超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話 作:VISP
C.E.70年6月、ムルタ・アズラエルからの調査報告を受けたロゴスは慌てた。
戦争がどうなろうが、最終的に儲ければそれで良いとすら考えていた彼らにとって「このままでは地球ごと滅ぼされる可能性が高い」という報告は正に驚天動地だったからだ。
『そら見た事か!私が言っていた通りだろう!宇宙の化け物共を叩かん限り、我々に未来は無いと!』
その報告を受けたロード・ジブリールのみは我が意を得たりとばかりに声を大にしたが。
「今回は正にジブリール氏の言う通りです。奴らが実際にこちらを殲滅可能な戦略兵器を準備していると分かった以上、背に腹は代えられません。あらゆる手を尽くす必要があります。」
『とは言えどうするつもりかね?月の戦線は膠着状態。地上もカーペンタリアに基地建設を許す等、現状は押されてばかりだ。』
『人的資源こそ問題無いが、エネルギー不足でこれ以上は兵站が持たんぞ。』
『プラントにまで攻め上げるには何もかも足りんな…。』
「無論、プランはありますとも。こちらの資料をどうぞ。」
そして提示された資料に、ロゴスの面々は目を見開いた。
『核融合炉!?それにミョウジョウ博士による新型のMSのデータか!』
『ナチュラル用OSの実用化に成功したのは聞いていたが…。』
『月で鹵獲機の運用だけでなく、新型もいたとはな。』
『素晴らしい!これ程の機体ならば、あの化け物共を叩き潰せる!』
提示されたデータは勿論ヒマリから齎された各種用途の核融合炉の概算データ、そしてバタラ(輸出仕様)の設計図である。
「勿論、こちらに協力してくださるのなら、この核融合炉及び新型MSのライセンスを格安で売らせて頂きます。」
『ううむ、確かにこれは…。』
『ミョウジョウグループとのコネクション、噂以上に確かな様だね。』
この場の誰もが内心で(人の褌で相撲してんじゃねーよ)とは思ったが、状況を考えれば背に腹は代えられないと冷静に脳内算盤を弾いた。
『よろしい。そちらの提示した値段でライセンスを購入しよう。』
『先ずは経済を復活させ、生産体制を整えねばならん。』
『然る後、奴らの切り札が完成する前に攻め込もう。』
『失敗する訳にはいかん。確実に一撃で蹴りを付けねばならん。』
『むぅ、時間との戦いですな。直ぐに殴れないのが不満ですが仕方ありますまい。』
ジブリール含め、ロゴスの面々はムルタのプランに全面的に同意した。
まぁしないと自分含め地球が焼かれるので他に手は無いのだが。
『…最悪を考えて、妻子と資産の一部を火星連邦に逃がしたいのだが、口利きしてもらっても構わないかね?』
「それは構いませんが…他にご希望の方は?」
すると、ほぼ全員が火星連邦への妻子及び一部資産の避難を希望した。
例外はジブリール含む未だ正式に婚姻した女性のいない者達だけで、そんな彼らにしたって資産の一部を逃がす事に同意していた。
「よろしい。皆さんの希望は優先して叶えましょう。その代わり、これより地球連合首脳部も巻き込んだ反抗作戦を始めましょう。」
こうして、地球連合の足並みは本当の意味で揃う事となる。
……………
月面、グリマルディ戦線にて
ここ最近は投入された地球連合のMS運用試験部隊TMXの活躍により、辛うじて盛り返していた。
と言っても6:4程度で、戦略次第では幾らでも押し返されそうなレベルでだが。
何せその主原因となっている連合側のMSは未だに数が用意できず、連合お得意の物量作戦が取れないからだ。
鹵獲ジン、これはジャンク屋連合から高額で取引している上、既にハードの解析は終了して月面のプトレマイオス基地や地上の開発拠点で少数ながら生産しているのだが、ナチュラル用OSも用意できたとは言え碌に教育プログラムも揃っていないため、新兵の教育が全然進んでいないのだ。
なので、運用データ収集のための一個増強中隊以上には増やせていない。
現在手探りでやっているため、まだまだ時間がかかりそうだった。
そしてバタラ(義勇兵仕様)もまた問題があった。
輸出仕様と違い、火星連邦の軍事機密の観点から整備もパイロットも補給も別物であるため、今いる一個中隊以上は容易に増やす事が出来ない事情があった。
それでも、この二つの中隊は月面戦線にて多くの戦果を挙げ、ザフト側の動きを大きく停滞させる事に成功していた。
鹵獲ジンに関してはコクピット中心に大西洋連邦側で小改修が行われ、ナチュラル用OSの搭載により操縦性が大きく改善している。
バタラに関しては偽装も含めて頭部複合センサー内蔵バイザーが撤廃しほぼザク頭化、実弾兵器縛り等の問題はあるが、プラネイトディフェンサーと核融合炉はそのままなので、ジンの武装では重爆撃装備やバルルス改特火重粒子砲ですら有効打とはならないため、ザフトにとってはほぼ死神と化している。
但し、重斬刀や格闘等の近接攻撃、艦載レールガン等の高速実弾兵器等は衝撃によるノックバックが発生するため、決して無敵と言う訳ではない。
しかし、バタラをハイ、鹵獲ジンをローとした連携はジンは勿論、シグーですら対応できず撃破される事例が続いた。
一部エースやベテランは撃破されずデータを持ち帰る事に成功したものの、それ以外の殆どは撃破され、スペースデブリの仲間入りを果たしている。
後に対策として先行試作型の携行式115mmレールガンやレーザーライフルが前倒しで開発・配備されたが、シグーに比肩する機動性を持つバタラを捕捉して命中させるには技量が必要であり、それとて一撃で仕留められる訳でもないため、エースやベテランのみに優先配備される形となった。
結局、月の戦線は膠着状態のまま、互いに屍を重ねる日々が暫く続く事となる。
一方、地上は順調だった。
各地でライセンス生産が開始された産業用融合炉は停止していた分裂炉以上の発電量を誇り、僅か数ヵ月で戦前程ではないとは言え、その多大な生産力を取り戻すに至った。
占領された地域や中立国、親プラント国はこの恩恵を受けられず、戦時中とあって取引も制限され、またNジャマーによる広域の電波妨害や混乱もあったため、流石に戦前のままとはいかなかった。
しかし、その膨大なマンパワーを活かす事の出来る土台が整いつつあった。
戦局においてはジャンク屋ギルドを通して火星圏より輸入されたバタラ(輸出&陸戦仕様)の登場により、バクゥの登場以来押されていた陸上戦闘に関しては順調に遅滞に成功する地域が出始めた。
バタラ(輸出仕様)はビーム兵器の非搭載及び頭部複合センサー内蔵バイザーの撤廃と主機関である融合炉の出力低下(これは負荷低減による耐用年数の増加を狙ったもの)、胸部の肋骨状の動力パイプに装甲を追加、脚部の格納機能を排して歩行能力の強化等の改修を行っている。
また、ブロック構造の特性を活かし、スラスターを減らしてラジエーターを追加した砂漠戦仕様のバックパック、四脚(履帯で走行可能)の下半身ブロック等も同梱されているため、弱点だった地上戦への対応力も付与されていた。
未だ少数故に膠着状態とはいかないものの、生産力の回復と共にライセンス生産を許可されたバタラ(輸出&陸戦仕様)は徐々に各地の戦線に現れ始め、連合の反撃の狼煙となるのだった。
しかし、未だにザフトの優勢が続いている戦場があった。
そう、ザフト水泳部の庭である水中だ。
バタラはそも火星の極限環境を想定したMSだ。
汎用性・拡張性の高さからこれまで問題は無かったが流石に地球の、それも水中となると耐水圧の関係から新規設計する必要があった。
そのため、急遽バタラ・アクアとも言える機体が設計されたのだが、開発元から「要求性能に達していない」として却下、代案として「防水装備」が生産されるに留まる事となった。
元々各関節はシーリング処理され、防水もある程度できているのだが、それをより厳重にするための改修パッチである。
しかしこれでは所詮港湾部の防衛位しか出来ず、ザフト水泳部を駆逐するのは夢のまた夢だった。
連合海軍がその覇権を取り戻すのはまだ先、後期GATシリーズ、その派生機と量産型のロールアウト後となる。
……………
一方その頃、プラントの情勢は芳しくなかった。
原作では無差別に破壊された連合所属のスペースコロニー群は開戦初頭で無防備都市宣言を行い、駐留艦隊も多くが月方面或いは理事国それぞれの宇宙要塞へと離脱したため、攻撃を受ける事が無かった。
これは偏に開戦前からのミョウジョウ・グループの裏工作が故だった。
『こちらの商業施設への攻撃を避けて頂けるのなら、そちらが求めている商品、格安でご提供いたしますよ。』
ユニウス7崩壊により食料供給に問題のあったプラントは悩んだ末にこれを受け入れた。
元より無理のある地上侵攻を決意したのも、一部資源や食料確保のための側面も大きかったプラントにとって、今まで自分達の食卓を支えていた供給源やそのグループ企業へと攻撃する事は避けたかったのだ。
まぁ、条件として各コロニー群はプラントの暫定統治を受け入れ、監視下に入る事となったのだが、これが実は罠だった。
タダでさえ人口が5000万しかないプラントにとって、各LPに存在する無数のスペースコロニーを管理する労力は極めて大きかったのだ。
工業設備は高度に自動化されたスペースコロニーとは言え、嘗て敵地だった場所の占領統治には人の手が必要不可欠であり、プラントにそんなノウハウ持った人材なんて誰もいないのだ。
それでも何とかヒーヒー言いながら治安維持や沿岸警備等の統治して、その生産力をプラントへの輸出向けに調整して回し始めると、辛うじて収支は上向きとなった。
火星連邦やジャンク屋連合から鉱物資源を始め生活に必要な物資の輸入を増やす事となったが、確かに+にはなった。
しかし、ここでジャンク屋連合の存在が問題となった。
当初、大戦によって発生した無数のスペースデブリ対策として生まれたジャンク屋連合により助けられたものだが、兵器拾得上の業務特権や勢力の領土によらない活動、極め付けに兵器の自由拾得により、テロ支援団体と言われても仕方ない勢力と化していたが、国際法上では本来なら取り締まるべき破損した自国の兵器類の回収・生産・取引を見逃さねばならない始末である。
しかもこいつら、別に副業禁止してないので時には傭兵だったり海賊だったりするので質が悪い。
純粋に守る範囲が広がった結果、連合宇宙軍相手だけでなくこうしたジャンク屋連合との軋轢が毎日の様に発生しており、タダでさえ少ないマンパワーを擦り減らす事態となっていた。
幾ら優秀でも限度があり、ザフトの人員は深刻な人手不足から来る過労により、その能率を落とし始めていた。
それでも何だかんだ何処の戦線でも決して不利ではない辺り、プラントの違法コーディネーター達の実力は確かなものと言わざるを得ないが。
因みに火星連邦はジャンク屋連合に関する条約に批准していないため、同じ事を火星連邦勢力圏内でやろうものなら普通に攻撃される。
こうしてマンパワーを擦り減らす中、ミョウジョウグループ名義で火星連邦からは日々多数の輸送艦が訪れる。
積み荷は主に各種鉱物資源であり、特にレアアースは重要な取引品だ。
普段なら小惑星から採掘するのがプラントのやり方なのだが、戦時中で人手不足とあらば、他から買い取る事もする。
火星連邦としても資源だけならば兵器類の売買に当たらないため、中立を破る必要もなく、大口の商取引をする事が出来る。
しかし、幾らザフト強しと言えども、火星ープラント間の航路の全てを守る事は不可能であり、道中宇宙海賊に襲われた輸送艦が積み荷を強奪される事もあれば、時に撃沈されてしまう事もある。
そして、奪われた積み荷がジャンク屋連合からプラントや地球連合に流れる事もまた、多くあった。
勿論、火星連邦にミョウジョウ博士、地球連合とジャンク屋連合による仕込みである。
核融合炉はギリギリだが、バタラの輸出は完全にアウトである。
ならば徹底的に隠し通すしかない。少なくとも戦時中は。
そのため、彼らは徹底的にプラントの、ザフトのマンパワーを削る方策を打ち出した。
各スペースコロニーの保護と引き換えの協力はミョウジョウグループ独自のものだったが、開戦初頭を過ぎて連合不利かつプラントの戦略兵器の存在が明るみになった今、人道を利用してでも勝つしか地球と火星が生き残る道は無い。
そう判断したからこそ、即座に両者は秘密裡の協力関係を結んだのだった。
勿論プラント、ザフトだって馬鹿ではない。
この偽装の全貌こそ知らないものの、明らかにジャンク屋連合が怪しい事には気付いている。
しかし、人数倍には優秀なコーディネーターと言えどそのマンパワーには限度があるし、一応国際法は遵守する自称穏健派のクライン派がトップの今、早々に強硬策に出る事は無いだろう。
もしバレた所で地球連合と直接的な取引をしている訳ではないので、火星連邦がプラントに抗議される謂れは無い。
なにせ形式上とは言え、ジャンク屋連合所属のジャンク屋兼宇宙海賊が勝手に地球連合に売っているだけで、法律的には一切の問題が無いのだ。
こんだけ無法をやらかしたのだから、戦後はどちらの陣営にかは分からないがジャンク屋連合が解体される事は間違いないだろう。
まぁ生き残れたら一部人員が地球連合かミョウジョウ・グループ所属のジャンク屋になっている事だろう。
時はC.E.70年7月、地球連合の大戦略たるプラント包囲網の初期段階が順調に始動した。
こうした宇宙の拮抗、地上での進行鈍化に対し、プラントは更なる戦果のために活動を開始するのだった。
それが底なし沼へと踏み入れる事だと知らずに…。