超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第4話 バタラとバイオ脳とジェネシス

 火星連邦製マーズスーツの制式採用の知らせは当然ながら内外で波紋を呼んだ。

 

 詳細な性能こそ知られていないが、あの天才が関わっているとして警戒していた。

 これが地球連合へ渡ったらMSにより宇宙で優勢を保っているザフトに大きな負担となると考えたからだ。

 同時に、地球連合側もやはりなという確信と共に詳細情報の入手と共に対MS用機動兵器として購入できないか打診を送った。

 勿論ながら断られたが、同時に秘密裡に「実戦データの収集のため、専用のPMC部隊を組織する予定がある」事を伝えた。

 これに対して連合側もまたナチュラル用OSを搭載した鹵獲ジンを用いた部隊を用いての実戦データの収集を目的とした秘匿部隊の設立を明かし、件のPMC部隊をこの部隊の支援役として雇用する事を打診した。

 地球連合も火星連邦も新型兵器の実働データが欲しいのは同じ。

 連合は火星連邦という新たなグレートプレイヤーの軍備を確認できるし、火星連邦もまた地球連合側に自らの技術力を誇示する事が出来る。

 加えて、今のバタラは人型機動兵器の運用に慣れるためのものであり、見せ札として使って良いと開発元からの声掛けもあった。

 こうして、秘匿任務部隊TMXが組織される事となった。

 なお、Tがテラ、Mがマーズ、正体不明を指すXが部隊名の由来だ。

 時はC.E.70年5月初頭、月ではグリマルディ・クレーターを境界に小競り合いが日常的になり始めた頃の事だった。

 

 

 ……………

 

 

 MFSー01 バタラ (Mars Federation Suitの略)

 過酷な火星圏の活動を前提とされた本機は頭頂高約16mでありながら、元型となった重機同様に機体の各パーツが単一機能に特化、かつ容易に交換可能なブロック構造となっている事から生産性、汎用性、発展性を高レベルで実現する事に成功している。

 反面、機体コストがジンよりもやや高くなっている。

 これは核融合炉に始まり、プラネイトディフェンサーに携行可能なビーム兵器を複数搭載し、更にブロック構造まで取り入れているのだから、それは当然と言えるのだが。

 装甲材に関しては火星で量産化されたルナチタニウムもといマーズチタニウムをベースにチタンセラミック合金類を複合したガンダリウム合金セラミック複合材(宇宙世紀100年代)相当を採用しており、ジンよりも軽量でありながら高い防御力を誇っている。

 これに前述のプラネイトディフェンサーもあるのだから、実質ジンでは歯が立たないのが当然となる。

 一応、月面に配備された秘匿任務部隊TMXの機体はビーム兵器の搭載は一時取り止め、鹵獲ジンと共通の重突撃機銃と重斬刀となっている。

 とは言え、これだけではメビウスのリニアガンの直撃に耐えるジン相手では如何にも火力不足なためバズーカやミサイル、携行式レールガン等の使用は許可が出ている。

 まぁ相手のジンからすればビームも実弾も完全に防ぐプラネイトディフェンサーを搭載した上で装甲もガチガチの新型兵器の相手をしろ等と酷い事となっているのだが、それは兎も角。

 

 『出来ればガンダニュウム合金の本格量産もしたかったですね。』

 『仕方ありません。基礎となるルナチタニウムは兎も角、ガンダニュウム合金は重力の影響を排した高温プラズマの中で精製し、精製時にも分子単位の配列や同位体のマトリクスなどをナノ単位で調節する他、太陽が放射する電磁波も直接・間接的に利用しなければなりませんし。』

 『手間が掛かり過ぎますね。LPじゃないと作れませんし…技術的ブレイクスルーが必要です。』

 『性能は高いんですけどねぇ。耐弾性・耐熱性・耐蝕性・耐摩耗性は勿論、採用するとほぼステルス機になりますし。』

 『高硬度レアアロイとは言いませんが、何とか開戦前に用意しておきたい所です。』

 

 地球圏から送られてきたデータを解析し終え、ヒマリ達は早速話し出す。

 現状、GN粒子の無毒化の理論は大凡達成したので、後はちまちま実験を繰り返して数をこなすだけで、これは開発局にでも投げれば良い。

 実験機に関しては初期型太陽炉を搭載したGNドライブT型の運用データ収集用の機材やセンサー系を搭載したスローネヴァラヌスに似た機体が試作型MDシステムを搭載した状態で運用されている。

 なお、太陽炉の始動機は搭載されておらず、例え暴走や奪取された所で大凡数時間程で活動限界を迎えるようになっている上に遠隔で自爆も可能なので、万が一があっても問題は無い。

 

 『C.E.71年頃には先行試作機としてジンクスが出来そうですね。パイロット未定ですが。』

 『いっそMD化しますか。普通のパイロットはバタラの訓練で忙しそうですし。』

 『うちの会社からシミュレーター風アーケードゲームを出したから、民間からも多少はスカウトできそうですけど、まだ先の話でしょうね。』

 『艦艇類はブロック構造型のものが量産され始めました。作業用や連結して大型艦にするのも容易なので、中々良い感じですよ。』

 『ダメコンには作業用オートマトンを多数配備すれば十分でしょうか。しかし軍人の数が根本的に足りませんね。』

 『やはり人口問題は急務ですか。こればかりは私達ではどうしようもないですからね。』

 

 火星連邦内で進んでいる無数のプロジェクト。

 自衛のため、対地球連合及びプラントを主目的とした軍事増強政策は一点を除いて順調だった。

 即ち、人口問題である。

 幸いにして人口自体は地球圏の戦乱を警戒したためか、戦前から増加傾向にあったが、それでも未だに火星圏の人口は2億人に過ぎない。

 況やここから職業軍人になれる人間と言えば、随分と限られてしまう。

 労働人口の多くが船外作業用重機や艦船の操作に修理等、何かしらの技能を持っている者が殆どなので有資格者には困らないのだが、その分民間でも引っ張りダコなので、下手に引き抜きも出来ない。

 

 『となると、やはりMDや無人兵器の開発と配備が急務ですね。』

 『鉄血式のMAとかあったら便利そうですね。セーフティは必須ですが。』

 『コロニー一基を武装化しつつ生産拠点としても整備するべきですかね。ほぼ無人で。』

 『このラボと大差無い気がしますね。まぁ今は何処の生産ラインも手一杯ですから暫くは無理ですね。』

 『木星に送ってオリジナルの太陽炉製造とかやりたい事が沢山あるのにこれですからね…。』

 『幸い、こちらに来るのは早くても数年後でしょう。今次大戦中は一点を除いて安心です。』

 『ジェネシスですね。頑張ればこちらにも撃てますし、アレだけはその内ムルタ君に教えてあげなくてはいけませんね。』

 「んータイミング的にはもうそろそろですし、核融合炉の技術給与と共に教えてあげましょうか。おまけで義勇兵部隊とか。」

 『少し早いですが賛成』『んー反対』『賛成』『棄権』『賛成』『賛成』

 「では賛成5、反対1、棄権1で可決という事で。」

 『『『『『『異議なし』』』』』』

 

 こうして、ムルタ・アズラエルの下に喉から手が出る程欲しかった核融合炉と共に特大の爆弾情報が齎される事となるのでした☆

 

 

 ……………

 

 

 『という訳なので、ムルタ君達にはこれからとても頑張ってほしいなと思います。』

 「」

 

 百戦錬磨の企業人ムルタ・アズラエル、まさかの絶句である。

 しかし、今回程じゃないが割とよくヒマリ主に驚かされている彼の復帰は早かった。

 

 「戦略、兵器ですか…。こんな巨大なもの、今まで何処に…。」

 『そちらも研究しているミラージュコロイドステルスの一種ですね。まだ技術的に未成熟なので、静止状態でしか効果が無いようですが、それでもこれだけの巨大建造物を隠蔽できるだけの効果は既にあるようですね。』

 

 今回、ヒマリ側からの連絡によって核融合炉(通常発電用・艦艇用・MS搭載用の三種)のライセンス生産の許可と共にプラントの主戦派が進めている戦略兵器ジェネシスについての情報が齎されたのだ。

 良い情報と特大の悪い情報にムルタの脳は激しくシェイクされる事となった。

 

 『この宙域写真の差異、僅かながら以前のものとズレています。如何に光学迷彩とは言え、完全にそのままとはいきませんからね。加えて、プラント内部の資材の動きにも不鮮明な所が多々あります。連中、地上での戦闘はサブプラン程度で、実際はこちらを用いての一方的な降伏が本命の様ですね。』

 「今これを知らせてくれたという事は、まだ撃てないという事ですか。完成は何時頃か分かってますか?」

 『遅くとも71年の9月には使用可能でしょう。早いと5月には多少の不具合があろうとも撃てます。』

 「最短で後1年ですか…。」

 

 地球がプラントによって滅ぼされるまで、後1年と少々。

 戦前のプラント、コーディネーター達への弾圧を考えると、彼らが撃たないという選択を取るとはムルタには思えなかった。

 地球にも狂人や愚か者が大量にいるし、プラントにいないとはどうしても言えなかった。

 少なくとも中立国含む地球全土にNジャマーを投下して多数の民間人を虐殺した連中に、そんな理性は期待できない。

 

 『頑張ればこちらにも撃てる代物ですからね。コイツの破壊さえ約束してくれるなら、義勇兵部隊としてこちらの部隊を送り出す事も出来ます。』

 「金でどうにかなるものなら全てご用意しますので、あるだけ送ってきてください。」

 

 ムルタ・アズラエル、ここが勝負所と腹を括った。

 あの世に金は持っていけないと、此処で買えるだけ買う覚悟を決めた。

 

 『流石に軍をそのままでは警戒されますし、火星圏から地球圏で不足気味の希土類を輸出すると言う形式にしましょう。これはプラント側も申し込めば購入できるという事で。』

 「形だけは中立を保つと。分かりました、その形式で行きましょう。」

 『後、輸出用のモンキーモデルですが、うちのバタラのライセンス生産の許可も出します。』

 「よろしいのですか!?」

 『構いません。どうせこの戦争が終わる頃には流石に性能不足でしょうし、そうなったら改修か新型を作るだけですし。』

 

 ヒマリもまた思い切った。

 一応火星連邦上層部には事前に新型量産機の開発計画及び試作機からの暫定的なカタログスペック(大体初期ジンクスの一部上位互換)は知らせているため、これ位は許される範疇にある。

 

 「それと申し訳ありませんが…私の妻子をそちらに送らせて頂きます。」

 『分かりました。こちらでの生活に必要なものは用意させてもらいます。』

 

 裏切り防止、何よりもしも失敗した時のためにムルタは最愛の妻と娘を火星連邦に亡命させる事を決めた。

 そりゃ戦略兵器で地球諸共滅ぶ可能性が出て来たのなら仕方ない。

 

 『では早速取り掛かります。融合炉やバタラのデータは直ぐに送りますので、そちらの技術者達に解析させてください。』

 「えぇ、本当にありがとうございます。必ず勝ってみせますよ。」

 『ふふ、期待していますよムルタ君。』

 

 そして通信は終了した。

 残ったのは、鬼気迫る貌となったムルタだけだ。

 

 「ふざけるなよ化け物共が!何がナチュラル共の野蛮な核だ!貴様らの行いこそ、遥かに野蛮で残虐じゃないか!」

 

 滅多に声を荒げる事の無いムルタの本気の罵声に外の護衛達が驚くが、それでも罵声は止まらない。

 

 「あぁもうあぁもう!こうなったらトコトンやってやるさ!お前達が恐れた本当の天才の知恵、こっちは幾らだって借りられるんだ!お前ら程度じゃ敵わないあの人の知恵をさぁ!」

 

 頭をガシガシと掻き毟りながら、ムルタが吼える。

 実に情けない内容だが、その内容は多くの者が慄くだろう。

 この時代の先進技術開発でトップをひた走る女傑の知恵を借りられる。

 技術は元より政治経済にも明るい彼女の知恵となれば、その恩恵はどれ程のものか見当もつかない。

 少なくとも、日々MS相手に苦戦している地球連合軍及び地上でエネルギー不足に喘ぐ多くの人々にとっては大きな福音となるだろうが。

 それ以外でも戦争の、世界の情勢が大きく動く事は間違いなかった。

 

 「やってやる、やってやるぞ!勝つのは僕らだ!」

 

 こうして、未だ商売モードだったアズラエル・グループおよびロゴスはガチで戦時体制へと移る事となった。

 

 

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