くない人生を送らせることにもなりかねないので、私にとっては早く彼に自分の可能性を見せてあげないといけないのだ。

 

「そこまで言われるのであれば当ギルドとしてはこれ以上の警告はいたしませんが・・・。くれぐれも注意して行動してくださいね。」

 

こうして私達は、冒険者になって初めてのモンスター討伐に赴くことになった。

 

 

 

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