超天才清楚系病弱美少女ハッカー風転生者がヤケクソになる話   作:VISP

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火星編 第6話 血のノウハウ不足とバタラのあれこれ

 絶賛マンパワー不足に陥り始めたプラント、そしてザフトであるが、勿論ながら当初の予定ではこんな事になる見通しは無かった。

 何せ戦前での国力差は10倍以上なのだ。

 幾らプラントが多数の違法コーディネーターを抱えていようと、その総人口は5000万人しかいない。

 そこから労働人口となる内訳を考えれば、人手はどうあっても不足する。

 それを補うために本来ならば全て破壊する予定だった地球連合側のスペースコロニーを占領、プラント側に必要な食料や医薬品等の直接軍事に関係の無い物資の生産を行わせる。

 無防備都市宣言をしてなお、防衛戦力の無くなったコロニーを破壊しようとする声も上がったが、「お前そんな事してミョウジョウ博士を完全に敵に回すのかオイ」という意見に静かになった。

 

 ヒマリ・ミョウジョウ博士、その名はプラントに住む者達にとって生きた悪夢に等しい。

 

 なにせ彼らが高い金を払って受けた遺伝子調整で得た才能を、タダのナチュラルが軽々と超えていくのだ。

 無論、先天的遺伝子失陥によって重度の下半身不随を患い、子供も残せていないが、その頭脳と技術は技術・研究畑の者が多数いるプラントにおいては内心どんなに忌々しく思ってもアレこそジョージ・グレンの言っていた正真正銘の天才だと断言できる。

 そんな人物の会社が多数あるコロニーを破壊したら、どんな恐ろしい報復が来るか見当もつかなかった。

 自分達が想定したどんな戦略も上回って報復してくる可能性を考えると、彼らにはとてもではないが手出しできなかったのだ。

 無論、殲滅戦なぞやろうものなら一撃でヒマリのデッドラインを超える事になるので、その判断は大体正しかったりする。

 まぁその辺は地球連合もプラントもどっこいどっこいなので「こいつら何時かどっちもキャーン言わせなあかんな」とは思われているのだが。

 

 「食料生産の問題もある。此処は監視と治安維持のための部隊を置いて監視させよう。」

 「それだけではこちらの持ち出しだけではないか!この戦時にお荷物を抱えると言うのか!」

 「無論、こちらの保護下に入った以上は彼らには働いてもらう。重要度の低い物資の製造を任せよう。それで素直に従うならば良し。でなくば相応の対応をする。」

 

 こうして、一部コロニーで小規模な暴徒鎮圧こそあったものの、順調に各コロニーを支配下に置く事となった。

 そう、この時点では。

 

 「よし、大凡統治は落ち着いたな。各コロニーのコーディネーターに志願兵の募集を始めよう。」

 

 穏健派も何も考えていなかった訳ではない。

 タダでさえ少ない同胞を擦り減らす戦争行為に手を染めた以上、何とかして人手を増やしたいのは自明の理だ。

 だからこそ、理事国本土よりもコーディネーター人口の多いコロニーを確保し、そこから人員を抽出しようとしていたのだが…

 

 「芳しくない、か。」

 「はい。こちらの予想以上に彼らは慎重な様で…。」

 「まぁ無理もないか。」

 

 誰だって戦争なんて嫌なのだ。

 況や自分達の故郷を守るためなら兎も角、同じコーディネーターとは言え敵国のために戦いたいと思う者はほぼいなかった。

 余程の理由、借金や保護者死亡による食い扶持の確保等があれば話が別なのだが、意図的にカタに填める手間を考えればマイナスと言える。

 

 「まぁ殆どが純粋な遺伝子疾患治療者では足しにもならんか。」

 「このままこちらで斡旋した事業に参加してもらった方が良いかと。」

 

 更に言えば、トリノ議定書への調印以降、露骨に能力を強化する遺伝子調整を表立ってする者は大きく減少しており、プラント理事国にいるコーディネーターとされている者達は単に遺伝子疾患の治療を受けた者達が殆どなのだ。

 例外と言えば、オーブの様なコーディネーター差別が少ない中立国の出身者や移住者くらいなものだ。

 後はコーディネート失敗によって捨てられた孤児やハーフコーディネーター等の脛に傷のある者達。

 残りは軍用コーディネーターことソキウスシリーズの様な例外中の例外となるが、この存在をプラントは未だ知らないので除外する。

 

 「失礼します。また占領地で兵が問題を起こしたとの事です。」

 「またかね?」

 

 うんざりという顔でシーゲル・クラインは部下からの報告を聞いた。

 現在、地上と宇宙で得た占領地をプラントは持て余していた。

 無論、そこから多くの食料品を中心とした物資を得る事には成功しているのだが、占領統治するための何もかにもが足りていないのだ。

 

 「女性に対する性的暴行、反抗的な民間人への私刑、無銭飲食に暴行に窃盗…。」

 「悪行のオンパレードだな。」

 

 そして、今までプラントという閉鎖環境で同胞達と暮らしていたザフト兵達にとって、戦争+他のコロニーや地上での暮らしというものは多大なストレスとなっていた。

 ではどうなるのか?それは歴史が証明している訳で…

 

 「コロニーでも地上でも、やりたい放題か…。」

 「ザフトの体制そのものが問題になるとは思いませんでした…。」

 

 即ち、兵士による蛮行である。

 性的暴行、私刑、略奪、虐殺、他諸々。

 ザフトと言う民兵組織では明確な上下関係が存在しておらず、指揮系統すらトップ層は兎も角現場では曖昧な所が多い。

 それを何とか人員の質で補っていた、否、誤魔化していたのがザフトという組織だった。

 そんな連中が故郷から遠く離れた戦地でストレスを抱えた状態で何をするかと言えば……彼ら視点で下等なナチュラルで遊ぶ位しか楽しみが無いのである。

 

 「宇宙では比較的少ない様に見えるが…」

 「ミョウジョウグループの関係者が何処にいるか分かったものではありませんから。」

 「あぁ、成程な。」

 

 それでも大なり小なり蛮行を働いているのは事実。

 勿論連合側の将兵、特にブルーコスモス関係者は国際法?何それ?みたいな感じで性的暴行はほぼ無いにしてもコーディとその協力者相手に拷問、私刑は当たり前、楽に死ねたら幸運状態である。

 だが、連合とプラントで致命的に違っている所がある。

 こうした占領地の情報を有効活用しているか否かである。

 

 「連合は現在、各種海賊放送を用いて各地のザフト兵の蛮行を映像付きで世界中に流し、こちらの悪評をばら撒き続けています。勿論、こちらも同じ様にして対抗しているのですが何分ノウハウもなく…。」

 「まぁ仕方あるまい。」

 

 占領統治で失敗すると何処からか漏れて放送され、現場の兵士が蛮行を働いてもやはり放送される。

 勿論加害者の側は実名・顔出しの完全実写(流石にモザイクは有り)でだ。

 頭が痛いのはどれも事実であり、連合側の海賊放送が何一つ嘘を言っていない事だった。

 占領統治、軍事組織の運営、情報戦等々。

 先進国が大なり小なり持っている、血と歴史によって得られた無数のノウハウ。

 成立して数十年程度のプラントでは逆立ちしても得られない貴重なソレを、連合は無数に積み重ねてきたのだ。

 単なる戦闘行動なら兎も角、地球圏全体に戦線が広がった現状、組織的欠陥が表出するのは当然の事態だった。

 そして、それは何もザフトに限った話ではなく、絶賛広報合戦でも負けているのがプラントだった。

 お陰で各戦線では民間人からの協力を得られず、敵軍の兵士は死ぬまで戦うのが当然と言うデフォで死兵状態だった。

 アンドリュー・バルトフェルドの担当する占領地帯は比較的問題が少ないのだが、それでも現地の武装ゲリラや自称ブルーコスモスによるテロ活動が後を絶たない。

 こうした戦闘とは直接的に関係の薄い所で、じわじわとプラントはその国力を削がれていた。

 

 「先ずは連合の行動を全て解析するのだ。我々はスタートダッシュの時点で大差を付けられている。癪だが奴らに学ぶしかない。」

 「畏まりました。」

 

 こうして、遅ればせながらプラントもまた総力戦と言う人類最大の底無し沼の一つに漸く踏み入れた事に気付いたのだった。

 

 

 ……………

 

 

 「とまぁ、こんな感じで手遅れでしょうけどね。」

 『見事な手かと。』

 

 一方の火星連邦では、現在地球連合とプラント双方から中立国として可能な限り公平に見せかけた取引をしていた。

 火星と言う長距離移送費用から高くつく筈なのだが、プラント並か一部ではそれ以上の品質の各種商品を安定して生産している事から注文は途切れる事は無い。

 寧ろもっと売って!もっと作って!と両陣営からひっきりなしに追加注文が山と来ている程だ。

 そのため、現在の火星では戦争特需と言うべき状態になっていた。

 

 『経済が潤うのは歓迎するのですがね…。』

 『こちらとて本来の開拓や都市開発事業があるのですよ。』

 『さりとて新規移住者向けのコロニーや地下施設の建設を止める訳にもいきますまい。』

 『バタラの生産は順調ですが、お陰でこちらに回す筈の数が揃いません。』

 

 火星連邦上層部は、絶賛過労状態だった。

 何せ地球連合程の国力、人的資源を持たない彼らにはこの人類史上最大規模の総力戦の両陣営双方に各種資源を採掘・精錬・輸送して売却しているのだ。

 更に地球連合には追加で核融合炉の燃料やバタラ(輸出仕様)も追加される。

 その生産力をフルに発揮してもまだまだ需要に追い付けていなかった。

 

 「まぁ例のジェネシスの完成度を考えれば、どんなに長くとも一年未満です。それまで頑張りましょう。」

 『承知していますとも。』

 『まぁ愚痴ですよ愚痴。』

 『所で博士、例の新発見した粒子の研究はどうなっていますか?何でもこれまでの兵器を過去のものにするという話でしたが…。』

 『正直、バタラの時点で十分だと思ったのですがね…。』

 

 現状、地球連合とプラントの技術発展速度を見ていると、バタラですら何れ遠くない内に時代遅れの旧式機となる事だろう。

 プラネイトディフェンサーという鉄壁の守りがあっても決して絶対ではないのだ。

 事実、地球連合で運用しているバタラの撃破報告もそれなりの数が届いている。

 

 「ふふ、確かに地雷等への対策はしてませんでしたし、電磁バリアの特性上レーザーには無力。加えて零距離からの攻撃にも効果が薄い。収集したデータを即座に反映させ、対策してくるのは流石と言えますね。」

 

 バタラは何度も言うが火星圏での運用が主眼なのである。

 1G下の地上、ましてや水中戦闘なんて想定していないのだ。

 だからこそ水場に落とされてプラネイトディフェンサーが安全のため緊急停止したり、レーザーでプラネイトディフェンサーを抜かれたり、レールガンの接射や重斬刀やシールドによる打撃、果てはケーブルを用いた電気ショックとなるとその防御力を活かし切れないのだ。

 それでも宇宙世紀100年代の装甲材質たるガンダリウム合金セラミック複合材相当を採用しているのは伊達でなく、その状態からでも返り討ちや撤退に成功している事例は多い。

 問題はパイロットが気絶したり、衝撃や高圧電流で中の精密機器がお釈迦になって撃破された事例である。

 

 「これでも結構その辺も気を遣ってたんですけどねぇ…。」

 『それでもNジャマー環境下で通常兵器を駆逐してきたMS相手にここまで一方的だったのです。戦果は十分でしょう。』

 『後は運用次第です。連合とてすぐに対策を練るでしょう。』

 

 つまる所、ハードではなくソフト、使い手次第という事だ。

 

 「まぁ良いです。GN粒子搭載MSですが順調ですが…少々コスト面で問題が残ります。今次大戦中は念のため、主力機への全面的な採用は見送る事としました。」

 

 このヒマリの言葉に、会合の面々がギョッとした目線を向ける。

 

 『なんと!では次期主力機はどうするのですか!?』

 『博士がそう言うのなら本当に問題なのでしょうが、代案はあるのですかな?』

 「勿論、代案は用意してあります。」

 

 そうして各自の下へ送られたのは、とあるMSの図面だった。

 

 「MFSー02アマクサ。バタラを大型化・高性能化した機体と思ってください。GN粒子搭載機体の基礎フレームとして開発していたものだったのですが、コスト面と機体特性の違いを考慮して既存機体の発展系として仕上げました。コスト・整備性・操作性も問題ありません。」

 

 表示されたのは、バタラよりもやや大きい機体だ。

 バタラの丸みを帯びた機体を大きくし、各部にスラスターを追加、バックパックにはスラスターを内蔵した可動肢を四つ備え、高い運動性を実現している。

 武装面は近接武装がオプションで追加可能だが、基本的にバタラのものやその発展系を装備可能となっている。

 コスト面もバタラの3割増しとなっているが、内骨格フレームとブロック構造の相の子となっており、高い発展性はそのままに内部構造の信頼性も向上している。

 また、大型化によって増えた積載量を活かして、より高出力のジェネレーターと分厚い装甲を搭載、コスト以外のあらゆる性能が向上している。

 

 『スペックは申し分ないですが、このコアファイターというのは?』

 『脱出装置にしては少々豪勢なようですが…。』

 「あぁ、こちらは元々高価なGNドライヴ及びパイロット保護のためのものです。オミットするにも聊か惜しかったものでして。」

 『これ止めたらコスト…あぁいえ何でもありません。』

 

 なお、コアファイター未採用の場合、バタラの2割増し程度のコストに収まっていた。

 いたのだが、これ以上貴重な人材を減らすのを嫌がったヒマリが採用を決めたのだった。

 

 「まぁ今次大戦はこの機体で大丈夫です。盤面が揃うまで、地球連合の方々には頑張ってもらいましょう。」

 『分かりました。ではそれまでこちらは見に徹するという事で。」

 

 こうして、連合とプラントが正面から殴り合っている間に、火星連邦では決定的な時が来るまで雌伏する事にしたのだった。

 

 

 

 




○GNX-00 ヴァラヌス
プロトタイプジンクスとも言うべき機体。
GN粒子採用機体のX=試作ナンバー0号機に当たる。
主にGN粒子の軍事利用のためのテスト機であり、主に無人で駆動。
暴走した際は機密処理も兼ねて遠隔で自爆する。
GN粒子無毒化に成功してからは有人で試験している。
まだGNドライヴのコスト面が解決していない事、本機のフレームでは強度不足である事、無人運用が前提である事から操作性もバタラより低い事から量産機への採用は見送られた。
しかし性能は本物であり、その基礎性能は第一次地球連合・プラント大戦時後期に投入されたZGMFーXナンバーの機体に比肩する。
また、バタラで問題となった1G環境下での陸戦や水中戦も可能となっている。

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